はい、直子は偽装妊娠。
こんなんでよく騙したな。アホやな。喜美子と百合子は笑う。
直子はそっちこそようそんなんで騙されたと吐き捨てる。
三姉妹がはしゃぐ中、鮫島と八郎は唖然としております。
ここに信作も参加する将来が楽しみになってきますね!……せやろか?
家長には意地と誇りがあるんや
ギスギスはさっくりと終わりまして。喜美子がマツを呼び出し、縁側で思い出語りを始めます。イチゴを食べながら、四人で並びます。
紙芝居のこと。
あったなぁ、あのころ娘がポンせんすら食えんのに、ジョーカスは酒飲んどって。
借金取りのこと。
そうそう、ジョーカスのせいやった。
薬代を百合子が踏み倒すために、病院に行ったこと。
これもジョーカスのせいやな。
悲しい思い出ばっかり。だいたいジョーカスのせいや。
この場にいないお父ちゃんも、いるような存在感がある。カスならではの存在感と懐かしさがありますよね!
もっと楽しい思い出を話そうと喜美子が言うと、マツの声がここでやっと出ます。
『朧月夜』を歌い出し、止められるマツ。
本作は細やかでして。
この曲名、それに食べているイチゴからも、春だとわかります。
※マツさん、ええ声ですよ
直子にお金がなんぼ必要なのか。そう聞くマツ。ホウキを持って追いかけていたのは、一瞬のことでした。
喜美子が出すと言い、百合子も出すと言います。喜美子は止める。
「百合子はええ。貯金しとけ」
絵付け小皿のオーダーを引き受けたから、出せるとキッパリと言うのです。ええお姉ちゃんであり、切ない家長であり、苦しい女性だと思う。
家を背負うということは、男のものとされてきた。
けれども喜美子という存在は、父や夫を上回る、すばらしい家長そのものです。
二度と騙すな、騙したら敷居跨がせん。そう凄む顔も最高。
どうして戸田恵梨香さんって、やっぱりこのええアルト、腹の底からグッと入る声。
それにこの眼光ですよ!
かっこいい!
直子は黙り込みます。声が出ないのかと言われ、こう返すのです。
「……ごめんなさい」
姉妹も母も思い出し、楽しい思い出話になります。
百合子はイチゴを食べたこと。
今やん! そう突っ込まれて、そろって食べたらおいしいと言い出します。
ゆりちゃんは今朝も天使。スイカを食べたことも思い出すって。
悔しいと言えない、それも意地と誇りゆえに
このあと、風呂の話に。
薪入れ久しぶりやなと直子が言いますから、風呂はあのままだとわかります。
うーん、そこにはお金を使えないのか。
それとも薪が伏線になるのか。
はい、ここで電話が鳴ります。
本作は電話の扱いひとつとってもよくて、子役までも電話の扱い方がうまい。
年代的に生まれた時からコードレス、スマートフォンの方も多いでしょうから、ほんまにきっちり演技指導しとるっちゅうことですわ。
百合子は慌てて、窯業研究所の柴田さんからやと、喜美子に替わります。
家族が見守る中、喜美子はこうです。
「そうですか。わざわざご丁寧にありがとうございます。はい、失礼します」
電話を切ってから、サバサバとこう言い切る。
結果報告するん忘れてた言うて、こんな時間に。
落選や。
うちが入選するわけないやん。そんな、賞なんてとれへんよ。そう笑い、風呂は40分かかると言い、鮫島に布団はここでええかと聞くのです。
こんな喜美子には、悔しがる時間すらないのです。
彼女の直面する悔しさ、残酷さがここにもあります。
「あかん!」そう言えん奴があかん……
八郎は工房でデザイン中。
三津が切符と宿の手配をします。
三泊か、思い切って五泊か。そう言うと、三津はウキウキしながら言います。
銀座以外も回る。帰りは、瀬戸に寄る!
自分も行ったからご案内すると張り切るのですが。
「松永さん、行くの?」
八郎は困惑します。
「男と女や。泊まりで東京なんてありえへん」
「先生、先生っ、私のこと女だと思ってたんですか?」
三津はこう言い出す。
子ども扱いしていると思っていたのに、って。八郎は子どもだと言い逃れしますが。
うーん、八郎の欠点が出てきた。ジョーならこれやろなぁ。
「あかんもんはあかん!」
は〜、なんでジョーのカスじゃないところを懐かしむ羽目になっとんねん。
あれにも長所があったんですよねぇ。決断力、責任感、三津のようなことをウダウダ言うノリをぶちのめすところ。
そして、このあとの三津がな……。
松永さんと呼ぶのがよくない。お母さんやゆりちゃんみたいに、みっちゃん。あるいは喜美子さんみたいに三津。そう呼べってよ。
三津は、男女云々以前に、師匠への敬意が足りないと思います。
辞めた弟子にもそういうところがありましたが。
大久保さんやフカ先生から、そういうことを学んだ。父譲りの感覚もある。そういう喜美子との差がしんどい。
母は教師とはいえ、三津の性格はもうしょうがないのでしょう。
三津だけでなく、八郎には師匠になれる資質がないと思う。
これは個人の向き不向きです。
陶芸教室の先生はできてるって?
どうでしょうね。名声があれば資質は無視されるもんでしょう。
八郎は弱々しくこう返します。
「……そういうの、余計あかんねん」
八郎はもう、半分陥落しているというか。ほぼ、やっと踏みとどまる状態と言いますか。
喜美子の時も、名前問答があった。
男と女とも言っていた。
喜美子も押し切った。三津も押してくる。そして八郎は押されると弱い。
「じゃあ意識してもいいですよ。私は意識しませんから。大丈夫です。大丈夫じゃないかも。五泊も一緒にいたら先生のこと襲っちゃうかも! はははは、今のこれです、これ、独り言です! 冗談です、冗談です」
三津は明るく笑いながらそう言ってしまう。
しかも、距離を縮めてくる。
さらに粘る。しつこい。現地集合現地解散と言い出し、断られると舌打ちします。
三津よ……もしかしてロックオンしちゃった?
とりあえず八郎は、誘惑を乗り越えた。
けれども、根本的な解決をしなければ、同じことの繰り返しよ。むしろ二人で泊まって、大爆発した方がマシかもしれない。
来週も地獄は続く……。
鮫島、これはええアホ
鮫島は、お金は働いて返すと言い出します。公式ブログによれば、作り手が「アホ」認識しているらしい。
そんな鮫島ですが、誠意あるカスでした。そこもジョーそっくりでええと思う!
鮫島は考えとる。
何度も結婚て落ち着こうと直子には言うてるのに、自分が頼りないせいでできないと嘆きます。
マツは、こう返します。
「わかりました」
「許していただけるんですか?」
「許しません!……今は」
「ありがとうございます!」
この許可を、後悔する日があるような、ないような。まぁ、それでも八郎のウダウダさと比較するとマシに見えてくるってどういうこっちゃ。
喜美子には、意地と誇りがある
その八郎は、工房で喜美子の口から落選だと聞きます。
百合子らをガッカリさせたと笑い飛ばす喜美子。八郎もガッカリしたと言います。
自分の気持ちではなく、他人の気持ちや反響を先にいう。そんな喜美子が、しみじみと、私は悲しい。
喜美子よ。
あんた自身はどこにおるんや?
※続きは次ページへ
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