スカーレット57話あらすじ感想(12/4)きみちゃんは王子様やん!

あか〜ん!

イメージ上の直子が叫ぶ――。

「直子……」

喜美子は考える。何があかんのや!

 

解決脳ならきみちゃんにお任せ!

「何があったんや」

それです。はい、ここの会話は、フィクションでよくあった脳内悪魔と天使みたいな、そういうイメージでいけるかもしれません。

でも、天使と悪魔ではなくて【男と女】ですね。

ジョーにも、マツにも、問題がある。
実際の人間を取り入れた部分はあるけれども、【昭和の男女像】を擬人化したようなキャラクターだと思えるのです。

 

◆ジョーは、マッチョで問題まみれの、昭和のお父ちゃん

◆マツは、そんな夫に逆らえない昭和のお母ちゃん

ジョーは、モデルの一人である女性陶芸家の父よりも、ずっと意識が低いと指摘されてはいる。
マツは、周囲の陽子たちとは違う。周囲の女よりも一段と脆弱な造形です。

どちらも極端にカリカチュアライズされているのでしょう。
そんな二人が、娘のトラブルを前にしてどうするのか? そう考えつつ、辿っていきましょう。

ジョー:甘えや!=しばきあげ

マツ:異常や!=悲観論

ジョー:熨斗谷電機みんなええ人や。=楽観論

こういうこと書けば、金を送ってくると思っとんや。甘やかしたらあかん!

マツ:金、実は送ってる……。=甘やかし

はい。
【しばきあげ&楽観論の男】と【甘やかし&悲観論の女】。
この二人だと解決できない――そんなドツボに突っ込んでいきます。

ここで、第三の存在を出してきましょう。
もちろん、きみちゃんです。

喜美子:うちのお金や! 一回だけやん。=仲裁

マツ:四回、六回送ってる。=嘘をつけない、素直

ジョー:どこに隠してんや!=仕切りたい

マツ:微々たる額。=問題からの逃避

ジョー:つけあがる!=怒る

喜美子:熨斗谷電機、蒲田の寮に確認や。=解決を提案

マツ:顔見てくる!=感情論

喜美子:お母ちゃんがいくのも心配や。電話してみる。代わりに見てもらう。東京の草間さんに頼める。草間さんなら直子も覚えてる=頭ごなしに否定せず、代替案を出す

ジョー:頼めるか。頼めるか、そんなもん!=男の沽券、感情論

喜美子:大事(おおごと)になるから、うちが勝手にやったことにする。=男のメンツは潰さない提案

ジョー:あかんあかん!=ウザい感情論!

喜美子:意地も誇りも置いとこ。ほんまに何かあったらどうする? ほっとくわけにはいかへんて。=感情論を慰撫する

ジョー:草間さんに言うといてくれ。直子を蒲田から草間流柔道で、琵琶湖越えて日本海までダー投げてくれてかまへんわ。=オヤジギャグを言える程度の余裕が出てくる

喜美子:ほなごはんにしよか!=解・決!

まとめますと……。

ジョー:しばきあげ根性論、楽観的、意地と誇りというメンツにこだわる

マツ:甘やかしスポイル、悲観的、優柔不断

そうそう。
根底には直子の【モウアカン方の妹っぷり】もある。

喜美子のように葉書を送らない。
稼ぎをうちに入れるどころでもない。これはあかん……。

そうそう、発表された新キャストの正門良規さんは直子の恋人役です。
【モウアカン】の中身って、そういうことやろなぁ。12月下旬に登場する鮫島正幸だそうです。

「鮫島のどことなく憎めないキャラクター」という正門さんのコメントから、もうあかん予感がする。

なんかやらかすで、マイナス展開あるで!

 

「NHK大阪朝ドラは男立てとるなぁ!」「せやろか?」

この二人の造形も『なつぞら』の泰樹&とよと比較すると面白いかもしれない。

ありえないことを現実のように描いたあの作品では、二人は昭和の男女理想像、長所、男性性と女性性の素晴らしさを擬人化したようなところがあった。
なつはじめ、あの二人の周辺は、そういう年長者から学んで、励まされたようなところがあったものです。

喜美子は欠点を補う造形になっています。

喜美子:理性的、確証なしでは動かない、感情をケアしつつ皆が納得する答えを出す

喜美子は一歩間違えたらチートスキル持ちと思えてくるほど、知勇兼備で解決ができる。

「男は解決脳! 女は感情論!」

そういう雑な理屈がインターネット上でも目立ちますが、そこはそんなに男女差がありません。

『なつぞら』はその問題提起をしてきた。
そして『スカーレット』では、舌をペロリと出しつつ、構造まで暴く。

おっほっほ!
そんなんバイアスや、フィクションはじめすり込みちゃう?

