前回(第5話)までの『西郷どん』は……。
渡辺謙さん演じる島津斉彬が藩主に就任。
代替わりの祝に薩摩藩内で『御前相撲』が開かれることになった。
下加治屋町を代表して出ることになったのは村田新八。
しかし、新八は直前に腹をこわして、厠から出られなくなり、急遽、西郷が交代を志願する。
決勝戦まで順当に勝ち上がった西郷、その相手は、糸の縁談相手・海老原だった。
ケガする相手の弱点を狙わず、真っ向からのチカラ勝負に勝利した西郷。
優勝者に声をかけるためにやってきた島津斉彬を前にして、西郷はひたすら喜びに打ちひしがれる。
と、斉彬は意外なことを言い出した。
「次はわしと! いざ勝負じゃ!」
藩主相手でも、なんだか本気の様子の西郷。大丈夫なのか……。
そこに居並ぶ姫のなかでもひときわ美しい於一から、声援が飛んでくる。
北川景子さん演ずる後の篤姫の声を背に受け、西郷は腹をくくるのであった。
藩主相手に相撲で勝ってよいのか?
いやいや、接待マージャンのごとく、ここは普通に負ける場面でしょ?
というところで、やっぱり勝つのが西郷どん。
於一(篤姫)からの声援を受けて、本当に斉彬を投げてしまいました。
結果、褒美をもらうどころか、牢へ入れられることに……。
以下、第6話のネタバレへ。
相撲に勝って牢へ行く
西郷が入った牢の中には、見たこともない服装の男がおりました。
結論から言ってしまいます。
ジョン万次郎です!
うわぉ!
幕末No.1の波乱万丈はこの方かもしれません
得体の知れぬ男は、水も飲まない、ゴハンも食べない。
顔立ちはコッテコテの日本人(まぁ、劇団ひとりさんなので)です。
なのに、英語民謡の『ホーム・スイート・ホーム』を哀しげに歌うばかりで。
ゴッドタンのマジ歌選手権を思い出して一瞬笑いそうになりますが、まぁ、さすがにそんな悪フザケをできないでしょう。
ともかく、この正体不明の男は、なんだか日本語も理解してない様子でありまして。
ジョン万次郎さんは、もともと土佐の漁師さんなので。
薩摩ことばがわからないだけでは?
とも一瞬考えたのですが、西郷が水を飲めば、続いて喉に流し、あるいはゴハンを食べれば、それにも続いてかっ食らう。
毒殺を恐れていたんですね。
ここでちょっと、史実のジョン万次郎さんをご説明しておきましょう。
彼は実、幕末でもNo.1とも思えるような波乱な人生を過ごし、かつ素晴らしい頭脳も持っておりまして。
端的に説明しますと
・漁の最中、鳥島へ流される(江戸から約580km!)
↓
・鳥島でアホウドリや魚を食べながら約5ヶ月
↓
・アメリカの捕鯨船に助けられる
↓
・ホノルルへ
↓
・アメリカ本土へ渡って10年勉強やシゴト
↓
・米国の学校でも成績優秀(言葉を覚えながら)
↓
10年経って帰国を決意
↓
琉球へ
↓
琉球から島津斉彬のもとへ
とまぁ、こんな感じです。
開明派の島津斉彬ですから、本来なら、ジョン万次郎のような人物を無碍に扱うハズもなく、厚遇した上で薩摩にしばらく在住してもらいます。
その間、各国の情勢や、ジョン万次郎が習ってきた知識の習得に努めたんですね。
琉球館時代に作った英和辞典を駆使して
このジョン万次郎にも困ったところがありました。
日本語の話し方を忘れてしまったようなのです(少なくともそういうリアクション)。
なので会話は『英和辞典』を使っての拙いもの。
この辞典は、琉球館(琉球王国の出先機関)への奉公時代に大久保次右衛門(平田満さん)が自ら作ったものを借りたのでした。
言葉はたどたどしいながら、正座して器用にお箸も使うジョン万次郎。
さすがに「あんた日本人だろ」と大久保利通(瑛太さん)がつっこむのですが、やっぱり何もしゃべらない万次郎。
一方、西郷も、実は牢に入れられたのは、このジョン万次郎から情報を聞き出すことがお役目だったとして、引くに引けません。
話し合っていると、万次郎は鎖国を破ったことがバレ、死罪になることを恐れていたのでした。
かくして沈黙の意味が明らかになります。
お母ちゃん(´・ω・`)
死刑を恐れて何も話せなかった万次郎。
ではなぜ、また日本へ戻ってきたのか?
