スカーレット113話あらすじ感想(2/14)変人と片付けるなかれ

それにしても、ええ夫婦になりましたね。

結婚前、琵琶湖に沈めたると言っていた。

新婚時代は「お葡萄ぅ〜」と言うほどになって。敏春はデキる新世代若社長で。

子どもが生まれると、夫婦は変わると愚痴っていた照子。

そのあとは、同窓会で毎年喧嘩して、敏春は新婚時代のデキる男っぷり、照子は素直な若奥様っぷりが変わって。

ここへきて敏春の、窓から我が子を覗く姿はもうたまらんもんがあった。

一皮剥けましたね。だから本作、どんだけ役者の可能性を引き出すんや。

「こんにちは、よろしいですか」

そこへアンリがやって来ます。
照子は彼女の正体に、まだピンと来ていないのか。おやつを食べていた手を拭く。そして母を病院に連れていかな、といい出します。神経痛だってよ。

喜美子はたまには信作とご飯でも食べようやと、提案する。そういえば信作を最近見てへんなぁ。忙しいようです。

小池アンリはスキャンダル女優だった

「お友達?」

「幼なじみです」

アンリに聞かれ、そう返す喜美子。アンリはご主人に挨拶をしたいと言います。
陶芸家の川原八郎先生。この工房も夫婦で構えたんですよね?と。

喜美子はそう言われ、ふっきったように笑います。

「いつの情報や。うちは一人です。一人でやってます」

そこへまたも来客が。住田です。

「こんにちは、この前の作品、えらい喜んではった……」

「住田さんです。うちの仕事、あれやこれややってくれて。お客さんです」

そう引き合わされ、住田は動揺してしまう。

「ああ、ちょっと……」

そう外まで引っ張り出し、喜美子にこう言うのです。

「えらいこっちゃ! あの人、元女優でっせ!」

「えっ?」

「小池アンリいう、スキャンダル女優や!」

スキャンダル女優って!
なんという朝ドラ限界突破や。

留守電すら知らないほどすっとぼけた、浮世離れした喜美子だからこそ気づかなかった。

小池アンリ。
彼女の過去とは?

あー、なんか過去の朝ドラ関連のスキャンダルとの関わりと絡めるのはもうええから。

ドラマとしておもしろければええんやで。

小池アンリは天真爛漫

また2月になって、すごいキャラを出してきおったな~。

アンリは「天真爛漫」と紹介されていて、ちょっと驚きました。この年齢の女性に求められる個性ではない。そういうのはもっと若い子供や女性に求められるもの。近年朝ドラヒロインならば、代表例は『あまちゃん』の天野アキでしょう。

アキが若いアイドル時代で結末を迎えた。ドラマそのものは面白かったけれども、終わってから憂鬱になる作品ではありました。

ファンが過剰に天野アキと演じる女優を重ね合わせ、いつまでも子ども扱いしている。俺たちの好きなアキちゃんを取り戻せ! そう叫んでいるような、そういう熱気に辛いものがある。

所属事務所関連で厳しい目にあってきた彼女ですが、それだけでないファンの過剰な【何年経ってもあまロス症候群続行中!】も重荷になっていないか、どうしても考えてしまう。

朝ドラ主演あるある現象であるとはいえ、なんだかやりすぎ感があると言いますか……。

それと、昨年のベテラン女優が演じた、ヒロイン母のことも思い出してしまった。

色気が尽きてババアになったら、あとは世間にとって笑える、愚かで足を引っ張る存在になっていろ――そういう意識が透けて見えて、なんともうんざりしたものです。

一方『なつぞら』のとよ、本作の大久保は、賢者の風格を持つ老女として、その真逆を駆け抜けるものがありました。

そして、このアンリですよ。

アンリは可愛らしい。スキップする大久保さんでも可愛いらしさに唸ってしまったものですが、アンリもそう。彼女は紛れもなく可愛いらしい。お姫様と彼女を呼んで、全く後悔が湧いてこないのだからすごいと思う。

天真爛漫で、紛れもないお姫様。年齢は些細なもの。

喜美子、照子、信作の中にも、時折子ども時代の姿が見える。アンリの若い頃はわからない。烏丸せつこさんの画像検索をしましたが、それはそれとしまして。

アンリの若い頃は知らないけれど。美人だったことしかわからないけれど。それはもう、見る人を惹きつけるお姫様だったんだろうと想像はできてしまう!

