スカーレット92話あらすじ感想(1/21)作品も完成も、喜美子自身のもの

・何あんな怖い声音&暗い顔しとんねん!
→無駄に心理的な打撃を与えとるやろ。誤解を招きかねんし。ジョーが生きていなくてよかったかもしれん。

・実家「サニー」でプロポーズて、お前……。
→草津の映画館帰りに、ちょっとええ店で奮発しての流れでは、あかんのか?

・指輪も、花束すらないて、お前……。
→まあ、もう、ええんちゃうか。期待せんよ。

こんなん、どんなに顔グラよくても、乙女ゲーならバグキャラやぞ!!

※比較例

ハッピーエンドで、ほっこり癒されたという感想は、想像できるんですけれども。

でも、おかしいとは思いませんか?

百戦錬磨のプロ脚本家なのに、このロマンチックの真逆を突っ走る、不器用セリフとシチュエーション。それに、この無駄な心理的な打撃を与えかねない、信作のよくわからん罠。

敢えてロマンチックの真逆を暴走させていること。これは把握しておきたい!

一応、信作の思考回路を考えてみました。

喜美子のあの言葉、俺の覚悟をみせなあかん! 多数決でええんか? いかんでしょ

あーでも緊張する! まあええ、呼び出したろ!(緊張しすぎて暗い声音)

よっしゃ、ここで決めたる! 三回言って覚悟を見せる。理由もきっちりまとめる!

信作はズレていてめんどくさいだけで、悪い奴ではない。

このズレとめんどくささに、耐え切れるかどうか。そこやで!!

喜美子は、もらわない女

武志が工房にやってきます。

靴下の点検です。喜美子はもう寝ていたと言い、武志は寝ると言っています。

喜美子は手を洗ってから、靴下検品開始です。今度はちゃんとできとるで!

「おおっ! おおっ! よし、ようできたやん、すごいなあ!」

「ほんま?」

「ようできてる。最後まで上手にがんばりました」

「3箇所、全部で36円になります!」

「計算もできてる。合うてる! はい、大事に使て」

ここで母子の明朗会計やで。
本作は、背景にいるだけの人ですら、算盤を弾いてきっちり値段交渉をしておりました。

特殊詐欺被害にもあいにくい、商人のまち・大阪の誇りを感じるで! 幼いころから明朗会系や。NHK大阪らしいなあ。

※大阪府警も認める、関西のおばちゃんパワーや

武志は、お母ちゃんもできたのか?と聞いてきます。
型作りはな。そう喜美子が答えると……。

「次はゆうやくやな!」

「よう知ってるなぁ〜」

喜美子が関心していると「そらそうや!」と武志は元気よく答えます。親の仕事を見て、覚えているわけです。このやりとりからするに、教えたわけではなく勝手に覚えたのでしょう。

「釉薬、何がええかな」

喜美子がこうつぶやくと、こう帰ってきます。

「お父ちゃんに聞いたらええやん」

「お父ちゃんに聞いてもわからんやん」

「同じ陶芸家で、ほんでなかよしやん。なかよしちゃうのん?」

喜美子はハッとした顔になって、こう返します。

「なかよしの夫婦やけどな? お父ちゃんとお母ちゃんは、同じやのうて。お父ちゃんの作品はお父ちゃんの作品。お母ちゃんの作品は、お母ちゃんの作品や。わかった?」

まあ、わかった。武志はそう答えます。

喜美子はもう遅いから寝ると言い、片付けるのを手伝ってくれるよう頼むのです。

三津は、ここには不在です。

ゆらぐ心

さて、三津は?

もう寝る前。寝室で百合子と語り合っています。百合子は友情に感謝しつつ、自分も蹴飛ばしに行くかと語り出します。

うーん、なんやこの、本作女子衆武力と団結力の高さは。そういえば信作のハンドバッグ殴打も、仲間から加勢されていたっけ。

百合子は自分の結婚が破談でないことに、ホッとしております。それをふまえて、内山田さんだが、川崎さんだか、蹴り飛ばしに行くって。

「誰?」

三津はわかってない。
寝言を聞かれたのかな?
百合子の同僚や友人の話と混同したのかな?

「ヒロシさん! ヒロシさんや!」

百合子は思い出す。みっちゃんが前に付き合っていた人。さそり座のヒロシやな。

「もう忘れました。思い出すこともなくなりました」

三津はキッパリとそう言う。

嘘かな?
本当かな?

作中でも言っていませんし、百合子がなかなか出てこなかったということは、確かに口にしなくなった可能性は考えられます。

「蹴飛ばしたい人いいひんの?」

ここで、ちょっと三津の顔が強張る。ほんの少し、そうなる。

「あはっ、いません!」

「誰も気になる人いいひんの?」

「修行しに来ているんですよ!」

三津はそう返しますが、信じてよいものやら。

ヒロシでなくて、今は彼のことが気になる。あんなに頼んでも、銀座に同行させてくれないそんな彼を、ちょっと蹴り飛ばしたい。

気になる人は、いる。いやいや、修行しに来ているのに――。そう自分を説得しているような、そこには揺らぎがあるような。

喜美子の頼まれた絵付け小皿は、順調に完成に向かっています。

明日、東京に行っていた八郎が帰ってきます。

心が変わった人たちのもとへ、帰ってくるのです。

作品も、誇りも、自慢も、覚悟も、喜美子自身のもの

同じものをつくる。
一人で、つくる。

本作は陶芸家というテーマの時点で、明確に独特のものがある。

『半分、青い。』のスパロウリズムによる扇風機にせよ。
『なつぞら』のマコプロによる『大草原の少女 ソラ』にせよ。

役割分担があって、チームで作るものでした。

それが今回は異なる。

同じ分野に夫婦がいると、どうなるか?

実は『なつぞら』では、モデルとなった中に結婚後引退した女性アニメーターも含まれております。

NHK内部では、そこをふまえている。『なつぞら』はそこを回避し、『スカーレット』は突っ込んでゆくのでしょう。

何その、朝ドラ枠で『ゲーム・オブ・スローンズ』。あるいは『天才小説家の妻』?

喜美子は、釉薬も、感情も、夫からはもらわない。

もらい笑いももらい泣きもしない。年間トータルゼロや。そんな喜美子がすごい。作り手もすごい。

喜美子の誇りと自慢と覚悟は、喜美子自身のもんや。

喜美子がそう思えばこそ、鈍感か敏感かようわからん信作も、己の覚悟と向き合ったんやな。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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