青函連絡船に乗って2日かけて、なつと富士子は新宿へ。
佐々岡信哉と合流します。
「いらっしゃい。じゃなくて、おかえりなさい」
信哉はそう二人を迎えます。
「忙しいのにわざわざすみません!」
そう礼を言う富士子。
本作の時代らしさって、きっちりと大仰なくらいに挨拶をして、いちいちきっちりと頭を下げることでも出ていると思います。
駄作だと、こういう所作が本当にダメなものでして。
向かった先は、ベーカリー兼カフェ「川村屋」でした。
北海道からハイテンションでやって来た
なんだか大阪城でスルメをかじっていたような、そんな前世をもっていそうなギャルソンの野上がお出迎え。
信哉が咲太郎の妹を連れてきたのでマダムに会いたいと尋ねます。
と、約束があるか確認してくるわけです。
帯広の「雪月」とは違います。
アポがないと、マダムには面会すらできない? これが新宿なのか?
相手のそっけない態度に対し、富士子がカフェにそぐわない大声で、生き別れの兄を探して北海道からはるばる来たと説明し始めます。
この大きな声。ハイテンション。
北海道から来たんだよ! 感。
これが東京にまで来た北海道だべ。
とよババアの演技がハイテンションで大げさなんていう、しょうもない記事を見かけたものですが。
北海道なんだよ!
ああいうもんなんだよ。まぁ、全員がそうではないけどね。
ここで、ハッとなる富士子です。
「お騒がせしてすみません!」
そうそう、そこは気がつくのだ。
しかし、不穏な気配です。野上が何やらブツクサ言っております。
「あの咲太郎、あの野郎……」
むむっ?
いったい何があったんだ?
じっと見つめられる北海道一行
なつと富士子は、メニューのあまりの高さに驚いています。
「雪月」の三倍だってさ!
「ここで食べるのはやめとく……」
そうつぶやく二人。信哉は奢ると気遣っています。
そんなご一行。
富士子と信哉はアイスコーヒーを頼みます。そしてなつは?
「冷たい牛乳はありますか?」
ウェイトレスは考え込みます。
「アイスミルクですね」
運んできたウェイトレス・三橋佐和子は、アイスミルクを飲むなつを見つめてしまいます。
うん、まぁ、気持ちはわかるよ。
秋風先生は遠慮なく、鈴愛を「岐阜の山猿」と呼びましたが、こちらは北海道の牛娘と言いますか……。
あるいは咲太郎と関連して、他に含むところもあるのか……。
ともかく、このアイスミルクが案外おいしいんだって。
よかったね、なっちゃん。
知略の高いマダムが登場!
そしてここで、マダムこと前島光子登場!
ご存知第76作『どんど晴れ』ヒロインです。
本作は、朝ドラヒロイン経験者が出てくるだけで『アベンジャーズ』感がすごいな。
新宿のベーカリー&カフェ「川村屋」で記念写真。オーナー・前島光子役の比嘉愛未さんはこの日にクランクインしました。マダムと呼ばれる女性の役に、とても緊張したそうです。#朝ドラ #なつぞら #広瀬すず #松嶋菜々子 #リリーフランキー #近藤芳正 #比嘉愛未 #工藤阿須加 pic.twitter.com/2KgiMth3LD
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) April 30, 2019
だからって、言っただろ……もうやめろって。『ゲゲゲの女房』ヒロインが、100作目ではなくて99作目に出てしまった話はやめろって! 再放送はお詫びかも、なんてね……。
はい、そんなマダムですが。
佐々岡信哉と、フルネームを覚えていたことに信哉はちょっとうれしそうです。
こういう、さほど親密にしていない相手でも名前を覚えること。
これが人の心を掴むコツです。
咲太郎の妹であるなつのことを、親しげに呼ぶ。
これも大物ぶらない、人心掌握術ですね。
どうやらこのマダム……只者ではなさそうだな。
フレンドリーでオープンマインドであること。
威張り散らさず、同じ目線に立っていると即座にアピールする。マウンティングとは真逆のふるまい。
できる。できておる。強そうだ。
マダムの口からは、なつの兄・咲太郎の話が出てきます。
「咲ちゃん」や「咲坊」といった愛称で呼ばれていたようで。「ナントカ坊」って、いかにもこの時代らしいですね。阿佐田哲也『麻雀放浪記』の「坊や哲」は……ちょっと時代が違うかな。
咲太郎は、「ムーランルージュ新宿」において役者ではなく、掃除やもぎりをする万能下働きとして働いていたんだとか。
役者に可愛がられて、奢りで連れて来られて、よくこの店に来ていたそうです。
なつの脳裏に浮かぶ、「ジャパニーズチャップリン!」と呼ばれていた兄の姿。
「兄はそういう人です! 子供の頃しか知らないけれど……」
このセリフも、実は伏線かもしれません。
粋なジェントルマン茂木も登場
スグ近所の書店「角筈屋」店主・茂木も登場します。
それぞれのモデルは、紀伊國屋書店と、カレーは中村屋といった感じでしょう。
茂木は当時の、いかにもおしゃれでこだわりがあるスーツスタイルです。
しかも口髭。
こういうスタイルを敢えてしている男性といえば?
