「雪月」それぞれの成長
捜索隊となつは、「雪月」でアイスクリームを味わっています。
「うまい!」
「そーかい」
ここでも「そーかい」なんだよなぁ。
謙遜もない、そんなことは当然。そういう自信が気持ちがよいほどです。
そして剛男は、戦争が終わった、平和を実感したと語るのです。
戦争体験者あるあるかもしれません。
水木しげるが、一人で甘いものを味わって幸せを噛み締めていたとか。
山田風太郎が「英霊は靖国にいない。デパート地下食品売り場にいる」としみじみと語ったとか。
そういう戦中経験者の、食への執着心は生涯抜けなかったものです。私の家系にも、家族に隠れて甘いものを味わう癖の持ち主がおりました。
相変わらずとよは、容赦がありません。
剛男とジジイと気が合わないはずだわさーって、おい。泰樹には、そういう詩的な感受性がないということでしょう。
「はよ食え」
そう返す泰樹。
富士子は、甘いものを食べることと甘いことをするときは隠そうとすると父親のクセを指摘します。
とよは、わかってくれる娘がいていいねえ、と一撃。
北海道女のパワーで両側から撃たれまくるジジイ、うひょ~!
「あんたが一番うるさい」
そう返すしかない、ジジイでした。
今朝もとよババアが強すぎる!
【剛男は アイスクリームで平和を実感した!】
さて、次のレベルアップは誰でしょうか。
牛乳を食べてる!
笑顔でアイスを食べるなつは、牛乳嫌いな夕見子が「牛乳を食べている」とはしゃぎます。
アイスクリームは違うと抗弁する夕見子。
雪之助は、そんなヤリトリから、これからは牛乳の菓子の時代だとヒントを得ます。
【夕見子は 乳製品嫌いを克服した!(?)】
【雪之助は 今後の菓子作りのヒントを得た!】
そしてここで、夕見子のめんこさ(可愛らしさ)に感動していた雪次郎が、こう言い出すのです。
「夕見子ちゃんのためにお菓子作る!」
【雪次郎は 牛乳原料菓子作りを誓った!】
これはもう露骨に初恋だわさ。えらいぞ! 好きな相手に、パクリ缶詰無料アプローチしていた、そんな駄作とは違います。
そうなるわけですが……。
「そんなのいらないわよ、別に」
夕見子の一撃が強すぎる!
ここで普通は照れたり「やだぁ❤︎」と頰を赤らめたりしてもよさそうなもの。ラブコメの基本です。
しかし、一撃粉砕!!
しかも特に後に引っ張らないのがいいです。
「俺にも搾乳を教えてください!」
そう照男が言い出して「いいだろう」と泰樹が受け入れますからね。
【照男は 搾乳を習うことにした!】
雪次郎がいいところをアピールするため、夕見子に菓子作り宣言をしたこと。
照男にも、本人も無自覚のうちに恋心が芽生えたのかもしれません。
しかもここでも、搾乳を誘われた夕見子が強い。
「絶対にやだ。巻き込んだら家出するから」
「なんてことゆーのー!」
さすがに母親からたしなめられますが、夕見子がいちいち強い!
パワー重視の女性陣の中、知将っぷりが光るのが雪次郎の妻・妙子です。
「これからは乳製品でお菓子を作るんだー!!」
と気炎を揚げる柴田家に「それはうちの仕事です」と釘を刺しています。
あくまで牛乳だけを提供しろってことですね。
妙子も知略が高いな、強いなぁ!
「雪月」は、ものすごく重要な場面でした。
週の真ん中に、今後の伏線をみっちりと詰め込んできています。
カフェや飲食店を溜まり場にすることは、朝ドラの定番と言えば定番です。
しかし、ここに来るまできっちりと組み立ててあるから、その流れが気持ちが良いほどです。
・なつが受け入れられた
・そのことを起点にして、捜索隊や「雪月」の人もレベルアップできている
・子供も、大人も、性別を問わず一歩踏み出している
理由と過程を踏まえ、段階をもってレベルアップしている。
セーブポイント前で鳥の鈴を振るとか。
ラーメン店にたまればいいとか。
そういうタップすればクリアする連打ゲームとは、難易度が違うのだよ、難易度が!
こりゃ攻略サイトを見なくちゃね!!
ここにいてもいいよね
牧場に戻ったなつは、戸村悠吉から
「搾乳の時間に泰樹がいないことがどれだけのことか?」
と尋ねられます。
これも上手な描き方ですね。
・どうして、いなくなってはいけなかったのか?
・泰樹がどれほど心配していたのか
この二点を踏まえています。
いきなり怒鳴り散らしても、それはよい叱り方とは言えません。
「ごめんなさい」
「なんもだ」
「俺たちは仲間だ」
※編集注:「なんも」=「No problem」で、北海道人はめちゃめちゃ使います(口癖と言えるかも)
戸村父子は、なつの謝罪を受け入れました。
なつが素直に謝るのも、それがあってこそ。
素直な謝罪を子供や目下の者に期待するのであれば、謝る側ではなく、自分の叱り方から振り返りましょう。
ここで泰樹が、彼らにこう言います。
「なんもないけど、メシでも食ってってくれ」
これも北海道ぽいなぁ〜。
柴田家の食卓がみっちみちであることは、証明済みではないですか。
北海道を訪れて、
「なんもないんだわ」
そう言うから『軽い食べ物しかないのかな?』と思って歓迎を受けたら、とてもじゃないけど食い切れねえ!
