紀尾井坂の変――つまり大久保暗殺の衝撃からのスタート。
そのはずが、三味線の弦を切ってしまった新次郎から始まります。この切れた弦が波乱を意味しているようでもあります。
新次郎の元へよのがやって来て、隠れることなく三味線を弾いてもよいと言います。
生前あれほど新次郎の三味線を嫌っていた正吉が、実は新次郎の三味線を聞きたがっていたとよのが語ります。
父に聞かせるため、三味線を弾き始める新次郎。
その音色と、大久保の死に衝撃を受けるあさ、そして五代の姿が映されます。
一皮剥けば暗い部分が顔を出す
今週は心躍る、文明開化の花開く東京を描いて来ました。
そこに突如、投げ込まれる暗殺という黒い一撃。
これぞ明治だな、という感じです。
近代日本へ向けてひた走る、坂の上の雲を目指す時代であった明治ですが、過去を振り向けば幕末の遺恨だらけです。
一方で未来を見れば、太平洋戦争へ通じます。
相次ぐ不平士族の反乱、自由民権運動とその弾圧、暗殺事件と、一皮剥けば暗い部分が顔を出すのです。
それを朝ドラでよくやりました。
流石に脳漿まで出た暗殺場面そのものはやらないにしても十分でしょう。
朝からヘビーですし、それを補って余りある五代の愁嘆ぶりでした。
今週もまた、名場面を投入してきましたよ!
髪を乱しウイスキーをあおり、悲嘆にくれていた
この五代の絶望の演技を見て、ディーンさんはやはり海外でキャリアを積んできた方なのだなと思いました。
金城武さんあたりもそうなのですが、やはりどこか演技が日本の俳優さんと違うんですね。
そこが海外経験が長く、感情表現がどこか周囲と違う五代の役柄とマッチしていて、本当にこの配役は巧みです。
あさは五代を心配し、うめを先に帰らせて五代の元へと向かいます。
すぐに五代の元へ向かうシーンではなく、悲壮感あふれるBGMを重ねて、三味線を真剣に弾く新次郎が映り続けます。
これが何か独特の緊迫感を生み出しています。
あさが駆けつけると、五代は髪を乱しウイスキーをあおり、悲嘆にくれていました。
髪が乱れ、声がかすれた様子がセクシーとSNSでも話題に。
空っぽのウイスキーボトルが哀しい。
友と飲む酒と先日五代は言っていたわけで、その友が亡き今となっては虚しいわけです。
脇役の恋愛面白いドラマは傑作の法則
そのころ加野屋ではふゆに縁談が持ち上がっております。
相手は洋傘屋を営む、なかなか羽振りのいい男で、ふゆのこともすっかり気に入っているとのこと。
店の周りをうろついていた男の正体とは、ふゆを気にしていた縁談の相手なのでした。
ここで気になるのが亀助ですよ。
亀助……十分にアプローチする時間はあったのに何をしていたのか!
新次郎が亀助に「思いを伝えたら」と提案すると、「自分は兄のようなものだからそれでいい」と本心から外れたことを言います。
あかんべえ人形にあわせて舌を出し入れする亀助の仕草が面白いです。
脇役の恋愛模様が面白いドラマは傑作の法則。やっぱり本作、面白いですよ。
伊藤博文に匹敵する人材になったのではないか
一方あさは、大久保の死に苦しむ五代に付き添っていました。
何故こんなことにと悔やむ五代。
せめて政府に入って側に居れば、と自分を責めます。
ちなみに五代は、政府に止まれば伊藤博文に匹敵する人材になったのではないかと評価されるガチの逸材です。
大河で持ち上げられている誰かさんとは実力面でも差があります……にしても五代は悪くない、悪いのは川路利良だ!
ちょっと脱線しますと、川路というのは初代大警視(現在の警視総監)で、日本における警察の生みの親とも言える薩摩出身の人物です。
非情に有能な人物ではあるのですが、大久保暗殺に関しては、暗殺計画を耳にしていたにも関わらずスルーしたという大失態。
実はこの川路を正吉役の近藤正臣さんが『山田風太郎からくり事件帖』というドラマで演じていたりします。
さらにこの頃の警視庁といえば、あの藤田五郎=斎藤一が勤務しているわけで……うーん、やはり、以前も言ったことをもう一度繰り返したい。
「明治がつまらないなんて誰が言った!」
面白いんですよ、明治時代。
【関連記事】斎藤一
あさは五代のせいではない、五代が大久保にとってどれだけよい友であったかと語ります。
あさの言葉に感極まったのか、がばっと抱きつく五代。
「許してください、このときだけは……今だけは、このまま!」
とか言っていますが!
これ、大河の萩の乱をダシに近づく某不倫カップルを思い出すのですが、何故これを許せるのかと自問自答してしまいます。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
※あさが来たモデルの広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます
【参考】
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