のぅ直子、仕事で辛いことあったんか?
優しい目で直子を見守る川原家。
どうやら仕事がらみではないようです。
直子はお父ちゃんに似た子やから
直子はこう切り出します。
「お父ちゃんが帰ってくる前に、うちの話を聞いてえや」
それからムスッとした顔で、百合子を見るのです。
「行けいうとる。どこやないわ。向こう行っとけ」
本作でも柄の悪い上位、そんな直子の塩対応。
百合子がかわいらしく「心配してる」とアピールしても、通じません。
子どもは向こういっとき。百合子にはわからん話や。一蹴です。
はい、ここでふくれ面になった百合子が退場。
「どないしたん? 言うてごらん」
百合子がいなくなっても、直子はムスッとし続ける。
この、ムスッとして、うちの顔を見ろ、空気読めや、と迫る対応はジョーそっくりやで。
川原家の上の二人娘は、結構、父親に似ておりますが、直子の方がよりあかん部分を引き継ぎました。
両者が激しく対立するのは同族嫌悪やな。この先、家事の最中に料理用の酒飲むようになったらあかんよ!
マツはそんな夫の対応に慣れておりますから、自分が立ち去ろうとします。
しかし、直子には、喜美子が不要だったのです。
そしてこうだ。
「いや男と女の痴情のもつれや。わからんやろ、喜美子姉ちゃんに言うてもわからんやろ、そういう話」
痴情のもつれ……でおったわ。
うーん、この状況。照子も喜美子は女じゃないと言っていたっけ。
喜美子の恋心に理解を示したのって、荒木荘のちや子でしたね。
身近にいる人間が理解しない辛さ。なまじ、しっかり者の姉だけに、直子には理解できないのです。
喜美子がおとなしく部屋を出ると、戸の前にいる百合子が床を叩きます。
はい、姉妹で、座って盗み聞きしましょう。壁に耳ありや。
直子はお母ちゃんに語り始めます。
好きな人ができてん。
タバコ臭い。近くに来るとわかる。彼は牛田。
最初はうっとうしかった。でも、洗濯機の組み立て行程を根気よく教えてくれた。
うまくいくまでつきっきりで。
褒めてくれた!
これに対してマツは?
どう答える?
「新人指導係やもんなぁ」
「新人指導係やもん」
「新人指導係やし」
お、おぅ、せやな……。
直子は正直な子やから
直子はめげません。
映画に誘われたのはうちだけ。休みの日、ゴロゴロしてばかりいるうちを名画座に誘ってくれた。
まぁ、直子はつまらなくて寝てしもたけどな。
牛田さんと映画の趣味合わんなぁ。誘ってくれたのに寝てしもて恥ずかしいなぁ〜……ってなると思う? ならんのよ!
牛田さんの肩にもたれて寝てもうた。
目ェ覚めたらうちの顔覗き込んでた。ほんで、牛田さんのここにチューしてやった! 牛田は驚いていた。
チューてどこに、どこ? 盗み聞き姉妹はジェスチャーでおろおろして盛り上がっております。
でも、うちわかってんねん。
牛田さんには彼女がおんねん。うちのこと、妹みたいにしか思ってへん。ほやけどうち、好きになってしもてん……。
直子ぉぉぉぉおおお!
なんだこの、醸し出されるめんどくさい女臭さは!
ここまで聞いて、マツはにっこりしております。
ええんか?
いかんでしょ。
直子は訴えます。
「お父ちゃんには言わんといて。草間さんにも言えんかった。誰かに言うたらマセたガキや言われてバカにされるし……」
「誰かにマセてると言われたん? マセたガキ言われてバカにされたん? ほんで腹立てて電報三通も送ってきたん?」
マツは叱らない。アホとは言わない。
ただ、娘にそっと寄り添います。
好きな人ができるいうんは、自然なことやで。
お母ちゃんに言わしたら、直子は正直もんや。自分のことをようわかってる。
自分の中の好きいう気持ちに気づいて、好きという気持ちを大切にしたんやな?
