なつぞら120話 感想あらすじ視聴率(8/17)育児と仕事に優劣あらず

喜びと戸惑いがあった、なつの妊娠。

しかし、イッキュウさんは【開拓】の志を告げるのでした。

スタジオに出陣である!

なつは、スタジオに向かいます。

仲と井戸原の前を通り過ぎ、下山と神っちを呼ぶのです。
独身男性でも呼ばれるあたりが【魔王】なのでしょう。

なつは、ここで妊娠三ヶ月だと告げるのです。

「ひょっとしてイッキュウさんの子?」

「……ひょっとしなくてもそうです」

こういうわけのわからない、しかも相手を怒らせかねないことを、しれっと言う神っち。【魔王】らしいといえばそうだなぁ……。
下山はそうではありません。素直に「おめでとう、なっちゃん!」と喜びます。

「会社にはこれからいうつもり。やめるつもりはない、たとえ契約になっても仕事は続ける!」

なつは、その決意はイッキュウさんも認めていると言い切ります。

ここで、異常なテンションになる神っち。

神っちはそういう奴だ。
顔まですごいことになっていて、染谷将太さんの凄みがわかるんだな。

「みんなで話そうッ!」

そのままスタジオに直行だ、わーっ!
なに、この出陣感?

「なっちゃんができたそうです!」

神っち、スタジオで叫ぶ。
でも、こういうときでも発声がクリアでギャーギャー感がないのはすごい。

仲はきょとんとして『魔法少女アニー』のことかと思います。
そうじゃないとイライラする神っち。つくづく役作りが細かいなぁ。

「子供ですッ、子供ができたんです! 赤ちゃん、赤ちゃんです!」

「おめでとう、なっちゃん!」

「おいみんな、なっちゃんに赤ちゃんができたぞ!」

「おめでとう〜!」

盛り上がるスタジオ。
これはちょっと大げさかな……と思ってから、首を振ってしまう。

でも、本来このくらい祝うことなんだよね。人の命が生まれるんだから。人生が始まるんだから。
なにをもたらすのかわからない、未知のものが世界に目覚めるわけだから。

喜べないのだとすれば、そのことそのものが不自然なんだ。

仲間を守るのは、仲間なんだ!

