明治43年(1910年)京都。
日本一の「ゲラ(笑い上戸)」娘ことヒロインの藤岡てん。家を捨て、船場の米屋・北村屋の長男藤吉のもとへと嫁ごうとします。
しかし、姑の啄子は認めません。
しかも北村屋の経営状態は悪化し、番頭の又八がライバル天野屋に引き抜かれてしまう始末。
そんなとき、焦る藤吉に芸人仲間のキースが儲け話を持ちかけます。
やはり天野屋に得意先を取られてしまった
従業員も流石に「これは危ないんじゃないの」と顔を見合わせる中、てんだけは能天気、というか信じています。
ここで粘りつくようなナレーションが入ります。
「ほんとうにぃ? 大丈夫でしょうか」
このナレーション、ウェブを見ている限り評判がよろしくないようです。
私も悪乗りが過ぎていてどうかと思います。途中からでも軌道修正できないものでしょうか。
北村屋は、年の暮れなのに売り上げは伸びません。
手代たちは取引先から断られたと肩を落として訴えてきます。天野屋に得意先を取られているようです。
やはり又八がお得意様リストごと引き抜かれて、北村屋の客を天野屋に移してしまったようです。
ここで天野屋の見るからに嫌味たらしいごりょんさんが、又八の結婚の挨拶に顔を出します。
こういう見るからに不快感が増すしょうもない脇役が、なんで出て来るのかなぁ……。
個人的には必要性をあまり感じないのですが、視聴者の心に何か訴える効果があるんですかね。
大阪人は「安くて旨い」が信条では……
手代は、天野屋は高級米にまずい米を混ぜて安値で販売している、それをやってみたらどうかと提案するのですが、啄子は一蹴。
「大阪の人は味ではなくて値段で買う」
どうも本作は、大阪人の味覚を低く見ているようで……。
安くて旨い――。
それが彼らの矜持という気もするのですが、さすがに何度も「味より値段」と言い切っておりますと、大阪の支持者が減ってしまうのではないかと、ちょっと心配になってきました。
かくして、もはや経営がまずいのではないかと感じた従業員たちは、次から次へと辞職ドミノに陥ります。
手代の佐吉にまで見限られたら、藤吉の北村屋もおしまいでは……。
娘の頼子は嫁ぎ先からやってきて、ベタベタくねくねと「家でも売ってしまえばいいのに」と言います。
この頼子という人物も、必要なのですかね。
話し方があまりに不自然な気がします。彼女に言われなくても、現在の苦境は十分に伝わってくるでしょう。
そんな中、啄子は獅子奮迅の働きを見せます。
精米をして、店先で売りさばき、大八車に重たい米を載せて、行商人をやろうとする。
朝ドラあるあるというか、根性論で非効率的なことをして頑張りを見せる手口です。
そんなことをしたところで、大口顧客リストを使って営業をかける天野屋には絶対に勝てないでしょうに。
起死回生で電動精米機を買うくらいの機転は欲しいところ。こういう底の割れたバケツで水をくみ出すような努力をしているのは、どうせ店がこの先潰れるからだろうなあ、と見ていて感じます。
案の定、啄子はギックリ腰になってしまいます。貴重な働き手なのに。
先生、てんの商売人魂、機転が見たいです……
それにしても先週、古米や外米まで売りさばいた主人公のてんは、どうしたというのでしょう。
能天気にニコニコ笑って藤吉とイチャイチャして、啄子のいけずに耐えるばかり。
知恵の一つも絞り出せば、お店の経営も少しはマシになるはず。先週見せたあの機転は何だったのでしょう。
てんに腰を揉まれつつ、苦労話をする啄子。
啄子が苦労話をすればするほど、こちらの設定の方が実際の吉本せいに近いなぁ、と感じてしまいます。
啄子の過去で苦労話、船場のごりょんさんへの憧れを説明するくらいなら、素直に主人公でそう表現すれば良いはずです。
そして藤吉はと言えば、キースからパーマ機を売る商売を持ちかけられるのでした。
金がないなら家と店を担保に金を借りればいい、と悪魔のささやきをするキース。
藤吉はパーマをかけたてんの姿を妄想して、デレデレします。
そして藤吉は、店と土地を全部賭けて、この詐欺のような話に突っ込むことに……。
やたらファンキーな音楽がかかっていますが、見え見えのドデカイ地雷原に裸で突っ込んでいく藤吉の行動に、視聴者は口あんぐりで固まってしまうのではないでしょうか。
今回のまとめ
いくら何でも、てんの存在感が希薄ではないでしょうか。
主人公の存在感は出番が多ければあるというものでもなく、短い出番でも機転を利かせたり、度胸を見せたりすれば出てくるものです。
そういう存在感が、米売り勝負のところではチートを駆使していたとはいえ、一瞬輝きました。
ところが現在はニコニコして藤吉に「頑張ってね♪」と言うだけの女子マネージャー化しており……。
吉本せいの話では、傾いた店先で甲斐甲斐しく接客をし、借金取り相手に苦労をするのは姑ではなく本人であったはずです。
本来「獅子奮迅の商人根性を見せる」のは、てん。
その苦労話や奮闘記を、てんの代わりに啄子がやるからおかしくなるのです。
いつまで彼女を、ニコニコ能天気な女中にしておくつもりなのでしょう。
吉本せいが寄席を開いてから根性を見せ付けるのも、船場で苦労した時代があるからこそです。
粘りや機転があるからこそ、しがみついてでも家業をもり立てたい! そんな気持ちを意気に感じたからこそ、腕のある芸人たちも下っ端芸人たちも「あのおばはん、やるなぁ」とついてきました。
そんないわば基礎体力作りのような部分を、なぜ啄子が代わりにやっているのでしょう。
ゆくゆくは吉本興業という日本一の芸人事務所の土台を作り上げる吉本せいさん。
その原点を今こそ見せるときではないでしょうか。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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