酔った喜美子は、ハチさん、ハチさんいうて泣いてた――。
アンリの言葉を喜美子本人はどう受け止めるのか。とりあえず、彼女は静かに洗濯物を取り込んでいます。
そこへ熊谷夫妻がやって来ます。
照子は無農薬野菜、そして敏春はなんかええもんを抱えておるようです。
窯業研究所で、竜也に親切にしている武志にお礼をしたいってよ。喜美子はバナナのお裾分けで十分と言いますが、敏春は律儀ですね。
照子が説明します。
なんでも、実家の旅館を頼って取り寄せた高級牛肉だそうで、100グラムあたりの価格を照子が明かそうとすると、すかさず止める敏春。
そこへアンリが起きて縁側まで出てくる。洗濯物があるけど、クリーニング屋さんは来はらへんのかといい出しまして……。
ここで敏春が、自分と家内だと照子を紹介します。アンリがここに住まわせてもろてるというと、照子はこうです。
「ずるいずるい、そんなん知らんかった、ずるい!」
照子は新婚当初の頃よりも、今が子ども時代に近くなってきました。
喜美子と暮らしたい、ってそうか……そら、そうか。
そこは姫君同士
喜美子は武志に電話をして、アルバイトのあと遅くてもええから寄って行けと告げます。
ええ肉もろたで。そう誘います。小池アンリもいると付け加えるのですが、はたしてどうなることやら。
そのアンリは、丸熊陶業いうたらタイルで有名な大きい所と照子に言います。
照子はタイルだけではないとやんわり。短いセリフですが、感慨深いものがある。
絵付け火鉢で一世を風靡した先代社長。
深野神仙は古い、これからはに女性絵付け師だと喜美子を「マスコットガールミッコー」にした敏春。
お抱えによる八郎ブランドも確立しかけたものの、今はそういうアート路線は縮小したのか、主力はタイルになってしまっている。そのタイルも、このあと下り坂です。
信楽焼、日本の陶器、がんばれ!
本作のテーマが「陶芸」というだけで「年寄り向けで地味や」という叩きが出たあたりにも、なんだかそういう悲哀を感じるで。
地味でもない。むしろ、そういう偏見に切り込まなあかん。スティーブ・ジョブスも信楽焼持ってたのにな!
「そこの奥さんなんやろ? お手伝いさんとはちゃうよな」
照子はそう煽られる。
ピキッ。お茶碗並べてと頼むと、アンリはこうです。
「箸より重いもん持ったことない」
ならば、すかさずとばかりに「箸を出して」と照子が言うと、アンリは素直に従います。
このシーンを「ほれ、やっぱり女の敵は女や! 陰険やな!」みたいに盛り上げたい論調あるかもしれんけど。
この二人はお嬢様同士ですからね。上流階級の争いでもあると。
それに、本作特異な生々しさがある。アンリの方が照子より上だとわかるのが、無神経というか悪気なく、悪意があるかすらわからない。そう思えるところなんですね。
アンリのお姫様ぶりと比べると、あの照子すらちょっと霞む。なかなか面白い構図が見えてきます。そういえば、マツも言動や所作の端々に、隠しきれないお嬢様ぽさが滲んどったなぁ。
あ、そうか!
ジョーとマツにあった、身分を超えた恋愛のようなものが、喜美子とアンリにもでてきているのかもしれない。
女優なのに芝居が下手やなぁ〜
ここで喜美子が、武志は誘ったけど来ないとぼやきます。
ほな何人?
と、人数分の食器を用意するから、そこが大事なのです。
照子はここで、親世代の集まっているところなんかへ来ぃひんと語ります。めぐ美と竜也も来ないってよ。おばあちゃんと蟹を食べに行くって。
だったら蟹がいいのかと喜美子がずれたことをいうと、蟹ではなくおばあちゃんがいいと照子。おばあちゃんはきついことを言わないから。そらそうよ、孫はかわいいもんな。
するとアンリが、照子にもお子さんがいるのか?と聞いてきます。
女3、男1。長女は結婚し、妊娠したと喜美子に告げると……。
「えーっ、照子おばあちゃん!」
「おばあちゃんはやめて!」
そう言い合う二人。
これは女同士で親しいから許されるかもしれんな。
昨年あたり、自分が「おじいちゃん」になる男が、「おばあちゃんになりたくないだろ」というゲス目線を妻に向けていて意味がわかりませんでした……。
あっ、ダブルスタンダード攻撃の予防しときますわ。過去作品に触れないで欲しいというツッコミもあるようですが、その過去作品が好きな方がダブルスタンダードだと言ってくるので、予防措置でもあるのです。えろうすんません!