・それなりの地位や金がある(=高級品)
・ルールを破っていい、それなりの地位だ(=普通の勤め人では、上司に睨まれる)
・文化人であり粋、そんなことを自他共に認めている
・西洋文明である映画等が好き
・飲食物も西洋のトレンドを追いかけている
そんなスタイルの持ち主ですね。
北海道に生きる剛男の、七三分け、ネクタイ、その上に農協ジャンパーと比べてみてください。
演劇部顧問・倉田との比較もありかな。
本作ってば、当時あった地方と東京の違いを、きっちりと描いています。
新宿を見てきた茂木は、「ムーランルージュ新宿」、そして咲太郎について語り始めます。
「ストリップに押されて潰れたけどね」
だって。
ちゃんとそこでストリップを出すんだなぁ。
戦争が終わった後、人々は消えてしまった娯楽を求めました。
落語。
宝塚。
そしてお笑い……その代表である「吉本興業」って、実はGHQ相手のキャバレーから復活していたりして。
『いだてん』でもやるかな?
そんな咲太郎を「ムーランルージュ新宿」から知っている歌手・煙カスミがこの近くにいるそうです。
こりゃ行ってみなきゃ!
柴田家、婿にあたりがきつい
サクサクとテンポがいい今回。
目的地を順序よく移動し、かつヒントに迫ってゆく――きっちりと段階をふまえて進めてゆく、大森氏らしさを感じます。
お店に着くと、煙カスミが熱唱しておりました。
朝から戸田恵子さんの美声を聞けるなんて、受信料を払っていてよかった。
なつはうっとり。
こちらもうっとり。
広瀬すずさんの、無言であっても感情を出す演技が、毎朝素晴らしいと思います。
派手な顔芸。大仰な身振り手振り。裏返った奇声。
ほんとうの演技派女優とは、こういった飛び道具や小細工に頼らないのでしょう。
そのころ、柴田家は?
暗い食卓です。
「食べてよ!」
剛男にそう迫る夕見子には、なんというかこう……かわいらしい気遣いがないんじゃあああ!
「はっ、気遣いなどしておられん。早く食べればよいだけのこと。食器洗いもあるのだから急ぎなさい」
そういう感じでしょ。軍師だからさ。直江兼続系だからさ。
「こんなに寂しい食卓なんてないよ」
そう嘆く剛男。
そんな婿に、
「お前が戦争に行っていてもここまでさみしくなかった」
と追い討ちをかける泰樹。
「何も婿をいじったわけではござらん! 客観的な事実を指摘したまでのこと」
それぐらいに思っていそうで辛いですね。
しかも、ここで夕見子と明美が、慰めるどころかクスクス笑って追い討ちをかけています。
むむっ。これは明美も、軍師になりつつあるわ……!
そのころ、なつと富士子はカスミに声をかけています。
彼女も、手がかりはないそうです。
ただし、チョット気になるのが、付き人の土間レミ子。
ジッとなつを見つめているのでした。
このマダムまでも軍師か……
このあと、なつと富士子は川村屋へ戻ります。
どこか安い宿はないかと尋ねる富士子に、社員寮でよければ泊まっていってくださいねと声を掛けるマダムです。
食事はここのカレーで。
それが当たり前という流れになり、信哉も勧めていた、絶品のインドカレーを二つ頼みます。
二人はこの時知らなかったのである。宿と食事を提供する相手の狙いのことを(有働由美子アナの声で)。
野上が、マダムにそっと語りかけます。
「あんな奴の身内に情けをかけて……」
「これも我が策。おびきだす人質よ……誰が逃すものか」
※続きは次ページへ
武者さんの更新が待ちきれないからここにこそっと書き込み。
夕見子ちゃん、東大に進学しよう。上野千鶴子が昭和23年生まれで夕見子ちゃんよりちょっと下になるけど。
雪月の修行先が東京(新宿)でしょ、雪次郎くんも行くんでしょう?行こう、夕見子、東京。夕見子ちゃんがいてくれたら私も心強いよ。なっちゃん、東京行く(帰る)もん。
今朝は雪月が川村屋に関係がありそうなことより、夕見子ちゃんに東大行けー!と一人勝手に盛り上がってしまいました。
「上京して世話になることになるのが、怪しげな、もとい不思議な店」という展開。
『まれ』での嫌な記憶もありますが、本作はそれを払拭し、「本当はこう作られるべきだった『まれ』の横浜編」を示してもらいたい…とも思いかけたけど。
いやいや、やっぱり『まれ』なんか引き合いに出すのも野暮ですね。
「宴に招いて謀殺」
唐末の朱全忠も忘れてはならないですね。
マダムがただのいい人ではないのがいいですね。
咲太郎が何をしたのか気になります!
煙カスミの場面のところに「リンゴの唄」の動画が貼られてますが、彼女が歌っていたのは美空ひばりの「リンゴ追分」ではないでしょうか?
富士子となつの東京行は2日がかり。
さすがに、道内・本州内とも急行列車を利用したようですね。道内、函館までは急行まりも号かな?
信哉ともども、前年の洞爺丸事故の復旧途上の青函連絡船の利用だった訳で、なかなかに落ち着けない旅路だったかもしれません。
あの前作のおかげで『どんど晴れ』も、まともに思えてしまいます。あの作品は、『天地人』のプロトタイプですから。
どこからオーバーオールが出てきたのやら?
舞台衣装は別として、広瀬すずになって初めてのスカートの衣装で、久美子ちゃんが貸してくれたのかなと思いました。
>匿名様
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます!
確かに朝ドラのヒロインの性格は、問題ありますよね。子供のとき、あんなに賢かったあさが10年も経たないうちに、キャラが変わって、戸惑ったものでした。広岡浅子の性格も、どちらかというと初に近い気がしますし、後にクリスチャンになるとき「私は今まで甘えたことがないら甘え方がわからない」と言っています。
でも、最終的にすごい人気だったですが。
オーバーオールは着てないですよ。
三つ編みおさげはその通りですが、グリーンのチェック柄のワンピースでした。
都会に出たからそれなりにオシャレしたんだろうと思いますよ。