なつぞら71話 感想あらすじ視聴率(6/21)厄介な東大イケメン坂場を分析だ!

なんだあの新人は……

「すごい新人だな……」

作画課下山班は、呆然としております。
マコは悔しそうに、こう言います。

「おのれ、カチンコすら叩けなかったくせに生意気な!」

悔しがるときは、相手を認めている証拠です。
彼の理路整然ぶりを、認めたくないけど認めざるを得ない。そういう軍師マコの強がりですね。

堀内はマコより素直ですから、解説してくれます。

「東洋動画の問題点を指摘するなんて。着地点は確かにわからない。ディズニーの要素を取り入れた時代劇にしたいのか。それともそうでないのか」

仲も、それは認めます。
明確な着地点が見えていないのです。

これは日本の伝統的なところもありまして。
明治政府も、西洋流を全面的に取り入れるか、儒教ベースの道徳観とミックスするか、揉めに揉めたものでした。

ディズニーの真似か。
我々の表現を見つけてゆくのか。
悩ましいところ。

前者の方が楽で、興行的には正解かもしれない。
けれども、それだけでよいのか?ということです。

これも奥が深いものです。
本作って、日本アニメはディズニーの模倣からスタートしたと、明確に示しているんですね。

最近は、鳥獣戯画にまで結びつけて【アニメは日本起源!】とする、歴史修正主義的なトンデモ論まであるほど。
それとは明確に決別しています。

台湾伝統のインスタントラーメンを、日本人が一から作ったと言い張る、そういう****とは……。

ホワイトウォッシングを軽視するなかれ~歴史的差別の問題は根深し

模倣からスタートだって、いいんです。

それで成功した素晴らしいものは、たくさんあるのですから。

『マッサン』がそうでしょ。

それで今では世界五大ウイスキーの一つになっているじゃないですか。
※アイルランド・スコットラン・ドアメリカ・カナダ・日本

竹鶴政孝(マッサン)とリタ 史実の生涯を追う!ウィスキー作りに命を賭した夫婦の愛に感涙

そこを無理に日本ルーツにするところがいただけないのです。

あの新人は、仲たちが日々感じている疑問へ無意識のうちに辿り着いていたなんて、半端じゃないな〜。
そう終わってもよいところですが、軍師マコは厳しいのです。

「なつ殿……もしや、鵯越の逆落としを知らぬわけではあるまいな?」

「知ってますよ、そんくらい!」

いや、知らなかったでしょ。

一ノ谷の戦い(鵯越の逆落とし) 源平合戦の趨勢を決め、源義経はヒーローに!

このあたりも、キャラクターが面白いことになっています。

なつ:軍師ほど突っかからないし、意地悪でもないけど、負けず嫌いです! 引き下がりません! 失敗をおとなしくは認めませんから!

 

マコ:敵を認めたくない軍師、八つ当たりして憂さ晴らしする軍師。友達少ない? 知らん!

 

下山:まぁまぁ、柔軟性は大事だよ。そこは認めないとさ

 

堀内:冷静に分析ができるんだ。黒い軍師ほど尖っていないだけだ

 

仲:総大将ですから。悪いところは認めて、皆をまとめないといけませんからね

 

