でも、確信しました。
やっぱり林遣都さんは、もう滋賀の宝こと石田三成役確定やな。この困惑笑顔ぶりを、忍城攻めでも発揮していただきたい。
※こういう石田三成もええけど、攻めきれなくて困惑顔をする三成も見たい!!
「石田三成役なんて、誰が演じても同じイケメンでしょ?」
そんなことを言う。
小憎らしい視聴者を驚かせる。
そういう三成像になると思うんですよ!!
※やっぱり三成!
浅く、深く渦巻く疑念
そのころ、アカンほうの妹・直子は信楽に到着済みでした。エエ方の妹・百合子のあれやこれやを粉砕する、そういう流れです。
横にいるのは鮫島。
「ほんまにやるで」
「ああ」
鮫島の帽子を取って、お腹に入れております。ん? ここでの会話がおかしい。
「何ヶ月か言うた?」
「言うてない」
「五ヶ月くらいにしとく?」
「あー、せやったら、もうちょっと何か詰めなあかんな」
な、なんなの、こいつら?
カスの気配がする……。
その頃、川原家では。
八時すぎたら寝るようにと、八郎は武志に念押ししています。
そうそう、当時は大河ドラマの始まる前に子どもは寝ろ。そういうご家庭も多かったはず。
だからこそ、鋸引きや釜茹でも、描けたところはあるかもしれない。2017年でもヒロインが家臣を槍で刺殺できますから、そこは考えないといけませんが。
今年はどうなるのかな?
まあ、大河はさておき、ここは朝ドラ。
でも本作は、朝ドラでも心理的には大河並にキツイとは思うんだな。
※閲覧注意
どこがつらいかって。この先のセリフがね。
武志が沢村膝蹴りを真似していると、乱暴だと八郎は止める。でも、三津は得意だし、野球にも詳しいのです。
運動全般が得意だと語る三津。
うらやましいとボソリと言う八郎。
苦手なのかと突っ込まれて、得意だとあわてて言い返すわけです。嘘だとバレていますが。
『なつぞら』のイッキュウさんと八郎は、実は近いところがあるとは指摘したい。
二人とも運動が苦手で不器用です。イケメンであこがれ王子様系にしたいのであれば、むしろ得意にしてもよいところ。二作連続でそうだと言うことは、考えたいところです。
そのあと武志が三津の胸にホクロが二個あると言うわけです。
「お父さんそんなのも知らんの!」
「知っとるわけないやろ」
笑いながらそうやりとりしますが、このホクロの知識を、八郎が喜美子に語ったら爆発しかねないことですよね。
銀座下見という伏線が既にあるわけでして……。
喜美子と八郎、その器の差
はい、直子来襲……もとい帰省が迫る。
八郎は準備をするマツを気遣います。
「お義母さん、座っててください」
昨年の放送事故にはなかった、義母への敬意が素敵。八郎は善良ではあるのです。
喜美子は苦々しげに「お茶菓子なんか出さんでええ」と言い切ります。八郎が頭ごなしに叱っても仕方ないといなしても、喜美子は頑固です。
ジョーなら、ちゃぶ台ひっくり返す!
それどころか門前払い!
ジョーの暴虐が懐かしまれる、この風潮はなんなのか。
昭和の親父ファンタジーを感じるところ。こういう感情があるから、なんとなく美化される。そういう生々しさを感じます。
確かにジョーには、決断力や責任感はありました。
八郎はそうじゃない。
おめでとう言うたろな。大阪から身重で来る、事情はあった。そう言うのです。しかし、喜美子は頑ななのです。
事情あろうが、厳しく迎える。めでたいけれど、責任が伴う。その前にほんまかうそか確認する――。
なんやこの戦国武将感!
いや、ジョーの役目を引き継いでますね。
八郎はわからないのです。嘘の訳がない。妹なのになんで信じないのか?
うーん、八郎が優しいようで、もやもやする。視聴者として、直子の問題のある行動を散々見てきた訳ですから。
この場面は、意図的にジェンダーを逆にしているようにも思える。八郎のセリフを妻、喜美子のセリフを夫が口にしていたら、昭和のあるあるにストンとはまると思えるのです。
これって、夫妻像として重要でもある。
八郎は婿入りを果たす夫でした。喜美子は性格的に「男前」で、ジョーに似ているところもある。そういう普通とは違う、典型とは違う像としてスタートを切ったはず。
それが、おかしくなっている。
八郎の名声があがればあがるほど、世間は家長であり、先生であり、男の偉い人として扱う。喜美子はその奥で微笑む、よい奥様像を求める。
八郎にとって、男としての陶芸家先生像は、背伸びしないといけないもの。
喜美子にとって、妻としての女性像は、破壊して突き進みたくなるほど器の小さいもの。
世間の常識や要請にフィットしているようで、二人とも【ズレ】の存在に気付いてしまって、苦しみが出てきた。
その【ズレ】は何か?
