苦渋の思いで我が子・隼也を勘当してから早4年。
舞台は昭和14年(1939年)となりました。
日本と中国の戦争が本格化する最中、北村笑店も慰問隊を出すように依頼が来ますが……。
もくじ
キースが東京から戻ってきた
アサリは、てんに慰問隊に行きたいと直訴します。万丈目も乗り気です。
てんは困り顔。
風太は乗り気だけど、うちとしては違うと言いますが……。
おてんちゃん、シッカリしてください!
いくら専務が乗り気でも、ここは社長として
「うちが首を縦に振らん限り、勝手な真似は許しまへんで!」
くらいの釘を刺せば良いじゃないですか。
二人はいつまでも、藤岡屋のお嬢様と弟分じゃないのです。
ただ、そうすると判断はすべておてんちゃんの責任になるのですが……まぁ、それが女社長であり女興行師の一つの宿命ではありますわなぁ。
そこへ風太が、キースを連れて戻って来ます。
「よー、エブリバデー」(※この敵性語は今後大丈夫?)
風太は慰問隊のためにキースを連れてきました。
ま、まさかだけど、キースとアサリの再結成すら寝耳に水とか言わな……って、おてんちゃん、ポカーン地蔵顔。
やっぱり知らんかったんかーい><;
社長のおてんちゃん、何も知らんのか~い
さすがに風太、やりすぎとちゃいます?
東京の看板芸人を勝手に呼びつける。
そしてそれを社長は知らない。
ホウレンソウ(報告・連絡・相談)をまるっと吹き飛ばすとかそういうレベルじゃなく、高度な経営判断を求められる場で社長の意見まったく無視というのは、さすがにマズイと思うのです。
一流の芸人ということで舞台にあがるのが、キースとアサリ、万丈目夫妻の再結成ですか……。
とても大手企業とは思えないスケールなんすけど、これは予算の問題もあってしゃあないかー。
にしても、です。
会社都合で解散と再結成を繰り返されるキースとアサリも気の毒ですね。
それとも特別に一時的なもの?
ただし、万丈目は、夫婦漫才のことを口にすると、途端に顔を曇らせました。
なんでも歌子を戦場へ連れて行くのはイヤだそうで。
風太は俺が団長として責任を持つ!と大見得を切るのでした。
反戦をカジュアルに扱いすぎでは?
楓は北村笑店のエントランス付近で、客を見ては満足そうな顔をしています。
こうしていると自分が正しいのだと思えるのだとか。
そして慰問隊の派遣は反対だ、と言い出します。
おてんちゃんはじめ、本作の女性たちは「戦争に関わりたくない」という思想を当たり前のように口を出しますね。
しかし、本当に当時、その場にいて、そういう発言を平気で出来たという確信があるのかなぁ、と疑問です。
うっかり口にしようものなら、
「あんたアカ(共産主義者)なんちゃう?」
と言われかねない時代です。
なんだか反戦をカジュアルに表現しすぎな気がしてなりません。
もしも取り扱うなら相当ナーバスな描写となりますのに、なんというか、軽いんですよね。
ここで、出征直前と思われる若者が「落語の聞き納め」にやって来ます。
目当ての落語家は、団吾ではありません。
モデルの2代目桂春団治は、昭和9年(1934年)に亡くなっていますので、劇中でもそうなのかもしれません。
だとしたらあまりに寂しいですね。
北村草創期を支えたスターだったというのに、葬式の話もないのかぁ。
あとでしれっと名前だけでも出すかもしれませんが。
もちろん団真さんも全くスルーで、北村有起哉さんは大河ドラマ『西郷どん』でも大山格之助という大事な役どころで出てますが、そっちもあまり目だってないんですよね。
主人公の近くにいても、ただそこにいるだけで、どういう人間なのかキャラがわかりにくいという状態。
ドラマ不毛な春ですなぁ……。
『愛の偶然』を眺める栞様……ってなんじゃこりゃ?
寄席にやってきた若者を見た後、てんは栞に電話をします。
国のため、北村のためなら、慰問隊を送りたくないけど、ああいうお笑いファンのためならありだと述べるおてんちゃん。
要するに、それが本作の落としどころなのでしょう。
「人を笑わせたい」
それならあり。本作のテーマでもある行動論理ですよね。
栞は、国や軍に近づきすぎてはいけないと言います。
自分たちはあくまで大衆を向いてやれ、と。
そんな栞が手にしている脚本は『愛の偶然』というタイトルです。
なんじゃこりゃ?
次の作品?
それとも軍部から命令されて作ろうとしている作品ですかね。
安定の万丈目夫妻に救われる
マンマンでは、万丈目夫妻が慰問隊の話をしています。
この場面はよかったと思います。
やっぱり演じる人が達者ですから、夫婦の掛け合いも楽しいのです。
会話の中身はまずまずでも、演技で面白さを足しています。
てんは、トキの助けまで借りて、おしめを縫っています。
おそらくや隼也とつばき夫妻に送るのでしょう。
やっぱり、勘当ではなく遠くに住む息子夫婦やん(´・ω・`)
振り返ってみれば、おてんちゃんも勘当された実家に金を無心に行きましたもんね。
なんか安いんだよなぁ~。
そこへ飛鳥を連れて風太がやって来ます。
ここでてんは、慰問隊の話を切りだします。
お笑いファンのことを考えたらOKということ。トキもしぶしぶ、承知しました。
「わろてんか隊」、いざ出発!!
今日のマトメ「アリバイは不要です」
今日は、一日15分かけて、おてんちゃんのアリバイ作り的な内容でしたね。
「おてんちゃんは優しいから戦争反対だよ。でもお笑いファンのためのことを考える優しさもあるから、仕方なく慰問隊を送り出したよ」
って感じで、なんだかなぁ(´・ω・`)
贊成にしろ、反対にしろ、なぜ自分の言葉、自分の意見で物事を決めないのでしょう?
彼女に意思はないのですか?
本作の登場人物って、とにかく「悩んでいない」んだと思います。
こっちよりマシ、とか、こういう言い訳ができる――そんな選択肢を機械的に選んでいる感がどうにもならない。
オマエはどういう人間なんだ!
一体、どう悩んでいるんだ!
さらけ出してくれ!
キャラの本当の心情を知って、ドラマにのめり込みたいのに、彼らは何も言わない(というか、考えてない?)。
あぁ、悩んでいるんだなあ、と伝わってくるのは脚本家さんの悩みぐらいです。
その悩みとは、
『史実ではこの人はこうしているけど、そのままやったら視聴者に嫌われちゃうし、何よりかわいらしくないよね』
ってなもんで。
明治・大正・昭和を生き抜いた女の一代記ならば、平成の感覚からすれば嫌な価値観ベースの行動もあります。
綺麗事ばかりではあありません。
それでいいじゃないですか。そういうものでしょうに。
ところが本作は、平成高校生のラブコメ感覚に落とし込むため、薄っぺらい綺麗事に流してゆくんですね。
今日の決断だって、北村てんという女性が悩んで決めたというより、安っぽい落としどころに妥協させたように思えるのです。
この時代の人ならば「お国のため、兵隊さんのため」に何かしたとしてもおかしくありません。
実業家ならば「事業を大きくするため」何かしてもおかしくありません。
それすらやらないから、どうしようもなく薄っぺらくなる。
ちなみに史実の慰問隊は「わらわし隊」という洒落をかけた名前になっています。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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