雪に倒れる照男。隣に立つ天陽。
照男が苦しげに言葉を発します。
「おまえふざけんな、諦める気か?」
「負けました」
「約束は守れよ」
熱闘のあまり、雪の上に引っくり返った照男を、助け起す天陽です。
「なつを頼むぞ」
「わかりました」
このやり取りを泰樹が見たら、どうなることやら……。
そんなことは露知らず、なつは両者の健闘を称えて、はしゃいでいます。
「二人とも勝ち! それでいい!」
天陽は、なつに家に来ないかと誘いをかけます。
牛が妊娠中で、ちょっと来て欲しい、という口実です。
「なら明日行く」
「したら、じゃ」
この流れで、二人は別れるのですが……。
咲太郎、新宿に戻る
なつたちが帰宅すると、夕見子は受験勉強中です。今夜は三平汁だって。
これまた北海道グルメですね。
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「照男兄ちゃん、すごかったよ」
「へぇー、興味ない」
こいつ……短い出番でも期待を裏切らない、直江兼続ぶりだな。
夕見子は、佐々岡信哉から手紙が来ているとなつに渡します。
咲太郎が、新宿の「川村屋」に姿を見せたのです。
一万円を土下座しながら、マダム光子に返したとのこと。ギャルソン野上に営業妨害をやめろと追い払われつつ、さらなる返済を誓ったと言います。
感動的ではあるんですが……そのお金、綺麗な手段で手に入れたんですよね?
そこはちょっと気になります。
しかも、結局は住所不明かつ職業不詳。うーむ……。
なつよ、よかったな。なつを思うのは、咲太郎ばかりではないぞ――。
そんなひねったナレーションも、よいものでして。
このナレーション、実は不穏な空気を増加させる役割もあるんですよね。
なんで告白しないかのう!ちくしょおおめええ!
不安です。
明日、天陽告白となったら、泰樹が牧場の扉をゆすり、パニックになり、そのままどうにかなっちゃうのではないかと、不安でたまりませぬ!
「なんで告白しないかのう、照男めえええええ! 全くわからん!」
こうなるでしょ……。
あっ、だから草刈正雄さんがこの役なのかー。
やるなー、このチーム!
不安でしょうがないわあああああ!!!!
なんで朝ドラなのに、こんなに怖いんだよぉ!
朝っぱらから『ゲーム・オブ・スローンズ』状態です。
****は別の意味でそうだってけど、これはこれでもう。
好きだけどさあ!
女の子の夢や幸せを勝手に決めるな
女の子の夢や幸せを勝手に決めるな!
昨日あげた『かぐや姫の物語』や『アナと雪の女王』のコンセプトとして、これがあると思います。
『ゲーム・オブ・スローンズ』では、これが最終シーズンの重要な要素でして。
出世したからとプロポーズした青年が、
「誰かの妻とかそういうキャラじゃねえし」
と一蹴されたり。
「愛があれば王座なんていらないよね!」
と言い切るジョンが、デナーリスから、
「私が王座なしでどうしろいうんじゃ、コラァ!」
とガチギレされそうだったり。いろんな悲劇が生まれそうです。
これが2019年だぞ!
前作****は、完全に時代遅れでしたね。
あのドラマには、脇役が親子ほど年の差がある会社経営者親族の若い女性を、本人の気持ちを確認をしないままに取り合う描写がありました。
ともかく薄気味悪い! そう突っ込んだものです。
演劇部の『白蛇物語』でも、そんな要素がありましたっけ。
当人の確認をしないまま、トロフィー扱いされるヒロインの気持ちを考えてみろって。
そうなりますよね。
ディズニーの『マレフィセント』は、正面切ってここに挑んできています。
眠れる姫にいきなりキスをする王子。真実の愛で姫は目覚めたのです……というところへ、ディズニー側は「異議あり!」と突きつけたのです。
「通りすがりで、ただ美人だな〜と思っただけの王子に真実の愛があるとか、おかしいと思わんか?」
言われてみればその通り!
そういう作品です。
実はおとぎ話って、女の子の夢だの愛だの定義しているけど、女の子側がどう思うか考えていない。
ただの刷り込みじゃないか?
そういう考え方が生まれて来ています。
照男と天陽が対峙する場面。
実はかなり重要で、新旧の価値観の対峙のように見えます。
↑恋心こそ女の子の本心であり、幸せだ。
↓いや、女の子だって夢があるだろう。
だからこそ話が通じません。
と、本人の知らないところで、勝手に盛り上がるなよ。気持ち悪いだろ!
そうツッコミたいからこその違和感が出ているわけです。
二人だけの問題ではありません。
あれほど賢い泰樹すら、この点では完全に時代遅れになってしまっています。
女の子を励ます、最高のロールモデル。
白のガンダルフ級の存在感を見せてきた泰樹。
それが、まさか北海道編ラスボス、時代遅れゆえに倒される存在になりそうだなんて!
朝ドラフォーマットで『ゲーム・オブ・スローンズ』を始めやがって!
そう言いたい。
高度かつ複雑で、挑戦的な本作です。
怖いよ、この朝ドラ怖い!!