北海道あるあるです。
おもてなしとかいちいち敢えて言わないんだわ。
※編集注:そして手土産をやたらと持たせようとするのも特徴です
ここでなつは、牛にも挨拶をします。
「ただいま、ごめんなさい」
そしてこう思うのです。
私が大丈夫ならば、きっと兄や千遥も大丈夫なのだ。と、そう信じるのです。
なつは成長しました。
受け入れられて、そうなったのです。
だから大丈夫。私はここにいる。いてもいいよね。
受け入れることこそ、成長を促すのです。
この泰樹には 夢があるッ!
人の成長を見届ける。
あるいは自分も媒介してそこに触れる。そんなとき、実は自身も成長していることがあります。
泰樹がまさにそうで、彼もまたなつと共にレベルアップしていたとわかります。
なつをそっと呼び出し「わしの夢」を見せるのです。
バターチャーン!
しかも、昭和20年代当時のものです。
「日本一、いや世界一のバターを作る!」
そんな夢があったとは……。
しかし、これも理にかなっているんですよね。
・製菓業「雪月」と被る乳製品をつくってはいけないと妙子が発言
→つまり、アイスクリーム等はダメ
・むしろ「雪月」とWIN-WINとなる乳製品は?
→バターだ!
この夢を叶えることで「雪月」も商売繁盛!
全員ニコニコ、笑顔になれます。
自分たちだけの利益を考えていてはダメ。
協力しあってこその北海道。そしてこれからの世の中だべさ!
自分だけが目立てばいいでしょ――そんな世界観を本作はきっちりと否定するのです。
助け合うことこそ!
それが大事なのです。
協力しないとこうなるぞ!
◆あなたは内向的?外向的? 実際は、思っているより複雑なようです|ライフハッカー[日本版]
◆あなたは外交的 or 内向的?保育園・幼稚園で「無理なくママ友を作る方法」 (2019年3月23日) – エキサイトニュース
コメント欄でもご指摘がありましたが、実は昨日【外向】と【内向】の話をしたとき、肝心なことを敢えて抜かしておりました。
こういうものばかり見ていると、なんかカッコいいって思うじゃないですか。
そこを持ち上げて、今朝は落とします。
覚悟はよろしいでしょうか。
【内向】だけで進むと悲惨です。
以下、一例。
※オラオラオラオラ!
大敗北するんだよ、ジョジョォーッ!
DIO様は、計略もあるッ!
スタンド使いとしても最強ッ!
もはや負けないとエジプトで引きこもって命令を下し、ろくにパーティを結成しませんでした。
結果、【外向】のジョセフやポルナレフがいる主人公パーティに敗北しているのです。
彼が引きこもっていたのは、吸血鬼ということもあるのでしょうが、性格もあったのでしょう……。
気がつけばラスボスになっていた挙句、主人公一団に乗り込まれてオラオラされる。
【内向】の陥りかねない運命とはッ!
そういうことです。
一方、そんな父と同傾向を持つジョルノ・ジョバーナは、【外向】のミスタやナランチャとパーティを組み、黄金の夢を目指して突き進みます。
※それでこそッ! ギアッチョも倒せたのですッ!
どちらが欠けてもダメなのだ
車の両輪のようなもので、どちらが欠けてもダメなのです。
魔術師だけ、戦士だけで作ったパーティは弱い。
そう言うことです……。
「ふははははーッ、バカと組むなぞ無駄無駄無駄ァーッ!」
と思い始めたら、破滅まっしぐらだからね!
【内向かつ軍師系】かつ時代もの、バトルもので定番ですが、彼らはバッドエンドと相性が良いものです。
昨日あげた人物にせよ、
・高野山送り(真田昌幸)
・息子の代で家ごと滅亡(武田信玄)
・主家大減封(直江兼続)
・処刑(小野政次、石田三成)
といった、錚々たるバッドエンドが揃っているのでした。
かといって【外向】だけですと、****教団なのでチートを使わないと勝てません。
じゃあどうするのがいいのか?
混成パーティでいきましょうよ!
『半分、青い。』や『おんな城主 直虎』、『真田丸』が好例かもしれません。
『半分、青い。』
◆ふくろう会
【内向】鈴愛、律
【外向】ナオ、ブッチャー
◆スパロウリズム
【内向】デザイン、インスピレーションの鈴愛
【内向】発明、技術の律
【外向】営業、交渉の津曲
『おんな城主 直虎』
◆井伊家の復活
【外向】井伊直親と直虎を継いだ直政
【内向】小野政次を継いだ朝之(万福)
『真田丸』
◆真田家の存亡
【外向】真田信之
【内向】真田昌幸、幸村(ついでに言うと、きりは【外向】)
それぞれが。
違いを認めて。
受け入れてこそ。
成功なり勝利がある!
