スカーレット85話あらすじ感想(1/13)夫婦のズレは徐々に確実に大きくなり

銀座の個展をめざし、素晴らしい作品を作りたい――。

そう思いつつスランプを味わう川原八郎。
そんな彼と喜美子の「かわはら工房」に、松永三津が弟子入りを果たしました。

新しい風となることを期待される三津ですが、果たしてその風は望ましいものなのでしょうか。

百合子、はしゃぐ。八郎、しぼむ

喜美子が工房におにぎりを持ち込むと、三津を休ませてこれからは夫婦の世界と言うわけですが。

百合子が帰宅します。
酔っ払ってはしゃぎまくる百合子は、浮かれる理由を聞かれるとこうです。

「チミツ! チミツ!」

万歳までする妹に、喜美子はこうつぶやく。

「アホや」

ここで百合子が、八郎に向かって銀座の個展を激励すると、喜美子は苦い顔になっています。
そんな姉のことには構わず、酔っぱらった百合子は義兄を励まし続けるのでした。

泥酔百合子を引っ張って、寝かせに行く喜美子。
微笑ましいようで、危うさも感じます。こうして夫婦の時間が壊されたわけですから。

工房に残っていた三津は「喜美子が横にいるとしんどい」の話を持ち出そうとする。

嫌がる八郎ですが、三津は「ヒロシの野郎があっという間に花瓶やら壺やら作っていきがやる! つきあってるのがしんどくなった!」と自分の話を持ち出します。だからこうして旅をしていたのかもしれませんね。

しんどいという気持ちを払拭させるためには、萎んでしまった才能を開花させればいい。
そう言う三津に、八郎は戸惑います。

「しぼんでしまった才能て、人のこと……」

朝顔か、と苦い顔になる八郎。
三津は素晴らしい作品を作り、銀座の個展を成功させようと励ますのです。

八郎は、三津の考える素晴らしい作品は何かと問いかけます。三津は微笑み、売れる作品だと言い切ります。

彼女は佐賀にいた、前歯二本虫歯が印象的だったおじいさんの話を始めます。

歳は70くらい。名もなき陶芸家が小さな工房でぐい呑みを作っていた。
何十年も、陶芸家として似たようなぐい呑みを作っている。それも家族を養うため。

芸術を究めてもかっこいいけど、そのおじいさんもかっこいい!

「歯医者は行ったほうがええなぁ」

そうツッコミつつ、八郎は感銘を受けているようです。

三津が危ういということはわかる。三津は喜美子に似ているところもある。
気さくで斬新な発想がある。グイグイ迫ってくる。発想が豊か。

ただのゲスな「若い女ぁ〜!」というセクハラ欲求よりも、危険ではあります。

八郎はそういうゲスセクハラ野郎ではない。

彼女をそういう目で見るのであれば、それはもうただの「既婚者のよろめき」どころではなくなりかねないのです。

喜美子、大量生産で稼ぐで宣言

一方で喜美子は「チミツチミツ」とはしゃいで回る百合子を寝かせます。

百合子は、橘さんに「サニー」と会ったってよ。
どうやら喜美子に頼みたいことがあるようです。浮かれてはしゃぐ妹を寝かせてから、喜美子は思い出します。

コーヒーカップ80個の橘さんや!

喜美子は思いだし、百合子を起こし、用件を聞き出そうとしています。

後片付けを済ませた三津は、仕事を終えて工房を後にします。
その一方で、八郎は過去の作品を見ているのでした。

喜美子は工房に戻り、そんな八郎を目にします。

またいろいろ考えようと思っている、そんな八郎の様子に気が気でない喜美子。そんな喜美子は、橘ひろ恵の話を持ち出します。

あの橘がまた話を持ってきた。
何をどれだけという注文なのかはわからない。連絡してみようと思う。

そう告げてから、宣言します。

「うちは稼ぐよ。また大量注文の生産受けて働く」

ここ三年、川原家始まって以来の豊かな暮らしになった。
幼い頃から金のことをずっと算段してきた。今は毎日夜食に真っ白いご飯のおむすび。こんな贅沢なことはない。そう喜美子は語ります。

