スカーレット108話あらすじ感想(2/8)お母ちゃんは信楽で待っとるで

武志は帰宅し、工房へ。ちょっとそわそわしています。

ただいまと言って、すぐ出かけると喜美子に告げる。

「これ、いただいてん」

「ご飯いらんし! ほな」

喜美子が差し出したお菓子に目もくれず、出かけてゆくのでした。

今夜の武志は夕飯がいらないらしい

さて、川原家では。

赤い屋根がついて、茶の間には畳とカーペットが敷かれる。インテリアまでこの時代らしさをきっちりと出しておりますし、川原家の上向いた経済状況もわかります。よくリフォームして住んでいますね。

そこでお茶をマツと飲む喜美子は、制服のままで飛び出す武志に違和感を覚えている。しかも晩ご飯いらないってよ。

指摘された武志はこうです。

「ほうけ」

「なあどこ行くん?」

大輔のところ……と、それを聞いて宝田さんの学と勘違いするマツ。喜美子はご馳走になるなら持って行きと、手土産に菓子を渡そうとします。

それを断られてしまう。

喜美子 地獄の捜査力
その1「違和感を即座に察知する」

 

喜美子がこの時点で違和感を察知していることは、あとでわかります。疑念を抱くとアンテナがビンビンに立つから怖いよ!

『SHERLOCK』の主人公を思い出してください。

彼は違和感を察知すると、細かいところを観察し始めて、それを繋ぎ合わせて何か結論を出すじゃないですか。

喜美子は、それができるタイプなのでしょう。

※日焼けしとるし、姿勢もちゃんとしとるし……軍医やろなぁ

本作は、唐突だとか、もっとじっくり描けとか、心理の変化をやれと突っ込まれたりしている。

喜美子は常人の早回し、すっ飛ばしつつ結論を出すところがあるので、視聴者からするとそうなるのでしょう。

しかも、推理ものなら、見ている方も身構えているのでまだしも、朝ドラですし……。

喜美子は朝ドラヒロインでもトップクラスの知略だと思います。これが『なつぞら』の夕見子みたいな名門大卒なら、視聴者にもわかりやすかった。
しかし喜美子はそうじゃない。学歴関係なく世の中には頭の回転が抜群な方がいて、そういうタイプを軽んじたらどうなるか……。

「いってきます!」

「いってらっしゃい」

「お早うお帰り」

マツは、河内のお嬢様だったことがこういうところまで生きていると思える。そんな言葉です。

ええ着物だろうが、大女優だろうが。こういう細かいところで気を抜くと、そういう風には見えなくなってまう。昨年のアレとかな。

喜美子は「サニー」で探る

喜美子は「サニー」に来ました。

ロゴ入りエプロンができて、内装も凝って、上向きだと思えるそんな「サニー」。大野夫妻が元気で何よりです。

喜美子は武志のことを訴えたらしい。大野夫妻は、それはあれやな、思春期やとモゾモゾとごまかします。

そのころの信作も「あっ」「うっ」「やっ」しか言わなかったってよ。
あったなぁ、そんな痛い時代が。

ここで喜美子は、その信作が届け物をしていると知ってはりますよね? と二人に尋ねます。五年も続いている……って、喜美子、ほんまに怖いな。

喜美子 地獄の捜査力
その2「会話でヒントを探る」

コーヒーを飲んで、世間話をしているようではある。
なんの毒もない普通の場面やろ?