茜:合戦に放り込まれたんですか……やだ、なんか怖い

めんどくさすぎる新人・坂場

さて、その坂場ですが。

露木は感心しております。

「あのプライドの高い絵描きを、よく納得させたなぁ」

おいっ、露木、おいっ!
彼がいけば、役職上スンナリといったはずです。それすら面倒くさいからと、新人を送り込みました。

ただ、ある意味、適材適所かもしれません。

坂場は、絵描きの面倒臭さやプライドの高さ、それすら察知できていないかもしれない。
踏みつけても、あんまり気にならないのかもしれない。

そういうわけのわからなさが、滲んでいます。なんなんだコイツは……。

なつはモモッチに、お昼に誘われます。
噴水でのランチタイムです。

作画に慣れたのかと訊かれ、なつは昼ごはんを食べる暇もないとこぼします。
今日は時間があるのかとモモッチが言うと、こうです。

「今日はなんとなく、モヤモヤする」

そして話題はモヤモヤの発生源、坂場のことへ。
彼はなんと東大で哲学を専攻したという、インテリ新人でした。

「そんなに……すごく変な人だった!」

なつはびっくりします。
その変な人は、パンを食べながら洋書を読んでいます。うん、これは手強いわ。

なつは振り返ります。

「何でもできるから、やりたいことがわかってない。わかってないんだ。見失なったかも。向こうも新人……」

ここでなつは、ぼそりとこう言います。

「早く名前を出したいなんて、よく言えたもんだわ」

「名前?」

「なんでもない」

なつはごまかします。

なつよ、早速あの青年が、きみに影響を与えたようだな――。
そう父が説明するのでした。

東大卒と言わない東大卒

坂場が賢いこと。
面倒くさいけど、本質をつくこと。
頭が常にぐるぐる回っていて、中身が濃すぎること。
そして空気を読まないこと。

このあたりがわかったと思います。

会話だけでも十分ですが、それだけじゃない。ぶきっちょと言われてもそこまで動揺しない。
あの読書しながらのパン。哲学を経てアニメ。

何もかもがおかしい。ずれています。

注目したいのが、彼自身が東大卒と一言も口にしていないことでしょう。
言えば言ったで、面倒くさい、ジャッジされるということかもしれない。

それに、高学歴でもなく、女性であるなつを一切見下さずに、同じ目線で意見のやりとりをしていることも注目点ですね。

前作****は、学歴自慢をするゲスが山ほど出てきました。

「俺は帝大卒やぞ」

未成年に性的なアプローチをしていたことを問われた、ゲス宦官がそう言ったことは、忘れようにもできませんってば。

ナゼ、学問をするのか。
ここにも注目したい。

あの手のゲス宦官は、学歴で女を侍らせ、注目を浴びて、セレブ気分を味わいたいからそうなのでしょう。
学歴というバッジを手にしたらそれまでなので、進歩する世の中についていこうとはしません。

世の中が進歩しすぎたら、自分が古くなるかもしれません。
それを認めない、アップデートをしない学歴社会の膿になるのです。

しかし、坂場は違う。
彼にとって、生きることそのものが進歩であり、常に新しい何かを求め続ける、いわば開拓なのでしょう。

東洋動画の欠点だって、彼にとっては望むところかもしれない。
自由自在に変わる。作品ごとに作風が変わる。それも面白い! そう感じ取れるのかもしれない。

こう表現すると、坂場はいい奴だな〜って思えますよね?

しかし、それはどうでしょうか……。

黙れ小童ぁ!

『半分、青い。』の萩尾律に、こんな心無い意見もあったものです。

「佐藤健さんが演じているのにキモ〜〜〜い!」

ああいう性格の人間を理解しない――というか理解できないからこそ排除しようという、心の狭い意見ですね。

これをふまえて敢えて言いますが、坂場の性格はどうですか?

キモくないですか?

めんどくさくありませんか?

モヤモヤしませんか?

なつとのロマンス候補から滑り落ち、モヤモヤ発生源になった。
そういうキモさがあるんですよ!

それに、彼ならきっとこう言うはずです。

「もうこれ以上お前の思いつきに振り回されるのはごめんだ!」

※わけのわからんことをほざきおって!

まさに「黙れ小童」案件じゃないですか。

坂場のめんどくさいところ、まとめてみましょう。

【坂場アナリティクス】

 

◆人の気持ちに鈍感である

→だからこそ露木が「プライドの高い絵描き」キラーに任命。
プライドを踏んでも、平気以前に気づいてません。空気? 当然読みません!

 

◆理論武装をサラリと出す

→マコは自分の知識と技術が豊富だという、そんなアピールに余念がないように思えます。
一方で彼は息を吸うようにディズニー本を読んでいることを出して来ます。
やりにくいのです。予備動作なしで、いきなり必殺技を出すタイプです。

 

◆理論を常に仕入れ続ける

→人付き合いでランチよりも、昼休みでも読書に励む男……。

 

◆猫がネズミに食いつくように

→なつの理論に食らいつく様子は、猫がネズミで遊んでいるかのよう。
議論をしている自覚もなく、動くものにじゃれついているかのようです。
こういうタイプはやりにくいぞ!

