なつぞら137話 感想あらすじ視聴率(9/6)冒険はまだまだこれから続くんだ!

【魔王】の巣窟は今日も……!

イッキュウさんは、熱心に企画書を書きます。
そしてマコに提出しました。

マコは悟っています。

「それってもしかして……」

そう、それは奥原なつがその気になった。
奥原なつ、出馬です! ジャーン、ジャーン、ジャーン!

「それはつまり、うちに来るってこと?」

「おそらく辞めます!」

おい、イッキュウさん、おいっ!
独断専行型と言いますか、何をするにしても暴走傾向はありますよね。それで離職していますし。

「自分からやりたいと言いだした!」

「イッキュウさんのためでない?」

「自分のためッ!」

「なら大歓迎よッ!!」

このイッキュウさんとマコの会話も、重要だと思います。

本レビューでもさんざん書いておりますが、女性の社会進出すら、夫のため、我が子のためと言われるモノ。
あのバッドでビッチな「ノトーリアスRBG」ですら、日本だと良妻賢母に押し込められるからね。

◆米最高裁のレジェンド「ノトーリアスRBG」が“バッドでビッチ”な口紅に!

なつぞら66話 感想あらすじ視聴率(6/15)「あーた、あーた、あーた」

女は、自分がやりたいことのために生きることすらできんの?

そこを、本作はぶっとばしてきた。
なーにが、「教祖からのもらい感情、付き合うあたしすご〜〜い?」だ。何もすごくねぇよ。

で、その背後では【魔王】神っちもいる。
もう転職済みかーい。

「東洋は泣くわよ……」
と、マコはニヤリ。

「泣かされてきたのはこっちじゃないかーーー!」
と、神っち。
怖いです。【魔王】コンビ。

こいつら、繰り返しますが邪悪極まりないっちゃそうですよ。

東洋動画は、割と話が通じる職場だった。
締め切りと予算を守れと社会人の基礎を言っただけで、絶望して謀反をめざす側がおかしいんだ。

なつぞら103話 感想あらすじ視聴率(7/29)謀反の種は蒔かれたか?

もうこいつらはある意味規格外です。
モデルだの、労組だの、言うだけ無駄無駄無駄ァアア! という気がしてきました。

※こいつらを敵に回したくないっしょ……

常識人の下山は、辞めると決まったわけではないと言います。
彼なりに、東洋への同情はあると思います。

実際に、東洋動画の人たち。根っからの悪人はいませんよね。
私だって好きな人が多いもんなぁ。仲は聖人だし。佐藤部長あたりまで好きだわ。

ここで、イッキュウさんは大興奮だ。

「北海道で決めた! だから間違いないッ!」

うん。それはそうだ。
そこを本人確認取れればもっといいんだけどな。

マコは企画書を見ています。

「原作でなく、原案?」

イッキュウさんは解説します。

世界観を生かしつつ、翻案してゆく、北海道を舞台にして、生きてゆく物語。
これから生み出される、新たな物語なのです。

新しい物語が始まる

なつと優は帰宅しました。

「ただいま〜」

「パパいない」

「いなくても、パパにただいまって言いたいでしょ」

この短いやりとりも、重要ではある。
前述のとおり朝ドラは、子供が「ただいま」と母親に言えないことを断罪しまくってきましたからね。父親不在でもそれは同じでしょうよ。

イッキュウさんが帰宅して、天陽の包装紙を見ています。

「この少女は……」

「描いてみたくなった。そのあとの物語を、描きたくなった。それで、どうしても、描いてみたくなった」

イッキュウさんは、天陽からなつを託されたことを思い出しています。

なつぞら114話 感想あらすじ視聴率(8/10)絵を描く則ち排泄也

なっちゃんと生きられるのは、イッキュウさんだけだと。

イッキュウさんと天陽。
なつを間に挟んで、不義だのああだこうだ言いたい層は想像つきますけど。

結婚は束縛でも、所有権の問題でもありません。
それとは別の、精神的な絆があるってことでしょう。

「パパ、おかえり〜!」

ここで、優があいさつをしています。
抱き上げられて、本物の馬を見てきたと言い切るのです。

それは天陽の絵。遺作でした。
それを見て本物だと思ったって。

「優、それが本物だって、よくわかったな。偉いぞ! そうか、お馬さんがいたか」

イッキュウさんは、なつに企画書を見せます。

そこには、北海道が舞台と書かれていました。
北海道を舞台にして、その物語を作るって。

なつよ、また新しい物語が、始まりそうだな――。

新軍師・明美推参ッ! その敵は?

そういえば、明美ちゃんはどうしているかな〜?

と思っていたら、想像以上にたくましくなって颯爽と戻ってきました。やったね!

