わろてんか136話あらすじ感想(3/14)駄目クリエイターを克明に描く秀作や!

昭和14年(1939年)、日本国内では娯楽にも検閲の手が迫りつつありました。

「映画法」も施行されることになり、栞たちにとって受難の時代。
妥協しない映画作りは暗礁に乗り上げ、伊能商会の社長職を解任させられてしまいます。

そんな栞に対し、てんは「一緒に映画を作ろう」と持ちかけるのでした。

 

なぜ風太の家に居候なんだい?

今朝は、おてんちゃんと栞様を加えて、武井夫妻の家で朝ゴハン。

今日も一生懸命、風太役の濱田岳さんがアドリブを入れている様子ですが、ちょっと声が大きすぎて不自然ですよね。
スカスカの脚本を何とかしたい意欲が空回りのようで切ないです……。

さて。伊能栞というより、今や無能栞さん。
彼も映画作りに参加したいと言い出しました。しかも風太とトキの家に居候したいんだそうです。

会社を追い出されたのはわかりますけど、家まで失うって???
何やらかしたんでしょう。

まさか本当に、所持品がカバン一つとか?
東京まで映画作りのために行く前に、やることがあったんじゃないですかねぇ。

ここで【ええ話用BGM】が入りますが、主題歌が流れ出し、ぶつ切りになって台無しに。スタッフのやる気のなさを感じます。

そもそも北村で働くことが決まったのなら、会社で住まいを用意してあげればいいじゃないですか。
乙女組のときには立派なところを借り上げていましたよね。

常識的に考えれば、風太の家に居候する必要性は1ミリもない。
いや、わかってますよ。長屋での密度濃い団らんをさせたいドラマの都合なのでしょ。

 

検閲を出し抜く方法を考えるんだ!

栞は映画部顧問。
風太が部長兼任。
台本にそのまんま反戦詩を入れたチャレンジャー楓さんが、文芸部から加わります。

要するにいつものメンバーの使い回しですね。

早速ミーティングです。
「恋愛描写が目を付けられるからまずい」
「でも目を付けられるからこそ見たいはず!」
「検閲ばっかり気にしてたら、おもしろいもんできへんやろ!」

……凄い。
戦時中の検閲が1ミリもわかっていないムーヴにもほどがある。

これはおそらくや、
【検閲と批判の区別】
がついていないんでしょうねえ。

むしろこの何もわかっていない会話に「映画法」という単語が出てきたことにびっくりしました。
ほへ~。名前だけでも知っているんですね。

ここで栞様、ドヤ顔を決めます。
「検閲を出し抜く方法を考えるんだ。人情を入れて、一見すると修身の教科書のようだが、恋愛を入れる」
おせぇええええええ!
伊能商会でも最初からそうしとけば解任されなかっただろうに、今さら、無茶苦茶やで(´・ω・`)

しかし、もう、前提全部が間違っているので、何も言うことはありません。
一応、栞様はじめ全員がわかっていない「軍部が撮って欲しい映画」の一例(Youtube動画)をあげておきます。

製作は日本ではなくアメリカですが、軍部というのは
【邪悪な敵国民を徹底して殺すべきだ!】
という内容を欲しがったわけですね。

◆1943年『空軍力の勝利』(米)

 

これのどこが【修身の教科書みたいな真面目な映画】でしょうか?

 

当局も、逮捕して拷問するほどヒマじゃないんだろうなぁ

ここでは更に、検閲をくぐり抜ける方法も語り始めるのですが、全員まとめて、ほんと残念ながらバカとしか言いようがありませんでして。

・理科の実験のようなあぶり出し(キース)
・恋愛シーンだけ極度に小さな字で書く(楓)
・台本のページに金を挟む(アサリ)

えーと……。
ナニコレ、視聴者、ナメてます?

マジメに聞いてて、本気で凹みましたよ。ここまで子供じみたことを言われると、ボケとしても成立しなくなっちゃいますよね。

ここで女太閤ことおてんちゃんがアイデアを語り出します。

「おなごが好きな恋の話を、楓さんが書いて、男にわからんように入れればよろし!」
で、出た……。女の子は全員コイバナが好きムーヴ!
女の脚本家だから素敵な恋愛モノ書けます謎のアピール出たー!

