昭和28年(1953年)春。
荒木荘へ働きにやって来たものの、初日でのぶ子から「信楽に帰り」と言われる川原喜美子。
十五歳の喜美子は、どうするのでしょうか。
大久保さんと勝負です
翌朝、大久保は、喫茶店オーナーから新装開店したら来て欲しいと、挨拶されています。
この店、絶対溜まり場になるでしょ。
大久保が荒木荘の扉を開けると、玄関で喜美子が金一封を返してきました。
そのタイミングで起きてきたさだは、信楽に帰るから張り切っていると誤解しています。
カーラーをつけたさだの頭がいい味出してますね。
羽野晶紀さんってこんなおもろい役者さんだったんだ、と毎朝新鮮です。
喜美子が帰らず働くと聞いて、さだは戸惑います。
「昨日は納得してたやん」
そこへ、ちや子が帰宅。朝まで仕事だったそうです。
ヘトヘトで、お茶を淹れて欲しいと言います。水野美紀さんのにじみ出る変人っぽさがこれまたいい。
喜美子は大久保に食い下がります。
「うちの話、聞いてもらえますか? 聞いていただきますか」
喜美子は大久保に食いつきます。ここで圭介も出てきます。
寝る時の浴衣というのが、この時代らしさが出ています。今の旅館のようなものではなくて、ちゃんと当時らしさが出ているのがええ。
再試験勉強で徹夜した圭介も、濃いお茶が欲しいそうです。ちや子もいつもより濃くして欲しいと言います。
カフェインで頭をスッキリさせたいのかな。
喜美子はここで、大久保さんのことをずーっと、ずっと考えていたと打ち明けます。
大久保さんは対戦相手や。喜美子はそう考えたのです。
草間流柔道の教えを受けていたと喜美子が言い出したところで、ちや子は身を乗り出します。圭介も興味を持ったようです。
「おもろいな」
「聞きましょうよ」
そう促され、喜美子は続けます。
草間流柔道は、相手を敬うところから始まる。そこから説明を始めるのです。
家の仕事はすごいこと、素晴らしいこと
大久保さんのええところを探した喜美子。
大久保のぶ子は子育てし、姑の面倒を見て、家事をずっとこなしてきました。
「すごいことやと思う。素晴らしいんとちゃいますか」
喜美子はそう言い切る。
それなのに、どうして大久保さんは誰にでもできると言うのか?
そやろか?
大久保さんの作ったご飯は、彼女だけのもの。えらいおいしかった。そう喜美子は褒めるのです。
言われた方は、むすっとした顔でこう一言。
「何の話やん」
皿問答のことも考えていた喜美子。
「うーん、せやろか? うちは誰にでもできる仕事やない。家の中の仕事も、素晴らしい仕事や。いつかあんたにしかできひん、参りましたと言わせてみたい。どうか雇ってください。戦わせてください! お願いします!」
大久保はこう返します。
「戦うて、子供相手にアホらしもない。さぁ、はよ、ご飯の支度せんと」
うーん、関西や。
今朝も『なつぞら』と比べるとわかりやすいかもしれない。
本音でビシバシぶつかる、そういう熱い道産子のドラマだったあの作品。いちいち相手の裏読みをしていると開拓者は生きていけないから、ストレートなのです。
一方で、こちらは本音をぶつけられると「アホらし」と、する〜っとかわされるような。そういう遊びのようなものがある。
どちらがいいか、悪いかではない。そういう違いがあって、どちらもよいものなのです。慣れるまで時間がかかるかもしれませんが。
そこをふまえて、圭介はフッと笑い、お盆を押してきます。
フッ……本当に圭介はこの笑い方ですからね。
昭和のええ男。こんなん笑い方しても許される。そういう演技を要求される溝端淳平さんはえらいこっちゃで。オラつき江戸っ子・奥原咲太郎とはこれまた違う。
喜美子は戸惑います。
「あ、うちが……うちが?」
さだが付け足します。
「大久保さーん、このこにお茶淹れてもろてええんやね〜」
「ありがとうございます! 一生懸命、心を込めて働かせてもらいます! ありがとうございます!」
「ちゃっちゃとしなはれ」
大久保はそう急かします。
江戸っ子とはまた違う意味で、大阪の人もせっかちな印象を受けますが、照れ隠しでもあるとは思います。
せっかちと【いらち】はちょっと違うんやな。
あくまで私の印象ですが。江戸っ子は主におっさんがせっかちで、バーンと時々キレるわけですが。大阪は老若男女、程度の差はあれ【いらち】だと思うのです。それは決して悪いことではない。
本作は【いらち】な人がぎょうさん集まっている気配がビンビンしておりますので、セリフ回しも早い。
でも、こういうテンポだからこそ、朝のエネルギー補給にはふさわしいドラマに仕上がっています。
視聴率も右肩のぼりになりそうで、期待が高まります。
見ないと損するで、この朝ドラ!
開かずの間にいる謎の男
このあと、洗面所にちや子と圭介がおります。
歯を磨きながら話す、なかなか高度な場面。話題は淀川の溺死体のことです。
自殺か、他殺か。事故か。事件か。
「身元不明やと新聞で読みました」
圭介がそう言うと、どの新聞かとちや子はせっつきます。
このせっつき方も【いらち】かな。圭介はちや子の新聞だと返します。
ちょっとドヤ顔のちや子。
彼女が書いたんだって。それで遅くなったのかな?
死体は30代から40代、男性。ここで、圭介は何かを思い出したようです。
「ここ数日、顔合わせてへん……」
荒木荘で誰かが喋っていても出てこない。そんな人がいる。ちや子も、不安になってきたようです。
まだおるのか……そういえば、下宿人四人には一人足りなかった。
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