なつに再会できたことは、信じられなかった。
幸せそうで安心した。
探しにきてくれて、ありがとう。
すまない。
兄ちゃんのことは忘れてくれ。忘れて、北海道で幸せに生きろ。
兄ちゃんもお前を忘れる。ごめんな――。
泣くなつを見て、周囲も複雑そうな顔をしています。
これは泣く。
こんなの、見ている私も泣く……。
泰樹、動く
新宿のことをもしも彼が知っていたら、ちょっと違ったかもしれない。
しかし泰樹は知ってしまった。
なつ不在の柴田家がいかにさみしいか、知ってしまいました。
まぁ、こう言ってはならないのですが、夕見子不在でもここまで衝撃はないはず。
なんのかんので血縁がありますし、あれは幼い頃から飛び立つ気満々の性格でしたからね。めんこくないということではないぞ!
泰樹は考えたのでしょう。
これは阻止せねばならない。ただし、力や恩義で縛り付けることは、知将にはできません。
そしてその結果がこれなんじゃあああ!
照男に突如こう告げるのです。
「お前、なつと結婚しろ」
「えっ!」
「なつと結婚するんだ」
柴田家の家族として、一生ここに留まるのであれば、本物の家族にすればいい。
そういう策だったか!
実はかなりのお人好しだった「川村屋」マダムの策は不発でしたが、頂点に立つ知将がさらなる策を仕掛けてきたようです。
知将が多い!
ああ、なつよ。
君のいない十勝でも、何かが変わっていくようだ――。
とんでもないところで、来週に続きます。
朝ドラにクリフハンガーがやって来た
駄作朝ドラパターンは、週を跨がない。そう指摘して来ました。
月曜日に持ち上がった問題が、金曜日から土曜日にかけて雑な解決をされるものだと。
本作は、その真逆です。
金曜日に解決したと見せかけて、土曜日にひっくり返す。
高難易度を用意してきました。
そしてここまで、じんわりと見せて来た要素を土曜日にぶん投げる!
泰樹の言動は唐突なようで、実はそうでもないのです。
月:門倉番長の告白で示される、なつの結婚適齢期
火:信哉への態度でにじむ、照男のなつへの恋心
水:なつの不在で寂しい柴田家。剛男不在より寂しいという泰樹のセリフは、剛男をからかうわけでもなく、本音だった
木:「川村屋」のクリームパンと「雪月」のシュークリームで示される、二つの舞台の連動
金:再会するなつと咲太郎の場面のあと、柴田一家が映される
ぬかりなく、伏線を滲ませてきおったわ!
コメディリリーフ、ネタ扱いのような門倉番長にもやはり意味があった!
咲太郎探しというメインプロットに、きっちりと伏線を入れてくる。
実に細やかな仕事です。
ぬかりがない。本当にぬかりがない本作。新境地にも、ぬかりなく踏み出します。
それは【クリフハンガー】ですね。
崖に捕まった主人公。
さぁ、落ちるのか? 落ちないのか?
そこで「続く」と出す。海外ドラマではすっかり定番で、特にシーズンをまたいでこれをやられると、ファンがじれったくてジタバタするものです。
滅多刺しにされたこいつはどうなる?
答えは翌年でした。
※ファンが阿鼻叫喚したコレが典型例
「ここらでよかろうかい」
と、毎回それっぽくおさめた駄作大河『西郷どん』。あれはもう古い締め方です。
今年の『いだてん』は取り入れてきており、金栗がのちの妻となるスヤと対面したあとで続きは来週と言われたものでした。
朝ドラでも、そう来ましたね。
今週の終わり方はすごいぞ。
兄は収監。妹の縁談を知将が進めている。どうなるんだ!
咲太郎を誰が責められるのか?
