スカーレット51話あらすじ感想視聴率(11/27)マスコットガールのリアル

蚊帳の下の姉妹

その夜、蚊帳の中に姉妹がおります。姉の分まで妹が布団を敷いたのです。
蚊帳がええ味出しとりますな。

「寺岡先生、懐かしかったわ。ちょっと痩せたんちゃうかな」

喜美子は百合子にお礼を言いつつ、そう姉妹で語り始めます。

こういう何気ない会話も重要でして。
寺岡先生は、一回隣町で、教頭になるかならぬかで酒接待で飲まされたそうです。

「あかまつ」のわちゃわちゃ飲みニケーションを踏まえますと、微笑ましいこの会話も舌打ちしたくなるっちゅうか。
酒を飲めん奴は出世もできん、という昭和の悪習ですわ。

『なつぞら』の甘党饅頭大好き、そんな泰樹は昭和の典型とは変えてあるってことですね。

寺岡先生は、喜美子姉ちゃんをよう覚えていた。
高校に行かせたかった。勉強できるし、しっかりしてて、絵ェも上手。新聞記事をわざわざ学校に持って来て、中卒なのにこんな立派になったとでっかい声で紹介したんだとか。

ここで百合子は黙り込みます。

「ごめんなさい……」

なんでよ。
謝る妹に姉は問いかけます。

「今日は冷やかすようになってしもて。知らんかった。いっぱい稼いでるて思てた。アホやなうち。テレビジョンくらいそろそろ買えるかなくらい思てたよ……」

喜美子は笑い飛ばすようにこう言います。

「稼ぐでぇ! これから県短も行かしたる、先生になったらええ!」

「もうええよ。うちも中学出たら働く。働くわ。任しときぃなっ!」

そう語り合う姉妹です。

悲しい。
百合子は姉に自分の学費を背負わせたくはなかったのでしょう。

大久保のことを思い出します。
彼女は内職で稼ぎ、弟たちの学費を出したと言い切っていた。

そんな彼女は、自分の仕事は儲からなくて誰にもできると思われていると言う。だからこそ出会ったその日に、「大久保さんの料理は大久保さんにしか作れない!」と喜美子に言われて、感激してしまった。

縁の下の力持ちとごまかされて、ゴリゴリに搾取される。そういう構造が見えてきます。

マスコットガール戦略の功罪

今朝も朝ドラHELLや。
見ていて汗がだらだらになっている方、おられませんか?

これはおっとろしいことやで。
マスコットガールみたいなアイドルはいつの時代もおる。江戸時代の花魁とかね。

あれだけ華やかで、CDも写真集も売れて、儲かっとるんやろなぁ。
楽しそうやし。ええなぁ。夢あるなぁ。

そう思って、芸能界入りする子はぎょうさんおる。

そのメッキが剥がれることも繰り返されてきた。
花魁として玉の輿に乗った人もいるとはいえ、遊女の大半は「投げ込み寺」に遺骸を葬られていたのが実態ですわ。

いやいやいや、それは江戸時代やろ。
そう思っていたところで、アイドルかて地獄やとNGT48の事件で明かされたのが2019年。

ここで、ふと思い出したのは『あまちゃん』です。

私だってあのドラマを見て、ああいうアイドルグループビジネスは楽しそうなものだと思いました。
しかし、その反面汚いところもあって、おっさんがふんぞりかえっている構造問題もありました。

それでも表現に手加減があったんやな――そう思えてしまう。

マスコットガールの問題は、えげつない構造を見せつけてきた。

・本人の意思に反しているスタートや

・イメージてそんなん嘘ばっかりや!

・目立って売り上げ貢献しても給与に反映されない

・それどころか、男性先輩より薄給のようだ

・注目を浴びる反面、媚びて出世した汚い女扱いをされるし……

・「チェンジ!」「好みじゃねえw」みたいな容姿ジャッジもされるし……

・妄想で出来上がった像を信じて、それに反するとイメージ崩すとキレられるし……

・ロールモデルを再生産する。マスコットガールに憧れる少女は、未来の搾取対象や……

ガチで有害やん!