と、西郷たちに別の疑問が湧いてきます。
そこで、たどたどしく出てきた言葉が
「……オカァ……」
でした。
母ちゃんに会いたかったんですね(´・ω・`)
そして、
I must go back to Tosa!
そという言葉から、ジョン万次郎が「Tosa=土佐の人」だとピンときた西郷は、事の次第を藩に報告。
数日して、藩から返ってきたのが
「オカァは元気にしている」
という内容でした。
どうやら薩摩藩では、斉彬のツテを使い、ジョン万次郎の母親の無事を調べてくれたようです。
いやぁ、エエ人やでぇ。
いやいや、違いますね。
斉彬は聞きたいわけです。ジョン万次郎からアメリカの様子を。
そのために開いた食事会で、いざジョン万次郎を前にして斉彬はショックを覚えます。
「さっさと国を開いたほうが良いのではないでしょうか?」
一介の漁師(実は一介の漁師でもなくかなり凄い人なのですが)であるジョン万次郎に、政治や外交を語られ、驚いたのです。
造船事業にも取り組む
斉彬に気に入られたジョン万次郎は、しばらく薩摩に残ることとなりました。
残ってその知識や語学を伝えることにしたのです。
かくして取り組んだのが造船事業でした。
蒸気船の軍艦づくりは、集成館事業に従事する島津斉彬の夢でもあり……。
ジョン万次郎は造船に関する勉強もアメリカで修めておりました(史実的には、この後、薩摩藩では「船は外国から買った方が安くて早いな!」ということになります)。
なお、この後、万次郎は長崎奉行へ送られ、9ヶ月もの間牢にいれられます。
幕府ひどい!
と思うところですが、まぁ、仕方ないですよね。キリスト教かどうか疑われているわけですし、幕末の動乱時期でなければ入国もままならず、命の保障もなかったでしょう。
大好きでございもした
ジョン万次郎の問題が一息ついて、おまけに褒美まで貰うこととなった西郷。
大久保利通の父・次右衛門らの流罪処分等を解くようにお願いします。
同時に利通の登用を訴え、万事オーケー!という数日後、橋の上で佇んでいた糸から、思いもよらぬことばを……。
「子どもの頃から、ずっと大好きでございもした」
言っちゃうんかーーーーーーーい!
そして糸は、縁談相手であり、御前相撲で西郷の決勝相手だった海老原の家に嫁いで行くのでした。
さて、原作では?
これまで一切触れてきませんでしたが、今回のテーマ(ジョン万次郎と岩山糸の嫁入り)は、原作でどう描かれていたか?
というと、ほとんどございません!!!
正確には、藤田東湖の言葉として一瞬だけ出てきます。
後に西郷が斉彬に付いて江戸の薩摩藩邸に行ったとき、各藩の志士、思想家たちと交流を深めるのですが、その中に藤田東湖もおり、会話の中で
「(尊皇攘夷について)中浜万次郎とも議論を交わしたところです」
ぐらいなものでして。
なのでジョン万次郎とのヤリトリは、ほとんど脚本家さんのオリジナルですね。
まぁ、島津斉彬のもとに万次郎がいたのは史実ですので、これは『なぜ取り上げなかったのだろう』とむしろ原作に対しての疑問が湧いてくるかもしれません。
ジョン万次郎の詳しい話は以下のリンク先にございます。よろしければどうぞ、かなり面白い方ですm(_ _)m
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文:編集部
絵:小久ヒロ
※本稿は、林真理子氏の原作『西郷どん』ならびに市販の関連書籍を参考にして、筆者のツッコミを入れながら、ネタバレ&あらすじを掲載しております。
実際の放送とは異なる場面があるかもしれません。
また、参考書籍のセリフ部分をそのまま引用する場合には、引用タグを用いております。
そのため読みづらい箇所もあるかもしれませんが、ご了承いただければ幸いです。
【参考】
ジョン万次郎/武将ジャパン
『西郷どん(前編)』
『西郷どん(後編)』
『西郷どん完全読本』
『西郷どん ガイドブック』
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