けれども、五年という時期、信作両親の反応を見て、彼女なりのヒントを探っていると思えます。

あの残念なブルース・リーモノマネも挟んでフザけすぎや、いくつになったと思てんねん、と笑いに持っていかれてはおりますが。

しかも忠信は、うっかり言ってしまう。

自分が信作に助言したこと。

「離れとっても父親として……父親代わりとして、面白いおじさんになってやらんといかんいうて」

喜美子は【離れた父親の影】を察知、あるいは確信したことでしょう。

「サニー」で愚痴るただのおばちゃんのようで、それだけではない。知勇兼備の将ゆえに表面的なところだけで判断すると見ている方が痛い目に遭う。

でも、家族にこんなんおったら怖いやろ……。

進路を決めて帰宅した武志

喜美子が台所で手を洗っていると、武志が帰宅します。

「ただいま」

「……遅いな、もう11時やで。高校生が帰る時間ちゃうやろ」

おかえりと迎える前に、これやで。これもどうなのよ!

喜美子 地獄の捜査力
その3「感情の慰撫は後回しや」
ここは、普通の親なら心配を口にしませんか。叱責、理由説明を先にするって、結構きつくないですか?

ましてやドラマですよ。
優しいお母ちゃんアピールはどうした?

はい、ここから地獄の尋問タイム。

「高校生でもこのくらいの時間あるやろ」

「ありえへん」

「文化祭の方が遅い」

「こんな遅うない」

「美術部のポスター描いていて。お母ちゃん窯たきしてて気付かなかった」

ここで喜美子は、ちょっと怯む。自分の窯たきがあったならば、そこには弱みがあるし、気付かなかった可能性はある。そこで、こう来た。

「美術部で残ってポスター描いてくれ頼まれたんか? 電話くらいしなさい」

文化祭で遅くなったのは、ポスター依頼という原因がある。その原因なしで結果だけ出るか。そう追い詰めて、電話しろと言うわけです。

「……すいませんでした」

「もう歯ぁ磨いて寝ぇ」

ここで気持ちも落ち着いたのか、喜美子なりの何かをつかんだのか。そこは親らしく、歯磨きと就寝を促します。許すというより、納得を求めている感がある。

喜美子は出て行って、工房の電気を引っ張って落としています。

そこへ武志が入ってくる。そして進路の話をしたいと言い出します。

「決めたで、高校卒業後の進路」

「武志、誰と会うてきた? 誰と話してきた? 決めたんは誰や?」

「決めたんは俺や。お母ちゃんが自分の人生や、自分で決めえ言うてくれたから。考えて、よーく考えて、いろいろあれして、最後に決めたのは俺や。大学に行きます。京都の美術大学を受験します。そこは公立やし、私立ほどかからんし」

陶芸科に進んで、陶芸家をめざす――。

そう言い切る我が子に、喜美子は反論しません。誰と話したかどうか、そこは関係ない、自分で決めたなら応援する。そう腹を括っているのです。

喜美子も武志も、カッコええなあ。

喜美子は、腰に手を当てて立つポーズが様になっています。
強い、自立を感じる。自分で立っているからこそ、我が子は手放せるとも思えた。

自分を確立できていないと、過剰に我が子に自己投影してしまうかもしれない。

武志も、両親に畏敬の念はあってもモロに出さない。彼も自立し始めていると。

昨年のヒロイン夫妻の息子は、何かあると親父すごい、親父偉い――そんな親父の子である俺はすごい。そればっかりの劉禅ぶりでしたからね。

ここから、有言実行にすべく、走り出す武志はカッコええのです。

「死に物狂いで勉強して、絶対合格してやるで!」

武志の受験勉強

美術大学の受験となれば、それは大変です。

学科だけではなく、実技もある。絵の練習をしている孫の背後に、マツがおにぎりを置いて行きます。ここで「ありがとう」と言うイントネーションが、しっかり関西弁になっておりまして。伊藤健太郎さんの努力とセンスを感じるで!