でも、その美貌や可愛らしさだけを、世間は愛でてきたのでしょう。

芸術品が奏でる音の話をした瞬間、相手の目の奥に軽蔑、変なものを見る気持ちが宿ってしまう。そして若さが尽きたら、彼女の持つ本質的な魅力を見出すどころか、笑い者にしようとしてくる。

そんな世間によって、どれだけつらい思いをさせられきたことか。そう想像すると悲しくなる。

天真爛漫に、感情の赴くままに生きたお姫様が、どうなってしまったか?

「スキャンダル女優」

その悲しい顛末がこれから描かれるのでしょう。

彼女の中にある不思議な魅力。その素晴らしさを認めてくれる人はいない。でも、喜美子は違うようでして。これは運命を感じます。

変人と片付けないで欲しい

アンリの、芸術品を触ると音が聞こえるということ。

これはドラマの変な設定でもなんでもなくて、そういう人は実在するのです。多くはないけれど。

『半分、青い。』で既に出てきてはいた。鈴愛は、左耳だけが聞こえなくて、傘に雨が半分だけ当たっている感覚を、半分だけ青空だと表現していた。

『なつぞら』の、絵を描くことは排泄のようだと語った天陽。酪農の中で絵心に目覚めたなつ。カラスにデモをさせるようにしろと無茶振りするイッキュウさん。このあたりにも、あらわれてはいる。

次回作『エール』のモデルである古関裕而も、風景や絵を見ていると音楽が頭の中に浮かび上がってくる人物でした。彼は商業を学んでおり、音楽学校での専門教育は受けていません。

朝ドラ『エール』モデル古関裕而(こせきゆうじ) 激動の作曲家人生80年

※六甲おろしの作曲家やで

こういう人々を

「わあ〜すご〜い天才!」

と描くだけでは、何かが足りないのです。

喜美子に音は聞こえないけど、自分と何か似たところがあると感じるたのでしょう。

熱い炎を見つめる喜美子のまなざしや感覚。視聴者にはわかりにくいかもしれない。けれども、何もしていないようで何かが渦巻いていることは伝わってきます。

彼らはレールからはみ出してしまう。
専門教育を受けていないのに、生まれ持った何かが覚醒して才能を発揮してしまう。

それが気持ち悪い、鬱陶しい、学歴がないくせにと周囲から嫌われることもある。

現に、こうしたドラマの人物のバッシングはひどい。

本作の場合、ともかく男性キャラクターを持ち上げつつ、女性キャラクターを「慢心がある」「思い上がっている」「わけがわからない」と評する声も多いようですが、そうでしょうか?

過渡期だとは思う。

そういう個性を寄ってたかっていじめ潰すことが、どれほどの損失を与えるか。

ドラマの作り手として、NHK内部にも「このままではあかん!」と気づいた誰かがいるのでしょう。海外では、もうとっくにそういう流れになってきておりますし。

※海外ではエジソンやテスラですら、変人すぎて孤立するという流れです

昨年の神の子めいた「天才」については、さんざんリアリティがないと突っ込みました。世間から「変人」と笑われることもなく、いばり散らすだけで、さしたる創造性もない。それなのに周囲から持ち上げられる。あの人物には嘘臭さしかなかった。ああいう薄っぺらい人物は、もうNHK看板ドラマには、そう簡単に再登場はしないでしょう。

メッキはもう、剥がれたんちゃうか。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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