姉のため大坂行きを止めねば
初めて姉の涙を見たあさ。
「大坂に嫁ぎたくない」という決意をさらに固めます。
自分のためではなく、大好きな姉のためならばなんとかしなければ――幼いなりに考えるのです。
翌朝、寝坊したあさは、はつが先に起き、泣いていたことなど忘れていつも通りに振る舞う、姉の姿を見ます。
自分の気持ちを言い出せない姉。
彼女に代わり、なんとかして嫁入りを阻止しようとあさは母に掛け合います。
学問をし、自分の生きる道は自分で選びたいと主張しますが、この時代、それはあまりに非常識な願いでした。
母はそんなことを父に聞かれないように!と、あさに釘を刺します。母は娘が自分の言葉に納得していないと気づいていました。
幸せになる方法を模索してるからこそ
しばらくするとあさは仮病を使い、姿を消して寺子屋に潜り込んで勉強していました。
しかし案の定、連れ戻され、父に「アホ!」とこっぴどく叱られます。
男がする学問を女がして、なにゆえ恥になるのかと詰め寄ます。
そんな中、許嫁・新次郎があさの顔を見に来ます。
京都と大阪――近いようで特に当時は結構な距離です。幼い許嫁の顔を見るためにそんなにちょくちょく来るものでしょうか。それとも何かのついででしょうか。
あさは父に反抗し、押し入れに籠城中です。
はつの差し入れするおにぎりをガツガツとほおばり、粘っております。
押し入れに籠もる妹に、はつは自分の気持ちを気遣っての反抗と気づいて「おおきに」と声を掛けます。そして父も娘のことをちゃんと気遣っているのだと説明します。
ここで悩める父・忠興の回想が入ります。はつとあさの許嫁を慎重に観察し、心配して仕事のことより嫁入りのことばかり話していたそうです。
いやあ、いいですねえ。
当時の規範に従って幼い娘の許嫁を決める父親だって、娘が憎くてそうしているわけではありません。
当時のやり方で娘にとって最も幸せな道を模索しているわけです。
現代の価値観で過去の行為をおかしいと判断し、無理矢理に恋愛結婚に押し込むとか、理解ある親にしようとするあまり放任しているように見せるとか、そういうありがちな鼻につく描き方をしていないところに、本作の誠意を感じます。
はつは父の優しさを語りあさをうまく誘導し、立てこもった妹の手をとり外に出します。
新次郎の紳士っぷりよ
そこに座るのは、居住まいを正しぴしっと正座をした新次郎。
たとえ子ども相手でも、襟を正し背筋を伸ばす、この新次郎の紳士ぶりをご覧ください。
はつはここで去り、あさは押し入れの会話を聞かれた気まずさに、また中に戻ってしまいます。
新次郎は襖の外から
「やめたかったら嫁入りなんてやめたらよろしい。自分の道を歩んだらええ」
と語りかけます。
『北風と太陽』と言いましょうか。
頭ごなしに嫁に行けと言われたら反発するあさも、これには戸惑うばかりです。
さらに襖の隙間から、あさに似合うサイズの小さなそろばんを差し入れる新次郎。
このそろばんがまたかいわらしい赤い色で、金襴の綺麗な袋に入っています。
カスタムメイドです。
やはり新次郎はあさのためにわざわざ来訪していたのです!
すっかりあさも喜んで襖を開け、喜びながらそろばんを振ります。ええ音がすると喜んでいると、新次郎にあさちゃんもええ顔やと褒められ、あさは慌てて襖をピシャリ。
しかし先ほどのばつの悪さからとは違い、紛れもない照れが顔に浮かんでいます。
どこか大人びて、何かに目覚めたような
「……考えて考えて、わてのお嫁さんに来てくれることになったら、その時は、仲良うしような」
子ども相手だろうが全力でトークをする男、新次郎。
子どもが好きそうなものと人形や飴玉を選ばない新次郎。
女だからと装身具を選ばない新次郎。
相手があさちゃんだから、あさちゃんが好きなものがええと気遣い、カスタマイズそろばんを贈る男、新次郎。
短時間であさが一番好きな物を見抜く新次郎。
そのあまりに高いスキルに全国の視聴者騒然です。
あさはじっと新次郎の言葉を聞き、やがてたまらなくなって押し入れから飛び出して来ます。
贈られたそろばんを見つめるあさ。
押し入れに入る前と、出てきたあとのあさはどこか違います。
どこか大人びて、何かに目覚めたような、そんな表情をしています。
ナレーションで説明されるまでもなく、恋心がぽっと目覚めてと、全身で演じる鈴木梨央さんのみずみずしさが見事です。
小細工ナシの直球勝負
5話は少女漫画直球王道でした。
壁ドンとかそういう小細工に頼らず、脚本と演技と演出と、直球勝負でときめきを表現しました。
そういえば本作の許嫁描写を見て、児童ポルノだとかなんとか騒ぐ人もいたようですが、そういう歴史的経緯をちゃんと説明したことを無視してネタにしているわけですか。
もうやめにしましょう。
そういうことをネタにするから上野樹里(6)だの井上真央(9)だのなんて事態が起こるわけですよ……。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]
※モデルとなった広岡浅子と五代友厚の史実をご覧になりたい方は以下の記事をご参照ください。
お二人とも、ドラマに負けず劣らずの波乱万丈な人生です!
また、各話におけるレビューも記事末に追記して参りますのでよろしければ併せてお楽しみください。
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