スカーレット115話あらすじ感想(2/17)どの道を選んでもそれで正しい

朝、喜美子はむくりと布団から起きる。なんだかちょっと具合が悪そうです。

ゆうべはワインを飲みました――。

月曜朝から二日酔いか?
そんな朝ドラヒロイン今までおったか!

かくして今週が始まります。

魅惑のワインナイト

前日の晚、小池アンリが神戸でわざわざ買うてきたワインで二人は乾杯しておりました。

結構飲みっぷりがいい。そこは父・ジョーの血ですね。きみちゃん。酒のうまさに、父のレベルまで目覚めたらあかんで……。

そうハラハラするのですが、おいしいと夢中になっている喜美子です。大丈夫かな?

それから一夜明けたわけです。喜美子がボサボサした髪のまま起き上がり、隣の部屋を見てみるとすでに布団が片付けてある。

喜美子はボンヤリと思い出しています。

「ほんますごい!」

「よし、いっしょに暮らしましょー!」

そう二人で真っ赤な顔で乾杯しまくっていたっけ。そして小池アンリさんは、またどこかに出かけたんやろか?

喜美子、40を超えて初めての二日酔いです――。

おう、本作よ。なんかえらい新境地にぶっ込んできたな。

女性と飲酒は、どうしたって偏見があります。アルコール耐性の性差もありますが、これはむしろ個人差も大きいものです。日本だと、九州や東北地方が強い、新潟はレジェンド級という話もありますが。

そういう生物的なことよりも、やっぱり社会の目がある。

演歌に出てくる女将のように、男のために酒を出すとか。あるいは目の前で飲んでグジャグジャしてくれるとか。なんか『麒麟がくる』であったな。

そういうものならばまだしも、女同士で飲みまくるって、はしたないとお怒りの方もおるかもしれませんね。

ええんやで、女が飲んでも。
男がカクテル飲んでもええという広告を、あのハイネケンが作る時代や。大人なら女も男も、自由に飲んでええんちゃうか。マナーと適量さえ守れば。

※男がカクテル飲んでもええんやで

不倫が、朝ドラの限界でできなかったという推察もある本作ですが。そういう意見は「ほんまに不倫が好きすぎやろ……」と流しておきまして。

女性飲酒で限界突破しとるやろ!
ええんちゃうか、最高ちゃうか!

職場に母親から電話がかかってくる地獄

信楽窯業研究所の事務室で、武志が電話を受けております。

「ほなこれくれたん、竜也んとこのお父さん?」

おう、敏春のバナナか。

武志はゆうべ説明したやんと、電話の向こうの喜美子にぼやいています。

ここが細かいところですが、「敏春さん」ではなく「竜也のお父さん」であるところがおもろいなと。喜美子ならば前者の方が当然とも思える。照子の夫ですから、ちょっと「不自然」です。

おっ、わざとかな?

女性は「ナントカさんの奥様」だの「ナントカちゃんのママ」という呼び方が多いものです。歴史上の人物でも多い。儀同三司母とかさ。

けれども、こんなん女性本人がどうでもええという差別ちゃうか? そういう疑念が最近は出てきた。どうでもいいことなんて、差別についてはそうはないから。

儒教社会で同じことをされてきた韓国で、チョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』が、男女でこの呼び方を反転させております。そういう影響が朝ドラにあったら? それはすごいことだと思う。

喜美子はボンヤリとした口調で続けます。竜也が心配で見にきてはったんか。ほなこれは幸せのおすそわけか。

「ほんでな、起きたら小池アンリさんいはらへんの」

知らんわ!

武志が突っ込む。そもそもお母ちゃんにあんな友達いたなんて知らん。

まぁ、息子としてはビックリしたやろな、いきなり抱き合って泣き出し始めて。

「友達? あれ友達なん?」

一方の喜美子は、なんかズレとる。実は友達が少ない喜美子。弟子もおらん。照子と信作とずーっとつきあっているし、荒木荘の仲間はおりますけど、丸熊時代の食堂にいた同僚とはつきあいがあるか不明。武志関係のママ友も出てこない。それが喜美子という人物よ。

おもろぃなぁ。

朝ドラヒロインは、いろいろな人から好かれる、それこそ愛され系が一番とされるものですけれども。社交性ゼロでもないものの、大勢の人に囲まれて導くリーダータイプではないんですね。

そして武志は困惑してる。

「ほんでな、いちいち電話してこんで」

職場にお母ちゃんから電話。嫌すぎるもんな……わかるで! 去年、ヒロインが職場の我が子に電話する場面が意味不明でモヤモヤしとった。親の言いなりになることを美談扱いするええ歳こいた大人ってなんやねん! そういうモヤモヤが解決するから、やはりそこは比較したい。

殷鑑遠からず――。

【超訳】こうなったらあかん! そう参照すべきもんな。古いアーカイブ探らんでもええんやで。昨年とか一昨年あたりを見よか。こうなってはあかんと思うためにも、比較は有効や。

それだけでない。受信料を受け取る公共放送にはルールがあったはず。そこをはみ出したものは戒めとして何度でも指摘します。しつこくてすまんな。

はい、本題戻るで。

「ああ、ほんだらな」

喜美子の電話を終えると、室長がお母さんは元気かと聞いてきます。また「火まつり」の時、講演会頼んでるんでよろしゅう言うといてな。そう告げるのです。

ここで、喜美子が話題にのぼる。事務員や真奈たちも加わります。

八郎は逃げて信楽を去った

「穴窯の川原喜美子先生、知っとる?」

「信楽で知らん人おらへんで」

そしてここで、室長が元夫である八郎のことも持ち出される。そこそこ有名で、がんばってはった。そこまで聞いて、武志は部屋を出ます。

八郎の話は、今でもたまに人の口にのぼることがあるのです。そのことが武志を苦しめているのかもしれない。

電話を終えて仕事場に戻る武志。まだ内線で部署へ転送する仕組みではないのです。

すると竜也がホウキを持ってすでにおりました。

「おはようございます」

おっ?
この前まで椅子二つ占領しとった不良が更生しつつある! 髪の毛はまだプリンやけども。

武志は挨拶を返すも、表情は少し暗い。伊藤健太郎さんのホクロはどうでもええとして、こういう細かい表情がお上手です。やはりここは、本人の努力と関係ないそんなホクロやのうて、演技を見て欲しいんじゃないかと思うんですよ。

