スカーレット117話あらすじ感想(2/19)日常に宿る特別なこと

アンリの元に、宅急便で荷物が届きます。この時点で、アンリは誰かしらに住所変更を告げていることはわかるわけです。

喜美子は台所で仕事をしながら話す。
人生を語るのです。

喜美子の人生とは何か?

喜美子って、よく調理しながらセリフを読まされる。戸田恵梨香さんもこれは大変だったんじゃないかと思うのです。

女性向けとされる朝ドラヒロインでも、ここ数年において、ここまで調理中に長いセリフを読まされることはなかったはず。調理の仕草も大変なもので、包丁を手にした時は怖いことがあった。

指切るでぇ!
人を刺す持ち方やでぇ!

これは演じる側の問題ではなくて、指導が大きいとは思います。ベテラン女優でも、人を刺す持ち方をした朝ドラが最近ありました。反対に『なつぞら』での清原果耶さんは見惚れるくらい美しかった。戸田恵梨香さんも最高やん!

そんな喜美子にぴったりの、人生とは?

いままでずっと家族を背負ってきた。

背負わんでええというのは、はじめてで。

それがこたえてんやろか。それで寂しい思うてんやろか?

なんやその、たとえは悪いけど、引退後の牧羊犬か競走馬みたいな感慨は。ボケーっと日当たりしているだけかと思っていても、目だけはじーっと外を見ているアレや。

喜美子は陶芸家の先生です。
信楽で知らん人はおらんというそういう先生。それでも誰かの面倒を見ていないと寂しいってよ。

そんな人生への感慨を、アンリが聞いているかどうか。喜美子は話を聞いて欲しい。

喜美子はめんどくさいなぁ。確かに友達はいる。照子と信作もそう。ちや子やさだだっているでしょう。

そういう人に話を聞いてもらってはいかんのか? 彼女なりに何かこだわりがあるのでしょう。アンリは届いたものに爆笑しているので、話を聞いてもらっているかどうか不安になっています。

喜美子はもう、喜美子はそういうものだとしか言えないところがあって、かなり難しい人物像だとは思います。

本作もクライマックスに入り、結局、何を描かず、描いたのかという総括記事が目立つようになりました。

かなり難しい話だとは思います。

喜美子は穴窯のために一人でリヤカーを引き、風を浴びながらこう思った。

一人もええなぁ――。

けれども、一人で好きなことをしている結果、寂しさも感じてしまう。

この境地にはなかなか至れない。描くことも難しかったはず。

還暦はスカーレット

「おいしい、なんでこんなにおいしいの!」

このあとアンリは喜美子の料理を食べて、そう言います。大久保直伝、そのあともずっと作ってきたものではある。

ところが、喜美子はそういうことは言わない。

「丁寧に作ったからです」

「丁寧か。せやな、丁寧は大事やな」

喜美子は過去でなくて、常に現在に向かっていくようなところが、穴窯以降出てきた。

絵付け師時代は、中学の絵の金賞を持ち出してきた。肩書きや賞歴よりも、目の前の自分がどれだけ力を尽くしたか。それが答えだと見出したのだとは思うのです。

「あっ、さっきの話な」

アンリはちゃんと聞いておりました。その上で、こう返します。

これでほんまに一人になったて。

ちゃうで。家族はな、離れてても家族や。

川原ちゃん一人やない。わかれたハチさんかて、武志くんの父親や。みんな家族や。

そう語ってから、自分にも娘が一人いると言います。離れて暮らしているけれども、孫もおるで。あの小包は孫からのお誕生日プレゼントだとアンリは言います。ちゃんと娘と孫に住所は知らせているんですね。

うちはそういうのあんまり気にせんから、びっくりしたんや! 不意打ちや! そう楽しそうにいい、見てみるか?と言い出す。

なんとそれは、赤いちゃんちゃんこ!

喜美子が着せてもらって、こう言います。

「あーっ、還暦ぃ!」

ここで年齢を伏せていたアンリは60歳とわかります。

年齢ですが、丁寧な本作のミスがありましたね。コメント欄でご指摘ありがとうございます。公式サイト表記をそのまま使っておりまして。

昨日の放送「終戦の翌年、喜美子が7歳で八郎は9歳」は、2歳間違ってますで!
修正入るかな?

