スカーレット45話あらすじ感想(11/20)人妻のよろめきって何ですのん?

昭和34年(1959年)、喜美子21歳――。

夏といえばスイカで、照子にもらった初物を、百合子と一緒に切っています。

百合子は口に入るものなら、なんでも好きなんですって。
直子とはやっぱり違いますね。

ここで姉妹は、あの話題について確認します。

「あれいうたらあかんで。今言うたらわやくさになってまう」

大野夫妻の喧嘩のことでした。
それに川原家も揉める寸前だそうで……。

初物七十五日

さて、川原家の中では。
直子がリュックから何かを発見し、嫌そうな顔をしてちゃぶ台におきます。

明日、ついに東京へ行くのです。
上京が叶わない日々を過ごし、家の手伝いに甘んじていたものの、ついに職場を斡旋されたのでした。

そういえば学校に行く様子もないし、気になっていたところではあります。

そんな直子に、ジョーは渡そうとする。臭い布を押し付けようとする。
直子はついにぶん投げる。

「なんでおとうちゃんの手拭い東京持っていかなあかんの! いらん!」

「何すんねん!」

これはうまいと思う。
両者の気持ちがわかる。臭さが画面を超えて伝わってくる。酒臭い汗と加齢臭コンボや。

かつては大阪へ行く喜美子の荷物にも入っておりましたが、あれはマツが手紙で理由を説明したからこそ感動的なのであって。
ジョーがこういうふうに押し付けたら、ただの嫌がらせでしかない。ジョー、ちゃんと説明せえ!

こういう時は話を逸らしましょう。
と、喜美子が初物は七十五日と言いながらスイカを持ってきます。

フカ先生から聞いた話によると、初物を食べると七十五日寿命が伸びるとか。

初物(はつもん)は 東を向いて 笑(わろ)て食え

確かにそうやとマツも言います。
東云々は迷信にせよ、初物で寿命が伸びるという概念はなまじ嘘とは言い切れません。

旬のものほど栄養価が高い。旬に合わないものを無理して食べることよりも、健康によいのです。

クリスマスケーキのせいで、イチゴのピークが本来と真逆の冬になってしまった――そういうライフスタイルが定着した今こそ、考えたいことかもしれません。

関西ではない関東、江戸っ子の初物フィーバーは過熱気味だったものです。

女房を  質に入れても  初鰹

これは全く理にかなっていなくて、初鰹は味はそんなによくない。
そこは江戸っ子の見栄でぇ! 初物に対する東西の違いが面白いと思うんですよね。

喜美子は、東というよりもむしろ直子のいる方向をさす。しかしジョーはつれない。

「寿命伸びんでええわそんなもん!」

あの酒量からすると、長生きできそうにもないジョー。
話を逸らすしかありません。

直子の就職先は、熨斗谷電機だそうです。直子に話を振って、準備ができたら食べやと声を掛けるのですが、ムスッとしていてこちらも駄目です。

ちゃぶ台返しはしょうもない

ジョーは、そんな直子にこう言うのです。

「お前、自分がどれだけええ加減なことしてきたのか、わかっとんのか。静かに聞いたるさかい言うてみい」

マツが説明しようとしますが、ジョーは自分の口で言えと迫る。
で、結局ジョー自身が言うと。

最初は問屋の谷中のおっさんのお手伝い。
一月もせんうちに勝手に辞めて来た。

次も谷中のおっさんのお手伝い。
今度こそ、今度こそと言いながらも、その日のうちに辞めて来た。

直子はそう語られて、ため息をつきます。

「ため息つきたいのはお前、こっちのほうじゃ!」

ジョーはそう愚痴る。今度こそ、今度こそ繰り返す今度こそおばけやなこれ、もうあかん。

おもろい。
信作は喜美子を(いつも忙しい)「忙し太郎」と呼ぶ。で、ジョーは直子を(今度こそを繰り返す)「今度こそおばけ」と呼ぶ。

こういうようわからんセンス、昭和のおっさんらしいものです。この手のしょうもないセンスは、真面目でお堅い記録にはない。
本作制作側の誰かが覚えていて使ったのかと思ってしまう。そういうところにあたたかみがあると感じます。

直子は冷たい態度で、止めても行く宣言。
そしてこうだ。

「何が言いたいねん!」

「せやからお前、一緒に……お前、お前……」

ジョーは直子にそう返されて、言葉が出てこなくなって、ちゃぶ台返しをしようとする。
それを喜美子らが阻止すると。

朝ドラHELLや。
本作は容赦なくバラす。

ちゃぶ台返しには、男の沽券であるとか、怒りの炸裂だとか、そういう一応は男性の尊厳を守るようなことが言われて来た。
頑固オヤジ、不器用だったんだね。そう理解を示す歩み寄りがあった。

それが本作では、うまく言葉が出てこない状況を誤魔化す、低レベルな逆ギレもあったと笑いに包んで明かす。割としょうもない。容赦なくそこを描く。

半端ないで、ほんまに……。

もう一点、容赦ないと言えば直子の連続退職ですわ。

喜美子だけを描いたら、こういう説教ができる。

「喜美子見ぃ、昔の人は勤勉で、これぞ石の上にも三年や。チャラチャラ転職する今時の若いもんちゃうで」

ところが、直子はこれですから。
当時だって仕事が続かないで、今でもびっくりするようなダイナミック退職をする人も当然おりました。

日本人は勤勉だとか。
そういうイメージは誇張か、あるいは作られたものである可能性は高いわけでして。

むしろ明治からの戦前、こんな嘆きもあったようです。

「欧米諸国の労働者は真面目で転職しないのに、日本人はすぐ転職するからけしからん。根性がない」

転職がおかしなこととされたのは、ごく一時期の話であって、それが神話化されている、と。
そういうことを、朝ドラが迫るとしたらこれはすごいことなんです。

ほんまに極めて優秀な作品やで!