そんな武志の胸中にあるのは、世間のこんな言葉なのです。

川原八郎は、妻である川原喜美子の才能に負けて、信楽から逃げてった――。

そうナレーションでまとめられた瞬間、胸が詰まりそうになる方もいるはず。

それはそう。八郎は才能に限界を感じて、そして信楽を去った。そのあれやこれや、苦悩の日々を一行でまとめられてたまるか! そう言いたくはなりますよね。

そんなゴシップをおもしろおかしく消費する。世間に対しても腹が立つかもしれない。けれども、本作タイトルで検索をすればそういうしょうもないニュースはすぐに出てくる。世間はそういうものだ。

その世間の声が、武志を苦しめている。

武志の苦しみは、親のせいなのか、それとも世間のせいなのか?

誰かそんな彼を救ってくれないかな。そう願いたくなることでしょう。

普通の教え子、普通のええ先生

釉薬を手にしている武志。そこには父の面影があります。

釉薬を見る目は嬉しそうで、好奇心があって、ちょっと元気になったようで安心します。

そしてここへ、掛井が入ってきます。

「おっ、ええ色出とるやないか」

武志が「ありがとうございます」と返すと、掛井はこう言い出します。

「あーそう言うたら、名前にも流行りいうもんがあんねんなあ。愛と誠が人気らしい」

わかってる。早いのはわかってる。予定日はまだまだ先や。先が早いんは十分わかってるけどな。そういう掛井は紛れもなくいいお父ちゃんでして。

早ないですよ。武志はそう言います。

桜と桃はおめでたわかった瞬間につけてました、だってよ。これも流行を感じますね。上の年代なら「桜子」と「桃子」になりそう。かわいいなあ。

「サニー」に嫁いだ叔母さんの子のことだと武志は言います。叔母さんが百合子で、叔父さんは信作。女ならば叔母さんが花の名前、男ならば叔父さんがナントカ作とつけると、話をつけていたそうです。

信作の候補は、ケン作、キン作、ユウ作、ハチ作。四つです。

ここで掛井が突っ込む。最後、納得できへんな。どっからハチが? そう聞かれ、武志は俺の親父由来だと返すのです。

「信作叔父さんは親父のこと、なんやしらん、大好きなんです……」

つらいなぁ。これも子どもの目線や。親の独身時代はわからないし、母と父のことは話しにくいですし。

ここで掛井は、こう語りかけます。

「俺も言うたことあるよな? 親父が出て行った話」

「武蔵丸いう名前つけてくれた、すぐ殴るお父さん……」

なんか妙に癖のある、四股名のような命名をして、すぐ殴る。それで出て行く。しかも、手紙を一通も寄越さないってよ。
どこにいるのかもわからない。おやじのせいで、どんだけおふくろが苦労して育てたことか。

これはあかん父や。相対的に酒乱ちゃぶ台返しのジョーカスがマシに見える、この流れよ。

それでも掛井武蔵丸は、自分を普通の子、そして普通のええ先生やと言い切ります。

ええ先生まで自分で言うか。そう笑う武志に、こう言い切るのです。

「親は親、子は子や」

これが一番、今の武志にふさわしいと思い語ったのでしょう。掛井がいてよかった。

なまじ、親がいるとこうなってしまう。そういう悲哀が八郎にはある。

八郎のつらいところは、親の離婚そのものだと思われそうですけれども、世間の目や期待も当然あるわけです。離婚そのものを悪とみなすのではなく、あの子は普通じゃないとみなす偏見こそ、悪いのではないかと思える本作です。

再会は「あかまつ」で

猫が好きな本作は、ぬかりなく茶トラ猫を「あかまつ」の前に出します。そこにはあの彼が来ております。

「いらっしゃい」

カウンターでひとり飲む信作が立ち上がり、八郎の姿を見て感激しております。

「ええ?」

「ええよ」

「ええよな」

ここで主人の赤松まで「……ええよ」と言うところがよろしい。

「へっへっへ、ハチ! おうおう!」

久しぶりやんけ、五年か、四年か。信作は感激して両腕でをわしっと相手の腕を抱えます。そこは昭和なのでハグせんよ。八郎は、四年ぶりやなと返します。

元気そうと言われ、そうでもないと返す信作。もう忙しいどころでない。研修やら顔合わせやら、今は観光課の大野課長やと。

ここで八郎が合いの手を入れる。

「ほんでなんや、びっくりしたで。いきなり会いたいういう連絡あって」

信作は愚痴ります。若いもんは仕事も覚えてきて、こっちも予定できた。桜と桃のピアノの発表会も終わった。カウンターでピアノを弾く真似をして「かわいらしい!」と言うものの……八郎はそれじゃ太鼓やねんと突っ込みます。

カウンターに出されるつまみが、これまたうまそうで罪作りですが。そこはさておき。毎回料理が本気だからさ。

「ほんで、なに? なんかあったんやろ」

何気ない場面ですが、ここがなかなかの超絶技巧でして。
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