昭和35年(1960年)、信楽の川原家に直子が帰省します。
喜美子は朝からお雑煮を作っておりました。
直子の到着は、どうやら予定より早かったようです。一本早い電車にしたんだとか。
なんと土産がある。百合子は喜びます。
「ノートや!」
「勉強せい」
「直子が土産……」
妹は喜び、姉は感極まっている。そんな三姉妹です。
マツは、駅から連絡くれたらよかったと言いますが、直子は呼び出しだけで時間が過ぎるわと言います。
「おい……」
ここでジョーが、ふすまを開けて顔を覗かせます。
川原家のお正月
「いつまでおんねん」
「四日から仕事。明日には帰る」
そう答える娘に、気取ってなんだかこう言います。
旅費使わせて帰って来たけど、残念なお知らせがある。
雑煮の餅は一人一個――そう言われて直子は顔をしかめます。
あのしめ飾りに金使たんやろ!
ジョーは見栄っ張りなので、よくあったことなのでしょう。そういえば帰宅した直子が見ておりましたよね。あれは十代田さんが作ったと説明されます。
その八郎は、結婚まだだからお正月には来ないそうです。
直子はあがろうとするのですが、ジョーが「待て待て待て!」と止める。
感極まる喜びの知らせがあるってよ。気取りおって。
直子は、十代田さんが入選したのかと顔を輝かせますが……それはまだで、お正月返上だと説明されます。
案の定ジョーは、十代田うるさいとイライラしております。
そういえばふと思い出したんですけど。
『なつぞら』の泰樹。夕見子と雪次郎の結婚の時、家族があの頑固オヤジが最後の関門だと思っていたわけじゃないですか。
そのとき、お菓子一個食べて「うまいな」と言葉にして、即座に納得していた。男の沽券だの長老の顔を立てろだのすっ飛ばした、すごい描写だったと思うんですよ。
一体、ジョーとどこで差がついたのか。
考えるだけつらくなってくる……。
両者ともに背景や設定が細かいから、リアリティのある差が出てくるんだとは思う。
ジョーの醸し出す生々しいカスっぷり、その理由も考えていかなあかん。
はい、そんな知らせとは?
暮れに引いたという黒電話!
驚かそうと内緒にしていたんだって。気取りやがって。
ここ数年の朝ドラでも、最も気取った黒電話設置かもしれません。いや、それだけ貧しいんや……。
机に置かれたかわいらしい箸置きは、喜美子が作っているようです。粘土カスで作ったそうで。ええなぁ、欲しくなる!
編集サンも、信楽焼のコーヒーカップ、買ったってよ。
Amazonで信楽焼のコーヒーカップを注文してもた#スカーレット
— 武将ジャパン (@bushoojapan) December 14, 2019
実は私も探してます。こんなん欲しくなるでしょ!
喜美子は陶芸家になるつもりはあるのかと直子に聞かれ、否定します。
何年もかかるし無理やと。これも伏線ですね。
十代田さんは何を作っているのか?と直子が言うと、大鉢だと説明されます。
百合子は釉薬の色が思ったようにならへんと言います。ようわからへんけど、そう言う百合子です。
マツは締め切りが15日やったかと聞いてきます。それは大野さんの喫茶店開店で、陶芸展は月末だと喜美子は訂正します。
「十代田十代田やかましいなもう!」
そう言いつつ、料理がうまそうだと言いながら座ります。正月だから、当然ながらお屠蘇と言いたいところではある。
しかし、川原家ではジョーだけが当然のように酒を手酌で飲んでいる。
うーん、カスの新年やな。
娘に晴れ着を着せるとか。
マツと差しつ差されつお屠蘇を飲むとか。
あとで神社に初詣に行こうと誘うとか。
そういう気遣い、一切なし!
おせちもそんなにないし、華やぎがかけらもなくてある意味すごいとは思う。放送時期的には、すごくいいのだけれども。
去年の放送事故では、事業失敗で没落していた設定でも、ヒロイン夫妻にはドヤドヤと取り巻きが押し寄せ賑やかでした。ああいう悲壮感は受けないのかな。そう思ったもんですが。
今年はむしろつらい……。
でも、新年や実家の良さってあるんです。
直子はお雑煮を食べてこう言います。
「うーん、お母ちゃんの味やー!」
「川原家の味やー!」
百合子もこう返します。
どんなに粗末で貧しくても、世界でたったひとつ――そんなお母ちゃんの味がある。
トンボ帰りする娘が喜ぶって、これぞ帰省の意味じゃありませんか。
笑顔こそ、お正月の喜びや! そういうものがあります。
直子はギスギスしているようで、笑うと子どもっぽくてかわいい。
けれども、喜美子はここで食べる暇はない。用意はずっとしても、食べられないんや。
雑煮も食べずに出かけなあかん。台所の蜜柑を持っていけと、マツが気遣います。
ここで川原家の認識を押さえておきましょう。
・お正月返上で作品を作っている
・釉薬で試行錯誤中
・入選が結婚条件
これをふまえて、八郎がどうなのか、ってことや!
「サニー」開店祝いにコーヒー茶碗を
丸熊陶業では、八郎が忠信と打ち合わせ中。
コーヒー茶碗のデザイン案は二つにまで絞られました。
店名は陽子のようから「サニー」。しゃれていると八郎も言います。
私としては、妻への愛にちょっとうるっとなった。
「人妻のよろめき事件」も、あの愛に裏返しやったのか。そうかそうか……って、どういうドラマや!
忠信としては、どうしても二種類から絞れないのです。どっちか一種類いうのは悩むなぁ。そう言います。
ここで八郎は、こう言い切ります。
二種類作る。どっちみち、何回かに分けて焼くんだから。
忠信はラッキーだと思うところですが、喜美子はギョッとしています。
10個、10個で二種類焼くって?