そんなん当たり前やと苦笑する八郎に、喜美子はこう言い切ります。

「ごはん食べられるのは、当たり前のことやない!」

喜美子はきついだのなんだの、叩き投稿とそれをまとめたニュースもあるようですが。
これだけ配偶者に丁寧な態度を取るヒロイン、よいと思いますけれども。

喜美子はそう感謝しつつ、今まで十分楽させてもらったと言います。
だからこそ、そろそろ休んで欲しいと。

「陶芸家の神様もきっとそうせえ言ってくれる。銀座の個展はやらんでええ、やめよ。何か言うて」

喜美子が百合子の激励に、苦い顔をしていた理由もわかります。
芸術家として苦しむ八郎を思っての言葉です。

「……喜美子は優しいな。ありがとう」

八郎はそう返すのです。

夫婦でまたも【ズレ】が出てくる。

個展そのものをやらなくていいと語る喜美子。かつての喜美子のように、インスピレーションを与えつつ励ます三津。

その二択が八郎にあることに、喜美子は気づいていないのです。

八郎は大黒柱であり、父でもある

百合子の隣にある布団に三津が入ります。
と、百合子は起きていて、近いうちにここを出ていくことになるとニヤニヤ。

この部屋ミッちゃん一人で使ってもええ。
驚く三津に、百合子はこう言います。

「結婚すんねん。まだ内緒やで。うちからはよう言わん、恥ずかしい」

「お相手は?」

そう三津に聞かれて、百合子はどう返すのでしょうか。

武志はぐっすりと寝ています。その枕元で、八郎は息子からの手紙を読むのです。

そこには、お父ちゃんの本当の気持ちを知りたいとありました。

1 武志にテレビを買ってあげたい。

2 武志にテレビを買ってあげたい。

3 武志にテレビを買ってあげたいなあ。

ぎんざのこてんがんばりー。

その手紙を見てから、八郎は笑うのです。

喜美子は工房にあるノートを見て電気を消すのでした。

喜美子が悪いのか? この世界が悪いのか?

年末から不穏だった川原夫妻。
モデルが離婚しているとはいえ、近年の朝ドラならば夫婦不和をごまかすのはお約束ではあります。

『あさが来た』のモデル夫妻は、妻が出産を愛人に任せていた。
明治のリアルです。

一昨年、昨年のNHK大阪夫妻は、それこそいろいろあった。
一昨年は夫の女遊びに妻が疲れ切っていた。

昨年に至っては、夫が重婚しており、法的には婚姻関係は成立していない。夫婦仲も、経年と共に割り切っていた。
ですから、ドロドロ離婚させなくてもよいわけではある。

ましてや八郎は人気キャラです。
三津を演じる黒島結菜さんだって大変だ。

それでも挑むのでしょう。

とはいえ、三津は喜美子にとってはありがたい存在ではあります。これでもう喜美子バッシングも終息することでしょう。
そもそも、喜美子の生意気さに対する投稿とは、どの程度かつ重複していないのか、考えたいところではありますが。

喜美子は人物像として、ブレていない。
幼い頃から金の算段ばかりしてきた。稼ぐ気持ちも変わらない。かつてはご近所の洗濯を請け負い、今度は大量生産再開を言い出すのですから。

責任感重大で、誠実なのです。

どうして喜美子が叩かれたのか?
彼女本人ではなく、周囲の状況変化のせいではないか?

そんなことを月曜日から考えています。

朝ドラって世間の反応と言いますか、偏見を見いだせる場所だと痛感します。

夫の方が人格破綻しているカップルだってあったというのに。
そこで夫婦がすれ違うと、叩かれる、あるいはそういう意見を拡大したニュースは、妻叩きばかり。同じことの繰り返しよ。

こうなってくると、ドラマの考察や鑑賞というよりも、反射だと思えてくる。

SNS投稿は、鑑賞しながら注意力が落ちた状態でポチポチするから、書き込む方も、読む方も、拡散する方も、考えず反射重視になっている。

「萌え」

「号泣」

「沼」

「キュン死」

そういう楽しみ方を否定はしないけれども、その沼の深さは思っているよりも深くはないかもしれない。
次に萌える沼キャラがいたら、ザバッとあがって、バズるネタを探せばよいものですし。

キュン死の場合、死んだと言いつつ何度でも蘇りますからね。
昔はプロレスラーの流血を見てほんまに亡くなるご老人がいて、社会問題になったもんですが。それとは違うのよ。

嫌な言い方で申し訳ありません。
ただ、そこばっかりたどっていると見えなくなるものもあるでしょう。

考察よりも、ふわっとした共感をまとめる方が楽だし、バズる。
それがいつまで続くのか、考えていきたいところではある。

SNS投稿をまとめたネットニュースは、筆者の都合のよい反射だけを拾えばよいもの。
考えが深まるどころか、浅瀬を動き回るだけのようなものになりかねるわけです。

かつては、ドラママニア、ドラマウォッチャー、オタクは考察や深掘りが好きとされたものですが、今はそうでもない。
SNS時代は深海ダイビングではなく浅瀬プールウォーキングになりつつある。

そこを、書き手も読み手も気づけるかどうか。

何かに不安を抱えている。自信がない。自分の見解が正しいかわからない。
そうなると、大きなものに頼りたくなる。
寄らば大樹の陰だと思うのです。

ハッシュタグまで作って、ずーっと投稿して、それを見ていると、ホッとするのでしょう。
ネットニュースまとめ記事って、そういう心理にフィットしますよね。

けど、それでえんやろか?
そこから抜け出す勇気も、2020年代は大事になると思うのです。

壊して進め――そう語りかける喜美子は、八郎だけではなくあなたに対してそう言っているのかもしれません。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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