じゃあなんで社会が切り込まんかったか?
それはな、マスコミ側の常套手段で、自己反省が必要だったんやろなぁ。広告代理店が好きそうやしなぁ。

昨年の放送事故は、その無邪気な礼賛やったで。

主人公周辺はテレビCMにウキウキワクワク。雑な商品開発を広報でごまかしてばかりや。

「テ〜レ〜ビ〜やぁ〜!」

そう奇声で叫んどったヒロインは忘れられへんわ。
そういう自画自賛の極みも終わりやね。

恋の予感どころか迷走する会話

翌朝、喜美子が出勤すると、八郎が工房前に立っています。
その上で、深野が何時頃にお見えかと聞いて来ました。ここで待たせてもらいたいってさ。

喜美子はちょっと困惑しています。

八郎はようわからん行動をとる。空気を読まない。フカ先生にもいきなり声をかけて驚かせていましたっけ。

喜美子はこう言います。

「やっ、やっぱり、ここに突っ立ってられても。どうぞ」

八郎に絵を贈った時点で、これは恋の予感だと盛り上がってはおります。
けれども、同時に八郎の得体のしれなさに戸惑っている。ここは重要です。

喜美子は工房の掃除を始めました。

「適当に座ってくださいね」

ここの八郎もちょっとズレてる。
この年代なら、ドカッと椅子に腰掛けて脚を広げてふーっと息をつくとか、ジョーくらいのおっさんなら咳払いでもしそうです。

八郎は、とぼとぼしてぼーっとした歩き方で、座る前に話を始めます。
しかも、暑いだのなんだの世間話はすっ飛ばして、いきなり深野先生の家族関係から聞いてきます。

喜美子は、以前はどうか存じないけど今は独り身、ご家族や親戚は遠方にいらっしゃると答えます。

ここから、混沌の極み会話や。

「そうですか……」

「どうかしました? 深野先生に何か?」

「えっ?」

「寂しいですよね。肝心なことを聴き忘れてしもて。深野先生がいつまでおられるかお聞きしとうて。ああ、直接、ご本人に直接お聞きします」

「そこまで言うといて何それ……今なんて?」

「ご本人に直接お聞きします」

「そこやのうて!」

「寂しいようで……」

「まどろっこしい。うちが代わりに聞く。つきあい長いですから」

話が通じない!
喜美子はイライラしているのですが、八郎はそうではありません。

「早々に立つ言うてはったから、火祭りの時はもういてはらんのですか? 火祭りの時おいでであったら、松明担ぐ時ご一緒させていただきたい思うて。そういうのはやりませんか? 丸熊陶業は喪中やしやりませんか? 松明担いで一緒に火祭りです。記念というか、思い出作りに深野先生と僕と。川原さんもええです。そのかわり、先生、僕、川原さんの順番で」

「待ってえや! 話がどんどん迷子になってるやん!」

「せやから一緒に歩きましょう、最後やし」

「せやから先生が……」

「せやから先生が信楽去る言う話!」

「えっ?」

「えっ?」

「先生が、信楽を、去る?」

「ご存知やなかったんですね……」

「教えてください、どういうこと!」

「あっあっあっ、ご存知なかったなら……」

「待ちなさい! 外、出さんよ、何を知ってんの!」

「こんな大事なこと僕の口から!」

「言うてください!」

「いやいやいやいや!

「絶対言うてえや! 教えたって!」

逃げる八郎。
迫る喜美子。
なんやねんこいつら……。

思い出しているだけで、絶叫したくなるほどわけがわからない。
ちょっと考えてみましょか。

めんどくさいで、八郎!

はい、八郎がめんどくさい。
どうしてそうなのか、彼のことを考えてみましょう。

ついでに比較対象として他の朝ドラの人物も持ってきました。

◆八郎は狙ってアプローチできない、距離感を取れない

→喜美子だけが知らないことに義憤を抱き、フカ先生に伝える? そんなことはありませんでした……そのほうがかっこよくない? どうでしょう。

→ミッコー記事の時も、特に理由があって諭すわけでもなく、混乱しまくっていたわけですし。

→シャツを縫ってもらう。絵をもらう。しかし、本人は喜美子との距離が近づいたと認識できていないようですし……。

→よく似た『なつぞら』のイッキュウさんもこれで大事故寸前に陥っていましたっけ。

→下心満々で親切にしていた、昨年の放送事故の男性とはまるで違う。

◆八郎は会話のキャッチボールで暴投する、相手のことを確認しない

→喜美子が止めようとしても、一方的に火祭り計画を喋り出す。相手の理解度を確認せんかい!