二人だけのせいでもない。ましてや三津でもない。
世間から外れてしまうこと。その世間を構成するのは誰でしょう?
私でもあり、あなたでもある。
『半分、青い。』の鈴愛が、周囲の助けを借りて育児することを、母親失格だと罵倒していた方。
『なつぞら』のなつのことを、周囲の理解と助力があるから「苦労知らずのバカ女」と罵倒した方。なつは戦災孤児で苦労は身にしみております。
そんななつの夫であるイッキュウさんを、家事育児をするありえない存在でご都合主義だと言い切った方。
そういう声と偏見、足を引っ張る姿勢そのものが、人間の心をどれだけ傷つけ苦しめるか。
考えてみるところではありませんか。
直子よ、鮫島よ……カスを受け継ぐなっ!
「来たでぇ。あがるでぇ」
はい、直子来たでぇ。
鮫島は横に座り、おずおずと語り出します。
えーっと、(妊娠は)五ヶ月でして。
産まれんのはまだ先やけど、先ですけど。
もちろん入籍はする。
御報告が遅くなったこと申し訳ない。お正月に顔出した時はみじんも考えてない。
販売の仕事も上向き。
子どものために、将来のためにアレしておきたい。
アパート手狭やし、引越ししたい。
結論:子どものために少し用立てていただけないでしょうか。お願いします!
マツ、呆然。百合子も困惑。こんなんただの金の無心やん。
ジョーがほんまに恋しい!
あのカスを懐かしみたくなる、そんな本作はすばらしい。
うーん、でもこれはあれやな。待っとったで!
鮫島はカス。鮫カスでええやろ、こんなん。鮫カスと呼べる日を期待しとった。
喜美子はここで、笑顔になります。
「その前に、おめでとう。直子のこと、よろしくお願いします。直子もな、子どもを持って家庭を持ったら、好き好き言うてるだけやあかん。鮫島さんのこと、もっと大事にせなあかん。赤ちゃんどっちやろな、楽しみやな」
うーん、喜美子よ。これは八郎にはできない。
八郎は、散々甘いことを言っておりましたが、ここでは黙って横に座っているだけ。むしろ喜美子が機転と風格を見せつけております。
百合子もお祝いをする。そうなりますが、マツがおかしいのです。
何かを拾い、見つけます。
こういうところが丁寧な作りなんだなぁ。
マツが喉を痛め、声が出なくてイラ立っていると喜美子が笑いながら語る。この前もネズミ相手に大変だった。
と、ここで、マツがホウキで武装して鮫島を襲撃したぁ!
どうした何があった?
止めた直子にもビンタや、平手打ち!
「お母ちゃん……」
全員唖然。
何があったかわからぬまま、マツは奥へと向かいます。
ここで直子は、ふてぶてしい顔をして、腹から詰め物を出すのでした。
なんやこのカス……。
敢えて波乱を巻き起こす覚悟
先週の時点で、三津はアンチが多くなると書いてきましたが、ここまで来ると、もう公式発表されています。
◆「スカーレット」黒島結菜“嫌われ役”も覚悟 喜美子&八郎に“波乱”「三津が自分の気持ちを優先し…」
「三津という役は人によって凄く好かれるか、凄く嫌われちゃうか、分かれるんじゃないかと思います」と“嫌われ役”も覚悟している様子。
アンチというか、ネット投稿は、ともかく嫌われ者は出すなという方向へ向かいがち。
このキャラ、作品、女優、脚本家。これを叩いていい。むしろ叩くことで盛り上がる。
その逆も然り。そうなると、攻撃的になって迷走し、何をしているのかわからなくなる。いわば【エコーチェンバー】が、ネット時代の宿命になりつつある。
でも、このコメントでもわかりますよね。
作り手は覚悟して、敢えて感情を揺さぶりかねないキャラクターや設定を投げ込んでくる。
その結果、どんな投稿がなされるか?
その反響による社会実験をしていると思えるようになりました。
アンチ投稿は負の感情をかきたてるものですが、その分析やどういう背景なのか、じっくりと考えるとおもしろいものも見えてきます。
インターネットには功罪があります。
けれども、群衆心理や反応の収集という一点には、紛れもなく利点がある。ハガキを使わずに、データ解析するのであれば便利なのです。
NHKは意識して、その流れを使い始めた。
起点は2010年代半ばあたりで、その成果が実ってきたと思えるのです。
この発見により、朝ドラの枠ごと底上げがなされたと思えますので、本作だけでなくますますよいものができる2020年代になりそうだと、私は期待しております。
もうひとつ!
たかがネット投稿、されどネット投稿。
あなたの声も、私のレビューも、社会実験のサンプルのひとつだと意識すべきではないでしょうか。
そうすれば、もっとおもしろくなることもあることでしょう。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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