ときは昭和22年(1947年)――。
喜美子の通う新しい小学校には、心浮き立つ時間がありました。
給食です。
まだ週二回、補助食扱いで主食は持参。
それでもきみちゃんにはうれしい時間です。
「鬼畜米英!」
と、叫んでいた戦時中の日本。敗戦によって、生活は好転しました。しかも、鬼畜と呼んだアメリカの力も大きいのです。
昭和21年(1946年)からの「ララ物資」(※アメリカを中心とした日本人救済事業)等の援助活動により、日本の子供にも食べ物が届き始めます。
GHQの政策により、小麦粉によるパンや脱脂粉乳が給食に登場するのはこの後。
そういう戦後食糧史をプロットにからめれば面白くなるもので、ここ数年は疎かでした。しかし、NHk大阪にそういう資料ストックや知識がないわけがない。
今年はキッチリ対応してきたようです。
給食、それは美味しい時間
曲げわっぱやアルミのお弁当箱から食べる級友たち。
セリフも役名もないような子役たちが、当時の子供のような雰囲気を出していて見応えがあります。
もくもくと、結構ガサツに食べる。
頬も日焼けしているし、顔も不敵で、役作りを感じます。
照子ちゃんなんか、セリフもなくて画面の隅っこに写っているだけの場面でも、他の子よりずっと気取った食べ方をしている。
しかもパン。もくもくとお嬢様らしく食べています。
他の女の子はおかっぱ頭。リボンに長髪というだけで、教室内のお姫様状態です。
それに対して、主食もない喜美子は野生児そのもの。
あっという間に食べ終わってしまう。照子に目線でその主食くれアピールをするものの、通じません。
喜美子の隣の席にいる信作は、おむすびをもくもくと食べています。
こちらも、満面の笑みを浮かべた喜美子におびえ、背を向けて食べるのでした。
にしても喜美子の笑みが怖いぞ!
子役から本役への交替で、このど迫力をどこまで引き継ぐのか、楽しみです。
しかし、母のマツにとって給食は頭痛がしてしまう問題でもありました。
陽子から給食費のことを聞かされて、気が気ではありません。
マツは今日も陽子からジャガイモをもらっています。しかも、お金のことは気にしないでいいと言いつつ、フキまでつけてくれるのです。
フキか〜。
親切ではあるのですが。それでも山菜というあたりに、食糧事情の厳しさを感じます。
本作と『なつぞら』を比較すると、同時期北海道の食料事情がいかに恵まれていたか、おわかりいただけるかと思います。
当時の北海道は、全国一食糧面で恵まれた地方でした。
陽子は、着物を売るのならばこのあたりでもええのに、とジョーのことを気遣っています。
マツは見栄もあると言うわけですが……どうでしょうね。
大阪はええとこやもん。ようけ楽しいことあんねん。ジョーカスはそういう誘惑に負けたのかもしれへんで。
喜美子は洗濯中。
洗濯板でゴシゴシと洗っています。
そのコツを直子に伝え、やってみいと誘導しているようにも思えるのですが。
「いやや、なんでそんなつまらんことせなあかんねん!」
全否定です。
直子はこれからも姉を振り回すのでしょうか。しかも、姉のふかし芋を食べている。
そこを指摘されると「給食食べてきたやろ!」と返すのです。
うーむ、手強いな。
お父ちゃんが帰ってきたで
「お父ちゃんや!」
ジョーが帰ってきました。
荷物から酒瓶を出すことには、もう突っ込まないとしまして。
ジョーは喜美子におかゆを作れと言います。お米のおかゆさんだと驚く喜美子。
そうそう、おかゆさん。
飴は飴ちゃんやし、かゆはおかゆさんや。
白米と卵を見て、貴美子は目を輝かせています。
「こんなこうてお金のうなったんちゃう?」
嬉しいけれど、不安ではある。
卵は一日一個食べよかなと思ってしまう。
「そんなケチくさいこと言うとケツ叩くで、もう」
貴美子は一個だけあたためてヒヨコを生ませようかな、なんて言い出す。
「アホなことばっか言うとんな、はよ作れ」
喜美子は洗濯が途中だったとここで慌てています。
コミカルですし、関西弁のテンポがおもろい。
でも、喜美子はかわいそうな子ではある。
ずっと洗濯して、ご飯も作らなければならない。読めない漢字を勉強する時間も、友達と遊ぶ時間もありません。
食料事情も劣悪です。
コメを炊かない。かゆにする。そこに卵を入れることが最高の贅沢。
貧乏が身に染みているせいか、浮かれるだけでなくて、金のことを心配している。明るく描いているけれども、そこにあるのは深刻な貧困です。
ここ数年の朝ドラヒロインでも、経済的には最低クラスではないでしょうか。
NHK大阪は本気ですね。
ここ数年は資産家、上流階級主人公ばっかりだったものな。
貧しくても気の持ちようだとは言う。
戦後すぐなんて、みんなそんなものだとは言う。
そういう明るい掛け声は、実態を見えにくくするものです。貧しくて、苦しくて、困っていた人がいた事実は消えません。
誠意を感じるドラマやね。