金のことを真っ先に心配せんかい!

喜美子と百合子はこう言い出します。

「ええからスイカ食べやいさ!」

「食べようや。直姉、明日からいいひんになるんやろ。みんなでなかよう食べようや」

「(スイカの)端っこでええねんもう!」

ジョーはそう毒づきます。
カッコつけておきながら、ジョーもスイカを堪能していることは言動でバレバレなんや。

「東向いて笑いながらな」

百合子がそう返します。

縁側に家族が並び、スイカを持って食べます。
思えば信楽に来たばかりの頃も、縁側で綺麗な月を眺めたものでした。

カメラがゆっくりと一人一人を映し、上から見下ろすようになる。
背後には信楽焼の狸もいる。川原家への愛が作り手にもあるとわかる。そういう映像だと思う。

「笑わへんの?」

「はははははは!」

「はははははは!」

「アハハハハハハ! 俺も一緒に行くで! 東京ついてく」

喜美子とマツの笑いに、ダミ声気味のジョーが入り込み、そして衝撃的なことを言い出す。

ちゃぶ台返しの時もそれを言いたかったのかな?
娘への愛に照れて暴発したのかな?

喜美子はジョー対応ができる。絵付け師になって一緒に万歳できる。それが直子はできないようです。めんどくさいやっちゃな〜。
とはいえ、これも直子だけでなくジョーにも問題がある。双方めんどくさいとわかるからうまい。

直子は喜美子の時はそんなことしなかったと不満そう。
これもなぁ。直子の方が心配なんですよ。大阪と東京の距離でごまかしても通じないですよ。

ジョーはたまらず計画を話し出します。

「心配でたまらんやろ!」

熨斗谷電機の社長によろしゅう言う。
寮にも顔を出す。
あちこち顔を出す。

仕事を休む段取りもつけてきた。

「せやさかいついていくからな!」

ここで直子はこう指摘する。
東京までの高い電車賃をどうするのか。

「あっ!」

おぉい! ジョー、なんやこのカス! そこか、まずそこを真先になんとかせんと。こんなことだから商売失敗するんやろなぁ。アホや。

「前借りしとけばよかったなぁ……」

喜美子はしみじみそう言います。
どうやら前借りはしょっちゅうしている自転車操業らしい。

貯金? できるわけないやん。

【人妻のよろめき】検索するなよ、絶対だぞ!

「ある!」

それがあった!
マツがこういう時のために貯めていたへそくりがあると種明かしします。

喜美子の学費にしたかったものの、絵付けの道に進むから直子や百合子のために使うつもりだったというへそくりです。
ジョーはどこにそんなもんがあるのか不思議がっています。

マツは得意げに、うちではなく陽子さんに預かってもらっていると明かすのですが……これに百合子と喜美子は驚きます。

百合子はこう言います。

「お母ちゃん! お母ちゃんのせいや!」

「なんやのん?」

「そのへそくりのせいや!」

はい、ここで大野夫妻の喧嘩について明かされます。

オゥちゃんこと人の良い夫・忠信は見逃せないことがあった。

妻がへそくりを貯めている!
彼はきっとお小遣いは充分に渡してきて、長い結婚生活でそこに不満はなかったのでしょう。

そんな忠信が、妻の鏡台の下に貯めてある金を見つけた。

信作が抑えても、定期的に思い出しては問い詰めたくなるようでして。蒸し返しては喧嘩になるのです。

痛くもない腹を探られて、陽子は怒る。また勝手に見たのかと怒る。

忠信は問い詰めます。

「何の金や、なんで言えん!」

「女にも言えんことあるっちゅうやろ!」

「あ〜! 聞いたか、聞きましたかみなさん! 男や……男がいるに違いない! おっとろしい、人妻のよろめきや!」

忠信は、集まってきた周囲にそう言い出す。
陽子はますます怒ります。

「そんなくだらんこというなら、離婚や離婚!」

これは恥ずかしい、恐ろしいやりとりではあった。

どうしてオゥちゃんは、いきなりエロエロ方面へ突っ走ったのか。
それはジョーあたりと酒のつまみに猥談をしているからということもあるわけですが。

オゥちゃん……ちや子の旧職場が出している新聞にあるエロい小説あたり、読んどるやろ。

戦後、姦通罪がなくなり、ハードルが下がりました。そんな中、エロエロ妄想の定番に「人妻」が登場するわけです。
エロエロ単語をそのまま使うのもアレなので、「よろめき」でソフトに表現してみたと。

試しに「人妻」+「よろめき」で検索したら結果があかんことになった。
みなさん、職場ではやめておきましょうね。

オゥちゃんの脳内には、そういうエロエロ妄想がミッチミチだからそういう発想になる。視聴者にまで性癖を暴露されるオゥちゃんとは……。
※続きは次ページへ

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