戦災孤児の苦悩と転落――。
本作は、そんなダークサイドを描きました。土曜日はかなり高度。テクニックの極みです。
・咲太郎とマダムの因縁を説明する
・そのうえで、両者に同情を感じさせねばならない
・しかし、咲太郎にも落ち度はある。かつ、なつと別れさせねばならない
・戦災孤児の境遇を織り込む
しっかりと理解した上でないと、できることではありません。
それを本作は描いて来た。
咲太郎がナゼそこまで追い込まれて来たのか。
そこも、家の再建を誓う過去の描写で、伏線をにじませていました。
この先、きょうだいはどうなるのでしょうか。
そこも、本作のみどころとなるはず。
咲太郎が明るい未来を歩めるかどうか。そうとは思えない部分も大きいものです。
そこが本作の狙いでもあるはずです。
黙っているだけかもしれない。心に秘めているだけかもしれない。
けれども、あなたの横にも、咲太郎のような元少年がいたのではないか?
ドキュメンタリーのようなノンフィクションで、知ることも大切です。
◆NHKドキュメンタリー – BS1スペシャル「戦争孤児~埋もれてきた“戦後史”を追う~」
戦争は終わらなかった
フィクションにも知らしめる力はあります。
『火垂るの墓』がその典型例でしょう。
NHK東京は、近年の作品でも戦争描写が秀逸でした。
その集大成が本作といった感すらあります。
インパールでの体験があればこそ、ビートルズを知りたい。『ひよっこ』の宗男おじさん。
満州で絶望した体験を孫の鈴愛に語った、『半分、青い。』の仙吉おじいちゃん。
戦争体験者の中で、ある意味戦争は終わらない。
抱えたまま生きてゆく。
そんな姿が、そこにはあったものです。
戦後を生きたクリエイターは、戦争体験を作品にぶつけることも多かったものでした。
再放送される『ゲゲゲの女房』ヒロイン夫のモデルである水木しげる氏然り。『総員玉砕せよ』は傑作です。
『仁義なき戦い』も、深作欣二監督と脚本家・笠原和夫氏が、自らの戦争体験を織り込むべくいろいろと考え抜いていたそうです。
そういう創作者の戦争体験こそが、戦後日本の創作の源になったことは否めません。
本作はそこまで切り込むのでしょう。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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ローズマリーの言葉「警察は、一度捕まえた人を白にはしてくれない」
ここにも、戦災孤児の置かれた境遇が表れているように思います。
警察の制度は変わったとは言え、勤務する警察官には戦前から引き続いての人も多い。「公職追放」も解かれて旧特高関係者も復職している可能性も。
市民の方も、身内がおりツテをたどって政治家など有力者を頼れれば、警察沙汰があってもあの手この手で事を有利に運ぼうとする。警察としては「扱いにくい」
そんな中では、頼る者のない戦災孤児は、あれこれとしわ寄せされてしまう。悪くすると冤罪にさえ。
おそらく、戦災孤児であるがゆえに、何かトラブルがあるとすぐ疑いを向けられてしまう。警察でもいつも悪く扱われる。
そういった境遇なのかと思います。
904型様のコメントに関連してですが、「いだてん」で四三が東京に旅立つ時に乗り込みスヤが自転車で追いかけた列車も、あの時代には存在しない、戦後に作られた全鋼製(あの当時は木製)で自動ドア(あの当時は客が手で開閉)の客車でした。
大河といい朝ドラといい小道具にこだわりがあるはずなのに、こと鉄道となると粗が出てしまうのはなぜ?
