この役目を比嘉愛未さんという朝ドラ主演経験者というのもいいんですよね。
あぁ、あの人がここまで育ったのか……そういう時の流れと成長を感じます。
このあと、雪次郎となつは杉本平助職流(料理長)に紹介されます。
ここもうまくて、北海道の頃と比べて皆テンションが低いんですよね。
落ち着いているってことなんでしょうけれども。
杉本は、
「ここは軍隊じゃないから硬くならずに」
と雪次郎に話しかけます。そこで安心すると、雪之助がすかさず気を抜くなかれ、とたしなめるのです。
そうそう……軍隊経験の有無が関係しているんですよね。
十勝のバターを川村屋のカリーに
なつは、真っ赤な缶に入れたバターをお土産として差し出しました。
クンクンクン……と、悪くなってはいないようです。
「これをうちのカレーに?」
「カリーに是非!」
カレーではなくカリーと言い直し、なつは目をキラキラさせて来ます。
そんなわけで、十勝バターのカリーという、間違いなく絶品のカリーが出てきます。
今日は特別であると野上が前置きします。
客には出せないから、賄いというわけです。
「野上さんも食べてくださいな!」
そう勧められても、
「川村屋の味ではないので」
とそっけない。
しかもこう付け加えます。
「落書きが芸術にならないように、はははははは!」
さすがのなつも、この一言にはむっとしていますね。
ところが、事務所で食べていたマダムはこれを褒めるのでして。
「まぁ、おいしい!」
杉本も、いいバターだと褒めています。
このカレーは、川村屋のモデルである中村屋がラースから伝えられたものと説明されます。
命がけで守ったマダムのカリーなのです。名物となるのには、覚悟があったのだと。
そうして引き継いでいるからこそ、マダムはあんなに強くて優しいのかとなつも感心するのでした。
イギリス経由の海軍カレーとは違うんですね。
前作****では「アメリカのカレーに勝利した!」というアホの極みのようなセリフがありました。
あれはあの作品の考証がいかにお粗末であったかという証拠でしょう。
一方、細かな歴史をうまく取り入れる本作。
モデルとなったお店にも足を運びたくなりますね。
さて、マダムは素晴らしいとはいえ……。
「そんなマダムに兄は借金……」と凹んでしまうなつ。
「カリーでなくて借りを作ったんだな」
寒いダジャレを言い、雪次郎から「それは言わなくてもいい」と突っ込まれる雪之助。
なんなんだよ!
一息つくと、なつは、歌を聞きに行こうと誘いをかけるのでした。
貧しい靴磨きの歌
煙カスミの歌う店に出向いた3人。
戸田恵子さんの歌声をじっくり聞けるなんて、いいですねぇ〜。
ステージ上で演奏されたのは、貧しい靴磨きの歌でした。
途中、靴磨きに扮した少年も舞台にあがります。
こういう芸能も大事だと思うんですよね。
かつてはなつのように、こうだったなぁと懐かしみながら見ている人がいたのです。
時代考証が緩くなる。そういうことが平気。
前作****レベルまで来ると、そういう歴史はどうでもいいし、先人の話なんて聞いていなし、踏みつけにしてもどうでもいいのでしょう。
本作も、すべて考証が正しいか、と問われたら完璧ではありません。
ただ、露骨にその年代の人をバカにするようなことはない。
ここでの広瀬すずさんの表情もお見事です。
歌にうっとりとしている顔と、懐かしんでいる表情が入り混じっている。
ナレーションの父が、靴磨きをしていた頃とは違うと語りかけます。
でもなつ、東京は街も人もすっかり変わったぞ。
なつよ、気をつけろ――。
十勝編から新宿編へ
はい、月曜のワンクッションを置いていよいよ新宿へ。
ちょっと時代考証が緩いとか、構成がイマイチとか、そういうツッコミがあった新宿編。
どうでしょうか?
あれはまだ準備不十分だったのかな?
