スカーレット44話あらすじ感想(11/19)何気ないブドウの種が恐ろしや

昭和34年(1959年)、喜美子21歳。

苦労して作った火鉢デザインを、フカせんせいはひたすらこうだ。

「おお! ほう、ほう?!」

「どっちですか。持っていきます? 持って行きますしね」

喜美子は新しい火鉢のデザインを持って、社長の元へ向かいます。

ドキドキ……BGMと演出がその高揚感をだしとるでよ!

 

商工観光課課長や! なんちゃって〜

向かった先にいたのは?
信作でした。

「おうおう久しぶりやな! 正月以来? いや見かけた。自転車の後ろに酔うたおじさんくくりつけて……」

セリフでしか出番がないのに、酔っているジョー。

そんな信作の顔を喜美子は掴みます。

「人生の大事な局面やねん。顔小ちゃいなあ」

林遣都さんは確かに小さい。
注意したいのは、当時は【小顔=イケメン】でもなかったことです。

舞台俳優の時代は、顔は大きいほうが有利でした。
テレビに変わりつつあるとはいえ、まだまだそういう時代。昭和のスターは顔が結構デカいものです。

ここで信作の逆襲やで。

「手ぇくさいな! 俺のここ、ええ臭いするから嗅いでみ? ははっ臭いやろ! 昨日の夜ここにゲロ吐かれてん!」

ゲロを吐かれたスーツを今日も着るんか!
林遣都さんにゲロと言わせ、戸田恵梨香さんにゲロ臭を嗅がせる……本作、一体何を目指しとんねん!

感動した。
ゲロ臭くて何が感動かって言われればそうですけれども、本作の再現度には感動したっ!

圭介もそうでしたが、信作も、平成生まれが演じていて、劇中でも青年であるにもかかわらず、【昭和のおっさん臭】が出る。醸し出される。これは大変なことやと思う。

喜美子は臭さに悶絶しつつ、大事な局面やと言います。
そして信作の要件を聞く。

彼は役場勤務でした。商工観光課課長だってさ。春から異動だそうですよ。
しかも小さい嘘ついた。

まだ課長じゃありませーん、下っ端だって。

「その話あとにせえへん?」

喜美子、鬱陶しがっている。気持ちはわかる。

「お前はいつも忙しいな、万年忙し太郎やな〜」

そうはしゃいでいると、番頭の加山がこう言います。

「なんですねん? 話やったら向こうで!」

「出直す?」

「いやいやいや、お先、お先」

そう言い合いつつ、二人は社長の元へ。

 

果物種問答

秀男社長は、
「スイカの種が許せるけれどもぶどうの種は許せない」
と語っております。

加山は喜美子がやってきたのを見ると、また給料の前借りかと笑顔。
そうか、やはり前借りしてたんか。しかも、そこそこ常習っぽいしな。

扇子でパタパタしている社長は、信作を見て喜びます。

「お〜、信作来たな、入り、入り!」

小さなことですが、この扇子ね。当時はこういうものでちゃんと涼しくなった。
ハンディ扇風機なんていらなかった。技術云々ではなくて、必要なかったんですわ。

信作は昭和ビジネスマン必須の書類封筒から企画書を出してくる。
それでこうだ。

「昨日は貴重なお時間頂戴しました。火祭りの企画書です」

昭和やな〜。
企画の中身でなくて、昨晩飲んだことがフックなんです。飲みニケーションの世界や。

祭りの企画の把握も曖昧で、演歌歌手を呼ぶ程度しか話をしなかったようです。
それも呼べればの話でして。

社長は喜美子を見かけると、父の運送業と母の様子を気にかけていると言う。

ここに限らず、今週は『なつぞら』のイッキュウさんを脳内に呼んでくるとおもしろいと思うんですよ。

イッキュウさんは、飲みニケーションだろうと一人で黙々と好きなものを食べる。

ほぼ確実に飲食物をこぼす。

雑談できない。デカいアニメ理論を唐突に語り出す。

「演歌歌手を呼ぶ理由はあるのでしょうか?」と真顔でドン詰を開始して、相手が引く。

家族が気になるから途中で帰る。

泰樹なら、そもそも参加すらしない。

典型的な昭和の空気(『スカーレット』)と、その逸脱を目指した作品(『なつぞら』)を比較すると、何気ないセリフからもその背景の理解が深まると思います。

 

来年が駄目ならその来年!

