喜美子のお給金があがり、百合子の高校進学が叶うことになりました。
もちろん度重なるちゃぶ台返しを阻止しながらの、家族会議の結果です――。
そうナレーションが入ります。
ちゃぶ台返しもただのギャグでなくて、
【理詰め交渉を妨害するおっさん】
の象徴となっていておもろい。
なんでや、学費あるやろ! そう突っ込みたくなりますよね。
ジョーとしては面白くないんやろなぁ。娘の稼ぎで進学というのは、やっぱり沽券に関わる。意地と誇りちゅうやつ。
ここで、父と娘の違いも見えてきます。
金を泥棒に取られようが、泣き寝入りしかできなかったジョー。
薄給に甘んじて、恥ずかしいと思いつつ酒に逃げる父。
喜美子はピンチをチャンスにして、不本意だったマスコットガールも交渉材料にして、膝詰め理詰めで交渉して賃金をアップさせました。
中卒でアホな女という偏見を逆手に取り、現状を変えていく。喜美子は賢くてたくましい、カッコええヒロインです。
喜美子に対する不快感やむかつくという感情は、なかなか言語化しにくいとは思う。
喜美子の賢さやたくましさをムカつくと言う。これはただの八つ当たりですやん。
それはあまりにみっともないから、なんかともかくムカつくという【オンラインちゃぶ台返し】をしてしまうんじゃないかと思うのです。
ここまで的確に、急所攻撃をズバズバする朝ドラヒロインって、斬新でしょう。
絵付け火鉢をうみだした喜び
丸熊陶業も、少しづつ変わってゆきます。植木鉢の生産が火鉢を超えました。
八郎は商品開発室で陶片の色見本を見ています。
陶器って、生活に密着しているものです。
テーマが地味だのなんだの言いますが、この色味本は宝石みたいに見えた。釉薬の出す輝きってすごいと思えたのです。
夏にはがらんどうだった商品開発室は、備品も増えています。
津山は凍害検査に出すと藤永に言い切る。寒冷地で使える陶器にする。津山の技術者としてのスキルがしっかりと見えます。
商品開発室では新商品の開発が順調に進行中。その説明にも納得できます。
こういう言葉がサラリと入る。
制作チームがしっかりと陶器を調べているということでしょう。
そんな中で、喜美子デザイン火鉢完成品ができました。
「ほな、よろしいですか」
敏春が陶工とともにやってきます。
敏春って、ちゃんと喜美子に丁寧な言葉遣いをしていて、絵付け師への敬意があるんですよね。ええ人や。
「待ってえやぁ!」
ここで照子が入って来ます。
「もう敏春さん、試作品できたら、うちにも見せて言うてたやん」
この場面でビックリした。照子がレベルアップしてはる!
若奥様から、奥様へきっちりとステップアップしていた。あの、うんうんと頷いていた頃とは違う、おねだりしながらも強気になってきた。母親にも似てきた!
立場は人を成長させるんですね。現社長夫人としてレベルが上がっている。
それに、関西のおばちゃんぽさが出てきたな〜。
食堂の八重と緑、大野雑貨店の陽子さんとその仲間たちの気配が身についてきた!
幼い頃からそういう要素はちゃんとあった。それが育っている感じがある。
これもマツと比べると面白くて。
大阪のお嬢様育ちが彼女は抜けきっていないと感じられるんですね。
そういうおばちゃんぽさを出し切る、大島優子さんの演技力が半端ない。
喜美子は、そんな照子の大きなお腹に驚きます。
大きくなったなぁ!
照子は食欲が止まらへん、食べながら見ていいかと聞いてきます。
干し芋持参です。
「干し芋しもて!」
喜美子はそう突っ込む。
神妙に見てや! そう言い切るのです。火まつりで見せた陶芸の神聖さをぶっ壊しかねんもんな。
照子はこうです。
「おう〜、その顔見たくて来たんや! 火鉢はどうでもええねん。うれしいな、よかったな」
幼なじみのドヤ顔が見たかったと、ドヤ顔で言い切る照子です。
喜美子はめげずにこうだ。
「干し芋、ほかしてな」
でた、【ほかす】=捨てる。
関西人が標準語だと思いっていた語彙ランキング上位常連入りの単語ですね。
そしてワクワクしたBGMが流れつつ、出てくる絵付け火鉢です。
「これがうちの絵付け火鉢……」
薔薇に葡萄。
シックなボルドーワインレッド。
これはもう現物見ろで終わってもええ案件。カッコいい、可愛い。レトロでシック。
「綺麗に焼いていただきまして、ありがとうございます」
喜美子は感謝しています。
照子も「ええ感じやん!」と喜ぶ。
「ありがとう」
「売れるんちゃう!」
照子はそう言う。私だってそう思う。
敏春も満足そうな顔で、陶工と握手します。
もう能書きはええから、同じデザインでスマホケースでも、クリアファイルでも、アクセサリでも出しましょう。
NHKのめんどくさい版権交渉を突破して、信楽でレプリカミニ火鉢、お菓子や小物入れに使えるものを売りましょう。
そんなんあったら甲賀まで旅行するしかないやろ!
