父の死後、久々に再会した照子と喜美子。
二人は笑いあいます。
丸熊陶業は改革する
照子が持ってきた果物をペロリ。彼女はしばらく食欲もなかったとか。
喜美子が、父の死の影響だろう……と同情すると、妊娠したと告げます。
ご愁傷様とおめでとうの同時到来です。
そういえば先週のミッコー取材の際、腹痛で病院に行くと言ってましたっけ。本作はこういう細やかな伏線が巧みです。
「せやせや、酸っぱいもの食べとるからな〜」という知識はちょっと古いですし、季節の果物ならばおかしいわけでもない。むしろフェイントかもしれない。
喜美子が「ご愁傷様とおめでとう」と言いますと、照子は父のことを語り出します。
妊娠がわかって、喜んで長生きせなあなんと言っていたらぽっくりだったって。
喜美子は信作と声を掛けようかと思っていたけれども、照子は弱っているところを見られるのが嫌いだからそっとしておいたと語ります。
すると彼女は強がってこう返します。
「結婚も出産も親の死も、先に経験しとるわ」
そんな強がりも、喜美子には通じません。
「ちゃんと泣いた方がええで。そんな急いで大人にならんでも」
「誰が泣くか!」
照子はそう言ったものの、キッと宙を見て涙を堪えます。大島優子さんが絶品の名演ですね。
日本、昭和、田舎――そういう弔いという気がする。
国と地域によっては、親の死ならば号泣してこそむしろ当然でしょう。それをこらえるところにリアリティがあります。
本作の生々しさってなんなんだろう。
昨日の河原家も、香典をいくら包むかという方向に話が行くし。
ジョーカスは弔い酒を狙ってるし。
淡々としているところに妙な生々しさがある。
ベテラン女優がヨヨヨとわざとらしく泣き崩れ、絶叫するとか。
あるいはアホみたいな生前葬とか。何か考えの浅はかな、昨年そういう放送事故ドラマがあったけれども、今年は違う。
喜美子は、照子の母を気遣います。ただ、照子によると、思うてたより元気だと言います。
その理由も辛いものがある。
熊谷家で家族を亡くしたのは初めてではない。
兄の方が理不尽だった。跡取りが戦死して骨すら戻らない。それに比べたらずっといい。
「お父ちゃんは戦死やない、寿命やったんやないか言うてる」
そして敏春の存在に感謝しています。
家と会社の大黒柱が亡くなった後の細々した面倒なことも全部やってくれた。お母ちゃんとうちだけやったら叶わんかった。そう言うのです。
強気な照子は甘えられる旦那様がいて、嬉しいんでしょうねえ。
それに赤ちゃんもいます。
照子はここで、環境の激変が起こると言います。
丸熊大改造に入るそうです。代替わりですからね。
これからは若手中心となり、火鉢の生産は縮小へ。
「ここもどうなるか……」
声を潜める照子。
せや、絵付け火鉢に明日はないんじゃ……。
これからは電気とガスの時代となります。となれば火鉢は不要、売れなくなる。絵付け火鉢もそう。
父は亡くなる前に深野先生とも話していた。いつかは話があるやろ。
「喜美子、よう考えて。深野先生ともよう相談してな」
いくら本作で絵付け火鉢がええもんだと思っても、買えない。
火鉢ってそんなん……いらんやろ。
うまい落とし所やで。
受信料を使って企業や製品を描くにしても、本作はそこまでおかしな話でもない。
・芸術性が高いものを扱うわけや
・流石に、絵付け火鉢の購買には貢献せんやろ
・今後、信楽焼は買いたくなるとは思う。せやけど一企業だけが儲かるんとはちゃうしな
どんなものでも経済に結びつく。
それはむしろ使命でもある。
地域特産品販促や観光貢献ならば、そこはプラス要素です。
本作もええ影響を与えているそうですよ。それでこそ受信料の使い道や。
・業界内特定の一企業だけが持ち上げられる
・安価で出回っている。これはドラマの効果で売り上げ伸びるわ!
・実在商品名を区切りを入れただけで連呼する
・放送終了後、即座に出演者がモデル企業宣伝に出る
・タイアップ商品キャンペーン実施や!
