スカーレット52話あらすじ感想視聴率(11/28)テンプレの泥濘

「ずるいわ、いうてえや! 教えてや、ずるいわ!」

喜美子は八郎に迫ります。
どうして、ずるいと言うのでしょうか。

八郎の前で、感情が剥き出しになる喜美子。
今朝はそこから始まります。

かっこええおっちゃんや

「あの……」

八郎がそう言い、ようやと距離が近いことに気づく喜美子。
手を離すと、八郎は猫のように逃げようとします。そして捕まる。

「あかん!」

「あ〜」

このあたり特殊な関係になりそうなのに、猫と、猫を追いかける人のようでおもろい。
喜美子は八郎を座らせ、どういうことか聞かせて欲しいと迫ります。

こんなことを言ってしまったと申し訳なさそうですが、喜美子はこう突っ込みます。

「言うてましたよ、もう結構言ってましたよ」

そもそもナゼ八郎が?
ここで八郎は、事務所で聞いて、フカ先生に確認したと言うのです。

その上で、わかっていることを語ります。

長崎に旅立つ。
引き際は潔く。
若い世代を丸熊陶業を大改造するのを、遠くの地から応援する。

引退か?と喜美子が驚くと、八郎は否定します。

新しい挑戦や――そうフカ先生は言い切った。
長崎にいる三十代の絵付け研究者・森田隼人に弟子入りするというのです。

前々から考えていて、手紙書いたらすぐ来いと言われたそうです。バタバタっと動いたと。
それで八郎は家族のことを確認していたのでしょう。

八郎が森田隼人を褒めると、すごいのはフカ先生だと喜美子は言い切ります。

ゆくゆくは様々な工芸品に、絵付けの技術を活かすことを考えている。
先を見据えて新しい挑戦をする。そんな先生に二人は憧れます。

「かっこええな」

「かっこええ」

若者が感極まったように褒める年上の男性を、朝ドラは東西で提示してきました。

東の柴田泰樹。
なつに指摘され自分の狭量さを反省し、農協に協力する。

西のフカ先生。
いくつになっても新たな挑戦をする。

意識をアップデートできること。
若いものを見下さないこと。

ちなみにこの正反対の人物が、昨年の放送事故におりましたっけ。

いくつになっても義母を見下し「ああいうババアと俺らトレンディな若者は違う!」感覚が剥き出し。
それなのに、演じるのはハセヒロさんなのに、溢れ出す鬱陶しいおっさんくささ。

若者の意見を聞くと言いつつ「俺の考えていることを理解しろ!」とキレ散らかす。
ミエミエのお世辞を言いながらニタニタする、悪徳宦官のような社員を重用する。

あれは一体なんの悪夢だったのか。
自分が努力しないで威張っただけで、若者の敬意を求めるのは愚かでしかありません。

そら本作を熱心に叩く層がおりますわ。
自分に苦境を課して新たな挑戦、努力ができない――アップデートできないおっさんのぼやき臭、半端ないで。

まぁ、これは年齢だけの問題じゃないですけどね。
どれだけ歳が若くても、努力や自分への負荷を放棄する考えに走ったら、その瞬間から自分の人生まで放棄することになる。

火まつりに行こか

喜美子は、フカ先生はニコニコしていると語ります。
調子ええときは踊る。その踊りまで再現します。

「踊りです、踊りですよ!」

「踊りですか? これは踊りちゃうけどな」

そう二人は面白そうにしています。
喜美子も、八郎もリラックスできてきたようです。

感極まって座る喜美子。

「うちはフカ先生大好きです。尊敬して、信頼して、フカ先生に……フカ先生やからついていこ思て。三年間頑張って。今もお給金ちょっとでもかまへん、そんなんかまへん。フカ先生の元でやれるんやったら、そう思て絵付け、ここで絵付けを……先生について行こかな。うちも長崎行こかな……すみません」

涙声になって来ます。

「ありがとう、教えてくれて」

「いえ……」

「火まつり……もし行けるんやったら、歩くんは先生うち、十代田さんの順番で」

「はい」

「ええの?」

「ええよ」

昨日の放送で八郎は、自分が先生の隣と言い張っていた。それをあっさりと喜美子に譲ります。
八郎は不思議な人。絵を見て何かを感じとるように、人の心の本質を見るようでもあります。

そのわりには、空気は読まない。
空気を読まないで本質を見通してしまうような、そういう不思議なところがあります。

喜美子は笑います。
八郎も笑って受け流します。

「えへへっ、さっきすいません、痛かったでしょ」

「痛かったわ〜。すみません、ええ人やと思いますよ。深野先生がついていこう思うた人やし」

「そやな」

「絵付けやってる人に悪い人はおりません。絵ェ描きはる人は優しい」

「おっほほほ、うれしいな。はぁ、落ち込んでる場合じゃないですね。ほな残り少ない日々やん。しっかりやらんと」

喜美子は励まされ、そう笑います。
ここでまた八郎が「痛かったわ〜」と言い、喜美子が「しつこいわ!」と返す。

「ほな!」

そう言い合いながら二人は別れるのですが……。

喜美子は掃除を続けます。机を拭いています。
風鈴が鳴っている中、一人掃除を続け、机に座り、涙が目に盛り上がります。

静かで、喜美子の悲しみと戸田恵梨香さんの演技力を映し出す。
朝ドラの限界に挑むような、丁寧で美しい描写でした。

八郎は感情を解放する

ものすごく大事になりそうな――そんな場面。
喜美子の「壁ドン!」がワーッと盛り上がっていました。

こういうことをSNSで盛り上げて、ネットニュースで取り上げる。
正直、嫌な予感がするのです。

感想なんて自由でよろしい。
けれども、作り手がそこにハマるとドツボに陥りかねないんやな。

悪例としては『花燃ゆ』がある。

無茶苦茶不自然な壁ドンもどきを入れるわ。
「松下村MEN」という企画をやらかすわ。

少女漫画要素を雑にドラマで実写化した結果、陳腐化する悪しき例です。

それに2019年末、むしろテンプレの打破こそ表現の最先端ではありませんか?

現在、絶賛公開中の『アナと雪の女王』シリーズだって、エルサがああなったのはテンプレ通りの悪役を解釈し直した結果です。

 

『なつぞら』でもしみじみと思った。

あの作品では、アニメの題材が地味だのなんだので叩かれていた。
そういう叩きをする周囲は理解できていないと、マコプロの皆は強気でした。

んだんだ、それでこそジャパニメーション原点回帰だべ!

ジャパニメーションはじめ、日本初のエンタメは型破りであったからこそ人気であったのに……ツンデレだの壁ドンだの、陳腐なテンプレ狙いが横行して陳腐化しておりませんか?

あのイラストレーターが。
あの声優が。
テンプレ通りのふるまいをすれば、「萌え〜」だの「胸キュン!」だの盛り上がる。

そういうテンプレ再生産ばっかりして、リスクを取らなくなったんですよ。そして……。
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