何度も同じ作品を貼りたくないのですが、ここは再び、小林多喜二の拷問動画を張らざるを得ません

『戦時中の検閲って、こんなにチョロいの?』
と勘違いしてしまいそうな方が周囲におりましたら、伝えてあげてください(3:50より)。

 

まぁ、昨日も申し上げましたけど、文化祭感覚でワーキャー話しているだけの連中を逮捕して拷問するほど、当局も暇ではないんでしょうね。

つまり、北村笑店の方たちは勝手に
『オレらの作品、超やべぇし!』
と意識してるだけであって、お上からは相手にされていない。

お笑いコンビ【はんにゃ】の金田氏が演じそうな中学生。
あるいは再生回数27回ぐらいの、炎上にすらならないユーチューバーみたいなもんですね。
それならストンと腑に落ちます。

 

飛鳥ちゃん 眼の前の人はおじいちゃんですよ

場面が切り替わると、トキの横で栞様も一緒に調理中です。
あざといなぁ。これが風太の家に住まわせた理由の一つでしょうね。

『キャー! あの高橋一生さんがご飯作ってる!』
ってか?

旬の名優を、客寄せパンダ扱いする本作。もう嫌悪感しかありません。
「男子厨房に入らず」という言葉も現役でしたでしょうし、この時代なら独身でもお女中くらい雇っていると思いますね。

しかもここで、飛鳥ちゃんが、
「おおきくなったら、伊能さんのお嫁さんになる!」
と言い出す。

ものすごくクレイジーな脚本だと思います。
このくらいの子供からしたら、劇中で50過ぎの栞は「おじいちゃん」でしょう。30代の高橋さんだって「パパ」、「おじちゃん」でしょうに……。

本作で松坂桃李さんとロマンチックな場面を演じた、少女時代のてん役・新井美羽さんだって、カッコイイお兄さんとは思っても、お嫁さんになりたいとは思っていないんじゃないですかね。

 

国民として清く正しく生き、そして……

このあと再度、アホの極みミーティングへ。

「国のために喜んで命を差しだせというなんて」
「江戸時代のお侍さんみたいやな」
もう、本当に底抜けにもホドがある。

昨年から何かと話題になっている『教育勅語』ですが、これに関しては、こういう擁護があります。
「親孝行しろ、夫婦や友達と仲良くと言っているのだから、悪いことじゃないだろ」
というものです。
それはそうです。こういう価値観は普遍的なもので、儒教から引き継いだものではあるのですが。

問題とされているのは、この前段に対して、
「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」
(万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ)
と、続くからなんですね。

国民として清く正しく生きて、何か緊急時代があれば天皇陛下のために命を捨てろ、ということです。
ついでにいうと、先週、楓がまるごと台本に入れていた与謝野晶子『君死にたまふことなかれ』の一節には、こうした『教育勅語』をふまえたうえで、否定する部分があります。

君死にたまふことなかれ、
すめらみことは、戰ひに
おほみづからは出でまさね、
かたみに人の血を流し、
獸(けもの)の道に死ねよとは、
死ぬるを人のほまれとは、
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思(おぼ)されむ。

(筆者現代語訳)
弟よ、死なないでください
天皇陛下は、戦争には、
自ら赴くことはございません
そのかわりに血を流して、
「獣の道」に死ねなどと、
そうして死ぬことを名誉と思うなど、
陛下は慈悲深いのですから、
そんな酷いことを思うはずがありません。

長くなりましたが、風太も、栞も、教育の現場において「いざとなれば、天皇陛下のために血を流し、死ぬ」ということを叩き込まれています。
こんな能天気なことを言うわけがないのです。

与謝野晶子や小林多喜二のように思想があるならばともかく、そんなものはないのですから。

 

『47 RONIN』を目指すようで

そしてここから先は、もう脱力しかないやりとり。
なんでもコイバナ『忠臣蔵』にするそうでorz

「江戸時代のお侍さんだって男と女、恋をしたはず!」
「『忠臣蔵』の討ち入りの理由を別のものにしてみたら?」
「借金を返すためならどないやろ?」
「恋人のためとか!」
「そうすれば『忠臣蔵』も身近になる!」

知ってる。
そういう作品、知っている。

「ジャイアントゴーレムサムライ、タトゥー男、狐の妖術使い、長崎の地下闘技場、キアヌ・リーヴスを入れてみたらどないやろ?」
「そうすれば『忠臣蔵』も身近になる!」

※↑ハリウッド版トンデモ『忠臣蔵』こと『47 RONIN』

 

