問題児をやさしく見守る風吹さん
五代との出会いを経て、あさは婚家の加野屋白岡家を目指します。
のれんをくぐって泉ピン子さんが出てきたらどうしようかと思いましたが、出てきたのはおっとりとした風吹ジュンさん。
問題児をやさしく見守ることに定評のある女優さんですよね。
歩いてくる姉妹を見てどちらが嫁かを品定め。
最初にしずしずと歩くはつを見て、中番頭の亀助と共に「このお嬢さんなら安心」と笑顔になります。
次に、どすどすと歩くあさを見て眉をしかめます。
店に入り、いよいよ白岡家とご対面です。
正吉が紹介するのは、きまじめそうな長男・正太郎、まだ幼いながらもしっかりした口をきく三男・榮三郎。番頭の二人もちらちらと様子をうかがいます。
あさが嫁いでくると知り、よのも番頭も困惑を隠せません。
はつに助けてもらいながらなんとか挨拶をしようとするあさですが、たちまちボロが出ます。
露骨にげんなりするよのの横で、あさを知る正吉は挨拶を止めてその場を誤魔化そうとします。
ここで、あさの許嫁・新次郎は分家とする予定と説明が入ります。そして、さりげなく忠興と正吉が、自分たちの若い頃とは勝手が違うと世間の変化を語る。忠興と正吉の性格の差が出ますね。
昨日、忠興は「こんな時代、そう長うは続かへんちゃうやろか……」
と暗い顔でつぶやきました。
一方正吉は
「なんかこう、新しい波が来ているようで」
と言うのです。
近づく新時代到来をピンチととらえるか、チャンスととらえるか。
目線の違いがあらわれています。
「ほな。わてこれで」
ところで、肝心の新次郎がこの場にいません。
と思ったら、遅れてやってきて腕には猫。
そして、【店の裏で猫が鳴いていたからと抱っこして連れてきたけど、世話は番頭まかせで情が移るから鰹節はやるな】と指示を与える、ダメ小学生みたいな行動を取ります。
新次郎は遅れた言い訳を父・正吉にする途中で、あさの存在に気づきます。
「あさちゃん!」と笑顔で呼びかける表情は、おそらく猫を店の裏で見かけた時と大差がないのでは?
仏頂面であさの身体検査をしていた五代とはこれまた違い、笑顔であさの手を取り自分の手に重ねる新次郎。
ロリコンとかそういうことではなく、本当に猫を可愛がるような印象です。
番頭が猫の面倒を見ることに困惑し、よのが露骨に困った顔をしているのは、今後、対象と関わる自分を想像しているからでしょう。
ところが新次郎はそこまで考えない。
目の前に可愛いものがあったら愛でるわけです。ったく、この無責任男め~!
「ほな。わてこれで」
新次郎はあさの顔を見つめそう言うと、そのままさっさと場をあとにして三味線のお師匠さんの元へと行ってしまいます。
これには流石のあさも呆然としてしまうのでした。
「つっころばし」ぶりがよい!
ドラマのキャスティングをもう一度味わいたいと思います。
見事な「つっころばし」ぶりが深みを与える
「つっころばし」というのは肩を押せば転んでしまうほど頼りない男という意味。
関西の歌舞伎など伝統芸能に見られる、甲斐性も根性もなく、のほほんとして頼りないけど、どこかユーモラス。浮気やひどいことをしても「かんにんな〜」と謝られると思わず許したくなってしまう。そんな役所です。
このタイプの演技はなかなか難しいのですが、玉木さんはちゃんとこなして役者としての幅を広げています。
できなかった反面教師は?
というと、大河のレビューで思わずキツいことを書いてしまった東出昌大さんです。
『ごちそうさん』では関西弁と台詞を覚えるまでで手一杯で、柔らかみのある関西男の駄目さ、ユーモラスな味わいまで出すことはできませんでした。
キャリアを考えたら無理もないかもしれませんが、つっころばしの妙味を引き出せる役者さんであれば、西門悠太郎の浮気や態度の悪さもあそこまで不快ではなかったのではないかと思います。
同じことが『花燃ゆ』の久坂玄瑞でも言えます。
知能派で、京都では芸妓にもてたほど洒脱であった久坂は、剛より柔のキャラクター。
『ごちそうさん』を受けての大河起用はわかりますが、もっと他の剛の個性を持つ役を用意すべきでした。
それどころか史実の久坂を役者に近づけようとした結果、創作の間に変なギャップができてしまったのです。
東出さんは今後の伸びしろも課題も多い役者さんだとは思いますが、次のチャンスでは彼に合う剛直で、できれば関東以北出身者の役を用意して欲しいです。
もう一人の反面教師は?
2018年11月現在、放送中の『まんぷく』から長谷川博己さん。
これは彼のせいではなく、脚本と演出がまったくこのあたりを理解していないか、省いたか。
電気を盗んで逆ギレをかますのは、なんかちゃうで!
※モデルとなった広岡浅子と五代友厚の史実をご覧になりたい方は以下の記事をご参照ください。
お二人とも、ドラマに負けず劣らずの波乱万丈な人生です!
また、各話におけるレビューも記事末に追記して参りますのでよろしければ併せてお楽しみください。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]
ありがとうございます。
やっぱり、武者さんの楽しそうなレビューを読みたいです。
あさがきた放送時にはまだこのサイトを知りませんでした。
改めて再放送を見ようと思います。