なつぞら114話 感想あらすじ視聴率(8/10)絵を描く則ち排泄也

さて、劇中で雪次郎が作っていたお菓子のモデルは?

柳月の「あんバタサン」です。

◆柳月公式サイト

これは買わねば……待たされるだろうけれども。

ただドーンと出すだけでなく、プロットに組み込むところがうまいですよね。
食べたくてたまらなくなってきました。

十勝、たんぽぽ、二つの運命

なつは、柴田家の縁側でたんぽぽロゴのスケッチをしています。

夕見子のバターに、なつがロゴをつける。
そんな姉妹の夢があります。

そんななつに、富士子がノートを手渡しました。
柴田家でなつが味わっていた、北海道手料理のレシピ集です。

北海道の食文化は、独特です。

・寒冷な気候

・開拓者出身地の郷土料理が混ざり合う

・そしてアイヌの知恵と味も

北海道は「食の歴史」も過酷そのもの~米豆の育たぬ地域で何を食う?

そういう食文化が、富士子からなつへと伝わります。

「かわいい絵……」

なつがノートをめくりながら言います。
絵のセンスはなつの父由来ですので、富士子の絵は素朴なものです。が、味がある。小道具さんが、すごく頑張って仕事をしていますね。

富士子は、なつがよく家事をしていたからわかるはずだと言います。

「絶対、忘れんわ!」

感謝して、そう伝えるなつが質問します。

「夕見子にノートは?」

ここで富士子は、キッと強い眼差しになるのです。

「ノートではダメ、一から特訓!」

はい、わかります……清々しいほど家事を断固拒否してましたよね、あの軍師は。

なつぞら26話 感想あらすじ視聴率(4/30)無意識のうちの微かな動揺

【表裏比興軍師の思考】

軍師「フッ、我が大志のための勉強をするのに、家事なぞしている暇はない……」

富士子「信哉さんは勉強以外もしたのに、大学合格だって」

軍師「おのれ! 家事をしても負けぬぞ、信哉如きに負けぬ!」

「女の子はお料理しなくちゃ」
「モテるためにサラダとりわけなきゃ」
といった思考は期待できませんね。

それどころか、台所仕事を女だけがしているとダメ出しをするわ。

なつぞら84話 感想あらすじ視聴率(7/6)男子厨房に入るべき

高山はこうくるわ。

なつぞら95話 感想あらすじ視聴率(7/19)夕見子となつのレリゴー♪

「自由になって、飯も作れない女と結婚してもしょうがねえべ!」

ありのままの夕見子だから。

富士子は、あの子が突然結婚するなんてと驚き、うっとりしております。

「なつがこの家に奇跡を運んで来てくれた……」

もし、あの空襲で犠牲となっていたら?
もし、戦災孤児として駅で命を落としていたら?