◆1983年現在

 

川原喜美子:46歳、1937年(昭和12年)生まれ

十代田八郎:48歳、1935年(昭和10年)生まれ

小池アンリ:60歳、1923年(大正12年)生まれ

昨日のうちにクレーム入っとるやろなぁ。

と、年齢ミスは修正入るとしまして、還暦にちょっと感動してしまった。というのも、ここ数年の朝ドラでも見ていなかった風習でした。最近の60はまだ若いから、そういうことせんのか。昔は結構しっかりお祝いしましたね。

ちなみに令和の今、還暦の赤はちゃんちゃんこではなく、スカジャンで祝う流れもあるそうです。

還暦が近くなってきた。そんな武志はそういう祝い方してもええんちゃうか。そこは時代です。

がんばりぃ、ありがとう そういう気持ち

喜美子は、アンリのオーダーメイド花瓶デザイン画を描いています。

その横でアンリが人生観を語ります。彼女の語りに反響があるようで、わかりますわ。

人の人生は一回きりしかないやん。

どんなことしたって、どんな金持ちでも、人生一人一回だけや。

一回だけしかないもん、もっと大事にしたいやん。豊かにしたいやん。

人生を豊かにするものって何や?

芸術や!

ほなからうちはここへ来たんや。川原ちゃんの作品に触れることで、残りの人生もっと豊かにする!

川原ちゃんの作品は、うちの人生を豊かにしてくれる!

喜美子は戸惑っています。そんなこと、考えたこともなかった。

何を考えて作ってきたのかと問われ、喜美子は正直に答えます。

穴窯で焼いた作品は、一個として同じものができない。

せやからうまくできるように、こう思う。

がんばりぃ。

うまいこと焼けたら、ありがとう。

そう思うて、夢中で、十年やってきた。そういう心で、そういう気持ちを作品にしてきた。

喜美子は、かつてジョーがしみじみと「贅沢だ」と語った人生に至りました。好きなことをして、学び続ける孤高の人生です。

がんばりぃ。ありがとう。その言葉を噛み締めているアンリ。

喜美子が花瓶の図柄を見せると、満面の笑みで喜ぶアンリに、早速、作陶すると告げています。

そして彼女は、その花瓶が完成したら終わりやと告げるのです。一緒に暮らすのはそれまで。神戸で準備をして、パリに行くそうです。美術館巡りをする。もっともっと人生豊かにする旅やで!

「一緒に行くか?」

「えっ?」

喜美子は戸惑っています。

パリ行きもそうですが、喜美子の特殊性も考えてしまいましたよ。

三津のように陶器めぐりの旅をしたわけでもない。荒木荘時代以外、ずっと信楽にいる。講演会や個展会場あたりは行くでしょうけれども……田舎の地味なおばちゃんでまとめてしまえるわけです。中卒で田舎にしかいない。

がんばりぃ。ありがとう。

その気持ちだけでここまですごいものを作る喜美子は、おそろしいものがあると思う。

けれども、これぞ朝ドラの極めたかったことかもしれない。

喜美子みたいな人は、朝ドラを見ている側にもいるはず。

進路を諦め、ずっと家に縛られ、自由になれない。

そういう視聴者に、喜美子みたいに自分の可能性に向き合えば、何か得られるかもしれない――そう伝えたいのかな? と、考えてしまうのです。

これぞ、本当の女性を応援するコンテンツじゃないかな。

ちょっと粘土で何か作るとか。
絵や文章に挑むとか。
喜美子あるいはお母さんコーラスに挑んだマツのように、見知らぬ何かが見つかるかもしれません。

次世代展への葛藤

信楽窯業研究所では、掛井が「第16回次世代展」のチラシを武志に見せてきております。フォント印刷が綺麗すぎるとリアリティがなくなるから、小道具さんが頑張ったチラシよ……。

