蘭子は水を飲みつつ、咲太郎に愚痴をちらっとこぼします。
「これも劇団のため、活動資金を稼ぐため」
そう割り切っていると。これは重要かもしれません。
蘭子がここから、声優業にどこまで踏み込んでいくのか。
ここで、前述の咲太郎のセリフ、
「森繁久弥ならもっとうまい気がします」
が飛び出すのです。こいつめ〜!
こういう小憎たらしいセリフが許されるのも、キャラクターあってのものでしょう。
蘭子もフフッと笑っています。単に失礼なだけではなく、咲太郎なりに緊張をほぐしたのでしょう。
するとなつが声優の控え室に入ってきます。
「お久しぶりです!」
なつと蘭子が初対面であるかのように振る舞う咲太郎は、ちょっと忘れっぽいということでしょうか。
蘭子は、なつが描いている絵とはこれだったのかと納得しています。
まだ色を塗るだけとちょっと照れくさそうな、なつでした。
あいつは天才なのか? それとも……
マコはその頃、富子になつのことを聞いておりました。
仕上げとしての才能があるのか?と。
「背景を描いていないし、丁寧だけど、遅いし……」
マコはムムッ……という顔になります。
「素人なのか、天才なのか、どっちなんでしょう? どっちだと思います?」
そう悩んでいるのです。
天才とは、何でもササッとできる人ではありません。適性があるものです。
むしろ、得意分野以外では破綻しきっていてダメ人間と思われてしまう可能性もあるでしょう。
本作は、きっちりとそこを示してきました。
天陽と陽平もそうです。
セオリーを学び、技術を伸ばすか?
自由気ままなところで、才能を生き生きと発揮するか?
なつの場合、ここはきっちりと示されています。
◆仕上げ:お手本や指定通りに、丁寧に仕上げること
→陽平、モモッチ、富子、野上、照男、富士子、よっちゃん等
→菱本、ユーコ(『半分、青い。』)
→石田三成「なんでもかんでも書いていいというものではない」
◆作画:イマジネーションの赴くままに、描きあげること
→天陽、なつ、蘭子、泰樹、夕見子、倉田等
→鈴愛、秋風(『半分、青い。』)
→真田昌幸「わしも勘だけで生きておる」「それでも時々間違える」
こうした適性を履き違えると、才能を潰してしまいます。
特に後者のほうが、言動がすっ飛ぶために誤解されやすい。
優劣じゃないんです。
個々人の特性であって、上下はない。
確かに陽平は、天陽をずるいとこぼしてみせ、リアルな心情を吐露しておりましたが、自分の長所を伸ばせばいいんです。
嫉妬は二の次。つまらない話です。
間違っても、嫉妬と誤解で相手の才能を見下したり、へし折ったりしませんように。
マコはそこを見極めたいのでしょう。
ゴゴゴゴゴゴ……。
夢の続きを見られるのか?
マコが、なつの才能を見極めるために悶々としている頃。
その対象者であるなつは、天然自然の顔で、出来上がったアニメを見ているのでした。
それはあの、白娘が泣きながら、一瞬キッと振り返る場面です。
なつの目にも、涙が滲みそうになっています。
あー、わかります!
確かにここで、一瞬悔しがるからこそ、白娘の悔しさがいきいきとして見えてきます!
なつは映画作りがわかったと、静かに興奮しています。
こんなにもドキドキするなんて、まるで夢を現実にするみたい。
そこで仲が、こう告げるのです。
新作に備えた、動画テストを再度受けてみるか?と。
なつよ、その夢の続きを見られるか――。
父が、ナレーションを通して語りかけてきました。
声優さんに改めて敬意を!
本作って、アニメの原点回帰だ!
何度もそう指摘してきました。
今日は、その集大成。豪華なものでしたね。
山寺さんと鈴木杏樹さんの、声を吹き込むところ。お二方とも美声でした。
今とは違う声優事情もわかりました。声優なんて嫌だなぁ、そんなリアルがそこにはあります。
けれども、これも大事かもしれない。
最近の声優ブームは、好ましいことばかりでしょうか。
声優に交際相手がいるだけで、ヒステリックなバッシングがファン界隈から起きるとか。
正直なところ、もっと原点回帰すればいいと思いますよ。
あと、当たり前ですが、声優さんは人間です!
二次元の声を当てていようが、人間です。三次元は傷つかないとばかりに、酷いことをするのは、もうやめにしましょう。
そういう意味でも、本作で顔のある声優さんのお仕事を見せたことって、いいと思うんだよなぁ。
好きなキャラに命を灯す声優さんを、尊敬するどころか、おもちゃ扱いにするって、そりゃないでしょ。
◆「やっと対策してくれた…」 声優・東山奈央、Twitterでの迷惑行為に警告でファン安堵1人で数千件のリプライを送る | ニコニコニュース
声優だけではなく、作画の魅力も思い出させていただきました。
これもな……露出とか、エロとか、そういうのに最近偏りすぎではありませんか?
身体パーツの一部がどう揺れるとか、強調されているかとか。
『パシフィック・リム』へのコメントで、もっとエロいアングルからヒロインを撮影すべきだという、そういう声が日本から上がって本当にウンザリさせられたことを、思い出すのです。
アニメの魅力って、そこでしたっけ?