通天閣の購入まで風太のアイデアかい

その晩、布団の中で栞は風太に言います。
「そのうちすべての娯楽が禁止されてしまう。検閲を出し抜く方法を考える。希望になるはずだ」
アッ、ハイ、よかったですね。って、遅いんですって……。

んなこと、伊能商会を追い出される前に気づくでしょうに!
いや、気づかないから無能栞さんなのか(´・ω・`)

このあとの場面で『真田丸』では真田信尹役であった栗原英雄さんが出てきます。
どうせならもっといいドラマに出て欲しかった……それでも高橋一生さんの扱いよりはマシだけど……。

おてんちゃんは、自分を金の亡者と批判する記事を見かけて困った顔をします。

金の亡者よりも、
「北村笑店の女社長は、地蔵! 謎の御利益て勲章まで!」
ってほうがあっている気がしますけどねえ。

先ほどの新世紀シネマの関係者が流した話なんでしょうけどね。

ここで風太が通天閣が売りに出されているから、買ったらどうやと提案します。
やっと出てきたか。

勲章も通天閣も、忘れていた史実を今更一週間で回収してきたんですかね。
隼也とつばきのしょーもないコイバナより、そっちのほうをやっておくべきでしょ。

というか、結局、通天閣の購入まで風太の提案になったんですね。
吉本せいの史実にそった活躍って【ゴロゴロ冷やし飴】しかないじゃないですか。

※以下、『天地人』、『江 姫たちの戦国』、『花燃ゆ』と『西郷どん』の批判が出てきます。これらの作品のファンは、読まないことを推奨します。

 

今日のマトメ「駄目クリエイターを克明に描く秀作!」

昨日に引き続き、駄目クリエイターの脳内を克明に描く本作。
これはすごいことです。

何が凄いって、
【駄目クリエイターは、ナゼ駄目な作品を世に送り出すのか?】
という問いに完璧な答えを出しているからです。

まず、前提として本作は「検閲」と「批判」の区別がついていません。

そこをふまえて、今週の展開は、
【駄目クリエイターの、批判への反論】
として鑑賞することをお勧めします。
それをふまえますと、こうなるわけです

【炎上広告はナゼ生まれるのか?】

1. 批判されても真摯に反省せず、「俺らのイケてるセンスわかんない奴らが悪い!」と現実逃避する
2. 批判されてもナゼそうなったかがわからず、つまらない抜け道で突破しようとする
3. 俺らの悪ノリは、センスのない視聴者にはわからないだろうから、ギリギリの攻めている表現やっちまおうぜ!→炎上

そうした炎上事例を集めてみました。

「全部、出たと?」はヒワイ? 広瀬すずの出演CMに苦情でセリフ差し替えに(2015年3月24日) – エキサイトニュース(1/3)
志布志市のうなぎ少女動画で、海外メディア「多発する日本の女性差別の例」と続々報道
壇蜜の「エロ系」宮城PR動画、奥山恵美子・仙台市長は「品位に欠けると言われてもやむを得ない」と苦言
「お酒飲みながらしゃぶるのがうみゃあで」 サントリー「コックゥ~ん!」CMに「下品」「下ネタ」と批判相次ぎ公開中止へ – ねとらぼ 

まあ、別に真面目なこと言うつもりないんですけど、下品とか炎上するとか以前に、そもそもがおもんないんですよ。
絶望的にセンスがない。
ニヤニヤしながら、ふざけて作っているのが見え見えなんですね。

全力で、真面目に作った作品ならば、批判を浴びても真意を説明するなりすべきじゃないですか。
それが、この手の悪乗りにはないわけでして。

下ネタやりたいけど、ギリギリのところでかわして誤魔化したろ、という姿勢は、あぶりだしだの台本に金を挟むだの言っていた、本作のキースやアサリそっくりです。

やりたいことを小手先の誤魔化しで世に送ったろ~。
そういう軽薄なクリエイターは、こういう思考回路なんだろうな、と思いましたね。

【スイーツ大河・歴史ドラマが誕生する瞬間】

今年の大河ドラマについて、こんな記事がありました。

『西郷どん』想像以上のスイーツ大河展開に 離脱寸前の人続出か | しらべぇ

この記事にあるように、
「人類はスイーツ大河を克服したんじゃなかったのか?」
という戸惑いが視聴者に間に広まっております。
そのスイーツ大河が産声を上げる瞬間が、今週は描かれていました。