女子アナ志願ではなくて、報道部を疾走しているらしい。
その戦場は、想像ができる。明美は毎日が、戦いなんだ。

「飲み会なんだからさ〜、お酌しなよ〜」

「女の子なんだからさ〜、女の魅力でネタをとってきなよ〜」

「あの議員さん、明美ちゃんがお気に入りだってさ〜」

「女の子でしょ? あの上司の隣に座りなよ」

「女はいいよな〜、困れば色気で釣ればいいし〜」

◆女性記者の胸ぐらつかむ 岩手、暴行疑い60代男逮捕

◆森達也が望月衣塑子を追った「i-新聞記者ドキュメント-」11月公開

そういう偏見を垂れ流されていると思えば、あのきついセリフも納得できる。

明美は現実と、偏見と、戦い続けている。
明美のセリフを聞いて、毒づいた人のこと。SNSで文句をつけている層も、想像がバッチリできる。

本作は視聴者を反射板にした社会実験である――。

以前にそう記したことがありましたが、まさにそうなっているとハッキリ実感できます。

人は、反論させるとよく喋る。
明美にぶつけられるであろう言葉こそ、彼女の敵なんです。

なんて壮大な社会実験!
なんて面白いんだ!

罵倒まで含めて、本作は面白さと刺激に満ち満ちています。

本作の前では、こんな記事なんて失笑ネタにしかなりません。あ、記事中の女性記者のせいじゃありませんよ。

◆ドラマ好き女性記者による女性のための2019夏ドラマ座談会

どうして女性だけなの?

どうして女の目線が大切なの?

海外のVODでは、ジェンダー項目をおすすめのアルゴリズムからはずし始めているのに?

まだこんな偏見の中でぐるぐる回っているの?

どうしてそうなのかな?

これもさ。リアル夕見子のような北村紗衣先生を、新聞ラテ欄では「美女!」と呼んでいましたからね。
彼女の容貌云々でなくてさ。北村先生が男性でも「イケメン!」って書きますかね。

いつの時代で止まってんだよ、テレビ業界。
このままじゃVODに焼かれるよ?

◆マツコが驚いたウィキペディアの「珍項目」「妖精さんの草取り」とは? #マツコの知らない世界 が話題

そこまで含めて、なにかがぶっ壊す前に、NHK東京朝ドラ班はドラカーリスしまくっていて、震えが止まりません。

ドラカーリス!!

狙いに狙って前作****教団ごと焼いてるんだな。

10年後まで通じる傑作への道

そして本作の、この構造的なややこしさよ。

北海道をどうして舞台にするのか?
複数のモデルをからめているのはナゼなのか?

ラスト一ヶ月。
組み合わせて、組み合わせて、北海道を舞台とした『大草原の小さな家』の姿がやっと見えてきました。

すごい。
壮大すぎて、想像できんかったわ。

これは、日本のアニメ界が、謝罪しているんじゃないかとすら思える。

『太陽の王子 ホルスの大冒険』からは、アイヌのルーツが消されてしまった。

あのスタジオジブリですら、女性の労働条件については疎かった。
レジェンドの妻は、結婚退社している。

アニメの歴史が、拾い損ねた声。
その声を、本作はすくいあげて、問題提起している。

北海道150周年ドラマであり、2019年の現代社会に挑んだ――壮大な傑作だと思えるのです。

NHK東京は、本気で朝ドラを変えようとした。
10年先を見据えた。
2030年になってもすごかったと思えることを、やろうとして挑んできた。

現実が追い抜いたら、それはそれでいい。
それが社会の進化だから。

そしてその冒険は、あと一ヶ月では終わらないのです。
来年以降も続くんだぞ!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

2 Comments

あしもと

私は、「イッキュウさんのために大草原に参加、イッキュウさんのためにマコプロへ」の会話は唐突に感じました。彼らなら、そんなこと考えもしない意識レベルじゃないかなと思います。

イッキュウさんのためにマコプロへ行く、なんて自己犠牲は、マコさんもイッキュウさんも望んでないし、アニメーターとしてのなつの自我を信じていないことにつながるからです。なつの自立精神を信じない、そういう2人ではないだろうと。

だからこそ、あの会話は制作側が視聴者に、夫に尽くす嫁に読み違えるなよ、と敢えてでも入れ込んだように見えました。

話としては唐突でしたが、その意気や良し!と感じました。

あしもと

また、剛男の弱いふりをしている云々は、武者さんも時折指摘される男女逆転の典型だと思いました。

従うふりして、その実ダンナは嫁の手のひらで転がされてる、嗚呼よきかな的なノスタルジーが、どれほど実のない言い草なのかがあらわになりますね

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