スカーレット13話 感想あらすじ視聴率(10/14)地味ではなく濃厚なのよ

ようこそ荒木荘へ

喫茶店が近所にある、そんな荒木荘へ。

喫茶店は朝ドラには欠かせんよね。
入り浸るのかな? オーナーもええ感じです。

荒木荘では、老年の女性が締まりの悪い戸と奮闘中でした。

そこへ休講になったという大学生が帰ってきます。
そうそう、当時の大学生は学生服です。1960年代から私服になってゆきます。

彼は新人が来ているかどうか尋ねるのですが。

「それがまだやねん」

「あとで中から閉めときましょか?」

「やっといてくれる?」

これには女性も喜んでいます。おっ、親切な学生さんですね。

そこへさだに連れられ、喜美子がやって来ます。

「ここよ」

親の一軒家を改装したんだそうですが……この荒木荘の造り、気合の入り方が半端ないですね!
当時のインテリア、内装、ガラスまで再現していて、ものすごいことになっております。

ここでさだは、大久保さんが来てはるはずだと言うのでした。

喜美子は自室へと案内されます。
するとそこには、先ほどの大学生がおりまして。

「空くなあ。どないしてもこんだけ……」

「あの、こっちゃにお住まいですか?」

喜美子が来ます。
彼の口からここに住んでちょうど一年になると聞いて、喜美子は誤解します。

そして、自分の使う場所はここまでにしたいと困惑しつつ、言い始めるのです。

「ちょっと……何いうてんの?」

「もっとこっち?」

「かいらしいなぁ。かいらしいこと言うてるなあ思うて」

大学生さんは、二階に下宿しているのです。

「ふっ、かいらしいなぁ」

おい、このイケメン大学生、おいっ!
あかん。関西弁の殺し文句「かいらしいなぁ」を連発したらあかん!

「かわいいね」

では出せない、関西弁ならではの、「かいらしいなぁ」の破壊力を、よりにもよって溝端淳平さんが連発する。
NHK大阪が、えげつないほどの本気を出してきましたわ。

「NHK東京に岡田将生さんがあるならば、NHK大阪に溝端淳平さんありよ!」みたいな、謎の対抗心すら想像してしまう。

『なつぞら』の咲太郎が粋な浅草の江戸っ子なら、こちらは上方のええ男ですね。

さだは、このええ男を圭ちゃんと呼びます。医学生なんだとか。
ここであの戸と格闘していた女性は、圭ちゃんがいつの間にこんな子を連れ込んだのだと、声を荒げます。

さだがここで、喜美子を紹介します。

「よろしう頼んます」

はい、この迫力のある女性が大久保さん。
彼女は荒木家の元女中で、手伝いに来ているそうです。さだのおしめも替えたとか。

「仕事も全部教わってな〜」

おっ、なんだか厳しそうだぞ!
大久保を演じる三林京子さんは目を爛々とさせていて、大阪のおばちゃん感が半端ないのです。

こういうおばちゃん、見たかったでぇ〜。
ここまでコテコテのおばちゃん、NHK大阪朝ドラで何年ぶりでしたっけ。

さだから仕事が賄いつきだと聞き、喜美子は嬉しそう。
ま、今のうちかもね。大久保のしごきで、ビシバシと圭ちゃんの分まで作ることになるんでしょうし。

さだはこう告げ、とりあえず去ることに。

「せもうてかんにんな」

ここで喜美子は、ショックを受けたようにカバンを落とすのです。

うちだけの布団、うちだけの部屋

圭ちゃんも心配しております。

「どないしたん? どないしたん?」

圭ちゃんは隙間風を心配して、新聞紙を詰めたらいいと喜美子に声をかけるのですが、それどころではありません。

「これ、うちの布団?」

「何、今更? 新聞詰めて……」

「ちょっとくらい風来た方が気持ちいいさけ」

喜美子はそう言います。
まぁ、しがらきの実家は古いし、風ぴゅうぴゅうでしょうからね。

「ごはんもらえるんや。布団も。うちの布団。うちの部屋。うちだけの部屋! 一人で使うてええんや! うれしい〜!」

そうはしゃぐ喜美子です。今まで姉妹と共同だったもんね。

一方で、大久保はさだにダメ出ししております。

「あんな子供あきまへんわ。任せられません。信楽に返しましょ」

気にせずはしゃぐきみちゃん。

「うちだけの部屋! こんなん初めてや」

柔道の受け身のように布団ダイブしてしまい、そのはずみで足で戸を蹴り倒してしまうのです。

「うっ、うう……何? 何? はぁ、はぁ、何?」

倒れた戸の下から、メガネの女性が顔を出します。

またなんか濃い人が来おったで。

女の下着って、なんやねん

いきなりブラジャーをモロに出す。
朝ドラでそこまでやるのか?