なんですの?
そう急かされ、喜美子は新デザインを出してきます。

加山はムスッとしている。社長も面倒臭そう。

「受け取るだけ受け取ったって。フカ先生にも言われてるやろ。あとであれするて」

「はあ」

加山は受け取り、ろくに見ないで机の棚に置いてしまいます。

本作はうまい。
普通の人に潜む悪意や偏見を、サラリと描いてしまう。

受賞歴のあるエライ先生、しかも年長者の男性ならばともかく、貧しくて中卒の若い女が出してきたものは見る価値もない。
そういう偏見が根底にあるんですよね。

偉大な発明は男性のものであるとか。
芸術家も男性が多いとか。

そういう男性優位論は古典的ではありますが、その理屈は女というだけで門前払いされた人がいる歴史を無視しているのです。

※女性の発明したものも多数あるというのに……

喜美子はめげません。

「また持ってきてもええですか? 社長さん、採用されへんでもかまいません。また来年持ってきてもええですか? 今年がだめなら来年。来年が駄目ならその来年! 考えるの楽しかったです。また持ってきてもええですか? ほながんばります!」

 

喜美子は明るくそう言います。

ここで、部屋の奥に若い男性がいる姿が映ります。
社長がうちの婿だと紹介する。婿入りして【みつきと29日】だそうです。

はい、婿さん。朝ドラで婿さんが連続して出てくるって、面白いと言えばそうですよね。『なつぞら』の柴田剛男も婿さんです。
去年のNHK大阪朝ドラも、史実は婿なのですが……どうして変更されたのやら。

喜美子と信作はちょっと動揺しています。

 

琵琶湖にあのゴキブリを沈めたる!!

「あんな男といっしょになるくらいだったら、もうゴキブリの方がええ! いつか琵琶湖に沈めたる!」

二人はそんな照子の言葉を思い出しています。
結婚前、幼なじみ二人は酒を飲みながら輝子の愚痴を聞かされたのです。

さて、そのゴキブリ以下の男は?

結婚指輪をしていて、洒落たスーツ。信作と比較するとわかりやすいかも。
そして算盤をパチパチと弾いております。

一体どんな人なのか?

京都老舗旅館の三男。大学を出た。
会計事務所を辞めて婿にくる。両親は大喜びで断れない。

「決まってしもうた! 断れへんのやー!」

照子はそう嘆いていたものですが……。

その照子が、お盆に果物を載せて入ってきます。

「失礼いたしますぅ。いただきもののおスイカとおぶどうおもちしました〜。敏春さん、どうぞぉ」

「ありがとう」

甘ったるい声でそう言う照子ですが、結婚前はこうでした。

「頃合い見計って絶対琵琶湖に沈めたる!」

喜美子は火鉢をくくりつけたると相槌を打っていました。冗談きついわぁ〜。

「あんな男ゴキブリ百万匹のほうがマシ!」

それがすっかりなついている様子です。

「食べていかはります?」

「いえ、失礼しますっ!」

喜美子と信作は退場します。
二人は外で爆笑。そこへ照子がやってきます。

「見たなぁ〜! 二人揃ってみやがったなこのぉ!」

二人は爆笑です。
おスイカおぶどう敏春さ〜ん! 照子の若奥様ぶりに笑い転げています。

信作に至ってはこうだ。

「どうぞ言うてもの出したりできるんやな!」

そんな信作に、照子は結婚していないと突っ込む。

それな! あのおしくらまんじゅうの時に、三年後は自分だけ結婚しているとドヤ顔していましたからね。
このドヤ顔ブーメランが見たかった! 期待通りや。

しかも、好いていた今日子ちゃんにフラれたってよ。女心はわからへんだってよ。

喜美子も女だけど、女心はわからへんと言う。それに対し、照子が、喜美子はまだ女やないと言う。
ムッとする喜美子。働者の掌をつきつけます。臭いぞぉ!

喜美子なりに心配ではあった。

琵琶湖に沈めないか?
家出しないか?
それがみつきと29日持っている。

「好きになったんやなあ」

「相手がな」

「好きになったんやな」

「敏春さんがうちのこと……」

「好きになったんちゃうの?」

「……好きになった」

「おほほほほ!」

「おほほほほ!」

新妻・照子の惚気を引き出し、幼なじみ二人がはしゃいでいます。
照子は照れながら言います。二人でいたら優しい。物知りで「自由は不自由やで!」も知っている。

喜美子がジョージ富士川のことだと言うと、ちょっとびっくりしている照子です。
敏春招聘で彼は再登場するわけですね。
※続きは次ページへ

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