→これが会話ならばマシ。業務でやられると疲弊する。イッキュウさんの双方向性がないスケールのでかい指示に、作画を担当するマコはじめ周囲は疲労困憊しておりました。

◆八郎は自分の計画に夢中です。しかも細かく練っています

→そもそもなんで火祭り計画をでかく広げだすんや! 彼なりの計画ができてしもたんやろなぁ。

→イッキュウさんが劇場映画でやらかした。自分の世界観に観客がついてこられるか。その観点をすっ飛ばして大失敗をかまし、退職する流れに。

→放送事故のヒロイン夫は、自分にはスケールのデカい計画があると言いつつ、その中身を広げて話す場面は曖昧でよくわからなかった。

◆八郎はどこかズレてます

→ぼーっと工房前で立たれたら困る。そういうことをあんまり考えられないようでして。

→喜美子の困惑無視もそう。あの感動的だったフカ先生への絵を売った告白だって、あれは相手がフカ先生だからよかったのです。前任者ならキレられてもおかしくないやろ。

◆八郎には可能性があります

→暴投気味でズレているものの、ピタリとはまるとホームランを打てます。そういう子や。

→しかも本人が狙っているかどうかもわからない。彼が大きな何かを語り出すことで、周囲が刺激を受けて物事が変わることがある。

→具体例をあげますと、イッキュウさんと菊介。イッキュウさんのスケールのデカい話に困惑しつつ、それに刺激を受けた菊介がスピーチをすることで、農協を取り囲む事態が好転しました。

八郎はめんどくさい。

ただ、彼が大きな何かをもたらすとは思う。

オープニングで喜美子を持ち上げる顔のついた粘土の塊――あれは彼なのかもしれません。

新しいもんを作るには、時間がかかんねん

本作は視聴率がちょっと伸び悩み気味ですが、そこも想定内だとは思います。
もちろん高ければ高いほどええちゅうのはあるけどな。

半分以下まで落ちたらあかんけど、数%ならええんちゃう?

NHK朝ドラは目的をもって、八郎やイッキュウさんのようなめんどくさい人物をメインに据えて来ました。

『なつぞら』では、神っちが「新しいことをするには時間がかかるんだよ!」と叫んでいました。そういうことやと思う。

それに、叩き記事の論旨もようわからん。
働く女性や中高年女性には好評でも、それ以外の若い世代や男性には不人気だとか。

そんなもん……何勘違いしとんねん。朝ドラのスタートは【働く女性や中高年女性の応援】からやろ。
このへんの叩き記事で見えてくるのは、【中高年男性はなんでも自分が優先されると思い込む】っちゅう、しょうもない現象やで。

昨年あたりからから感じとった。

NHK東京叩き。女性脚本家の高学歴、成果を叩く。
一応、偽装はしとるけど、そんなんただのできる女への嫉妬やんか。

家事育児を担うイッキュウさんをありえないと言い切り、そんな夫と生きるヒロインを「甘えてる! 苦労知らず!」と叩く。
なつは戦災孤児や。あんたより苦労しとるで、ほんまに……。

NHK大阪の放送事故。あれはセクシーマンボダンス踊る美女といい、おっさんサービスドラマやった。
引退した男性高年齢層視聴者がメインと誤解した層と、そういう層に媚を売ることが生存戦略だと思った層には受けそうやと思えたドラマやったで。

ま、こんなノイジーマイノリティに構わんでええんや。
彼らはSNS投稿は活発でも、数字や評価に直結するとも限らんしな。

話を戻すわ。

東西で何か新しいものを生み出そうとしている。
そんなもん、視聴率あげるだけならええ手がありますわな。

企業タイアップ。
二世タレントで親子共演。
提灯記事を光らせる。

広告代理店案件ですわ。

本作はメディアコントロールをしていないという点で、個人的には好印象です。
されとったら、マスコットガールの汚い舞台裏なんざ、出せるわけないわな。

今後もしょうもない叩きはあるでしょう。
私は気にせん。SNSも見てる暇ない。

本編が充実しとると、その行間を読むだけで手一杯で、雑音が聞こえなくなるんですわ。

そういうええ作品やで、ほんまに!

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スカーレットあらすじ感想
スカーレット視聴率

[/st-myb[/st-mybox]武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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