喜美子の記事が新聞に掲載されました。
「綺麗な写真や。狸が化けたんとちゃうか」
フカ先生もニッコリ。
社長室にはお花もお酒も届く。ホクホクや!
敏春の宣伝戦略成功です。
ジョー、帰宅、そして泥酔
そしてジョーは東京から戻ります。
北村一輝さんの汗を拭う仕草ひとつとっても、見ているだけで臭そうで絶品です。なんとも暑苦しい。
百合子がジッと見つめる中、日が高いうちから酒を飲むジョー。
直子のことは語らず、こう繰り返すのです。
「蒲田いうのはな……」
「蒲田がけったいでな!」
何を言うてんねん。周囲すら理解できない。
蒲田は人名ではなく、直子の寮がある地名でした。京浜工業地帯の寝床になっている住宅地かつ歓楽街ですね。
食卓には、奮発したメニューが並ぶのに、ジョーは酒瓶を抱いてゴロ寝してしまう。
そして寝言はこうだ。
「直子ぉ……」
全体的に見てマイナスだらけなのに、チラッと見せる娘への情愛でかろうじてプラスへ持っていく。
そんな本作はすごい。
八郎は怒っているのか?
翌日、約束通り八郎がやってきました。用件はあのシャツの修理です。
あのシャツひとつとっても、彼の性格が見えてきてはいます。
・喜美子どころか信作も気づくほど雑な縫い目
→他人からの目線に割と無頓着なのでしょう。
・不器用なのかな?
→陶芸はするけれども、どうにも不器用なようです。
・不器用なのに自分でやってみた
→誰かに頼まず、自力でなんとかしようとは思うようですが。
マイペースさが見えてきました。
不器用といえば、初登場でカチンコを落としていた『なつぞら』のイッキュウさんもそうですね。
その八郎は、喜美子の横で黙って座っているだけです。これが他の人、普通の人ならば、新聞記事の話くらい振ってもよさそうですが……彼は雑談ができないようです。
信作とも見つめ合いになってしまった。
あの時、喜美子と盛り上がれたのは陶芸の話題だったから。それ以外の雑談だと、天気の話すらできないのでしょう。それで信作もああなったのではないかなと。
「すいません、ありがとうございました」
縫い物が終わって渡すと、一応、お礼は言う八郎。
喜美子は、何で怒っているのか?と聞きます。前会うた時と感じが違うって。
八郎は怒っているつもりはないと返します。
もともとそういう感じなのか? もともとそういう感じならそういう感じでいきます――と喜美子がまとめようとすると……。
「そちらも前に会うた時と違います! マスコットガールやとは知りませんでした」
八郎がそう言い出すので、喜美子は動揺して椅子からガタッと立ち上がってしまう。
八郎は喋りだす。
いきなりガーッと喋りだす。
ホットケーキを食べとうて絵付け師になりはったんですか?
お名前も川原喜美子。カワちゃんかせいぜいキーちゃん。
ミッコーって何ですねん。
喜美子はあの新聞記事で怒っているのかと悟ります。
八郎は止まらない。
丸熊陶業いうたらミッコー? そうなのかと問い詰めてくるのです。
喜美子は否定します。
フカ先生だと。深野心仙先生だと。
八郎はそれを知っていた。
日本画で芸術賞も取った有名な方。それなのに、記事では一言も触れていなくて失礼やないですか。そう言い出すのです。
ミッコーやホットケーキの方が大事ですか?
そうまで言われ、喜美子は否定します。
そんなことあるわけない。
けれども、新聞を読むとそう思えてしまう。八郎はそう言う。
喜美子は辛くなってきた。
適当に書かれた。アッキーでもミッコーでもええ、適当に書かれただけ。
そして後悔の念を口にします。こんなに騒がれるし、怒る人は出てくるし。
八郎はこう説明します。
怒っているつもりはない。新聞記事を読んだら腹立った。
喜美子はそれが怒っていることちゃうかととらえる。
確かに、そうですわな。
八郎はここで頭を下げます。
「せっかく直してもろうたのに何やかんやいうてすみませんでした。ありがたく着させてもらいます。すみません、失礼します」
こうして出て行くのでした。
ミッコー時代の到来や
喜美子は社員食堂掲示板に貼ってある「本日のシンデレラ」記事を剥がそうとします。
適当なことが書いてあると言うわけですが、フカ先生は受け流します。
信楽初の女性絵付け師はほんまのこと。細いことは気にせず、堂々としてたらええ。
これが普通なんでしょうね。
この社員食堂の場面は、八郎と周囲の差異がわかるので重要です。
お花もお酒もジャンジャン届き、八重子は喜美子を褒める。緑のご近所でも大騒ぎだって。
そして入ってきた加山はこうだ。
ミッコー絵付け火鉢の注文殺到中!
お茶を事務所に持ってきてくれって。
注文も来客もバッチリ入っているようですね。
「時代は深野心仙からミッコーですわ!」
そう大はしゃぎです。
自分が、喜美子のデザインに塩対応したことは完全に忘れているかの様子。
新入り三人衆のうち、八郎以外は苦い顔をしています。
「本人の前で言わんでも……」
「悪気ないんやろ……」
八郎だけが、我関せずといったように食事を黙々と取っています。
これもイッキュウさんに似たような場面があった。
自分の父が考古学トークをなつにしているとき、全く聞かず、ひたすらすき焼きを食べていました。
彼らは興味のスイッチが入らないと、話も聞かないタイプ。
むしろ味わうことに集中しているのかもしれない。
これって奇妙ですよね。
どうして八郎は、ここで深野先生を侮る意見に怒られないのか?
彼なりの切り分けをしているのです。
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