「ご無沙汰してます!」
「こちらこそ」
「なおちゃん、なおちゃんや! 顔色もええやん!」
かくして、草間さんに連れられて帰省をした直子。
あかんようには見えませんが、結局どういうことなのやら。
その晩、喜美子も帰宅し、川原家はおおはしゃぎです。
草間宗一郎を迎え、ご挨拶。しっかり頭を下げております。
ん?
あれ?
直子は?
マツは、直子は自分で布団を敷いて寝てしまったと言います。喜美子が見ると、いびきをかいたまま丸まって眠っております。
草間が言うには、出会った開口一番、信楽に帰りたいと泣き出したそうです。
そこで、熨斗谷電機に頼んで休みをもらったとか。帰りの汽車の中では笑っていたって……ホームシックかっ!
ここでそんな直子の寝顔が見えます。
いびきをかいて、スカーッ、スカーッ、と、まるで子どものようです。
こういう、桜庭ななみさんの無邪気な顔。親がのぞきこんで、なんてこの子は可愛らしいのかと目を細めていたんでしょうね。そんな顔やで。
こんなええもんを見せてくる本作、ありがたいなぁ~。
直子、みだれ髪の横顔
そして草間さん歓迎のために、おっさんたちは「あかまつ」へ移動します。
話題は集団お見合いのこと。
時の流れを痛感する草間に、ジョーはカスならではの加齢トークを語ります。
かつては朝の六時まで飲んどっても、六時五分にはビャーッと仕事に行けたのに、今はもうあかんあかん……だってよ。
まぁ、おっさんがなんか言うとる。そうやって流してええんやけども……行けてないやん! 潰れとるやん。喜美子に介抱されとるやん。
そういうもんやろなぁ。
加齢を、徹夜できないとか、酒量減ったアピールで表現するのはあるあるや。
真面目に健康のことを語り出すと、それはそれで酒がまずくなるし……当時の方が自己管理に甘いもんでした。
おう、来たきた!
すると今度は、信作たち柔道の弟子がやってきます。
「スラーっとかっこよくなって!」
草間は驚く。
所沢さんは今の上司だと、信作は説明します。お見合い大作戦にも乗っかってくれたんだとか。
ふとここで思ったんですけれども、大野家のこと、カフェは将来どうするんでしょうね。
もしも信作に弟がいたら?
跡を継いでいたら?
違ったかもしれないなぁ。
大野夫妻は、息子を雑貨店主にするよりも公務員にする方がええと思ったのかな。それが出世だと思ったのかな?
けれども、そういうことだと家業継承は途絶えるんですよね。難しい話ですわ。
信作は元気そうな若者を連れてきています。
草間は誰か思い出そうとして、わかります。
「こっちは次郎くん!」
おっ! あのちょっと悪ガキめいた子やな。みんなお見合い大作戦に出るってよ。
「来たでえ〜! 草間さぁ〜ん、あっ、この人!」
お腹の大きい照子もここで登場。敏春はそつなく挨拶します。
「初めまして、照子からよう聞いております」
せっかくだから顔を見に来たって。そんな照子に、周囲は座るように促します。
妊婦は体が辛いし、二人分だから譲るのは当然なんですよね。
江戸時代でも、産婆さんは大名行列の前を横切ってもよかったとも言いますし。
そういう前提が崩れて、ベビーカーを迫害するような世の中は、どっかあかんと思う。
そして、そのころ川原家では……直子はまだ寝ているそうです。
「直子、起きてこんかったな」
「よっぽど仕事しんどいんやなぁ」
喜美子とマツは、直子を気遣っています。
百合子が戸を開けて、こう言います。
「なぁ、お腹すいたいうてたで」
ここで本人も起きてきます。
「よう寝た。何か食べさせて」
「ただいまが先や」
「……ただいま」
「おかえり。お茶漬け作ったる。待っとき」
「はよしてや」
うーん、この厚かましさよ。
思えば初回の子役時代からあかんかった。
でも、厚かましいだけの直子だと思います? このちゃぶ台前に座り、髪がみだれた横顔を見てくださいよ。
何を考えてるん?
寝顔は子ども、横顔は憂いを帯びた女の顔やん。ドキッ!
落差が半端ない。ギャップ萌えちゅう言葉の前に、そういう概念はあった。
桜庭ななみさんの魅力を見せな(アカン)。髪のみだれと心のみだれ、これもお約束やで――そういう気合いがそこにはあった!
まあ、それはさておき……【モウアカン】の中身で、いつまで引っ張る気や!
※歌のタイトルにもなっとるしな
兄や姉が多く、死別もある――そんな彼らの人生
八郎は八人兄弟の末っ子でした。この年代ですと子沢山はそこらであったものです。
長子と末子が親子ほど年齢差があるということもありえます。
八郎という名前からして、そうかもしれないとぼんやり思ってはおりました。しかも、話からすると上に姉がおります。
男子だけでも八番目だとすると、何人かは流産や死産もあったのかもしれません。
で、ここが大事!
ちょっとした設定ですけれども、大切なことだと思うんですよ。
昔は一人当たりの出産が多く、かつ乳幼児死亡率も高かったもの。
朝ドラは出産育児がイベントとして重要なだけに、そういう時代背景があってもカットしてしまうのです。
具体例が2017年。
主人公のモデルは8人の子がおり、そのうち4人が早世しております。
この中でも三人の娘は結婚するため、プロット上は不要とされたのか、成人した二男だけを生んだという設定にされました。
ちなみにこの二男も結核で夭折しているのですが、その設定もカット。
そんなん別にええやろ。プロットの取捨選択やん。と、言われればそうですが、あそこまで実在企業創業者伝と強調しておきながら、これはありなのでしょうか?
それに、こういうクリーンアップする描写ばかりしていると、視聴者側の知識にも悪影響を及ぼしかねません。
かつてはそこまで弊害はなかったのでしょうが、昭和すら遠くなった令和でこういうことを続けていてはあきまへん。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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