昭和31年(1956年)10月。
レモンイエローのカーディガンを着て、なつが初出社です。
緊張感はあるものの、夢にまで見た漫画映画の世界へ、飛び込みます。
ようこそ、仕上げ課へ
山根が出迎える中、仕上げ課へ向かいます。
仕事の内容はいかなるものか?
トレース:作画をセル画に描き写す
仕上げ:着彩をする
いいですね。
どういうことをしているのか、視聴者にもわかります。ノリでイケイケどんどんするのではなく、丁寧な説明です。
この仕上げは、猫の手を借りたいほど忙しいんだとか。だからこそ、なつたちが臨時採用されたのです。
即戦力になって欲しい。仕事をしながら覚えて欲しい。期待を込めて言われるのでした。
次に出迎えたのはリーダー格の石井富子でした。
リーダーといっても、まだ30だと説明します。
このセリフ、短いのですが本当に奥が深いと思いますね。
津田梅子の時代、女子の結婚は10代が適齢期であり、20代で晩婚扱いという、そんな状況に彼女は絶望しました。
そして昭和は、クリスマスケーキ。
25歳を過ぎたら売れ残りという時代です。
それなのに、富子は堂々としている。
適齢期どうこうは通過したメンタリティがあるのでは? そう推察できるのです。
こやつ、なかなか強そうだ……そういう能力値の高さを感じる!
名将・富子、推参!
そんな富子は、日本初の本格総天然色漫画映画を作ると、気合いを入れて来ます。
凄いものを作っているんだ。
末端だろうと、志を高めるのだ――。
そういうことですね。
兵士だろうと、天下取りに関わるのじゃあ! 太鼓を鳴らせー!
と、士気の上げ方がうまいですね。
後の展開を見ていると、富子の能力値の高さがわかります。
そしてさりげなく、漫画映画は世界的にはアニメーションと呼ばれているとも披露します。知識ももちろん兼ね備えております。
リーダーとしての風格があるんですね。
頭は切れるけれども、前面に立つとトラブルを起こしかねないイジワル軍師・夕見子とはちょっと違う。どのみち強いんですけどね。
そのアニメーションのセル画を作るとは、どういうことなのか?
トレースは難しい。
彩色も、試験は自由だったけれども、色見本を参照するようにせねばならない。
そうして何万枚も作り上げたセル画が、一本の映画になる――。
教わりながら、早くできるようにすること。そうテキパキと指示を出してきます。
根性論ではありません。そこまで細かいことはちょっとおあずけ。
それでも、仕上げがどうなるか。
何が期待されているか。
仕事の規模や最終段階まで、きっちりと短い中に詰め込んでいます。
無駄がないなぁ。いいなぁ。
有能上司感がある。これは名将ですわ。
この仕上げまでの説明が見事です。
臨時採用ですし、アニメの知識がない&鑑賞経験がない者がいてもおかしくはありません。
そういう末端にまで、どんなスケールのあるものを作り上げるか。イメージできるように説明する。これはいい仕事ですよ〜!
なつは感慨深げな表情をしています。
「やっと会えた……白蛇姫に」
作業をしながら覚える職場
なつは、森田桃代の隣の席へ座ります。
ポニーテールにベスト姿の桃代は、座って手を動かしながら挨拶。ちょっと無愛想というか、サッパリした性格に思えます。
本作って、女性でも必ずしも愛想が良くないところが、なかなか面白いと思います。
そんなものは本人の性格次第ですからね。
言うまでもなく夕見子とか、砂良とか、富士子とか、妙子とか。
とよババアはむしろ名乗りをあげるタイプ総大将だし。
「女は愛嬌」と言ったものですが、それは当人の主張というよりも、社会の要請でしょう。
なつが富子から渡された封筒を開けようとすると、桃代が言います。
「ダメよ。手袋して」
セル画を触る時は、指紋がつくから素手禁止なのです。
自分の仕事に集中しているようで、ちゃんと気配りをしています。
「わぁ……かわいい」
なつは絵にうっとりとしています。
動画用紙と呼ばれる紙を外してよいのかと、桃代に確認しています。
仕上課に配属されたなつの先輩・森田桃代役は伊原六花さん。仕上課の席でのオフショット。皆さん、“モモッチ”と呼んでくださいね。美術さんの粋な計らいで、モモッチの机は桃がいっぱいです。#朝ドラ #なつぞら #伊原六花 #モモッチ pic.twitter.com/Dt2lPjR00L
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 2, 2019
大変な職場ですね。
基礎的な工程すら、いきなり実地で身につけるしかないとは。
なつはパラパラとめくり、動きの可愛らしさにうっとりとしています。
「あ〜、かわいいな……なまらかわいい」
うーん、なっちゃん。本当はこちらがやりたかったんでしょうねぇ。仲も絶賛していたほどでですし。
誰のせいでこうなった?