カリーの秘話なんか出てきて、なかなか凝っているように思えます。
今日、秀逸であったのが、野上ですね。
苦労人。背伸びしている。漫画映画には理解がない。
この年代ならば仕方のないことです。ちょっと嫌味に思えますが、それも苦労ゆえでしょう。
マダムも、咲太郎の何かを応援したかったんでしょうね。
それゆえに間違ってしまい、屈辱的なのでしょう。
そういう人物の描き方が出てきました。
今朝はクレジットから草刈正雄さんが消えていて、ショックを受けたものですが……十勝編まではよかったな〜とならないように、祈りたいと思います!
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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川村屋にカレーを伝えたのは「日本に逃れたインドの革命家」というので、てっきり、スバス・チャンドラ・ボースのことなのかと思ったら、
モデルはラース・ビハーリー・ボースという人だったのですね。
しかも当時も、同じインドの革命家ということで紛らわしく、「中村屋のボース」と呼ばれていたとも。
そして二人とも、インド国民軍の設立・拡充に関わり、1945年に命を落としているとも。
この番組をきっかけに、意外なことを知る機会となりました。
軍隊経験。例えば、
新兵が、隊長の将校から「安心していいぞ」「固くならなくていい」等と声をかけられ、それで気を抜きすぎると、すかさず古兵や下士官が活を入れ…
というようなやりとり。軍隊経験者の方の書かれた戦記などにはしばしばあります。
杉本と、雪之助・雪次郎のやりとりは、それを思わせるものが。
****での、「こいつらが軍隊経験者? へー(冷笑)」というレベルの描写とは、比べるのも失礼。
新宿を「開拓者の町」と表現した光子の言葉。
言い得て妙です。
現在までの新宿の形成史については、『ブラタモリ』で紹介されたことがあったと思います。江戸の西郊で、元は山野や耕作地も広がっていた地。明治以降に形成されていった都会。
それに、冒頭ナレーションのとおり、戦災を受けたあと復興し、再び立ち上がった歴史をも背負っているでしょうし。
そこに集まってくる人々。
正に都市としての「開拓者の町」と評するにふさわしいと思います。
野上の味のある人物描写は、確かに今後の展開が楽しみではありますし。
それなのに
考証の不徹底ぶりが、こういうせっかくの良いところを大きく減殺してしまっているのは否めません。
ちなみに、
同じ今日の『やすらぎの刻~道』第32話では、本編『やすらぎの刻』側で、主人公・菊村栄が、脚本制作にあたって登場人物の来歴・背景、作中世界を正確・詳細に作り込むことの意義を語っていました。
****はもとより、本作の欠点に対しても痛烈な批判とも受け取られる結果となりました。
雪之助を先頭に、新宿にやって来た一行。
その前に現れたのは、
またしても、昭和30年代の都電では決してあり得ない「明治の幽霊電車」!!!
時代錯誤の塊!!!
「出すなよ! 出すなよ! 絶対出すなよ!」
と言ってるのに、思いっきり出す!
ダチョウ倶楽部のコントかよ!!
わかってますよ。
「新宿の街角のシーンは、まとめて撮影済み」だと言うんでしょ。
そういう事情があるとしても、
出演者に逮捕などの不祥事が起きでもしたら、躍起に・必死になって、画面から消し、キャストを入れ替えてまで撮り直しに奔走するのに、
「この考証はとんでもない間違いですよ。あり得ないものになってますよ」との指摘は完全無視!
というのは、非常に気分が悪いです。
時代考証をその程度にしか位置づけてない、という結果に、なってしまっています。
何のための「NHKお問い合わせメール」なんだか。
この考証の問題は、とうとう『あさイチ』の朝ドラ受けで、博多華丸さんが言及するにまで至ってしまいました。
せっかくアニメーション制作者を主人公とする作品を作るのだから、新宿の街角もアニメーションでリアルに描いても良かっただろうに。
第1話の東京大空襲のシーンのように。
嫌なことはとりあえずここまで。
良いところについては、気分を改めて、別途投稿します。