そのことが大切でしょう!!
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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そうなんですよね(万感込めて)ジョセフです。彼は主人公のなかでも異色で…(中略)、しかし彼の最大の強みは波紋でもスタンドでもなく…(中略)。誰もが内なる世界を持っていて、同じ人間でも周囲との関係性によって引き出し方、引き出され方は変わるのかもしれません。そう考えると…(中略)…その視点で物語を見ても楽しく、キリなく話せそうでした。ありがとうございます。
それにしても、語りを明かすタイミングと方法が、とてもさりげないのに、もの凄く秀逸だと思いました。なつがようやく父は自分のなかに生き続けているのかもしれないと気づき、そしてなつの周囲の人もそれぞれ気づきを得たタイミングで、視聴者も疑似体験のように、気づきを得る仕掛けだったんですね。
数日前のコメント欄で、なつに対し何もしてやれない語りを物悲しいと書きました。また、私にとってなつは家族を失った子どもでした。それが、違うんだ、と感じた本日でした。
お父さんは、自分たちの子どもの力を信じ、手紙がその力になると信じていたんだと思いました。お父さんの思いは、手紙が届くことで、自分は子どもたちの側にずっとあると誓った、力強い思いでした。なつは、物語冒頭から父の手紙と一緒にありました。なつは、失った子どもではなかった、ずっと一人ではなかったんだと気づきました。
もちろん、語りはお父さんだったんだという気づきも含めて。
これまではプロローグだったんですね。今回、誰もが、視聴者までもが「なつぞら」という物語のスタート地点に立てたのだと思います。物語の未来を希望とともに見はるかす、まさに朝ドラらしい回でした。
「父親=内村さん」のネタバレは結構早い段階で来ましたが、これは脚本家が「ここで明かすことが効果的」と思ったからなのでしょうね。
その流れで言えば、こういう場面では実写の回想が入って、内村さんが顔出しをするところですが、それをやらなかったということは、後でここぞというところのためにとっておいたのでしょうか。
なつの家出に誰も気づかなかったという失態のフォロー(再発防止策)を大人たちがちゃんとやっていた(それが放送された)のも、良かったです。
素敵でした!なつが心を開くまで、
皆が受け入れるまで、
手紙が読まれた時。お父さんでしたね!
お兄ちゃんは、お守りになつに父親の手紙を持たせたんだ。精一杯の愛情を感じます。僕には歌と踊りがある、絵が好きななつにあげようってことかな。
外向と内向の話、興味深く読みました。
友人が思わぬ方向へ自分をひっぱることがあります、これか、と思いました。身近な人間関係の違う見方ができて楽しい、うん、協力してこそ。
毎日ドラマがとても素敵で、だから武者さんのレビューを読むのも毎日楽しくて気持ちがいいです。
本来レビューってこれだったんですよね?今日のドラマを一緒に振り返って共感して、鋭い考察に唸らされてさらに深くドラマを愛する繰り返し。
私も前作のことはもう思い出したくないんですが、あれは途中で見るのを止めて武者さんのレビューを読んでいただけなのに苦しくて仕方がなかった。
だから前作はもう捨て去りたい一方で、今週の月曜日の武者さんのレビュー2ページめを読んで、私突然号泣してしまったんです。咲太郎君の決意と前作の発明家の動かなさの対比、前作の作り手の靴磨きは小遣い稼ぎ認識という指摘に、これまで私の中にたまっていた前作に対するモヤモヤ、怒り、悔しさ、苛立ちがあふれ出た感じです。比べたくはなかったんですけど、なつぞらを見ながら前作の能天気さがちらついて、腹が立って悔しくて仕方なかったんです。ただ泣いて少し吹っ切れたようなところもあって、駄作の場合はこう、という冷静な分析は訳もわからず(言語化されず)不愉快に感じていたところが整理されて、結果心が癒されるんじゃないかとふと思いました。
今日の『私の青空』はしみた。実写で内村さんが登場するのではなく、お父さんが遺した絵が動き出すのがよかった。と書きながらまた涙が滲んでしまう。
ウッチャンは、『半分、青い。』のパロディーをやっていましたし、今回のナレーション起用は、余程この作品を評価しているのかな。ちなみにあの作品については、言及がありませんでした。
今朝は、おしんが川の冷たい水でおぼこのオシメを洗うシーンから、なつの川辺の絵に繋がりました。幼い子の健気な姿には弱いです。今日の泰樹との抱擁シーンでは皆さんも涙したのではないでしょうか。剛男の帰還時には描かなかった抱擁は、此処で効いてきます。感動の安売りはしないのです。一つ一つのセリフが計算されつくしており、無駄がありません。実に巧みですね。 今日も秀逸な考察をありがとうございます。ひとつひとつ頷きながら読んでます。ナレーター父説は大当たりでした。予測が当たって詰まらないとは思いませんので、これからも存分にどうぞ。 編集者さま、レス有難うございます。「半分、青い。」のイラストは故意にタッチを変えているのですね。今回のイラストは伝わってくるものがあり、とても好きです。