スカーレット11話 感想あらすじ視聴率(10/11)健全なる価値観

「クズ拾い……ただいま、あのう……」

「お嬢さんですか!」

「喜美子お嬢さんお帰りなさい、お世話になります!

「お世話になります! おばあちゃん!」

「ありがとうございます!」

孫と祖母が頭を下げていて、絶対に真相は言えない流れに……。

どうするのよ。

それにしても、この孫二人と祖母。
演技指導も、衣装も、髪型も、しっかりと昭和をしていて感動しました。

真実を言えん地獄

その夜。

飲み仲間のオゥちゃんこと忠信から、丸熊なら月給1万出すときいて、ジョーは半信半疑ながらウキウキし始めます。

「あ、そう……?」

「飲んで飲んで飲んで、どんどんもってきて!」

「丸熊陶業様様やぁ〜!」

「あ〜めでたい酒はうまい!」

「あはははははは!」

「なぁ!」

なんやの、この酔っ払い。ええノリです。ジョーカスと何度連呼しても胸が痛みません。
関西のおっさんノリも、ええ味を出しております。

家では、マツが喜美子に丸熊就職を祝い始めます。
ちゃんと照子にもお礼を言おうって。

「お母ちゃん、それやけどな……」

「こんばんは〜!」

「こんばんは〜!」

喜美子が話そうとすると、お母さんたちがドヤドヤと襲来します。
あかん、これは嫌な予感しかない。

そして喜美子に布を当て始める。
この布地も、当時の模様を再現していて細かい。本作は服飾担当者さんがフルスロットルで頑張っているようです。

再現しようとするとパターンがなかなかなくて、イラストレーターさんが泣きたくなる系の模様が揃っていると。

「これは?」

「これもええねんなあ!」

「これでええんちゃう?」

「こんなええ布!」

ええ、ええ、連呼です。関西のお母ちゃんや〜。

「ええけど、なんで?」

「就職祝いに決まっとるやろ。就職おめでとう!」

「おめでとう!」

就職祝いの服の算段を、生地を持って始める。

地獄や……。
ブラウスとスカート、担当して手分けして作る。地獄や……。

お母さんたちにとっては、きみちゃんはリアル着せ替え人形です。

『なつぞら』では亜矢美がそうだったし。
『半分、青い。』でも、鈴愛が就職スーツで揉めたし。

時代を超えたあるある感です。

喜美子がなんでと思わず尋ねると、こうや。

「なんでて! きみちゃんの就職祝いに決まっとるやろ」

中学校を出て、そのまま就職おめでとう、偉い。そうすっかり盛り上がってます。

地獄や〜〜!!

喜美子は、たまらず泣き出すのです。それにマツはこうだ。

「そんな、そんなうれしいのん?」

そしてお母ちゃん軍団はこうだ。

「うれしいんや、うれしいんや!」

どうするの、これ……。

戸田恵梨香さんが十五歳云々という意見はありますが、自転車の場面も、泣き出す場面も、ワイルドな喜美子になりきっていて見応えがあります。
声が低いのは、地声やで。こういう役や。

照子様の説得工作

そのころ、ジョーは。
飲み屋で聞かされてしまいます。

「ああそうですか、就職話のうなりましたか」

「ほんまに申し訳ありません」

「あんな小娘やしね、話なくなるんちゃうかと、さっき言いとったことです。そうですか……」

とりあえずジョーは真実を悟ったと。

そしてここでナレーションが。
この日から、父はしばらく帰ってきませんでした。

って、おい、ジョーカスぅぅ!

そして川原家にも、丸熊からお断りの挨拶が来ております。

「どうも、ご丁寧に」

「こちらこそお役に立てずに」

見送る母子。
マツが無言で励まそうとすると、喜美子は笑います。

「洗濯もんしてくるわ」

丸熊からはお酒やお菓子がたくさん届おておりました。
妹たちは、喜んでおります。お金払わんでもええとはしゃぐ妹たち。

「キャラメルぎょうさん入っとるで〜〜!」

 

