僕が教えんでも、できるようになって。
これは僕が教えてない。僕とは違う作り方や。
川原喜美子、初めての作品。
僕を超えよった。
才能のある人間は無意識に人を傷つけるいうたな。
喜美子がゆりちゃんの茶碗作ってるときも、卵焼きのお皿作ってるときも。
僕の横で。うまくいかへん僕の横で。
喜美子に横におられんのは、しんどいなぁ……。
横で励ますつもりが、追い詰めていた喜美子。
その【ズレ】が、次週どうなるのでしょうか。
新しい風は、時に破壊的だから
新しい風が吹くのはよいことのように思える――信作の上司もそう言い出しそうではありますが。
風でゆれて皿が落ちて、割れるかもしれないわけです。
壊して進め!
そう言い切る喜美子といい、朝ドラも100作目からそういう流れなのかと思ってしまう。
『なつぞら』の時も感じましたが、反応から差別や偏見も見えてくるんですよね。
◆地味すぎる朝ドラ「スカーレット」平均視聴率20%割れ!10年続いた連続記録が途切れそう
話の舞台が焼き物の里・信楽から動かず、出演者もヒロインの家族と夫、幼馴染たちと変化がなく、飽きられてきたのだろう。番組の前後の「おはよう日本」のエンディングで朝ドラ送り、「あさイチ」の冒頭で朝ドラ受けをやって盛り上げようとはしているのだが、とにかくストーリーもヒロインも地味すぎる。(テレビウォッチ編集部)
信楽が地味。
ずっと地元にいるストーリもヒロインも地味。
これはモデルはじめ、信楽の人や、陶芸従事者に失礼なことだと思います。
ちなみに信楽、観光客増えてるってよ。
その一方で、『半分、青い。』や『なつぞら』のうような、地方出身女性が上京する系でも叩かれるんですよね。
一番の安全牌は「内助の功」系だとは思う。
けれども、他の設定では叩かれるからって、その方向だけ取り扱っていたら1ミリも進歩はないわけです。
朝ドラでロールモデル、次世代を生きる女性を描くこと――これは使命として大事だと思います。
上の世代を振り返るようで、喜美子やなつの姿には、現代的かつ未来的な課題も示されていました。
なつが、夫と共に新しく作り上げる姿ならば?
喜美子は、
「女性の活躍を応援します!」
という社会の持つ生々しい本音を反映させてきている。
弟子二人は、八郎には弱腰でせいぜい窃盗しかできないくせに、喜美子にはぞんざいな態度を取る。
柴田は言う。女なら物珍しい。でも金賞なんか取れるわけない。
八郎は、弟子の面倒を見させること。おにぎりを作らせること。そういうことを喜美子に任せておきながら、横にいるだけでしんどいと弱音を吐く。
あまりに生々しい、現代的な構造がある。
最近、ジョーがまだマシに思えるようになった。
あれは正面切って、無知ゆえの男女差別をあっけらかんとしているからだと気づいてしまった。
フカ先生のような人徳者。それに八郎ですら、こびりついた女性蔑視がどうしてもある。
別のNHKドラマへの意見で、
「この女性たちは好きでやっているからいい! ジェンダーとしても画期的で応援された!」
というものがあった。
女性が好きでやった結果、じわじわと陰湿な嫌がらせをやられるところまでやらないと、中途半端だと思うんですよね。
女性キャラクターと純朴さを過剰に結びつける演出があって、私は「ダメだこりゃ」と思ったものですが。
◆高梨沙羅の顔に残酷なネットバッシング、女性アスリートが求められる“純朴さ”
痴漢抑止バッジってありますよね。
あれは、安全ピンのような痛みを与える効果もないし、スタンプのような犯人特定効果もない。
◆シヤチハタの痴漢防止スタンプ、ついに実現。ブラックライトで印影が浮かび上がる
でも、実際に効果はあるという結果が出ている。あれは物理ではなく、感情に訴えかけるのです。
見た瞬間、相手が罪悪感を覚えて手が止まったら?
それは有効です。
本作には、そういうギョッとさせるような効果がかなり丹念に張り巡らされています。かなり高等な戦術を使っている。
自分は差別なんかしてないと思っている見ている側に、
「せやろか?」
と突きつけてくる。
今、海外で話題になった「性犯罪者はお前や!」というフラッシュモブと同じ戦術です。
※性犯罪はあかん!
これに対して、
「女はアホやな。俺は性犯罪犯したことないで。もっと理屈で話せえや」
と反論したところで、意味はないのです。
感情を揺さぶりかける時点で、効果はある。
あきれたように語って平静を装っているようでも、そうであるかはわからない。
「ほんまにそう思っとるなら、何も言わんでええんちゃうの?」
こう問いかけられて、どうなのかってことです。
本作を見ている不快感を認め、見つめ続けると、嫌なものが出てくる。そこを素直に認めたくないから、ヒロインの悪口、陶芸の侮辱を始めると。
それゆえ、数字はまぁ、伸びないとは思いますが。
それでも、これだけ影響力のある枠を見て、視聴者の心理に揺さぶりがかけられたら。その時点で本作は負けていないのです。
そうそう、最後に。
◆黒島結菜は不貞して駆け落ちする?「スカーレット」に懸念される朝ドラの限界
これはむしろ、朝ドラでなくて男女観の限界やで!
「しかしNHKが朝ドラで不貞関係や駆け落ちを描くかどうかは疑問です。さらにNHKは、デビュー直後の2012年4月から黒島をNHKEテレの教養番組『テストの花道』にレギュラー出演させ、2015年には朝ドラ『マッサン』と大河ドラマ『花燃ゆ』への出演を抜擢。2017年9月にはドラマ『アシガール』で主演させるなど、黒島をかわいがっていることは明白です。そんな“NHKの秘蔵っ子”のような黒島を、不貞して駆け落ちするような“汚れキャラ”にするとは考えにくいので、ここはフィクション要素を色濃く盛り込むのではないかと思います」(テレビ誌ライター)
そんなん……これから始まる大河の看板俳優、知性派俳優の至宝、日本のベネディクト・カンバーバッチ(と、個人的に認定しとる)こと、ハセヒロさんをですね。
朝ドラでは投獄をさせまくったわけじゃないですか。
むしろ汚れどころか、存在そのものが暗黒物質(ダークマター)。
朝ドラはそんな限界突破済みですからね。
男のセクハラ、パワハラ、収監、銀行破綻はオッケー♪
でも女の汚れはあかん!
それではモロに男女差別やんか。
だいたい、一人で駆け落ちはできないわけです。こうなれば八郎があかんでしょ。
その八郎は、本作チームが自信を持って発掘した逸材・松下洸平さんです。壊して進むのは、喜美子だけではないのでしょう。
あとここ、
前作の「なつぞら」に比べおもしろい、安心して視聴できるといった声が多いのに、視聴率は「なつぞら」を下回っている「スカーレット」。後半戦の挽回に期待だ。
その媒体で、実際どの程度多いのか。データはあるのかどうか。
ふわっとした観察だけで書き、間違っていたらあかんのではないでしょうか。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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