というか、過去作品との比較がないレビューって味気ないでしょ――という編集さんからも要望もありますんで、その辺、よろしゅう頼んます。
アンリは、照子においしいワインを勧めて来ます。照子はうちも酒を持参したらよかったとワクワクしとる。
「喜美子、飲まんから」
ここでアンリがめちゃめちゃ飲むでえ、と指摘し、照子ショック!
「いつの間に飲兵衛になった?」
喜美子は飲兵衛やない。あんなん飲んだの初めてや、たいしたことない、と言いますが……。
まぁ、予兆はあったんちゃうか。ちや子たちと、中華料理店で紹興酒3杯飲んで気持ちよさそうだったしな。朝ドラヒロインが飲酒エンジョイか。ジョーカス酒乱で危険性も描いたし、ほんまに優秀なドラマやで。
ここで、泣いていたと聞いた照子が問い詰め、喜美子はシラを切ろうと記憶がないとするのですが。
アンリがこう言い、その場が凍りつきます。
「たいしたことあったで。ハチさん、ハチさん言うてたやん」
「嘘やろ!」
そんなしょうもないこと言わん、想像つかへん! そう否定する喜美子ですが、アンリは女優経験を生かしたという触れ込みで真似をします。
「ハチさぁん、ハチさぁぁん!」
なんやこの、わざとらしい粘りつくような声で愛する男の名前を呼ぶ、くっさい演技は……。いくら肩書きあったところで、こんなくっさいお芝居はあかんやろ。
照子がこう喜美子にささやきます。
「あれで女優?」
なんかこれは……NHK大阪全力でなんかやらかしおって! プロの女優による大根演技、それに戸惑うプロの女優。全員芸達者で笑うしかない。
朝からこんなん流してええの?
ええよぉ!
おっちゃん二人組も来たでぇ
ここで信作登場!
ケースで瓶ビール持参、百合子のケーキもある。百合子のケーキは毎回上手です、すごいな。
「ビール持ってきたで〜、百合子が作ったケーキもなぁ、どっこいしょ〜!」
おっ、年齢を感じるええ演技やな。林遣都さんの魅力が止まらんわ。
そして背後からはハチさんです。
「十代田さん!」
「お久しぶりです」
大野家に泊まってんねん。なんでだ?と喜美子が驚いていると、うちに泊まってんねんと信作は返します。呼び出したら、有給取って会いにきたそうです。
ここで、小池アンリに二人が紹介されます。
こちらは幼なじみで、妹の旦那でもある大野信作さん。そのあと、八郎が名乗ろうとするわけですが。
「あの、十代田いいます。十代田……」
「あー! あがって、あがって!」
照子がカットインして、アンリに八郎(ハチさん)の名前を聞かせないようにしている。
「ええ肉入ったんでいただきましょ!」
「すき焼き! ええやんけ!」
小池さんでなくて小池ちゃんでええからとアンリ。
「栓抜き! 栓抜き!」
「ケーキどないしましょか?」
「冷蔵庫入れときますか」
はしゃぐ信作。戸惑いのある八郎。ここでケーキをめぐって喜美子と八郎がやりとりをしていると……。
八郎は、なまじ家のことを知っているから、不自然でこれまた切ない。
事情を知る照子と信作が見守る中で、アンリはどうするのか?
これは気になります。
「よーしええよ、乾杯しようか!」
「これなんの会?」
「ええ肉を囲む会!」
「どうでもええ会!」
「どうでもええ会に、乾杯!」
喜美子が一人で暮らす川原家がパアッと華やかになる。
これはどうでもええことやない。美味しいものには人を集める力もある。どうでもええというけれど、集まった人の顔ぶれを見ればそうではないと思える。そんな生々しさがあります。
人と人の交流やつながりが、何かを生み出す。おばちゃんとおっさんがすき焼き囲んで飲んでいるだけ。武志や竜也からすればどうでもええもん。そういうものに何かがあると本作は伝えてきます。
ファミリーレストランでお茶飲んでいるだけ。居酒屋で騒いでいるだけ。そういうおばちゃんやおっちゃんたちかて、そういう時間を過ごしているのかもしれへんのよ。
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