研究生が腕試しに応募するものだと勧められて、武志は試すような腕がないと断ります。

作りたいもん作ったらええ。信楽来て手が止まってる。親は親で、子は子。いざとなるとそう割り切れんか。そう掛井は気遣っています。

「そんなことない、思てます」

そう真剣に返す武志が今日も誠実です。

二世の悲哀もある。武志は誠実で聡明だから感じてしまう。世間の、あの川原喜美子の子だという目を。竜也もそうかもしれん。

武志がアホであかん奴だったら、俺はあの天才の子だと鼻高々で、しょうもない作品でも親の名前で売り込もうとするはずですよ。いつの時代も、実力を磨くよりも、肩書き、親のコネ、血統で楽をしてセレブになろうと考える人はおります。

そこを窮屈だと敢えて隠し、お忍びで諸国を回り、戦う者もいた。実在もしたけれどもそれはさておき、フィクションの定番です。

敢えて楽になれる道を捨て、自由を選び、自分の修行をする――そういう存在を喜ぶ観客もおったんやで。時代劇衰退からか、その手の柳生十兵衛に愛着が消えていったのは……コネはもうええから。

そういうわけで、やはり『柳生一族の陰謀』リメイク版には期待しかない。

※エロエロ医大生が斬る!

圭介を好演した溝端順平さん、柳生十兵衛としてもいただきたい。

荒木荘は登竜門とは言われました。医大生から柳生一族になった圭介も、出世頭です。

昭和バイトの勤務態度

武志はこのあと「ヤングのグ」でバイト中。ちょっと浮かない顔です。

いつも無言でたこ焼きを焼いているおばちゃんが、ええ味出しとります。老眼鏡の質感とかな。

すると学と大輔がやって来ました。

おっ、やっと信楽にもインベーダーゲームが入ったようです。

※懐かしがる人もおるやろな

武志は、大輔が学校の先生みたい……もう学校の先生かと言う。それに大輔は、ボケツッコミ一人ですんなやとからかう。

このボケツッコミも、この世代ならではのものかもしれない。

本作は関西芸人の起用が多いことから「吉本か!」みたいなことは言われてます。いやいや、モロに吉本モデルが二年前にあったでしょ。ちなみに雄太郎さんは吉本ちゃうで、松竹や。来年の朝ドラモデルの松竹です。

その二年前にあれやこれや調べて痛感したのですけれども。令和の人間が「関西のお笑い」と思うものは、テレビで吉本芸人を見て印象づけられたイメージが大きいのです。

喜美子世代やジョー世代とは当然違うわけでして。

テレビジョンをあまり見ない。大阪にいたのは戦時中。そういう喜美子に「ボケツッコミ」と言っても、彼女はあまりわからない可能性はあります。そこは考えんとな。見る側が「こうだ」という偏見があると、なんでもそういう風に見えてしまうかもしれないのです。

ここで”P-SODA”という自動販売機から武志がオレンジジュースを2本取り出しました。このジュースの、サイケな色……。果汁数パーセント、ほぼ色つき砂糖水かもしれん。そこは突っ込んだらあかん。

こうした小道具を準備するだけでひと手間かかりそうですが、本作はスタッフもノリノリで用意しちゃっていると思えるのです。そりゃ期待しかないわな。

そして……。
学に彼女できたってよ! それが判明して、武志にも打ち明ける。

武志は、この年代の【ダメなゲームセンターアルバイト】そのものになっとる。

ジュース出して、当たり前のように友達と話す。昭和の人が真面目というのは幻想であって、ゲーセンバイト君はこんなもんです。バイトでもやたらと厳しくなるのは年号変わってからかもしれん。まぁ、薄給だし、このくらいでええと思うけどな。

レジ打ちなんて座っててもええやん。海外なんかはそうだし。それでもオーナーが来たら怒られてかねんわな。この時間帯は来ないのでしょう。

オーナーが常時いる喫茶店店員、しかも高給取り。それなのに堂々と座っていた。そういう昨年はようわからん。あれは何やったんや……。

ここで武志は、そういうのに疎く、大学でもなかったのかと、大輔から突っ込まれる。

なんだかオタオタする武志。この顔ならモテると言いたくなる気持ちはわかりますが、八郎に似たらそういうことは苦手かもしれません。
※続きは次ページへ

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