「戦国時代の武士だって男と女、恋をしたはず!」
「戦国時代の物語に、もっとコイバナを入れてみたら?」
「そうすれば直江兼続orお江も身近になる!」

「松下村塾関係者だって男と女、恋をしたはず!」
「松下村塾の物語に、もっとコイバナを入れてみたら?」
「そうすれば幕末長州藩も身近になる!」

「薩摩藩の武士だって男と女、恋をしたはず!」
「西郷隆盛の物語に、もっとコイバナを入れてみたら?」
「そうすれば西郷どんも身近になる!」

これを受けて、本作はこんな感じのヤリトリが行われたのではないかなぁ?と。

「吉本せいだって男と女、恋をしたはず!」
「い、いや……。吉本せいさんは、大阪船場に生まれまして。小学校を出ると奉公にあがり、親の勧めで結婚。夫は遊び人で苦労して……」
「ええ~うそぉ~! それじゃコイバナになんないじゃん! 大体、大正ロマンといえば袴の女学生さんなのに、女学校も通っていないの? つまんなーい! 可愛い格好しないとつまらないでしょ~! 女の子はそういうの好きだしぃ~~」
「そ、そ、そうではなく、吉本興業の歴史を勉強して、取り入れていただければと……」
「朝ドラって女性が見るドラマでしょ( ー`дー´) ならコイバナにしなきゃ駄目じゃ~ん。大丈夫、私は女だから、女心をがっちり掴む脚本書くからねっ♪」

こういう私が懸念していたそのまんまの場面が出てきてビックリしました。

なんといいますか。
バブリーな駄目クリエイターの脳内をそのままパッカーンと開けて、目の前に差しだされた気分です。

ご本人は「エッジの効いた若者はこういうのが好きなんだ!」と自信満々ですけど。
平成末期を生きる若者の感性というより、バブル期にイケイケだった元若者の感性でしかないんですよ……。

しかも勉強が好きではなくて、インプットをろくにせず、今になっても知識や経験ではなく、廃れきった感性で戦うしかない、そういう状況です。

過去の名作や資料を集めて学ぶことはしない。
過去イケイケだった栄光は、忘れない……そういう駄目クリエイター劇場なのです。

ほんまにおそろしいもんを見せられている気分ですわ。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

2 Comments

まい

武将ジャパン様
いつも拝読させて貰っています。
2週目の途中で録画を解除し、家族は誰も視聴しなくなりましたが、私だけはこちらのレビューを読ませてもらいながら見続けておりましたが…
今週から「次はわろてんかです」というアナウンサーの一言でチャンネルを変えるか、消してます。
この脚本家も、この脚本でドラマを作り続けるスタッフも酷すぎると思います。
視聴者を馬鹿にするにも程があります。
それでも戦時中の話題までは「アホくさ」と呆れるくらいで済んでいましたし、嫌なら視聴しなきゃいいんだし、と考えてました。
でも、慰問団、検閲の当たりからムカムカムカムカ…許せない!と怒り心頭です。
武将ジャパン様の仰る通りだと思います。
知らないことを勉強する気もなく、適当につまらん笑えんセリフで埋めた安易な薄っぺらいドラマ。
昨年のべっぴんさんより酷いのはないと考えていましたが、更新しました。
毎日こちらを拝見して溜飲を下げております。

匿名

いつもレビュー拝見してます。わろてんか、これまで惰性で見続けてきましたが、今日は今までで一番げんなりしました。
検閲対策があまりに幼稚過ぎて、バカバカし過ぎて、これまで見続けてきたことが本当に哀しくなりました。
伊能さんはもう不気味さしか感じなくなってしまいました。すべての言動が薄ら寒くて。
おてんちゃんは折角の朝ドラヒロインなのに魅せ場がなくて不憫。せめてもうちょっと素敵な着物着せてあげて欲しいです。脚本がひどくても衣装や小道具が良ければもう少し楽しめるのに、見所が何もない。わろえないしかなしい。あと少しで終わるのに脱落しそうです。

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