心の栄養不足
ここで喜美子は気づきます。
見知らぬ男がいる……ジョーは草間宗一郎を連れて帰ってきました。
大阪の路地裏で殴られていた男です。
幸いにも、怪我はたいしたことはない。問題は心の栄養不足――終戦後、そういう人を見てきたと医者は語ります。
戦場で味わった経験。つらい記憶が心に傷を残すこと。古代からそういうことはあったものの、人類がそれを認識し始めたのは20世紀前半、第一次世界大戦でした。
精神分析学が発見された時代のことです。
第二次世界大戦後も、まだ途上。
社会問題として認識され、より深く分析されるのはベトナム戦争のあとあたりから。PTSDという言葉と概念はそこで生まれました。
そんなことをジョーはもちろん、医者もハッキリとは認識できてはいない。とりあえず空気の良いところでの養生を勧められたので、引き取ったのだと。
何者なのか。
それすらしゃべらないからようわからん。
それでもジョーは見過ごせず、連れてきたのでした。
わからへん人をなんで連れてくるのか。
喜美子はそう言います。
「ええからはよう、かゆつくれ」
喜美子が冷血だとは思いません。
現に生活が苦しい。助ける余裕があるか。本音を包み隠さない気の強い子供なら、そうなりますよね。
卵かゆがごちそうです
そしてその夜、卵かゆの晩ご飯です。
喜美子は宗一郎にあげたくないのか。よそうことに抵抗感があるらしい。
それではアカンと、ジョーが咳払いをする。顔芸で、父子が会話をしていておもろいなぁ。
ここの場面、最高でした。
演出も演技指導も、演じる側も、心の底から楽しんでいると伝わってきます。
そこにマツが入ってくるのです。マツは嬉しそうにこう言います。
「おいしそうにできたね、ありがとう。ようけ食べてください」
「卵ぎょうさんやな、すごいな。よう味おうて食べような」
と、平和なのはここまで。直子が暴れます。
「少ない!」
「お芋さんふかしたの食べたでしょ」
「少ない!」
暴れる妹に、喜美子はかゆを分けます。ええ子や……。
「ええの?」
「給食食べたから、ええ」
「ほないただきまーす」
こうして、食事になるのですが……おかずはない。こんな少しの卵かゆが贅沢だなんて。貧しさに、やっぱりショックを受けますよね。
きみちゃんだって、あれだけ暴れたら腹が減っているでしょうに。
「いただきます……」
宗一郎はそう言うものの食べないのです。
袖が破けていることもあってか、何か深い傷のようなものを感じさせます。
「お口にあわしませんか?」
マツは尋ねる。
そしてジョーはこれやで。
「喜美子、酒持ってこい。草間さん飲みたいて。はよ持ってこ!」
※続きは次ページへ
塩ラーメン好き。さん
>今後も責め続けるであろう様子に
私も思いました!どんな形で着地させるのか分かりませんが、大人になるまで引きずらせるんじゃないか、この解決に1週とか使うことになったら嫌だなー、解決に至るまでにもキミコがどこまでも譲るんじゃないか、と気が気でないというか憂鬱です(°°;)
今日もナオコの傍若無人ぶりが目に余りました…
私もまだ入り込めない側の者です。
ジョーに助け起こされた草間さんの頭髪に
****の画伯が帰還したときと同じ違和感を持ってしまった(笑)
もう少し話が進むまで、しばし離脱かな…
朝から妹のナオコの傍若無人ぶりを見るに耐えず、夜のBS朝ドラに切り替えました。
なつは、命からがら、ノブさんに救ってもらってよかった、
子供だけでしばらく生きのびた
辛い状況だった。
キミコが空襲の最中、
妹の手を離したのを、
責め続けるナオコに、
今後も責め続けるであろう様子に、
腹がたってたまりません。
家族そろって命が助かったのに。
キミコがかわいそうで、
朝から見てられない。
他の子達は、どの子もかわいいじゃないですか。
子役の間は、夜の朝ドラに決定。
武者さーん
私、今回はまだ入り込めませんー(>o<)
なつぞらが良すぎたのかなぁ
ナオコのわがままぶり(嫌悪感すら感じます…)や父親ジョーのカスっぷり、貴重なお粥さんを一口食べて残す草間さん(お坊ちゃんだから?キミコが妹にあげたとこ見てないの?)、そして気は強いのにナオコのわがままに従いっぱなしのキミコ(手を離したのわざとじゃないのに、そんなにいつまでも恨まれなきゃいけないの?長女ならではの理不尽な責任が放置されてて見ててストレス)、キミコを守るつもりがないようにも見える母親。
なつぞらは朝見て夜もう一度見ても良かったのに、スカーレットを夜もう一度見るとうんざりしちゃいます。(子どもが登校で朝見られなかった分を夜見るのです)
あと、今日は夫が「この時代に、おにぎりにあんなに海苔巻けるのか?海苔高価なのに」と疑問に感じていました。
きみちゃん、いいですなぁ。
思ったことをそのまんま口に出してしまう。
強い所も好感度大です。
女性のファンが多く付きそうな予感がします。