スカーレット120話あらすじ感想(2/22)武志にも熱うなる瞬間が

なんもないねん!

そう言いつつ、抱き合ったあと八郎を思う顔になってしまう喜美子。

両親がいる工房に、武志が様子を見に来ます。

壊して進む

両親の話を立ち聞きする武志。八郎は新人賞作品を壊そうと思っていたと告白します。

前に進むんは壊しながら行くいうこと――。

そんな喜美子の言葉を思い出し、何回も壊そうと思ったのだと。喜美子に陶芸を休んでいるのか、やりたい気持ちはあるのかと問われると、陶芸を始めたころの感じになれへんかな、と思うてると答える。

それはどんな感じか。と問われて、さらに続けます。

ドキドキしてた。土触ったり、形作ったり。陶芸に関するあの感じ。

「恋やな。もっかい好きになりたい。純粋にな」

「ほな壊したらええやん。壊して前に進みぃ。ほんでうちともな、新しい関係築こうや」

八郎に喜美子はこう返します。八郎はそう言われ、あの赤い皿を抱えて外へ向かおうとするのです。

そこには武志がおりました。

「ごめん聞いてた。それお父ちゃんの大事な皿。ええの? 割ってええの?」

「壊して前に進む。聞いてたやろ」

武志はそう言われると、赤い皿を手にするのです。

「ほな、ちょ、貸して」

えっ! まっまっ、そう止めることもできないまま、ガシャンと工房の外の地面に叩きつけられ、割れるのでした。

あまりのことに呆然とする面々。

「いや……」

そこへ鼻歌を口ずさみながら、おもしろ叔父さん信作がやって来ます。

「えっ……よ、呼んだよな? 呼ばれたよな?」

「えっ、うん」

ここで八郎は、武志がケガせんかったかと気遣うあたりが優しい。

武志はむしろ謝ります。

「割るつもりやなかったんやけど、ごめん」

割るにせよかっこよくシューと投げてと言い、野球やないんやからと突っ込まれようとしていた。

そもそも武志が割ってどうすんねん。そう突っ込まれる。そう、そして、手ェ滑ってしもて……。

私は、ジョーのために作ったあの皿が割れるんじゃないかと、ちょっと嫌な予感はしていたのですけれども。割れるのはこちらでしたか。

この皿って、喜美子への愛を象徴するようなものでもあったとは思うのです。

若い真っ赤な情熱ではなく、これから、もっと穏やかな色に向かうということではありかもしれません。

女は強くなければならないから

穴窯の前に座り、八郎はカケラをもっと細かく、金槌で割っています。

「ハチ、それ、新人賞取った時のやつやろ、そやんな? 懐かしいな。焼き上がった時、見せにきてくれたもんな。貸して。俺にも供養させてくれ」

そう言い、信作はぞんざいにぶっ叩く。信作よ……八郎の喜美子への愛の象徴を、ぞんざいにぶっ叩く。こいつはそういう奴ですよ。

「もうちょっとやさしく!」

そう言われているのに、これやぞ。

「アリだ、へへへ……」

無駄に童心にかえっとる。

信作には信作のペースがある。それについていける人は少ないのです。職場で「変で気持ち悪い上司」扱いされていても、そこは仕方ない。

けれども、鋭いところはある。

「さっき、喜美子、ハチさんて呼んでたな。久々に聞いたで」

八郎は、喜美子に普通にしようと言われたと告白します。普通がようわからんけど、意識せん感じやな。意識せん思うても思うこと自体、しない。普通にする。それでハチさん。新しい関係、築こう言われた。

信作は感心しています。

「女やなぁ、女はそういうことケロっと言いだす。男はよう言わん。女は強い」

信作はしみじみとそう言います。

これも結構面白い。本物の女性というか【男性の考える理想の女性(+それに適応したと女性の認識)】って、めっちゃベタベタしているじゃないですか。演歌の女と言いますか。

ともかく粘りつく。男がいないと生きていけない、もらい感情する。目の端でいつも追いかけてて、それが誇りで自慢で覚悟なのぉ〜! ん? なんか演歌ちゃうような。

それ、めっちゃ重たいし、むしろなんかうっすら気持ち悪くないですか。

そう突っ込みたかったわけですけれども、喜美子は別もんだとキッパリ言い切られたようではある。

その喜美子が、二人の感傷をぶっ壊すように、声を張り上げます。

「何やってんの、いつまでやってんねん! カレー食べへんの!」

「食べます」

「……食べます」

しおらしく立ち上がる、男二人なのでした。

こういう【女は強い】秘密は何かと言いますと、大久保がきっちり言い切った気がします。

家の中の仕事をすること。喜美子は感傷的になるどころではない。カレーを作らなあかん。強くならんと、生きていけん。

このあたり、モヤモヤしていた人はおると思う。

男性アスリートは、愛妻ナントカ食べて験担ぎして、活躍するとかなんとか言われる。内助の功や。

一方で女性アスリートな。結婚すると家事育児して、競技会に出かける前にタッパーウェアにおかず詰めて。

ほんで笑顔で、

「夫の理解があって、競技できてます」

みたいなこと言わされてるわけですよ。

なんやこれは!
こんなん女性の方が強いに決まっとるやろ!

NHK内部にもそういうモヤモヤ感はあるらしく、『伝説のお母さん』あたりにぶつけてますよね。RPGでネタっぽくしているのは、正面切って殴りに行くと通らないと察知した、そんな策士がいるからとみた。

NHK内部にも、滅茶苦茶怒っている人、いるんやないですか?

『なつぞら』でも怒りを感じましたが、本作はもっと巧みにジワジワ攻めてくる感があってすごい……。

熱うなる瞬間を待つ

カレーを食べながら、武志は釉薬の化学反応について熱く語り出します。

無限にある。どの材料をどう組み合わせるかによって、変わってくる。ありとあらゆる色が生まれる。釉薬は穴窯とはちょっと違う!

そう語り出します。

釉薬は化学という学問の積み重ねがある。どう反応するか、ある程度コントロールができる。

穴窯は、木材に何が含まれているか。灰がどう飛ぶのか。予測がつかない要素が多い。

八郎は釉薬。喜美子は穴窯。

個性がはっきりと別れていて、それに対して喜美子は何も言いません。おいしそうにカレーを食べている横顔が映ります。ほんまにこの無言の演技まで素晴らしい。本作はおいしそう、かつ綺麗に食事を味わいます。

計算した通りにできるとたまらん。計算通りにいかんことも大きい。それはそれで楽しい! そう八郎と語りあう武志は楽しそうなのです。

「どんな色出したい?」

「俺にしか出せん色!」

問いかけられ、武志は答えます。けれども彼は知っているはずではあるのです。父の時代とはもう違う。出せない色はどんどん減っていることに。

これやいうものは未発見だ。そう喜美子と八郎は察知する。

ジョージ富士川のいう【熱うなる瞬間】はまだ迎えていないとわかるのです。

「熱うなる瞬間……お母ちゃんにとっては、それが穴窯やった。出会えるとええな。楽しみやな」

そう言いつつ、喜美子はこう来る。

「うちも負けてられへんな。よしパリ行くか」

またけったいなこと言い出して。駅前のブティックすら行かないのに。そう突っ込まれる喜美子。住田も「ちゃんとしたらお綺麗」と言っておりましたし、見た目には構わないのでしょう。
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