でも信作は面白行っちゃそうかもしれない。
ありそうでない、現実にいても朝ドラでは少数派かも。まぁ、やたらと男がオラつくドラマもあることですし。
照子は嘆きます。
「中学も終わりや。うち性格悪いけん友達できひんかったし、高校行ってもできひんわ。あんたいいひんと困るわ。あんたいいひん信楽は想像できひん!」
本音です。まだ友達おらんのか。
信作も何か考えてますね。
「大阪……行ったらあかん。信楽捨てるんけ? 大阪行ったらあかん! 許さへん、一生許さへんで!」
喜美子は頭を撫でつつ、照子に語りかけます。
「照子……そんなんやから友達てきへんのやで」
おう、いきなりそう来たか。ここで泣き出す照子。
「ハハハハッアッハッハ! さようなら〜照子〜」
「そんなん聞きたない!」
「元気でな〜。あんたのこと忘れへんで〜」
「言うな〜!」
照子をいなす喜美子は明るい。
表層的に見ると、喜美子は冷たく思えるかもしれない。ひどい子に見えるかもしれない。
そういうところが、本作のややこしさかもしれませんが。
喜美子のこと、しっかり見ていきたくなります。
タヌキに化かされんうちは信楽の子や
風呂を沸かしつつ、喜美子は語りかけます。
「なぁ、お父ちゃん、タヌキの道知ってる?」
喜美子は語り始めます。
信楽に来てすぐの時、ほんまもんのタヌキに会うた。よそもんはタヌキに化かされると信作に言われた。
こういうセリフのためにも、幼少期は大切なんですね。
「あれ以来おうてへん。ほんまのタヌキは現れへん。なんでかわかる? もうよそもんやないからな。うちはよそもんちゃう。うちは信楽の子や。うちは信楽の好きや。うちは……うち……大阪行きたない!」
喜美子はここで泣き、本音をさらけだすのです。
やっぱり別れは辛いんやで。
ジョーは風呂の中で考え込んでいます。
「ここにいたい、ずっと信楽にいたい! お父ちゃんとお母ちゃんとみんなと……」
そのころマツは、陽子からブラウスとスカートを受け取っています。
「みんなとここで暮らしたい!」
ジョーはそんな娘に、考えつつこう言うのでした。
「タヌキの道の先、ず〜っと行ったらな、左に折れてまたず〜っとず〜っと登っていくんや。行ったことあるか? 細い道行ったらな、急にパアッと開けるんや。そこから見える夕日が綺麗や。よう見とけ。大阪行ったらもう見られへんで」
ジョーなりに、信楽に残ることを許せるわけではない。
だからといって、頭ごなしにそう言うわけにはいかない。
信楽の景色を胸に刻み、残せ。
そう伝えるためか、その夕日について教えるのでした。
細い道の先にあるもの
印象的なBGMがかかる中、翌日、喜美子はタヌキの道を歩いてゆきます。
そこから見る夕日。信楽の夕日。
大阪では見られない夕日。
その光を浴びて、焼き物のかけらを拾い、喜美子はかざします。
ここで見つけた焼き物のかけらを、喜美子は旅のお供にしました――。
第二週、終わります。
この焼き物のかけらを荷物に入れて、喜美子は大阪で生きることになるのです。
照子と信作も気になる中、第三週へ。
どうやら、濃厚な大阪での日々になるようです。
細い道の先に広がる夕日とかけらを得て
朝ドラは、女性の夢を応援するとは言われてきました。
けれども、前述の通りほんまにそうなのか? という引っ掛かりはあった。
ここ数年は、本人の実力や努力だけではなく、実家が太い、そういうヒロインばかりのNHK大阪でした。
それと比較すると、喜美子は貧しくて、父の理解もない。
担任に頭の良さを見込まれ進学させたいのに、父と貧しさが阻んでしまう。
大銀行を日本で最初に作るとか。
皇室御用達服飾メーカーとか。
それよりはこじんまりとした道かもしれない。だからこそ、地味だの何をしたいのかわからんだの言われるかもしれない。
衣装からして地味っちゃそう。田舎の中学生ルックです。
そこまでかわいらしいわけでもない。朝ドラお約束の袴女学生からはほど遠い。
ドレス? 着れるわけないやろ。
でも、そこに意義がありませんか。
朝ドラヒロインは金持ちで、上流階級で、いつも華やか。そうじゃないと見たくない。
だとしたら問題だと思う。
視聴率が伸び悩んではいるけれども、上質なものづくりがそこにはあります。
今日のラストシーン、夕日を浴びる焼き物は絶品でした。
あの信楽の夕日を浴びた焼き物のかけらを、秘めて生きてゆく。
そんな喜美子を、来週も見守りたいと思います。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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