前回(西郷どん11話ネタバレ&あらすじ)までの『西郷どん』は……。
徳川家定に輿入れするため、薩摩弁の標準語矯正や夜伽の勉強など、幾島の指導で御台所の修行に励む篤姫。
しかし、そんな篤姫に対し、島津斉彬は
「篤は不幸になる」
と言う。
なぜなのか。
釈然としない西郷吉之助に対し、説明されたのは、
【家定が病弱で、世継ぎを作れる身体ではない】
ということであった。
アタマからその言葉が離れず苦しむ吉之助。
そんな吉之助の悩みなど関係なく、家定の次の将軍を誰にするか?という問題が迫りつつある。
この将軍継嗣問題は、一橋慶喜を推す一橋派と、徳川慶福(後の徳川家茂)を推す南紀派で、幕府は二分されていた。
一橋派…徳川斉昭・松平春嶽(松平慶永)・島津斉彬
南紀派…井伊直弼
一橋派は肝心の一橋慶喜が将軍職に乗り気ではなく、事前の会合はいまいちまとまりに欠ける内容。
そんな会合の後、島津斉彬が倒れてしまった。
虎寿丸が亡くなったばかりのことに、揺れる薩摩藩。
吉之助は、斉彬が食していた膳の中身を、医師である橋本左内に確認させる。
と、そこには「ヒ素」らしき毒が盛り込まれていた。
『あいつめ!』
ブチ切れた西郷は、高輪の屋敷へ突撃。
斉彬の実父・島津斉興のもとへ押しかけたのだ。
証拠もないまま元藩主のもとへ犯人だと言わんばかりの行動はさすがに愚行以外の何物でもなく、吉之助は、斉彬から殴られてしまった。
そこで斉彬は言う。
「西郷、お前をなぜ、わしのそばに置くか分かるか? わしも、お前も同じ大バカ者だからじゃ。お前も民のために、己の命を捨てられる男であろう」
西郷は涙を流すしかなかった。
将を射んと欲すれば先ず本寿院を攻略せよ
1855年3月、お由羅騒動に関連した者たちに特赦令が発令。
大久保正助の父が喜界島からの帰還を果たした。
江戸では篤姫の御台所修行が一通り済んでいたが、なかなか輿入れが実現しない。
教育係の幾島が、斉彬に詰め寄ると、どうやら井伊直弼に邪魔されている様子。
そこで浮上してきた案が、本寿院(泉ピン子さん)の攻略であった。
徳川家定の生母であり、多くの実権を握る重要人物である。
彼女を攻略するためには、千両でも万両でもカネを使っていいとのお達しがくだり、西郷がその役目を仰せつかる。
そんな慌てた様子を何か感じ取ってか。
篤姫が西郷に問う。
「わが輿入れ、もしや事が破れたのでは」
全力で否定する西郷。
すぐさま関係者への手回しに奔走し、本寿院へのお目通りに繋げた。
家定本人に選ばせよう
大量の献上品を前にして喜ぶ本寿院。
その望みは「丈夫な姫」であった。
実は徳川家定に嫁いだ正妻二人は、これまで早逝しており、それをクリアできるならば後押しをしてもよいと言う。
これに対し、丈夫なだけでなく【運も強い!】と太鼓判を押す幾島に、本寿院がうなずく。
彼女はある方法を考えた。
姫たちの絵を複数枚用意して、家定本人に選ばせよう、というものである。
一応の公平を期すために、その座には阿部正弘と井伊直弼も同席させるという用意周到ぶり。
果たして家定は?
輿入れ決まるも納得のいかない吉之助
どんな姫が良いか?
家定に問うと
「死なない御台所が欲しい」
というなんとも切ない答えが帰ってきた。
すかさず本寿院が篤姫の絵を取り出し、丈夫な上に運強し、と猛烈プッシュ。
家定は、アッサリとYESと答えるのであった。
なぜ、こんな簡単な事がいままで2年間も進まなかったのか?
いささか疑問なれど、ともかく、篤姫の輿入れは念願かない、本人も大層喜んでいる様子である。
しかし、吉之助は納得がいかない。
家定は身体が弱く、世継ぎが望めそうにないことを篤姫に伝えていなかったからだ。
不満げなその顔を見て斉彬が声をかけ、そして、自ら本人に告げるつもりだと吉之助を諭すのであった。
突如、地面が割れるかのような揺れ
後日、斉彬は篤姫に茶を点て、そして事の次第を明かす。
「於篤……すまぬ。薩摩のため日本国のため、覚悟をしてくれるな」
「お父上のためなら、篤は喜んで不幸になります。薩摩の姫になったときから、覚悟はできておりました」
隣室にいる吉之助にまで聞こえてきた、彼女の決意。
幾島も同様に涙が止まらない。
その晩のことだった。
突如、地面が割れるかのような揺れが関東を襲った。
安政の大地震(安政江戸地震)である。
現在の推測でM7.0とされるこの直下型地震は、荒川河口付近あるいは東京湾、千葉県などが震源と目されていて、江戸に甚大な被害をもたらした。
被害者は最大で2万人。
薩摩藩邸も当然ながら揺れに襲われ、飛び起きた吉之助はいの一番に斉彬の御座所へ向かい、無事の様子を確認すると、今度は篤姫の寝所へ向かった。
なんとか彼女の無事を確認した矢先、再び、余震が彼らを襲う。
瞬間、柱が崩れて、屋敷の大きな梁が篤姫をめがけるようにして落ちてきた。
咄嗟にその梁を支える西郷。
「おいの腕が折れる前に、はよ逃げてたもんせ!」
しかしその前に、脆くも屋根が崩れ落ちた。
身を挺して篤姫に覆いかぶさり、彼女を守る吉之助。
眼の前には篤姫の美しい顔。
彼女は言う。
「このまま私を連れて、逃げておくれ」
「……分かいもした。どこまででん篤姫様をお守りして、どげな遠かところまででん、お供つかりもす」
「……ありがとう、西郷……もうよかとじゃ」
子供を産むことは望めない。
そんな絶望の中で彼女ももがいていたのであろうか。
しかし瓦礫の中から自ら立ち上がり、意を決した篤姫。
西郷に礼を言うと、間もなく駆け込んできた幾島に抱えられて去っていった。
なお、林真理子氏の原作で、西郷と篤姫が接近するシーンはあまりない。島津斉彬に篤姫のことを「見守ってやってくれ」と頼まれることはあっても、今回のような近づき方ではなく、婚礼道具を揃えて直に礼を言われたぐらいだ。
特に地震のときに命を張って助けた――という、あまりにドラマチックなシーンは皆無で、地震の当日、西郷は斉彬だけを心配して絶叫し続け
「お前の声は、ずっと聞こえていたぞ」
と言われている。
第13話へ続く
なお、安政の大地震(安政江戸地震)について、もう少し詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
幕末の安政期がいかに災害に見舞われ、黒船以外の危機も倒幕に影響したか、ご参考までにm(_ _)m
【参考】
井伊直弼
徳川慶喜(一橋慶喜)
橋本左内
島津斉興
島津斉彬
徳川斉昭
篤姫
徳川家定
西郷隆盛(西郷吉之助)
『西郷どん(前編)』
『西郷どん(後編)』
『西郷どん完全読本』
『西郷どん ガイドブック
コメントを残す