いかんでしょ。
忠信も、なんぼかかったか請求してくれと言うと、喜美子はもちろんきっちり請求すると強い目で言い切ります。しかし、八郎は納得できてへん!
八郎は正月早々来てもらったと忠信にお礼を言いつつ、結局20個でまとめてしまいます。
直子のこと、電話のこと等、川原家のことを話しつつ、忠信は去ってゆきました。
喜美子は彼の背が見えなくなるまで見送る。
そして商品開発室に戻り、イライラしつつ突っ込むのです。
「二種類! 10個、10個、15個から20個になってる! 間に合うの!」
うん、これは喜美子、怒るやろ。
対して八郎はこうです。
正月休みにやれば間に合う。そのへんが厳しいと言うと、気を遣わせてしまう。
さらにこうだ。
「お金を請求すんのおかしいで。お世話になってる信作のうち。開店祝い、贈り物や」
「一銭ももらわへんの?」
「贈り物や」
ドヤァ……って、いかんでしょ!
喜美子、困惑。こんなん、視聴者も困惑するやろ!
喜美子はコストの説明をします。
この正月休み、丸熊は無人です。
照子は赤ちゃんを連れて、京都の敏春実家におります。八郎は能天気に、社長のご実家は老舗旅館なんだってとかなんとかと言っている。
喜美子の深刻さが伝わっているのかどうか。
そういう状況で、特別に会社を開けて、電気窯を使う。そのお礼にいくらか払うと説明するわけです。
八郎もそこは理解しています。
20個焼くとなれば、電気代はバカにならん。喜美子は続けます。
「粘土もただやない。ほやのに一銭ももらわへんの?」
八郎はこう来ました。
「お金は大事。喜美子の言いたいことはわかる」
いや、わかってんの?
喜美子の家庭事情、つらい人生体験を含めてそこわかってんの?
喜美子は、きっと八郎は父にはないものを見出して選んだという確信はあると思う。
けれども、お人好しで金銭面がザルだという、決定的な共通点を見出して、あかんかもしれんと不安になっているかもしれん。
私としてはジョーの対極というか、世間から見て一番得点が高い夫って、敏春だと思いますけどね。
ハッチーのここがあかん!
その1「金銭感覚が変」
庭環境や教育もあるのでしょうが、それだけではない。
彼の金銭感覚はちょっとズレているところは認識しておく必要がありそうです。
その割に福引券集めのようなことは細かくやるのかも。
ザルか、異常なまでにこだわるか。そういうところがある。
おかしいと思いませんか?
そういう必要経費は請求しないのに、喜美子には授業料をむしろ払わせていた。めおと貯金でええ話に着地しておりますが、なんか変ですよね?
金銭感覚があかん
八郎が金をもらわない理由はある。
まだ陶芸家じゃない。
コーヒー茶碗作りがうまいただの人。
だからこそ、コーヒー茶碗代金はいただきません。
おいおい、八郎? 喜美子の話聞いとったか?
必要経費はもらってええんやで。
「わかってくれた?」
喜美子はこう答えるしかない。
十代田さんと考え方違ういうのはわかった。納得いかん。納得いかへん。ほやけど、受け入れます……。
八郎は笑い出します。
「ふふふふふ。気ィ強いわ。そういう気ィ強いところも好きやで」
「何言うとんのん! 今そんな話!」
ハッチーのここがあかん!
その2「笑いのツボが変」
笑上戸、朗らか、いつも笑顔。これも時と場合によりますよね。
真剣な話をしているとき、勝手にツボに入って笑っていると、腹立つし、ときには気持ち悪くすらある。
喜美子は蜜柑をぶん投げます。
八郎は笑い、結婚前に考え方の違いがわかったとまとめようとする。
喜美子は一緒に蜜柑を食べずに、粘土カスと語り合うと言いいます。それから確認します。
条件確認してなかったんか!
喜美子は呆れたように言います。
今回うまくいかんかったら、結婚も陶芸家も諦めろ――それがお父ちゃんの条件だって。
八郎は焦りだします。
コーヒー茶碗の代金より大事なことを早く言ってくれってよ。だから間に合うように聞いたと喜美子は返します。
あのさぁ……。
ハッチーのここがあかん!
その3「人のせいにすなっ!」
いや、喜美子悪くないやろ。むしろ八郎の見通しが甘いだけやろ。
八郎は焦りだします。
「コーヒー茶碗作ってる場合ちゃうやん! 急いでやってまう!」
喜美子は、今回はダメでも次があるという気持ちはあったのか?とからかいます。
焦る八郎。
ちょちょ! そうおろおろして何か言おうとしますが、喜美子はふざけつつ突き放します。
「聞こえません、聞こえません」
「コーヒー茶碗断ろうか、うわーん!」
「あはははっ、泣き真似すな!」
泣き真似する八郎。笑う喜美子です。
ハッチーのここがあかん!
その4「予定変更があると動揺する」
彼なりに順番がある。
それが狂うとオタオタする。
ハッチーのここがあかん!
その5「ガキか!」
幼児退行しおったーーー!!
ここまでやりますかね。演じる松下洸平さんって、実年齢を知って驚かれた方も多いと思うんですよ。
年齢不詳なんですよね。すごく子どもっぽい顔にもなる。彼だからこそ許されております。
もし同じことを北村一輝さんがしたら……まぁ、適材適所ってあるからね。
ここでキモいとか、無責任だとか、そうならずに笑える喜美子は強いんです。しかし……。
※続きは次ページへ
コメントを残す