そういう声はありそうですが、ものすごく新しいものを感じます。

女性の下着は何がいやらしいのでしょう?

コンビニのエロ本を隠すのならば、女性の下着売り場も隠せだの。

この女性下着モデルは、男から見てエロくないからダメだの。

胸のサイズを小さく見せるブラジャーは邪道だの。

そういう意見も耳にします。

なんでや。
それは見る側の問題やろ。

女性の下着はあくまで下着です。生きるために身につけているだけです。

それを勝手に欲情して、盗むとか。
目のやり場云々言うとか。
エロくないからダメだと言うとか。

何を思いあがってますか?
男の目を意識して、女が下着を選ぶと思ってますか?

本作は、そこに切り込むのか?
女の、女による、女のための下着作り――そういう方向です。

そこまで本作が挑むのならば、これこそ2019年にふさわしいドラマになり得ると思います。期待しとるで!

地味でのうて、濃厚なんや

はい、家族や友達と別れての大阪編ですが。

いきなり濃い!
荒木商事も、圭ちゃんも、大久保も、メガネの人も。

全員濃くて、もうミッチミチです。

どこが地味やねん。

地味というより、本作は濃厚なんだと言いたい。
関西弁のネイティブがノリノリで、ガーッと早口になるから、台本を書き足すほどなんだとか。

本作は圧倒的に台詞テンポが早くてミッチミチです。
しかも、一人だけが長く喋るのではなくて、合いの手を入れ合うから、凄まじいことになっております。

情報量も半端ない。

今日の下着の紹介場面なんか、ディオール、ファンデーション、コルセットと、皆思い思いにガーッと喋るから大変。
朝ドラのセリフテンポとしては、ここ数作でもぶっちぎって早いです。

関西弁は言い回しが地域によってかなり変わるものです。
本作は、一般的に想像されるスタンダード関西弁ではなくて、かなり細かい違いがある。

しかも、演じる側もネイティブだからさらりと出していて、自由な関西弁になっていると感じます。

これは結構しんどい。
関東視聴率苦戦も納得と言いますか。聞いているだけで、エネルギーを使います。『なつぞら』も情報量が多くて大変でしたが、それとはまた違った濃さがある。

NHKとしても、10年先を見据えて、100作目以降は何かを変えて来たんだな、という気合いを感じます。

『なつぞら』総集編も放映される本日。
朝ドラの歴史が変わるときは今なのでしょう。

朝ドラを評するのに、まるで往年の日本映画や大河ドラマのような趣があるともったいぶって書く。
そんなセンスをアピールするメディアもあるようですが。

台所用洗剤やバスキューブに、香水の香りを求める必要はない。
要求されるものが違う。

朝ドラは映画だの大河を目指す必要はありません。
15分という尺に入れ込む、その独自の工夫を下に見ないでいただきたい。

ただよい朝ドラであること。それが大事。
そういう基本に取り組んでいる。そんな作品です。

そんな本作のインタビューを見ているとホッとします。

公式サイトにあった、水橋文美江氏のこの言葉よ。
彼女一人の作品ではなく、スタッフ一丸となってカラーを決めているとよくわかります。

そして、喜美子はもちろん、どの役も、みなさんに愛していただけるように、人間的なかわいらしさを大切に、ということを心がけています。不快な人間はひとりも出てきませんし、あり得ないようなあざといシーンを作り込んだりもしていませんので(笑)、ぜひ安心して楽しんで見ていただき、朝から元気になっていただけたらと思います。

不快な人間がいないーーー!!(NHK大阪前作教団員どもを思い浮かべながら)

あり得ないようなあざといシーンを作りこまないーーー!!(パンチラ、セクシー拷問、褌尻無双、未成年に群がるロリメン、自宅不法侵入者を憐むチョロい女、義父と婿が一緒に入浴、子作りアピール、赤ん坊背負って海岸絶叫、もろもろを思い浮かべながら)

信じとるで、スカーレットーーー!!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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