はい、咲太郎です。天丼ごときでチャラになると思うなよ……なんちゃって。
絵を見ながら、なつは、誰が描いたのか気にしています。封筒に名前が書いてあると言われ、見てみれば。
【仲ツトム】
その名前を確認し、なつは嬉しそうです。
知り合いなのかと確認する桃代。
「作画がやりたいってこと?」
「仕上げも頑張ります!」
なつはそう言い切るのでした。
モモッチ先輩、よろしくお願いします
なつは仕上げを開始します。
「うっ、ダメだ。これが映画館にかかるなんて、緊張する……」
はみ出したらどうしよう。そうカチコチになっています。
すかさず、はみ出しても消せると桃代が忠告をしてくれます。
なつは真面目でいい子なんですね。
「雑でもいいから、ともかく一気呵成に仕上げちゃえ〜」タイプである私からすると、感心します。
あと、なつは天陽とはタイプが違うんでしょう。
彼はいきなりガッと描くタイプに思えます。だからこそ、なつが天陽に感心していたとも思えてくるのです。
失敗しても大丈夫、慣れると励ます桃代。
この仕事が長いのかとなつが尋ねると、まだ半年ではありませんか。19歳で、なつと同い年です。
「だから先輩なんて呼ばなくていいの」
「先輩は、先輩です!」
桃代は笑って、こう言うのでした。
「慣れたらモモッチって呼んで」
森田桃代だからモモッチなんだって。
モモッチ、実は友達が欲しいと思っているのかな?
これは親近感をあげなとさりげなくアピールしているでしょ?
「モモッチ先輩。モモッチさん……」
おずおずとそう呼びかけるなつ。性格的なものなんです。律儀なんだよね。
「さんもいいって!」
モモッチは、なつのあだ名を聞いて来ます。
「私はなっちゃん」
と返すのでした。
なつは割とおっとりした性格です。それが夕見子からすれば、もどかしいと思われたりしていました。夕見子がやたらと強いというのもありますけどね。
でも、芯が強い子であることはわかっていますよね。
そして、なつは苦労するタイプだろうなぁ……。
『半分、青い。』の楡野鈴愛よりは丸めてあるとはいえ。
【おとなしそうな子だと思って舐めていたら、実は強かった!】
と、第一印象を覆された相手からロックオンされるかもしれません。そうなると大変なことなりかねない。
そういうとき、モモッチのような仲間がいれば力強いはず。
チームワークを築いていこうね。
そんなモモッチのアドバイスです。
「あのね、なっちゃん。話す時は、手を動かす」
そこは気になっていたんだな。
がんばれよ、なっちゃん!
呼び方ひとつで、親密度や互いの性格がつかめて来て、本当に精密な脚本だと思えます。
※続きは次ページへ
でんすけ様
パンダコパンダ、大好きでした!
楽しくなってきましたね。
紅一点頑張る女性は、レミーの美味しいレストランでも描かれましたね。期待。
なつぞらは登場人物の性格付けが一人一人綿密に考えられていて、見ていてとても楽しいです。
その人物のセリフや行動に納得したり、あるいは意外な部分を見せてきて驚かされたり。
良いドラマは人物の描き分けがしっかりしていますよね。
なつぞらはそういう部分にも信頼できるドラマであると感じます。
今日の『やすらぎの刻~道』第41話では、どうしたことか、本作十勝編必須のアイテムだった「一升瓶に詰めた牛乳」が登場。
やっぱり、作り込み・こだわりの作品の双璧である本作『なつぞら』と『やすらぎの刻~道』は、どこか意識し合って作られているような。大森寿美男氏と倉本聰氏が互いに刺激し合って、これら朝ドラ・昼ドラの双璧が創り出されているとしたら、素敵な話だと思います。
パンダコパンダでパパンダが竹をバリバリ食べてたのはこういう「パンダって何?」から来る勘違いだったのかなぁと想像出来てクスッとなりました。
和気あいあいとした雰囲気の職場にピリッとしたスパイスを効かせるプロならではの緊張感と志の高さ。紅一点で色々なものと戦っていそうな麻子さん。うーん、素晴らしい出だしで、これからのアニメーション歴史群像劇的な展開にワクワクさせられてます!
わたしも、今日のモモッチさんには、働く人へのリスペクトを込めた台詞を、物凄くさりげなく入れてきたな!と感じ入りました。小さな台詞の端々に格調があり、作者の世界観が詰まっています。
最後のお父さんの「浮かれずに頑張りなさい」の語りも、その台詞に込められた心の動きがとても普遍的で、てらいがなくて、すごいと思いました。子どもへは、応援するにも、つい「気をつけてね」的心配スタンスからの言葉もでてしまう、親独特の暖かい目線です。
同じ心配するでも、武者さんの言うように、咲太郎に対するのとはどこか違うのも、面白いですね。
毎回おっと思わせる台詞ばかりで、味わいぶかいです。
仲さん、 なつを支えてくれる素敵な人です。互いに志や夢を共にしながら、大切なパートナーになれば、と期待したりします。