昭和28年(1953年)2月――。
15歳の喜美子は、大阪で働けと父・ジョーに告げられます。
「わかった。大阪で働く!」
マツが気遣う中、快諾する喜美子。
信楽の子である彼女の心中は?
頭下げて、苦い床舐めてきたんやで
ジョーは重々しくこう告げます。
「人生にはどうしても人に頭下げなあかん、そういう局面が三回ある。床を舐めるほど顔を近づけてお願いする機会が、三回ある」
お父ちゃんしょっちゅうやん。
と喜美子に突っ込まれつつ、ジョーは持論を語ります。
その一回がこれだそうです。
喜美子に床の味を尋ねられ、苦い味したでえ〜とジョー。
嘘やね。お父ちゃんの口の半分は嘘だと喜美子は笑います。
荒木商事社長の名前を見たかと、ジョーは聞きます。
荒木さだ――女性です。ジョーのいとこでした。
喜美子たちも知らんというのですが、どういう関係でしょうねえ。
直子と百合子は、姉不在の中、家の仕事ちゃんとせなあかんで、と言われます。
ここで直子、モロに不満顔です。百合子はいい返事をします。
三つ子の魂百までと言いますか。性格バッチリ出ていますね。
しかも直子はテレビジョンが欲しいと言う。百合子も同意。ジョーも止めない。
「はよしてや!」
「えらいごっつぃ頼みものやな〜」
大物やで。
どんだけ時間がかかるかわからないと苦笑しつつ、喜美子は買ってやると言うのでした。
川原喜美子さんなら進学できる
このあと、喜美子担任の寺岡先生が訪ねてきます。
その絵が金賞を取ったと、ジョーは知らない。彼は喜美子に目をかけていたようです。なんと、中学で金賞獲得は喜美子だけ。それだけでなく、勉強も優秀。特に数学が得意なんだとか。
先生は標準語を喋りながらも、信楽アクセントです。
信楽では、進学を支援する動きもあるそうで、寺岡は喜美子に進学させたいと思っているのです。
いい先生ではある。絵を描くことを勧めたのも、彼なのです。
けれども、家の者は知らない。学校に掲示されていたことすら、話されていない。
どんな才能でも、食べていけなければ注目されない。悲しい話ではある。
寺岡は勧めてきます。
「タダで高校行けるかもしれません」
「女に学問は必要ありませんわ」
ジョーはキッパリと、持論を語ります。
喜美子はナゼ、数学が得意か?
小さい時から計算してきたから。
これから川原家では、運送のため、二人雇う。その給与がいくらになるか? それもさっと計算できる。
川原家は働けんかったら、食べていけんことをわかっているからこそ、数学の知識なのだとか。
恥を曝け出すようだとことわりつつ、ジョーは語ります。
「大阪に行って仕送りする。この子は、それ以外の道はありません」
それが喜美子の道――彼女の周囲には、その才能を伸ばす道を応援する人は少ないのです。
これぞ朝ドラがやるべきことという気がする。
『あさが来た』にせよ。『べっぴんさん』にせよ。
実家は富豪であり、周囲はヒロインの才能を認めようとしたところがある。そりゃ、食べるため、時代の流れのために立ち上がったとはいえ、キッパリと道を絶たれたわけでもない。
こういう周囲にへし折られるヒロインの道こそ、見応えがあると思えるのです。
行くならうちを倒してから行け!
こうして喜美子は卒業の日を迎えます。
信作からいつ発つのかと問われ、帰ったら準備をすると答える喜美子。
「会えんと思うと寂しいわ……タヌキ」
「タヌキかい!」
それで信作にはこれです。
「辛気臭い話聞かんで済むと思うとうれしいわ」
「うれしいんか……」
素直になれないきみちゃんやで。ほんまはさみしいのに。
ここで、彼女がやってきます。
「喜美子〜いたぁ〜喜美子ぉ! なんで勝手に帰るん?」
卒業の余韻も何もないと、お怒りのピンクマフラー照子様。
照子は喜美子を雇うよう、丸熊陶業での説得をまだ続けているそうです。
それからこれだ。
「行くならうちを倒して行け!」
照子は、幼い日に見ていた婦人警官の夢はあきらめました。
一生信楽で、丸熊の跡を継ぐしかないのです。
『なつぞら』の雪次郎と同じ立場と言えばそう。男女の差はあるとはいえ、家業に縛られるということです。
こうして考えると、雪次郎は一度迷って挑んだことがよかったと思えたりして。
「行くならうちを倒してから行きなさい!」
喜美子は受けてたつ。
「信作、走って持ってきて。柔道着二着、道場にな。あいつ倒したるわ」
照子にもカバンを預けられ、信作は走る。
信作よ……便利屋かっ!
喜美子vs照子! なのに信作KO
道場で、照子は構えます。
「来い!」
「礼に始まり礼に終わる、習うたやろ」
喜美子がたしなめ、二人は道場に入るところからやり直しです。
「礼!」
「よし来い!」
でた。まただよ、照子様。やる気満々ですね。
「柔道着届くまで待たんか」
「ん〜、もうじれったいのぉ!」
「草間流道場は学校の制服着たままやるもんやない」
しかし、照子は動じない。
「ギュ〜したるぅ!」
ハグやんけ!
「離せ!」
「いや!」
照子様……人肌恋しいだけちゃうん?
「ちょお、もぉいい加減にせい! しゃあない、来い!」
喜美子はついに対戦を受けて立ちます。
制服で組合になる二人。エレキギターのBGMが入ります。なかなかの熱戦です。撮影は大変だったとか。
「あれ? ほれ?」
ここへ信作到着。
「とりゃー!」
なんと、喜美子が照子を投げ飛ばしました。
一本勝ちです。ここで信作、ナゼか気絶。
「アッハッハ!」
「息できひん……」
「新聞つめたった」
信作の鼻の穴に何か詰められている。
「鼻血か?」
「出てへん!」
「出てへんのかい!」
あははははは!
喜美子は大笑い。信作受難が定番の流れなんか。
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