これはあかんやろ。
昨年にあった言い訳なんか信用ゼロやな。
反省したらそんなんジョーやない
さて、そのフカ先生は思うところがあるようでして。
「あかまつ」に一番と二番さんが呼び出されています。
先に飲んでたと二人に声をかけるフカ先生。
まずは二人に言おうと切り出します。
「信楽には社長さんに呼んでもろて来た。その社長さんが亡くなられはった。まぁその前からぼんやりと考えとったことなんやけどな。信楽を去ろ思て」
淡々とそう言うのです。
そのころ喜美子は、照子の言葉を思い出しつつ、料理中。
そこへ百合子がそっと相談をしてきます。
ジョーが行水している間に、って。
行水!
これでこそ昭和や。このドラマはほんまに細かいで。こういうちょっとした単語の使い方で生々しさが出る!
明日、担任の先生が進学の話にくる。そのとき喜美子にいて欲しいと百合子は言う。
後ろで聞いているマツは喜美子の仕事を気遣います。
早く帰ってくると妹を助けようとする喜美子。
「お母ちゃんだけやと心細い……」
「そらわかる。百合子の大事な話や。はよ帰ってくる」
姉妹はそう語り合い、マツは反論しません。
本作のマツは結構叩かれるんですよね。
気が弱い、もっとちゃんとジョーカスの暴虐を止めろと。お嬢様育ちで頼りなくて、我が子に依存しすぎだって。
いやいや、へそくりで奮闘してましたやん。
このマツ叩きにはあんまり賛同できないのです。どんだけお母ちゃんに期待すんねん。
どうしてかというと、こういう話はぎょうさんあるでな。
子どもが虐待されたような事件があると、母が子を守らないのがあかんと矛先が母に向かうことがある。けれども、お母ちゃんかて被害者ですやん。
諸悪の根源はジョーカスや。
そんな夫と駆け落ちした若いマツを責める気にはなれへん。
マツ擁護はこのへんにしまして。明日来るのは、寺岡先生だそうです。
そこでジョーが入ってきます。
「暑いもう。はあ、出た途端汗だくや。どないなってんのやもう」
出てきた瞬間に暑苦しい。既に汗臭い。
関西を代表する臭そうなおっちゃん枠殿堂入りを果たしたジョー、今朝も登場です。喜美子にもう一回行水しろと言われてアホかと反論。
しかも、出ですぐに喜美子の下ごしらえ中の料理を食う。
火を通していないと止めて、プッと吐き出す。
それでこれやで。
「すぐ食われへんもん作んなやもう!」
それから「あかまつ」に行くと言い出すのです。
行けば汗が引くってよ。ええから水を飲めと喜美子に返されて、水水水と言い出す。
関西弁を流暢に操る北村一輝さんと戸田恵梨香さんが話しているだけで笑える。
そう笑った後、このセリフで顔がひきつる視聴者さんもおられるはずです。
「女(おなご)に学問は必要ない……」
百合子が勉強しているところに目を留める。
宿題や、夏休みの宿題や。マツがそう庇いますが、そもそも夏休みは始まってもいないと返すのです。それから、うちの家訓を思い出せとまで言い出す。
「おう、そや。明日先生来てもそうやって言うからな」
このあと、「あかまつ」に行く行かないで絶品の父娘問答が入るのです。
見ているだけで、とても楽しいやりとり。
けれども、ずっしりと重たいものがある。
ジョーは悪いだけの父ではないし、おもろい。
それでも娘にこういう差別的なことを堂々とほざくカスっぷりを発揮する。
喜美子の進学を二度も否定する。
おまけに喜美子が溜めていた学費を自分の酒代含めた借金に使い果たした。
直子は、そんな父の暴虐から脱出に成功……したのかな?
それはさておき、お父ちゃんの言いなりになるかと直子も反発したはずですが。
その反省、全ッ然、しとらん!
百合子も押さえつける気満々です。
本当に懲りない。こいつには娘の訴えがまるで効いてない。
カスっぷりがブレない。丸くならない。
むしろブレろ!
そんな初志貫徹いらんわ!
喜美子はなんとしても、百合子を応援したいと気合を入れて策を練っているはずです。
その背中には、ジョーに苛立つ視聴者の怒りも乗っかっとるんや!
フカ先生の隠居宣言
深野先生は、社長室に呼び出されております。
そして敏春に去る決意を告げたようです。
敏春は折りよくというか、丸熊も主軸を火鉢から植木鉢に移すところだったと納得しております。
ほな早々に旅立つと告げるフカ先生。
加山はこう告げます。
「四十九日まで待った方が……」
「それはこちらは構いません」
敏春はキッパリとそう言います。
世代間格差を感じますね。服喪は今より昔の方が重んじたもの。これもどうなんやろなぁ……。
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