 

◆結論を放り投げても平気だ

→ある意味一番悪質なところです。
リアリティ? アニメ特有? 全くわからん!
そこで放置しても、本人は納得しています。

 

◆ルールがないことこそがルールです

→マコや夕見子あたりもめんどくさくて、手強いものです。
ああいうタイプは狙って周囲を引っ掻き回しますが、坂場タイプは自然にそうしてしまいます。
それよりも面倒なのは「勝敗条件:未定」というところでししょう。
殴り倒してもう終わったな、と立ち去りかけた相手の背中に笑顔で食らいつくんです!

表裏比興で何が悪い

坂場を一言ずつ言うとこんな感じですかね。

・さまざまな意見を受け入れる

・分析する

・オリジナリティがある

・仕事に夢中になる

・正直で、空気を読んで弱点を放置するようなことはない

しかし、そばにこういう奴がいると、混乱することもあるんですよね。

今後、彼によってどんなことが起きうるか?
アナリティクス(分析)を踏まえて、予想を交えておきましょう。

【坂場予想】

 

◆「締め切り? その締め切りでないといけない理由を教えてくださらんか」

→上司、同僚、部下、まとめて全員こいつの締め切り無視に疲労困憊する。

 

◆「命令だろうと、納得できないなら従わんわい」

→頭ごなしに押さえつけても無駄無駄無駄ァ!

 

◆「すまぬ、今何と?」

→読書や作業をしているこいつに話しかけても、聞いちゃいねえ! 手のひらでぼけーっとクルミをカチカチしていても、遊んでいるわけじゃない。

 

◆「もう評定とな? 今起きたところだ」

→基本的なルールすら、破りおるわ! こいつが遅刻しても諦めよう。

 

◆「あやつめ、消えおった……」「なにぃ!」

→作業に夢中になったのか、突然消える。ひきこもる。捜索しなくちゃ!

 

◆「んっ? こんなこともわからんのか?」

→本人は空気を読めなさすぎて気づけないけれども、周囲の心を引っ掻き回している。しかも無自覚! さらりと傲慢。

 

◆「このぉぉぉ、表裏比興ぉぉぉぉおおお!」「知らんわ」

→考えれば考えるほど、最善の結果は変わるんじゃ。それを理解せん奴が、表裏比興と言いおるだけよ。狙ってそうしているのではないが、気がつけばそうなっておる。

室賀正武「あいつの存在そのものがムカつく」

徳川家康「あいつだけは許せない」

こうなりかねませんね。
まぁ、泰樹の前世・真田昌幸ですね。泰樹は加齢と人生経験でかなり丸くなっていますが、坂場はこれからです。

それでこそ開拓者なんじゃあぁぁああ!

なつよ、振り回されなさい。
東京で開拓精神を一番理解できるのは、彼ですよ。

そうそう、最後にこんなニュースでも。

◆なつぞら:第69回視聴率21.4%で好調続く まさかの「半分。青い。」にSNS沸く

なんだか『半分、青い。』のアンチが鬱陶しかったものですが、NHK東京はやっぱり踏まえているじゃないですか。

テーマにせよ、『半分、青い。』は少女漫画。
本作はアニメ。

サブカルチャー、オタクのものとして一段下に見られたものを、芸術として挑んでいるわけですよ。

もう二度とあんなものを見せるなと、吠えていた人はいたものですが。

NHK東京は意に介していないんですね。
素晴らしいなぁ!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

【参考】なつぞら公式HP

 

1 Comment

でんすけ

「何でもできるってことは、何もないのと同じだよ」

芸術家としての覚悟が出来ていた天陽くん。なつと一緒にファンタジアを観たあとのセリフでしたっけ? 天陽くんは既にこの時点で、いま東洋動画が抱えている問題点が見えていたのですね。さすが!

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