外堀を埋める戦法と言いますか。
『なつぞら』では、メーカーの「奥様封筒」が出てきました。妻子から先に攻略するということではある。

喜美子が洗濯物を干しておりますと、照子が顔を出します。

「こんな下着はいとんのけ?」

照子は即座に否定されて、おばあちゃんの下着を洗っているのかと悟ります。
そんな照子に喜美子は尋ねます。

「もう謝りに来んでいいの?」

「ちょっと待てるか聞きにきた。時間かけて説得する」

「うちが働けるように?」

「みんなを説得してあげてもええよ〜。ま、いつになるかわからへんさかい」

おおっ、照子ちゃん。スカートとリボンがかわいい照子ちゃん。
大島優子さんが、がっつりと子役時代からあの人物を継いでいてよいですね。そんなお嬢様の本気です。

「お父ちゃんいいひんやけ、なんとも言えへん」

「ほかにええ就職先、信楽にはないで」

「わかっとる」

「ほな待っとき!」

信じていいのかな、照子ちゃん。

春から大阪や

それから数日後。喜美子が縫い物をしておりますと。

「喜美子、お父ちゃんが」

ジョーカスが帰宅やで。

なんやねんこいつ。当時は電話も普及しておりませんので、こういうおっちゃんが帰ってこないとなると家族としては待つしかないのです。

野良猫みたいな。

『じゃりん子チエ』の鉄を実写化できそうな、そんな北村一輝さんがこう切り出します。

「詰めが甘かったな」

丸熊のことだと悟って、喜美子は謝ります。

「就職、なくなってしもてすみません」

「口約束ではあかんちゅうこっちゃ。今度のところは一筆書いてきてもろた」
と、ジョーは書面を出します。

これもジョーらしいと言えばそう。理由はいろいろすっとばし、話の交渉算段、やり口の良し悪しを考えるのです。

『なつぞら』の咲太郎と同じ思考回路でしょう。
そんな手順重視で、彼は働き口を見つけてきたのです。

カスやなかったね、すまん!

「荒木商事いう」

「ようそんな会社に……大阪?」

「そや、大阪で働け。春からお前は大阪や」

働き口が見つかったのはええ。
けど、大阪で?
照子や信作、信楽と離れてしまうのん?

第三週へ向けて、ズバーっと大きく出てきました。

こういうインパクトのあるプロット、細やかな考証、しっかりした骨のある演技指導と演技、うっとりするような関西弁、柄の悪さ。

それでも“地味”いうやつは、こういうノリが合わんだけでしょう。
いいから明日へいこか!

十五の娘を男衆ん中に放り込めるかいっ!

喜美子は就職。中卒就職です。

2017年上半期『ひよっこ』では、中卒が「金の卵」とされましたが、喜美子の場合、そこまで経済的にノリノリでもありません。

むしろ信楽では、ほぼ丸熊一択。
そしてそうして決めたところが、理不尽な理由で反故にされる――そんな辛さが描かれます。

そういう価値観ではある。喜美子の就職破棄はかわいそうではあります。
けれども、健全な価値観でちょっと感動してしまった。

男衆(おとこしゅ)の中に、十五の娘さんを放り込めるか〜い!

これやで。
これがまっとうな、責任感のある大人の考え方や!

照子は別。
お嬢様ですから、手出ししたらクビどころの騒ぎじゃありませんからね。そういうお嬢様には一目置いて当然なのです。

なんでこんな当たり前のことをウダウダ書くかって?

そりゃ、NHK大阪の前作や。

あれはヒロインの姪っ子が製塩ロリメンの中に放り込まれ、そいつらが欲情しまくるという最低の世界観でした。
しかも、あの姪っ子は一応社長親族という無茶苦茶さ。当時の価値観を理解できていない、どえらいカスっぷりでしたわ。

なんだろう?
本作って「えろうすんません!」オーラを感じる。気のせいかな?

ええんやで。わかっとるよ。
NHK大阪にも良心はあるもんね。良心といえば、祖母へ見せる孫の気遣いも感動的でしたね。

今日もいい仕事です。

人間の良心はある。あたたかい気遣い。
でもそれだけではいかんこともあるって。

いい回でした。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

3 Comments

匿名2

武者さん、10日の感想はないのですか。
10日は赤い手袋をあったかいと喜んでる姉妹が可愛くてじーんとしました。
武者さんの感想ないの残念です。

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