次の会話でも構造を暴いています。

喜美子は、ジョーが草間さんに頼むと大事になるから、私が言うと提案している。

何かトラブルがあったら、ジョーは咳払いしつつこう言えるんです。

「えろうすんまへん、うちの喜美子があかんことしてしもて。女の浅知恵ちゅうやつですわ」

うまくいけばこうだ。

「俺もこういうときは草間さんや、そう思てたとこですわ」

失敗=女の浅知恵、女が感情論で男の意見を無視してあかんことしてしもた

成功=女の決断を後押しした男は流石や〜!

これな。
歴史的にもあるんですわ。

歴史サイトだから、実例あげましょか。

「ペチコート履いた女に任せたろ!」
そう突っ込まれた、フランス・オーストリア・ロシアの事情。

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「妹ぉ! 援軍を頼んで来て!」

「ママぁ〜! 助けてぇえ!!」

と、妹と母に頼り切っていた奥羽の戦国時代。

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男は立てられとったんや!

そういう人類の真理に迫る本作、極めて優秀です。

 

地方商店街の斜陽

幸いにも、草間宗一郎とはすぐに連絡が取れました。

喜美子は大野雑貨店で電話をして、ジェスチャーをする信作に気づかず電話を切ってしまいます。

「ええ〜、草間さんと話したかったぁあ!」

そう駄々をこねる信作を、母の陽子が自分で掛けろとたしなめます。
そして飲み物をやわらかい滋賀のことばで出してくるのです。

「きみちゃん、これ飲んでみぃさ」

喜美子はハキハキと、草間が蒲田まで行くと告げます。陽子は草間さんは昔から優しいと同意。
信作は、柔道は厳しかったと言い、それはあんたが弱かったからと返されるのでした。確かに喜美子と照子の方が強そうではある。

ここで喜美子が口に含んだ飲み物に驚きます。

なんとコーヒーでした。

忠信は大工の棟梁と話をしている。
ドーンとカウンターはここにすると言うと、陽子はこっちだと反論します。玄関は予算の都合上、改装できないようです。

一体どういうことなのか?
喜美子が外に出ると、信作が大野雑貨店を改装してカフェにすると語ります。

駅の近くに大型店ができた。それで商売を圧迫されているのです。
品揃えが違うため、小さな商店への客足は止まってしまった。

そういえば前回、おっちゃんが袋麺を買いに来て、置いていなかったセリフがありましたね。
あのとき、大野夫妻が出かけていたのは改装のことだったのでしょうか。

だからといってカフェは飛躍しすぎ?
信作も困惑しています。

畑違いのことをする。
とはいえ、このへんにおいしい喫茶店はない。目の付け所は悪くないのかも。

信作は滋賀毎報告新聞にもあったと言います。火鉢で潤ってきた信楽は、大きな変革の時を迎えている。
そうそう、信作の世代は朝一番に新聞を読まなあかん。それがビジネスマンの嗜みです。

絵付け以外鈍いと言われつつ、喜美子もそれを感じていると同意します。

信作は、お見合い大作戦も信楽を活気付けるためだという方向に持っていくんですね。

ここの流れは、なかなか恐ろしいと思った。

『なつぞら』にもこういう要素はありました。
滋賀と北海道だからタイムラグはありますし、あれは最終週でぶつけてきました。電気に頼って牧場を効率化すると、かえって危ないのではないかという問題提起です。

信楽のような地方都市の変化も、現在と繋がっているのです。

大型ショッピングモールとスーパーが、このあと地方を席巻します。
ジャスコがその典型例ですね。今はイオンだのなんだの言われても、象徴として名前は残っています。

※『下妻物語』が典型例です

それが平成ならば、昭和の時代に変革があった。
大型店が鉄道や道路の側にでき、個人経営の商店が寂れていった流れです。

信作世代が元気な頃ならば、問題はなかった。

令和現在、これが大問題となっています。

信作世代が自動車を運転できなくなった時、こういう都市構造は危険なものとなったのです。
昔のように大野雑貨店のような店があれば、歩いて買い物ができた。それがもう、その手の店はない。

車も運転できない。
ネット通販? パソコンの操作ができん! そういうおっとろしい事態ですわ。

100作目以降、朝ドラはこういう社会のひずみを構造的に振り返るものになるのか。
そう期待してしまう流れが、二作連続できているように思えます。
それでこそ公共放送や!
※続きは次ページへ

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