「いだてん」の戦後編では、スタッフの皆様には頑張ってほしいところです。
これまで、『ひよっこ』や『半分、青い。』などに登場していた昔のバス保存車の多くは、「NPOバス保存会」という団体が維持・整備し、保存している車両のようです。
同会の公式サイトを見ると、保存車のほとんどは昭和40年代以降の車。
バスはそもそも事業用の資産ですし、鉄道車両より耐用年数も短く傷みも進みやすい、といったことから、バスの保存に関心が向けられるようになった昭和50年代末頃の時点で、残っていた古いバスも限られていたのでしょうか。
「昭和30年の浅草の街角を表現するのに、明治期の路面電車など出すな!」と怒ってはみましたが、ではバスやトロリーバスを登場させるとして、昭和30年の時点に完全に合致するバスの保存車を見つけるのは、確かに簡単ではない。
でも、バスの車体のデザインは、大規模なモデルチェンジがなければ割と保守的に以前の雰囲気が受け継がれたりもする。
昭和30年頃のバスに近い外観の保存車で、当時の都営バスを表現してもらえないものかなと、思います。
また、昭和30年頃は、まだバスはエンジンの制約などから現在より車体の小さいものが多かった中、より出力を大きく取れるトロリーバスは、通常のバスより早く大型化したようです。そういう点では、保存車の中で当時のトロリーバスに近い外観の車を活用して、浅草に乗り入れていた都営トロリーバスを再現するのも、意義があるかもしれません。
制作チームの今後の工夫に期待です。
良くなかったところはともかくとして…
今回、少しホッとしたのは、咲太郎が意図的に人を陥れたりしたのではなく、トラブルに巻き込まれ、心ならずも不義理をしてしまったという顛末だったこと。
それに、新宿時代は、理解し可愛がってくれる人にも囲まれていたということ。
光子も、恨んだりしているというよりは、案じ、解決を願っているように私には見えたし。
だからといって、事態が好転する材料は全く見当たらないのですが。
今後当分、咲太郎の登場シーンは無いようでもありますので。復活する時はどんな姿で現れることになるでしょうか。
…やっと冷静に振り返れるようになりましたが。
返す返すも、あの本作らしからぬ「大失態」?「手抜き」?のショックはねえ…制作意図・姿勢が、一時的に「んっ?」という感じにはなりましたので。
今日の回の比嘉さんが演じるマダムって、以前ヒロインだった『どんど晴れ』の夏美っぽい感じですね。
初めてコメントするのですが。
本作は素晴らしい脚本です。
なので、一言。
今週だけがクリフハンガーになっているわけではないような気がします。
物語の作り的に2週間で1つの章になる作りだと思います。
1.2週 少女編 1週目終わり→なつ脱走
3.4週 農協編&自己表現の開花 2週目終わり→なつ芝居決意
5.6週 進路問題編
に見えます。
進路についての何かしらのなつの決意が来週のテーマかと。
予測でしか無いですが、、。
今回も、咲太郎の身の上には、心を締め付けられるような苦しさが。
しかし、それとは別に…
浅草から帰るなつと富士子の背景に路面電車が映りましたが…
これは『いだてん』明治編で登場していた電車と全く同じもの!
これでは、いかん!!
昭和30年の東京・浅草(あるいは新宿)には、路面電車(都電)自体はあったけど、あんな形も色も明治時代のままの電車は絶対にあり得ない!
都電は全国の路面電車の中でも近代化の最先端の事業者の一つだったのに、あれでは時代錯誤にも程がある!
これはイタダケナイ!!
本作の数少ない大失敗です。残念!
無理に路面電車にこだわらなくとも、近い時代のバスの保存車に、当時の都営バスの外部塗装のデザインのラッピングを施すとか、トロリーバスの外装を施すとか(浅草には走ってましたからね)、そうして登場させたら良かったのに。
『いだてん』の方でも、あの電車は、明治編では合致するのですが、昭和30年代編では、同じ電車の色を当時の都電の色に変え、扉を付けただけで使い回し。
「昭和30年代風」にしようとはしていますが、あまりの安直ぶりで、こちらも大失敗! 残念至極!
自動車についてはわざわざ保存されている旧車を借りてきてまで時代に合わせるなど、他では完璧過ぎるほどに仕事をこなしている『なつぞら』『いだてん』チームですが、この路面電車に関しては、何故か信じられないほどの大コケをやらかしてしまっています。
チーム・考証担当の中に詳しい方(…と言うより基礎的なことをわかっている方)がいないのでしょうか。
かえすがえすも、残念!!