プロット、ストーリーそのもの、テーマ性、心情描写。
そういうところで、評価されていませんでしたっけ?
このへん、ディズニーやピクサーと比較しても、最近は酷いことになってきました。
日本のアニメの影響を受けていることは明らかな作品でも、エロや萌えはさっぱり決別し、十分面白いんですよね。
陳腐化のドツボに陥ってないか?
日本のアニメヒロインって、やりすぎていて戦うどころか動くだけで危険な露出度になっていない?
そう思ってしまうんだよなぁ……。
※『ベイマックス』のヒロインたちは、露出度低、かつ魅力的でしょ
本作は、アニメの魅力に迫ります。
好きなアニメを見たくなる、そんな力があります。
まぁ、そういうものあってこそドラマです。
『半分、青い。』のあとは、あの扇風機が欲しくなりました。
◆「そよ風の扇風機」は“実在”する(岡田有花) – Y!ニュース
****鑑賞後も、東洋水産のマルちゃん正麺を食べるようになりましたからね。
チキンラーメン?
さぁ、私にはいらないものですね……。
スタンド能力を見極めろッ!
お前は何度『ジョジョの奇妙な冒険』を出すんだ?
そう突っ込まれそうですが、もう一度。
あの作品のスタンド能力は、適性がそれそれあります。
『ドラゴンボール』のように、スカウターで計算する数値が高ければ有利、勝利! というものではありません。
相性がよい相手ならば、勝てる。
悪ければ、どうあがいても、負ける。
まずは、自分と相手の適性を知らねば敗北あるのみッ!
相手のスタンド分析から、あの漫画のバトルは始まるのです。
【彼を知り己を知れば百戦殆うからず】
という、そんな言葉が根底にある作品とも言えます。
なつの受験失敗。
仲が、マコになつのスケッチを渡す。
マコの逡巡。
まさに、この適性を見極めるスタンド使いのようなことを、本作は時間をかけてやるのです。
タップするだけで簡単に、【天才がともかくすごいものを作りましたぁ!】とぶん投げた、前作****の天才描写の薄っぺらさとは根本的に違う。
そして本作は、まさにこの時代に合っているとの確信もできました。
こんな記事がありまして。
◆なぜ企業は大学に高望みするのか(山口浩) – Y!ニュース
数学だの、語学力だの、経営者目線だの。
そんなもん、大学だろうが全分野習得できるわけないだろうと。
『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドチャートでも、全部高いものはおりませんよ。
近距離パワー型はいても、遠距離も近距離もスピードもパワーも精密性も、全部できるものはいないんです。
DIO様だろうが、吉良だろうが、ディアボロだろうが、そんなものはいないんだ、無駄無駄無駄……。
相手が持つSランクの能力は何かッ!
そこを見極めて育ててこそ、経営者ってものでしょうが。
そういうスタンド分析ができないのならば、そもそも戦うなって話です。
そこを、どうして新卒にばかり高望みしますか?
お互い切磋琢磨しないと、よいものも、組織もできないッ!
そういう高みまで、本作は行こうとしているんじゃないか……ゴゴゴゴゴゴ……そう思うんだッ!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
でんすけさま
手が追いつかない、というのは、
マンパワーが足りない、
のはその通りなんでしょうが、
頭で思い描くように描けない、
追い求める理想の造形に至らない、といった意味なのでは
ないかな、って思います。
違うかな?
なつは本当に絵を描くのが好きなんだなというのが伝わってくるので応援したくなります。
多分仲さんもそういう気持ちでなつを何かと引き立ててくれるんじゃないでしょうか。
アニメーションが出来上がるまでの描写や説明も丁寧ですよね。
毎日楽しく見ていられるのは幸せです。
ついに、満を持してのアベルト・デスラー…じゃなくて山寺宏一さんの登場。
私にとっては、あの「アベルト・デスラー」の声と山寺宏一さんの姿がどうしてもつながらず、かねてから「すごい方だ」と思っていたところ。
今回、許仙と法海を見事に演じ分けている姿を見て、改めてその思いを強くしました。
ヤフコメなどで「なつは贔屓され過ぎている!」的なイチャモンを見る度に、いやまだ全員アニメーターとして養成中の学生みたいな人達だから。。、と言いたくなります。堀内くんばかりかあのマコさんですら、誰もがお手本なしに試行錯誤しながら創作活動をしているのですよね。まともな経験者は仲さんと井戸原さんだけ。その二人だって悩みまくっている。手が追いつかないから手を増やしたい。
そうした背景描写が弱かったかも知れませんね。
先日、東映の「白蛇伝」を見ましたが、
最初のクレジットで声優、森繁久彌、宮城まり子、となっていて、え?二人だけ?と思っていたら、本当に二人で全て担当してたんですね。
あと、朝ドラに全く興味のない、今「なつぞら」をやってることすら知らない妻と観賞してたんですが、あの白娘が目をキッと開いて睨むシーンが印象的だったとの評価でした。
キチンとドラマでもストーリーの要として表現してるんですね。感心します。