人の命には、さまざまな可能性と奇跡がある。
このドラマは、8月という季節に、そのことを教えてくれます。

なつは、こうして生きていることこそが奇跡だと言います。
あの夜を生き延びて、この十勝に来たこと。

「そうでなければ、亡くなったご両親に申し訳ない」
富士子はそう語ります。
育てた恩を着せない。むしろ、授かりものだとしみじみと語るのです。

「私にはもうこれが普通だわ」

「結婚して、辛いことがあったら、いつでも帰って来なさいね。あんたは本当に、我慢強いんだから」

しみじみとそう言い、娘を抱きしめる富士子。

「なつが生まれてくれて、ほんとうによかったわ……」

双子のたんぽぽ姉妹

田辺に頼まれていたデザイン。
たんぽぽと、牛の顔を組み合わせたロゴでした。

【T】は、たんぽぽと十勝の【T】。二つの要素があります。

本作もそういうところがある。

たんぽぽ:なつ、奥原家、東京、アニメ、坂場

牛:夕見子、柴田家、北海道、農協、雪次郎

この姉妹は、ダブルヒロインでもあるわけです。

※2019年らしいなあ〜

「素晴らしい、見事だ!」

田辺がそう言います。
同感です。私もそう言いたい。

その田辺に感想を求められて、剛男はしみじみと思い出すのです。
あの日、たんぽぽを食べた少女のことを。

「本当に大きくなったんだな、あのなつが、もう結婚か……」

なつぞら1話 感想あらすじ視聴率(4/1)タンポポ食べるヒロインに期待♪

「やっとでしょ、心配してたくせに!」

「お前もな!」

そう夕見子とやりあう剛男です。

うん、そうだね、うん。
なつと夕見子は、女はクリスマスケーキ(※24が適齢期、25過ぎたら遅い)の時代ですからね。晩婚ではあるのです。

田辺は、なつのデザインをバターだけではなく、ブランドそのものにも採用すると笑顔になっています。

「十勝のおいしい牛乳を、そのまま届ける」
そんな夢を噛み締めているのです。

「ゆみ、がんばって!」

「うん、飲めないけどがんばる」

「まだ飲めないんだ……」

そう突っ込まれて、ちょっと照れています。

克服していなかったんかーい。
視聴者も突っ込みたいでしょうし、明美も言ってましたっけ。

それはそれ、これはこれなんじゃ……。

真田昌幸「そうそう。徳川の支援で作った上田城は大事。でも、それで徳川を迎え撃つ的な。そういう切り分けが大事」

徳川家康「何、その嫌な開き直り……」

第2次上田合戦~なぜ真田は2度にわたって徳川の大軍を撃退できたか

絵は、排泄です

なつと坂場は、天陽のアトリエへ向かいます。

所狭しと飾られた絵がすごい。
小道具さん、本職の画家さん、頑張ったんだなぁ。どれもこれも破綻がないように見えます。

高校時代と比べると、作風にも進化がある。
それでいて、モデルとなった神田日勝の作風(公式サイト)もそこにはある。手がけるスタッフさんのことを想像すると、大丈夫かと心配になってくるほど。

天陽の絵を見た坂場は、ともかく感動したと若干ドヤ顔です。

「天陽くんと出会わなければ、今の私はない……」
なつはしみじみと、馬の絵の前でそう語ります。

天陽という少年が、北海道に来なければ、そうはならかった。

なつぞら5話 感想あらすじ視聴率(4/5)私も怒っているべさ!

絵では生きているようにしなくちゃ意味がない――。

「それはお互い様」
天陽はそう言います。マウンティングとは無縁な、本作らしいセリフです。

ここで、坂場が難しい理屈に突っ込みました。

「絵を描くことと作物をつくることは違います」

「もちろん違います」

「ではその違いは?」

なつが小声で、答えなくてもいいからねとつぶやくのでした。
かなり坂場対策慣れてきたな。

「どちらも生きること。畑仕事は食うため。絵は、排泄です」

我慢できないと、漏らしてしまう。

なつぞら14話 感想あらすじ視聴率(4/16)イジワル軍師・夕見子の魅力

「絵を描きたいと、便所に行きたいは同じ」

シンプルな彼の語彙で表現すると、そうなると。

「なるほど……素晴らしい」

「褒められるとうれしい、貶されると悔しい」

なつはここでこうつぶやきます。

「そうやって純粋に生きられたらね……」

天陽は、なつも同じだと言います。
彼はここに留まることを選び、なつはアニメーションという場所を選んだのだと。

天陽となつの恋愛描写は、ちょっと難しいというか、わかりにくくはあります。

なつぞら42話 感想あらすじ視聴率(5/18)それぞれのキャンバス

周りで見るほうが【普通はこうだ】と考えてしまうからであって、当人からすればシンプルなことなのでしょう。

魚は水の中で生きる。馬は地上で生きる。
世界が違った。
魚を無理矢理地上に引き出したら、それはもう別の何かになってしまうのでしょう。

アニメという同じ世界でなっちゃんと生きられるのは、イッキュウさんだけ。

「どうかなっちゃんのことを、お願いします」
天陽はそうしみじみと託すのでした。

その坂場は、そう感心して、絵を見ています。

「絵を見て我慢できず、漏らしそうです……」

これは実際の排泄欲求ではない。
トイレの場所を教えても意味がない。

来週以降に、それがわかるのでしょう。

なつは、しみじみとナレーションで語ります。

「やっぱり天陽くんは、私の一番の目標です」

この心の声をナレーションと併用する技法は『半分、青い。』と共通していますね。
今まで、ほとんどなかったですよね。
※続きは次ページへ

4 Comments

けいいち

京アニの事件以来、しばらくなつぞらを観ることができなかったのですが、最近録画を観るようになって、やっとリアルタイムに追いつきました。本当に最高の回で追いついたなと思ってます。
またこちらのレビューを楽しみにしております。

いち子

なっちゃん綺麗だな、としみじみ語り合ったのは、山田兄弟でした。陽平くんと天陽くんですね。

匿名

天陽に「なっちゃんきれいだな」と言ったのは照男ではなく陽平ですよ~

ガブレンツ奮戦

田辺組合長の語った今後の構想。バターその他の乳製品の生産の他、将来は道外への飲用乳出荷も視野に入っていました。

加工原料乳より飲用乳の方が価格も高く、それだけ酪農家の収入も大きくなります。ただ、道外へは距離も遠く、輸送時間がどうしてもネックに。
青函トンネルが開通して本州との貨物列車の直通運行が始まったり、高速RORO船を就航させたりしてこれを解決した平成初期に、本州への飲用乳出荷が本格的に行われるようになり、首都圏や関西でも北海道産の飲用乳が販売されるに至ります。

十勝や道東地方の酪農家の経営に、この本州への飲用乳販売は大きく寄与しています。
今、青函トンネルについては、新幹線の高速走行に邪魔だと言って貨物列車の運行の廃止を主張する向きが一部に存在しますが、それがいかに愚かであるかはこのことからも明らかです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA