あさが来た 35話 感想あらすじ 新次郎にとっての女とは?

妾を囲って欲しい!
そんな衝撃の懇願をしたあさ。

新次郎は驚き聞き返しますが、あさはさらに辛いことを言います。
家を保つために大事な仕事(=出産)ができなかった、家のために妾を囲って欲しいと続けます。

「本気で言うてますのんか?」

ここで一瞬だけ新次郎はこわばった声を出し、そのあとすぐいつものおちゃらけた口調になって、それなら妾を囲いましょう、と言ってしまいます。
そう言い残すとさっさとあさを残して去る新次郎。
よののお付きのかのは、これを盗み聞き、早速知らせねばと喜びます。

旦那さんのアホ……ちがう、アホはうちや!

ここは一瞬、ムッとした顔になる新次郎が深いと思いました。
あさよりずっと内面描写が少ないのですが、苦い気持ちが伝わってきます。

家のために妾を持つ男の感情というのは、あまり語られない部分です。

男なら妾は持つのがうれしいものだから、いちいち描く必要がないと思われてきたのかもしれません。
ところが新次郎は、それだけではない複雑さを持つように思えます。

夫婦の寝室で、残されたあさは自分を奮い立たせるように、石炭の重要性を語りながら旅の準備をします。

男物のように見える笠を手にし、自嘲をこめて「うちにぴったりやわ!」と涙声で叫ぶあさ。
そこへうめが入ってきて泣いていると指摘します。

「泣いてへん!」と気丈に返すあさ。

あさは赤いそろばんを手にし、そのままたまらず大声で泣いてしまいます。

「アホッ! 旦那さんのアホ……ちがう、アホはうちや!」

このアホの情感、関西弁の情緒たるや……。

美和を目にしたらなかなか悪くないと

朝ドラではよくあることですが、本作も主演にフレッシュな若手を据え、演技ができる人で周囲を囲むというパターンです。

波瑠さんは出演者の中で最も演技が安定しておりませんが、伸びしろや勢いを感じます。
今回のこの妾をすすめてから泣き崩れるまでは、その本来のフレッシュな魅力がよく出た名場面に仕上がりました。

よのは廃藩置県の衝撃なんてなんのその。
美和を囲う話をすすめています。

渋っていた正吉も、美和を目にしたらなかなか悪くないと感心……気持ちはわかる!
親父キラーですよ、こちらの美和さんは。おにぎりでキリングの別の美和さんと違って。

その頃、すっかり青物売りが身についたはつは、息子に藍之助と名付けていました。

この藍之助が急に大きくなったとツッコまれていました。
しかし、赤子が数週間で袴を着用し、畑仕事できるところまで成長した大河を見届けた私は、こんなことでは動揺しませんぜ!
ありがとう『花燃ゆ』、ツッコミへのハードルを大幅に下げてくれてありがとう!

あさとはつは姉妹で愚痴タイム。
はつは妾問題で落ち込むあさに、鉱山に行けばマッチョイケメンがいると慰めます。

あさもまだはつは若いし美人なんだから、新しい夫を見つけてしまえばいいと言います。

ふざけあっていても現実に戻った姉妹は、手を重ね合い無言になります。
お互い自分の夫しか男がいないんですよね。切ないですね……。

「あささんは、新次郎さんを愛していますか?」

あさの落ち込みになぜかわくわくしているのは五代友厚です。
寄合所でうめに慰められるあさの元に、「興味深い話ですね!」と近づいて来て、ラブの話をしようとか言います。

「あささんは、新次郎さんを愛していますか?」

何を言っていんだ、コイツ。
愛しているという言葉がわからず、惚れていると言い直すのが明治初期って感じですね。

「あんな優男、おまえにはもったいない。俺の方がおまえにふさわしいだろ」(意訳)

どこの乙女ゲーのキザ男だ、みたいなことを言います。
五代さん、おいどんは薩摩示現流使えるから文武両道アピールですか?

大河の美和ならここで「イケメンに言い寄られる私♪」とニタニタしかねませんが、あさはガチ切れ。
あれだけ普段愚痴っていた新次郎の芸事を、大阪商人の粋だと言い返します。

五代はため息をついてやれやれポーズですが、奴はドMなのでこれはご褒美ですね。てか、五代さん、今日も何やってるんですか。

ちなみに史実の五代さんの女性関係は、明治維新立役者あるあるで結構派手です。
劇中でも既婚であり、この状態で人妻を口説くなんて、ちょっと手癖が悪いですぞ。

他の人と一緒になるなんて、やっぱり嫌だす!

ぷんぷんしながら家に戻ったあさは、義両親が妾を迎えるべく留守にしていると聞かされます。

ここでまた弥七と亀助たちがちょっとしたコント。脇役もキャラが立っています。
それを聞いたあさは外の風に当たるとまた戻ってしまいます。

そのあさの顔に雨の滴が。

「知っている? 旦那さんは雨男なんやで。うれしい時に、雨が降りますのや」

この台詞はOPの歌詞ともリンクしています。あさの人生に辛い雨が降る日が、今まさに訪れています。

あさは泣きながら走り去り、そのあとを新次郎が気づいて追いかけます。
ピアノの調べに乗せて、なんとまあ少女漫画全開!!

寂しくお堂に座り静かに涙を流すあさに、新次郎は妾なんか囲わないと宣言。あさはそれでも囲って欲しいと言いますが、途中で俯き言葉に詰まります。

「やっぱり嫌や! うち、旦那様が他の人と一緒になるなんて、やっぱり嫌だす!」

ついにあさ、心の叫びが。

「ほんまアホやな、あんたは。あんたの代わりになるおなごがいますかいな」

新次郎はあさの肩を抱き寄せ、優しく語りかけます。
新次郎が一番いい着物を濡らしてしまったと言うと、少しでも女らしく見せるために着ていたとあさが言います。

そこで新次郎、
「あさほど心の中が、女らしいおなご、わては知らん」
そう言うとじっとあさを見つめます。
な、なんちゅうことや……なんちゅう少女漫画王道をぶちこみはりますのや!

こういう王道少女漫画路線は実写化すると陳腐になりがちですが、うまくきゅんきゅんっとまとめてきました。お見事!

新次郎は傘を差し、相合い傘で夫妻は家に戻ります。

新次郎にとっての女とは?

意地悪なことをツッコミますと、結局のところ子どもができないという問題は解決していません。

史実を踏まえますと、新次郎は妾を囲う可能性が高いです。
そうなったとき、「でもこの二人は心と心が通じ合っていますよ」と言い逃れする、アリバイ作りのようにも思えます。

が、そんなことはこのキュンキュンぶりからするとどうでもいいでしょう。
本作は一週間に一度、盛り上がる木曜金曜には必ず名場面が入りますね。

もうひとつ注目したいのが、新次郎のことです。

彼はロマンチストであるがゆえに、本当に好きな人以外との性的接触はどうでもいいタイプとみました。
だからイマイチ気の乗らない、まだ子どもだったあさとの関係を拒んだり(第三週)、ロマンチックな気持ちが盛り上がらないとあさと疎遠になったりするわけです(今週、第六週)。

ともかく女を囲えたらいい――そんな単純なスケベ心とはちがう、風流や色を好む感情があるようです。
であればこそ、種馬のように世継ぎのために妾を囲ってつがえとなると、反発するわけですね。

こういう男の複雑な感情を描くというのは、なかなかおもしろいことだと思います。
新次郎にとって女とは獲得景品ではなく、真剣に恋愛する尊い対象なのです。種付けのためにあてがわれる女なんて、迷惑なだけなのでしょう。

二人の留守に、とある人物が訪れていました。
上品なその美女は、炭鉱の持ち主・櫛田そえでした。

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください

あさが来たモデル広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます

【参考】
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