※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
本人の気持ちを確認しても、思い通りの結果じゃないと
「ブス!」
「可愛くない!!」
「そういう女の子らしからぬ事は言わない方がいいよ…。」
「そんな事言って~。嫌よ嫌よも好きのうちって奴でしょ~。(当人の意志を悪意無く無視)」
という返事が返ってきますからね、未だに。
どうやったら女の子にも意志がある事を解ってもらえるのか…。
こけにわさん、
こちらこそコメントありがとうございます。復刊ドットコムで3位浮上中の「日本のアニメーションを築いた人々」などのお陰でこの時代の事を少し知る事が出来ました。
この本に登場する5人の東映レジェンド達+耳すまの近藤監督だけでも面白いエピソードに溢れているのですが、高畑勲さんや宮崎駿さんら他の東映OBのエピソードも加えたら、相当なボリュームがあると思います。
波の描き方一つとっても試行錯誤の繰り返しだった、まさに開拓精神に溢れた人たちの列伝といった趣きです。なつぞらの中盤はそんな楽しいお話になるのではないかと今から楽しみです。
でんすけさん、
(お返事いいのかな、)
これからアニメの若い時代が描かれるのですね、期待して観ます。
あまりアニメに詳しくなくて。
これから新鮮に見られるなら、
なつぞらはすごくなりそう。
そうであってほしいです。
なつの夢の世界をみたいですね!
コメント、
ありがとうございます。
十勝編を象徴するものの一つと言える、あの二輪荷馬車。
北海道で多く使われていたこの荷馬車は、積雪期には車輪を外してスキッドに代え、馬橇として使われるようになっていました。
多分あとそう長くはないであろう十勝編。その冬のシーンの中で、馬橇バージョンの姿を見せてくれるでしょうか。
こけにわさん、
身に付いてしまった習性的に、泰樹さんから聞かないと自分の夢を語りそうにないなつなので、二人の間の切ない展開が予想出来て、もうすでに泣く自信あります(笑)。
アニメーション産業の今を知ってると「やめとけ!」なのですが、この時代はまだ、オリジナル長編主体で手間暇かけて「画を動かす」事が許容されていた幸せな刻でした。物販前提で採算度外視のやりがい搾取ブラック産業になるまでの変遷を、未来への希望に繋がるように描けたら、このドラマは歴史的名作になるかもしれないなあと、静かに期待をしています。
よく見たら、別記事へのリンクがあり、この話も詳しく解説されていましたね。失礼いたしました。
日本へのスキーの導入にも、北欧の国が大きく関わっていますね。
八甲田山での日本陸軍の雪中行軍遭難事件を聞いたノルウェー国王のホーコン7世が、スキーなき雪中行軍での悲惨な遭難に心を痛め、スキー板を贈ったことが、日本にスキーが定着するきっかけの一つとなったそうです。
現在の陸上自衛隊では、スキーは降雪地の部隊の必須の技術となっています。
武者様、サイト運営に関わる皆様
半分、青い のレビューから拝見しています。前作は視聴を続けられずこちらにお寄りするのも辞めていました。日々の楽しみが戻って嬉しいです。
匿名の方がお書きの件ですが
25話は泰樹の経験からの結婚観
34話は当時珍しくなかった結婚観
と、理解しています。
北海道の開拓では婚姻が家族の命運を分けかねない状況(劇・白蛇伝説みたいな)が本州より多かったのは想像に難くないです。うーんな映画ですけど、北の零年の香川照之さんと石田ゆり子さんを突如連想してゾッとしました。
同時に実力のある情熱家が強い意志で愛を貫くことも当然あったでしょう。
そんな泰樹が代理戦争仕掛けてまでなつに向ける強い愛。流されるように恩ある家の嫁に入ってもそれなりに幸せでしょう(でも夕見子は家族を見限ってしまうかも)
北海道の暮らしが魅力的なだけに上京には複雑な思いがありますが、泰樹が1番になれ!と送り出せる程の夢の輝きを見せて欲しいです。
なつよ、自分の心に真っ直ぐ向き合えよ!
なつに、聞いてもいいか?と
ちゃんと天陽君が好きか確かめたり、
絵を描くのが好きなのか?と聞いても、おじいちゃんはアニメは知らない。
遠い東京のことはわからない。
なつがいないと寂しいし、
バター作りの未来まで準備している、
愛情たっぷりのおじいちゃんが切ない。
あー、切ないです。
今のアニメの世界を見たら、なんだか
なつがアニメーターになるのを素直に応援出来なくなってしまいました。
なつ、おじいちゃんのそばに居てあげたら?
とはならないだろうなぁ。
最低限の量の言葉だけで恋愛感情を表現する大森さんの脚本には、あだち充作品へのオマージュを感じました。照男くんが若松みゆきの血の繋がらない兄、若松真人。
タッチや陽あたり良好の杉井ギサブローさんは東映動画出身で、奥山玲子さんとはほぼ同期。ご存命なので、大森さんもインタビューぐらいしてるかも。。
25話のレビューでは
「経験で物事を予測する泰樹は、天候予測はお手の物。
人の心もそうであるはず。彼の経験からすれば、北海道に生きる男女は、情熱の赴くままに愛し合い、結婚する。そういうものでしょう。」
このように書かれ、
34話では
「かつての結婚は、当人の気持ちなど重視しなかったものです。
北海道の開拓者は、全国的に見てその傾向が一層強かった。」
こう書かれてるのですが、これはどう捉えれば良いのでしょうか?
東京編については、
「ゲス問!
『どうせ路面電車の違いなんて視聴者にはわかりゃしない。鉄道マニアなんか放っときゃいい』って思ってたんでしょ?
ロケ施設側が『近・現代のもの』だというからそれ任せで考証抜き! いい仕事だな!」(西城記者風)
「ここには手抜き、駄作の匂いがする! そんなことをする人には関わって欲しくないの! 帰って!
もう、ちゃんとして!」(黄金原聡子さん風)
なんてなことにならないように、しっかりしてほしいですよね。