「あ、動いた!」
ここで照子のお腹の赤ちゃんが動きました。
絵付け火鉢に感動したんちゃう?
そう言いつつ、喜美子は火鉢にスリスリしております。
「かわええなあ」
照子はお腹。喜美子は火鉢。スリスリ、スリスリ。そんなスリスリコンビが一番可愛らしい!
で、終わってもええところですが。ここ、重要じゃありませんか?
家族と仕事、どっちもええ!
喜美子は仕事が生み出した火鉢。
照子は赤ん坊。
どちらも愛おしくてスリスリしたくなる。
「私と仕事、どっちが大事なの?」
という、これまたテンプレとなったセリフがある。これへの答えのような気がして来た。
ジョーが前回出してはいる。
「そんなもんお前……仕事はしゃあないからやる。やらんと妻子を養えんのや」
答え:どのみち義務やから、大事もクソもないわ!
このテンプレセリフは、フィクションでは女性から男性に言う。
けれども、現実では逆が多い。
「家庭と仕事、どっちが大事なんだ?」
それにここで答えが出されてきた。
「アホちゃう? 両方にスリスリや。どっちも大事! 当たり前やん」
答え:どっちもええ!
喜美子と照子は、相手が手にした自分が持っていないものばかり見て、嫉妬することはない。
働く女
vs
専業主婦
そういう【女の敵は女】みたいな、バカげた構図には乗っからない。
照子は喜美子の喜ぶ顔を見たいと思う。喜美子はそんな照子の妊娠を喜ぶ。むしろ味方同士なのです。
そして前回のジョーのセリフを思い出すと、悲しくもなってきた。
ジョーが運ぶ品物にスリスリしたことはあるのか?
ない。あったはずもない。
やりたいことをして食べていく。妹の学費も出せる。
そういう喜美子に、ジョーからの嫉妬がないと言いきれますか?
本作は難しい!
喜美子は絵付け火鉢を持って、開発室へと向かいます。
中へ入ろうとすると、藤永と津山は、今日の仕事が終わったからええけど……とちょっと戸惑いを見せます。
「なんかやってるから、集中してるから、静かーに入ったほうがええで」
あー、これね。
人類半分の男性の特徴だとか、理系男子の特徴だとか。
そう誤解されがちだけれども、実はそんなに多数が持っているわけではない――そういう特徴だとは思う。
八郎には過剰集中傾向があるんでしょうね。
悪いことではありませんが、やりすぎていて話しかけられるとオタオタするとか、叫び出すとか、不安定なのかもしれない。
そう言われてから喜美子が入っていくと、粘土を叩く音がします。
真剣な顔つきで陶芸に挑む八郎。
この横顔と手の動きがあるからこそ、選ばれたと思わせる。そんな松下洸平さんの姿が見えます。
バイオリンの音が鼓動のように響く中、次週へ。
と、綺麗に終わったはずが……予告編がレトロパワーワードまみれで卑怯やった。
「男女の痴情のもつれ」
「大人の女や」
人妻のよろめきといい、無駄に昭和のエロエロ語彙を増やす本作。
感動を台無しにされつつ、次週へ。
なんやねん、痴情のもつれ、て……。
【朗報】エロエロ医大生圭介、柳生一族のエースに抜擢
いやあ、最近、徳川三代目将軍争いとか、強すぎる麻呂のことばかり考えていたんですよね。
これも今にして思えば、予兆でござったか……。
荒木荘から、剣豪誕生のニュースです。
あのエロエロ医大生・酒田圭介こと、溝端淳平さんが柳生十兵衛を演じます。
荒木荘から柳生一族!
これはすごいことです。
溝端淳平さんだけでない。
キャストを見た時点で笑いが止まらなかったのは久々のことでした。
強すぎるあの麻呂にも期待しています!
以前のリメイクはちょっと惜しい出来でしたので、今回は思う存分濃いドラマにしていただければと思います。
NHKも時代劇の衰退に危機感があるのかもしれない。
角川時代劇時代まで戻せるのであれば、早急にそうせんと。これは期待しております!
サミュエル・L・ジャクソンやタランティーノまで、
「柳生十兵衛? あの眼帯侍だね。楽しみだね!」
と期待するだけに大変かとは思いますが、がんばってください!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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