この母の言葉を、じっと喜美子も聞いております。
喜美子には気負いがある。
母に負担をかけたくない、心配をかけるわけにはいかない。
姉妹しかいない長女という、特殊な立ち位置の喜美子。
彼女は甘えることがなかなか出来ないのです。そう、ちや子みたいな存在でもいない限りは。
直子は母に甘えて、気持ちを打ち明けて、お茶をグビグビと飲みます。
「はあ、話してスッキリした!」
あ、やっぱりこいつ、ジョーカスと同じで酒飲ましたらあかん奴や。
この調子でビール飲んだらあかん!
「ふふっ、そうか」
「うん! もうええ、東京戻るわ!」
ええっ!
マツは驚きつつ笑います。姉妹も部屋の外で笑っています。
お嬢様育ちのマツにも、かつて「好き」という気持ちがあったのでしょう。
その気持ちの中身はまだ語られたことはありませんが、反応からわかります。
【マツ、好きという気持ちを大切にする】
・マツもかつて、自分の好きという気持ちを大事にしたんや。
・「出入りの丁稚さんや。常治さんは商売で笑てくれるだけ……せやけど!」
・マセたガキやとお父ちゃんは怒る……せやけど!
結果……駆け落ち、そしてジョーとの結婚生活。
三姉妹で最もジョーに似ている――そんな直子の反応を見ていると、夫婦の好きという気持ちも見える気がしました。
マツは解決能力がありません。ゼロや。おろおろしてて役立たずとは言われる。
病弱で、家事も喜美子なしではやっていけない。
けれども、情緒ケアスキルは作中随一でして。
ジョーは酒だけでは癒されない、横で相槌を打ち、微笑むマツあってこそやってこれた。
そういう癒すという意味において、マツは最高やで。毒親呼ばわりもほどほどにな。
マツとは反対に、知略は高いけれども情緒ケアスキルほぼゼロ!
そんな軍師が『なつぞら』にいましたよね。夕見子です。帰宅早々、直江兼続レベルの煽りをかまし、挨拶前にダメ出しをするあいつだよ。
ジョーとマツは問題だらけの夫婦ではある。見ていてイライラする。
それでも愛はある。相性でしょう。
いくら解決能力抜群でも、夕見子タイプとジョーがいたら、惨劇の予感しかしないわけです。
相性がある。それに、好きという気持ちも。それが今週のテーマなんや。
ジョーのどこに惚れたん?
はい、そんなマツに癒されてきたジョーですが。
うーん、どうしてこいつにマツが惚れたのか。今日も臭そうなジョーを見つつ、考えていきましょか。
「あかまつ」から出てきて、ジョーは千鳥足。
草間はそこまで酔っていないのに、ジョーはベロベロです。
「ちゃんとしまっとく〜おうっ、痛っ!」
ここで草間の衝撃的な告白が!
「僕、台湾行くんです」
「ああ、台湾な」
今度は貿易の仕事。日本を経つ前に、信楽に来たかった、直子ちゃんはいいキッカケになったと語ります。
「ちょい、酔い覚めたわ。台湾、あー、えらい遠い所!」
ジョー、なんで受け流すのかと思ったらただの酔っ払いでした。いつも酔っ払っているジョー。
演じる側は素面ですから、北村一輝さんがどんだけ演技派かちゅうことですよ。
『天地人』の悪夢はもう上書きすべきや。今度の大河、ええ役で出したってぇ!
それはさておき、香港の画商にも広東語で話しかけていた草間。
ジョージ富士川の通訳をしていた草間。
数カ国語を操る才人ですね。語学を生かして、満洲鉄道にいたわけです。
闇市でえらい人を助けたな、ジョーカス!
これぞ、情けは人の為ならず。
酔いが覚めたジョーは、頭を下げてこう頼みます。
「あの、ほんだら、あの、その台湾行く前に、喜美子の絵付け火鉢、見たってもらえませんか。あいつ頑張っとるんです。せやから見たってください、頼みます!」
うーん、この素直になれない誠意、情愛。
ジョーは悪いところが多いけれども、娘の努力を理解して見て欲しいという、愛はあるのです。こんなん憎めんよ!
マツみたいに、駆け落ちするかどうかはわかりませんけれども。
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