【編集部より】
朝ドラ『スカーレット』の主役・喜美子。
喜美子の息子・武志は、慢性骨髄性白血病を患いました。
「骨髄」とは、血液を作る組織のこと。この、人間にとって重要な部分がもしも病気になってしまったら、適切な血を新しく巡らせることができなくなり、やがて死に至ります。
助かる方法は一つ。
骨髄を移植することです。
しかし……。
一般的な輸血と違い、骨髄の移植は簡単ではありません。
他の誰かから提供してもらおうと思っても適合するケースが非常に稀で、ドラマの中でも大崎医師が「奇跡のようなもの」だと語っておりました。
そこで、喜美子のモデルである神山清子氏が立ち上げに尽力したのが「日本骨髄バンク」です。
骨髄を「提供してもよいと思っている人」と「必要な人」をマッチングさせるための団体です。
型が合えば人の命が救われる。ならばできるだけ多くの型と合わせてみればよい。そのためには何よりも多くの登録者が欲しい――。
かくして募集をかけ続けた結果、ドナー登録者(骨髄提供者)の数は現在48万人に到達し、一方で、骨髄を待つ人も現在3,000人ほどおり、48万もの登録があってもスンナリとはいかない難しさを痛感させられるところです。
登録者は、いくらいても足りないというのが現状です。
しかし、【骨髄】を【提供する】という聞き慣れない言葉に、恐怖心を抱いている方もおられるでしょう。
そこで今回は【実際に骨髄提供をした人】にお話を聞いてみました。
弊サイト・ライターの知人が体験したもので、本稿では「本人の語り」というスタンスで進めさせていただきます。
以下本文へ。
なぜドナー登録をしたのか?
誰かにドナー提供の話をする機会があると、必ず質問されます。
なぜドナー登録をしたのか?
正直、私の場合は献血の延長線上くらいの軽い気持ちでした。
誰かを助けたいとか。
そんな使命感があれば素敵だとは思いますが、ほぼ好奇心。
むろん善意もありましたけれども、献血ルームでポスターを見て「献血の上位互換版か〜」程度の気持ちで登録したのが始まりです。
ゆえにドラマ『スカーレット』を見ていて、病院内に献血ポスターが出てきたのは、うまい誘導だと思いました。
実は登録条件も、比較的ゆるいのです。
条件についての説明は、私みたいな素人がすべきことでもないので、以下の公式サイトを御覧ください。
もちろん登録時にもジックリと説明されます。
そこで私は純粋に「おもしろい!」と思ってしまった。
こういう手順で難病が治療できる。へー! 人体の一部を入れ替えるようで、なんだかワクワクしました。
パーツ交換で車をカスタマイズするような。パソコンの部品を入れ替えるような。それが人体でもできるんだな。そういう好奇心です。
赤血球はわかっていても、白血球の型がわかるというのもおもしろいと思いました。といっても、どういう型であるか、提供者には伝わりませんが。
今だから言えること。
登録は気軽でした。
どういうことかもあまりわかっていなかったかも。
マッチングした!
ドナー登録をすると、定期的にニュースレターが届きました。骨髄移植が成功した方の笑顔を見ると、使命感は湧いてきます。
でも、本当にマッチングするのかな?
時間が経つにつれ、だんだんと「なかなかないんだろうな……」という気持ちにはなります。
ただ、ニュースレターの笑顔は焼きつく。いつか自分も提供したいという思いは膨らみます。
登録から数年を経て、かなり記憶が薄れたとき、分厚い封筒が届きました。
「マッチングしました」
えっ! うわぁ、そういうこともあるんだ!
少しテンション上がりながら、病院で何度か採血。ところが検査までで終了です。そんなことが二度続きました。
私はちょっと悪い予感を抱きました。
『もしかしたら間に合わなかったのかな……』
あまりにも気になるので調べてみたところ、より近い白血球型、居住地、年齢、体型、そういった条件があり、複数名ドナー候補がいた場合、別の方から提供されるケースもあるとのこと。
そういうものか。
キッパリそう納得して、また数年経過しました。
三度目の正直
そして三度目。またも分厚い封筒が自宅に届きました。
少し前のめりになって検査の際は、
「三度目の正直で、今度こそ提供したい」
なんて言った記憶があります。
そんな風に話していると、今度はどんどん進んでいきまして。そうなると問題は、私の環境でした。家族の同意が必要となるのです。
骨髄移植におけるリスクの説明を、家族同伴で聞かなければなりません。
私本人は楽観的でしたが、家族は「うーん、大変だねえ」と、不安そうな顔……実際に、リスクがゼロではありません。
以下は恩賜財団済生会のサイトからの引用になります。
まず、日本の骨髄バンクにおいてドナーの死亡例はありません。
ただし、過去に骨髄を採取したり提供したりした後に急性C型肝炎、後腹膜(腹部の背側)や左中殿筋(尻の筋肉の一つ)の血腫といった健康被害が発生したことがあります。
いずれの場合も治療により回復しており、今は通常の生活に戻っています。(恩賜財団済生会)
このように健康被害があります。
国内では全て回復しておりますが、海外ではもっと重篤な事態も。
ただし、そこまで事前に調べなくてよいとは思います。というのも医師によるみっちりとした説明があります。
まともに聞いたら、ちょっと怖くなると思いますが、大事ですから。家族には、どういうことか説明しておいた方がよいでしょう。
ぶっとい針が刺される。それは確かなこと。会社だって休まねばなりません。麻酔に伴うリスクもあります。
ただ、私は強引にこう説得しておりました。
「私が提供しなければ、相手は確実に悪いことになる。その可能性と、私のリスクを天秤にかければ、どちらが重いかということでしょ」
結構、無茶苦茶な理屈ではありますが、なんとかなりました。
なお、リスク説明について重ねて申し上げますが、事前に書面が届き、医師がしっかりとかなり丁寧にしてくださいます。こういうことは、素人が適当に書くべきことでもありませんし、ネットで得られる情報も限られています。
調べてすぐわかる程度のことでないからこその扱いです。じっくりと納得できるまで説明を聞いてください。
周囲との相談が必要
大切なのは、家族だけではなく職場や周囲の理解です。
短期間とはいえ、検査や入院が必要。職場の理解がないと、ここが厳しい。
企業によっては休暇制度があります。私の場合、休暇制度まではないものの、部署の理解があってスムーズにいきました。
本当にここが大事なところなのです! 提供すると言っておきながら、途中でやめてしまうのは危険です。
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