「最初の女や。好きになった最初、一人目!」
ハイ、ここで、あの信作絡みで使われるBGM「ハレルヤハレルヤ♪」が響き始めると。そしてこう、なんだかくっさいことを言い出す。腕を広げ、抱擁の構えを見せております。なんやこいつ……。
「来いよ」
「ふふっ、気色悪いぃ……」
「来いっ! マスターの胸に飛び込んでこい!」
迫り方が気持ち悪い林遣都さん(滋賀県枠)という新境地に到達。こんなにほっこりキュンキュンせんイケメン枠、画期的や! 気色悪いカスマスター最高や!
「おいで砲」なんて最初からいらんかったんや!
長くて、特別な一日
はい、ここで来客があって一時中断しまして。
日が暮れて、有馬温泉から大野一家が帰ってきました。桃と桜はすっかり楽しんできたようです。よかったね。
「お土産ぎょうさん買うて来たでぇ〜」
昭和だけに、温泉まんじゅうかな? そう期待しときますわ。
「のんびりさしてもろたわ〜」
「ただいま〜」
そう入ってきた祖父母に、桃と桜はシーッと合図します。
そこにいたのは、信作の肩によりかかって眠る百合子。
こうして信作と百合子の長い一日は、終わったのでした――。
スピンオフを本編に入れること
そもそもスピンオフってなんやろなぁ?
アメコミ映画まで話を伸ばすとややこしくなるので、朝ドラで考えるとして。
脇役のわちゃわちゃした時間を描く。ファンサービスのようにも思えるわけですが、今週のスピンオフには、いろんな動機推理が出ております。
働き方改革? 休ませる? 後進の育成?
そういうこともあるのでしょうけれども、それだけではなく通底するテーマを描く上であえて入れる必要性も感じました。
スピンオフは、放送時間が変わる。絶対に見るとは思えないものではあります。
わちゃわちゃしてゆる〜いとは言われるものの、ここで入れる必要性はあったのだと私は思いたい。
信作にせよ、喜美子にせよ、八郎にせよ。ちょっと人とは違うかもしれない。個性的な夫婦。
複数そういうカップルがあって、全部が破滅しかねないとなったら、これはもう差別につながりかねないことは、考えてゆきたいところです。
舞台が甲賀だし、ちょうどいい例えなので出しますけれども。
『甲賀忍法帖』な。漫画やアニメだと『バジリスク』。
※滋賀県舞台やで
ああいう忍者物を信じてしまい……
「伊賀と甲賀は敵同士やな!」
「伊賀と甲賀の夫婦? ありえへん、バッドエンドしかないわ」
というように誤解をしている人がいたら、洒落にならんもんがあるわけやないですか。実際にはそんなことがない。あってたまるか! ちなみに大野信作は父方が甲賀、母方が伊賀のようですね。
フィクションの影響は過小評価できません。ですので、ちょっと変わった信作くんでも百合子ちゃんが受け止めて、幸せだと描く意義はあると思うのです。
このあたり、極めてわかりにくい話で、作り手もしゃあないと思うところはあるんでしょうね。
彼らの記憶システム
信作がそこまで変やろか? まぁ、マイペースではあるけど。
そう思いますよね。ただ、今日の回ではハッキリと信作の個性が見えておりました。
信作は「記憶にございません!」を連呼して、百合子の質問を全部はぐらかして開き直っていました。
それが今日、全部出てきた。
しかも正解。
なんやねん? おかしない? そう混乱しませんでしたか?
信作は何も嘘を言ってません。全部聞いてはいた。ただ、聞いた上で脳内の【ゴミ箱】に突っ込んだのです。
それが百合子と喧嘩して、これはあかんと考え、わちゃわちゃ忙しい中で【ゴミ箱】から引っ張りだして、きっちり用意しておいた。
そんなん嘘や、できてたまるかい!
なんて思いますかね。
それがそうでもないと近年研究が進んでおり、これをきっちり映像化した一例として、BBCの『SHERLOCK』があります。
タイトルロールのシャーロックも、そういう脳の使い方をする。彼の周囲にも、そういう人物はいます。
シーズン3の3話で対峙する敵・マグヌセンは抜群の使い方ができました。
※新聞王のアイツです
あそこまで精密な使い方はなかなかできませんが、意識次第では信作のように使えます。
彼以外でも、本作ならば喜美子や八郎もできている。彼らは釉薬配合を脳から引き出して読み上げられる。気前よく、釉薬ノートを三津にあげてしまうほどです。
ここが問題ではあるのですが。
『SHERLOCK』のような推理ものならばともかくとして、朝ドラにこういう人物を出すと気味悪がられ、意味不明になりかねません。
『半分、青い。』の律は気持ち悪いと罵倒されていましたし。
『なつぞら』の夕見子やイッキュウさんも変人だの上から目線と言われるし。泰樹は【抹殺】パンチだし。
まぁ、変人になる。
ですので、信作に対する百合子の「怖い!」という反応も、理解できます。信作は探偵でもなんでもない、ただのおっちゃんですから。
シャーロックも、ジョン相手に初めて推理を披露した際に褒められて、意外そうな反応でした。
「推理すごいやん!」
「えっほんま? 今までキモいって反応ばっかりやで……」
褒められるよりも「キモいから避けとこ」という反応。その同じことの繰り返しよ……。
でも、気持ち悪いと言わずに、ちょっと理解してもええんちゃうか。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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