「コントラスト、コントラスト……対照!」

英単語を覚える――こういうセリフにも、きっちり美大受験を考えるチームの誠意を感じる。
絵の描き方にせよ、成果物にせよ、演技指導も小道具も気合が入っているとわかります。

昨年のネトゲ廃人画伯とその娘周辺は、このへん無茶苦茶で絶望しました。絵を描くポーズからしていつも同じ。大阪大学合格するにせよ、勉強している場面がない……って、それはもうええか。

ともかく武志の受験勉強シーンからは、リアルなあの辛さが蘇ってきました。

暑いと扇風機まわしつつ勉強する場面も。

部屋中暗記するペーパーが貼られているところも。

おにぎりがふりかけ(のりたま)で味付けしてあるあたりも(八郎に差し入れしていた頃から進化している!)。

ついでに言えば、その暗記内容が1614年「大阪冬の陣」、1615年「大坂夏の陣」というあたりも!

NHK大阪の誇りと思いを感じたで。
せや、大阪人は徳川家康の墓を作るほど、「大坂の陣」と真田幸村に思い入れあるんやで!

真田幸村(真田信繁)45年の生涯!史実はどんな武将だった?【戦国真田三代記】

アレやねえ、ここ数年、東日本大河ばかりで。今年は中部か。最近の西日本大河は【最低幕末大河の薩長同盟】(2015&2018)やしなぁ。

本作のスタッフで、NHK大阪主体の大河やってみたらええんちゃうか。期待しとるで!

親心すら見せない孤高

かくして昭和54年(1979年)3月、春を迎えました――。

後援会会長の住田が喜美子と工房で話しています。この住田は『おんな城主 直虎』で奥山六左衛門を演じた田中美央さんです。

住田は関西百貨店からのお話を持ってくる。断ったら大損する、日程調整すると言う。喜美子は乗り気ではない。

「うちはもう、白いご飯に味噌汁、おかずが一品あれば十分です!」

そう断る喜美子。
ほんまにふてぶてしい先生らしさが身についちゃって、ええね。

過去に成功するヒロインは大勢いた。
けれども、成功してふてぶてしくなるヒロインはおったかどうか。少なくともここ数年はいない。たとえモデルがそんなタイプの女性でも、尖った部分は丸められたものです。

「びっくりぽんのかっぱー!」なんて、いい歳こいてポーズ付きで叫ばされてさあ……。

住田は、ステーキ食べたくなるときもある、先生はともかく息子さんが……そう引き下がるのですが。

「あっ、今日!」

ここで、そのことに気付くのでした。

それにしても、きみちゃんもさ。息子の受験のことをこんな感じで先に言えばいいじゃないですか。

「百貨店なぁ。後援会の方の気持ちもようわかります。ほやけど、武志の受験終わるまでは、どうにも気持ちが落ち着かなくて。合格したらしたで、新生活の準備あるし。はぁ、寂しくなるわぁ……」

「そらわかりますわぁ(うーん、この川原先生も母親やなぁ……)」

しかし、喜美子はそうせんのよ!

荒木荘の時、ジョーカスの借金で信楽に強制的に戻された時は、称賛されるところではあった。どう考えても家族のせいなのに「自分で選んだ道」と言い切る喜美子は、健気にすら見えた。

ほやけど……表裏一体やで。

家族のことで言い訳しいひん、何がなんでもうちが決めた道や!

そうやって覇道を邁進されて、周囲がその天下布武について行けるかどうか。しかも周囲までそうみなされたら、どうなることやら。そこは別ですから。

疲れると思うんだよな。
私は好きなんですけどね。

桜は咲いたのか?

台所で喜美子が赤飯を作っています。マツはおろおろするばかり。落ちていたらどうするのか……だってよ。そらそうよ。

喜美子は、絶対合格する言うてるんやし、と強気です。

きみちゃんは絶対やると言いつつ、失敗したことが割と多いのですが。それでも強気になるんだなぁ。

受験以外もいろいろあったこの歳、それでも受験のことで上書きされてしまう――そう語るナレーションも秀逸で。自分の受験を思い出して、そういえばそうだったと思う方もおられるのでは?

自分の勉強で苦労したことばかり考えてしまうけれど、家族の協力あってのことだったとわかる。そこが生々しさだと思えます。あとは結果を待つだけ。すると……。
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