神っちは、こう続けます。

「それでなっちゃんは、仕事をやめるわけにはいかないんです! アニメーターを続けたいんです、なっちゃんは辞める気はない」

なつと下山も同意します。
たとえ契約になってもいい。茜のようにはしたくない。

この三人も、おもしろい組み合わせなんです。

なつは、当事者。
下山は、茜の配偶者。妻の気持ちを知っている。
神っちは、独身男性です。

神っちは逃げ道を塞いでいる。独身男性は関係ないという、そういう言い訳に先回りしている。
俺ができてお前にできない理由はなんだ、そう突きつけている。

仲と井戸原は、驚き困惑しています。
これも二人の理解度の差があります。

イッキュウさんの責任問題でもそうでしたが、仲の方が柔軟性はあるのです。
落とすなら、こちらが先だ――。

なつぞら107話 感想あらすじ視聴率(8/2)才能や肩書を愛したわけじゃない

ここで神っちによる【魔王】スピーチタイム。

※レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンだ

「仲さんだけどうこうしろと言っているわけでもない、これはアニメーター全体のこと、なっちゃんの代わりはいないッ!」

神っちはすごいんだな。ズバ抜けた才能があるとは、示されている。
それでマウンティングをするわけでもない。ある意味全員平等で、唯一無二だと悟りきっている。

堀内あたりをコンプレックスで削りに削って、かつ無関心というマイナス面もありますが。

「契約は価値を認めないということだ! それでいいんですか? 守るのは、男でも女でもない、アニメーターの仲間しかいない!」

神っちのスピーチに、仲が感極まった顔になっています。
無駄のない、いい言葉でしたね。井戸原すら、圧倒されている。

契約ではなくて、このまま続けさせるべきだ。
そう一丸となったのです。

さてどうするか?
ここで仲には考えがあります。

社長に掛け合え、魂を見せろ

向かった先は、社長室――。
山川の前に、ドヤドヤとアニメーターが集合します。

山川はちょっと驚いていますが、井戸原はここでなつの妊娠を告げます。

祝意を述べてから、産休報告だと理解する山川。

ここで、神っちが訴えます。
契約に切り替えるな! と。

下山も、うちの時(茜のこと)のようにはしないと言い切るのです。彼も妻の不満を薄々と感じてはいたのでしょう。

「きみはなんなんだ! きみはどういうつもりなんだ? 組合員のデモじゃないか! 組合員なのか!」

「組合を超えた、ひとりひとりの支援です」

うろたえる山川に、同盟軍は返します。
あ、これまた反董卓同盟になってきた。

いちアニメーターとして訴える。
なつのために、全員がそうする。
団結力を見せるのです。

こうなると、山川はしおらしくなってきます。茜相手の態度と比べてみましょうか。

一人では弱くても、集まれば強くなるんだ。

こういう声を無視すると、どうなるか?
最近もあったじゃないですか。

◆佐野サービスエリアで従業員が「ストライキ」 突然の営業休止、さのまるの出演も中止に

迷惑をかけないように、おとなしくしてろって言いますけど。
香港のデモにもそんなことを言う声もありますけど。

それだと、世の中変わらないんですよ。
お互いが傷つけあう前に、なんとかしないと。

これが私たちの開拓者魂だ

山川は弱気になっております。
契約は意地悪じゃないと、茜と同じ論法で丸めこみにかかるのです。

「自由になるから!」

これが、妊婦、親、介護者が振り回される理屈といえばそうですが。

それは長時間経営がデフォルトになっている事態が根底にあるのでは?

8時間労働とは、本来それが最低の時間という認識ではなく、【人間が労働できる上限】として訴えられた概念ですよ。

「契約の方が楽だから!」

「楽がしたいわけじゃない!」

なつがそう反論します。
これもあるあるなんだな。

【育児休暇=子供とダラダラしているだけでしょ?】
という誤解。

育児休暇を獲得した父親が、キャリアアップのために勉強を始めようとし、母親が絶望する……そんな悲劇も聞きますとも。

◆「男性の育休義務化」が夫婦の危機を招くワケ 産後うつの原因が「夫」になってしまうかも

実際に赤ん坊と接したことがあるのであれば、おわかりでしょうが。

「長板の戦い」の趙雲状態がずーっと続くってことですよ。
大げさじゃない。赤ん坊の世話が楽なはずがない。

所詮男より劣る女の仕事だから、俺のことじゃないから。楽ってことにしちゃお♪
それだけのことでしょうよ。

なつは続けます。

「金のためでもない。仕事でもっと、成長してゆきたい、いい作品を作りたい! どうしてそれが、子供ができるとできないんです! いい作品を、会社から望まれなくなるのが、一番苦しいんです!」

これが泰樹以来の開拓者魂ってやつだべな。

それに、茜との態度もまた違うんだ。
本来、育児と仕事は優劣をつけられるものではないのでは?

一番大事な開拓者魂が、そこにはあるのです。
※続きは次ページへ

5 Comments

けいいち

なつは見事に、また一つの道を開拓しましたね。

なつほどの特殊技能や情熱の持ち主はなかなか稀有ですから、それが認められて社員待遇を約束されたように見えました。
そうじゃない平均的な社員たちにおいても、出産・産休を理由に不利にさせられることがない会社になるといいですね。
そのあたりは、神っちが心強く感じます。

と思ったところで、我が身を振り返ります。自分も会社に働きかけられることはまだあるなぁ。。。

朝ドラビギナー

毎日内容の濃いレビューありがとうございます。武者さんは「なつぞら」が好きで好きでたまらないのですね。その様子が文章から滲み出ているようで私までほっこりしてしまいます。
この勢いを保ったまま最終回まで突き進めば歴史的傑作になりそうですね!
武者さんが大河レビューで少し触れられていましたが「いだてん」の迷走によって過去作にまで泥を塗ってしまったクドカン氏とは逆で「なつぞら」関係者は役者からスタッフまで代表作を手にしましたね。今後の活躍が楽しみです。また武者さまの筆も乗りまくり冴えまくりなので「武者さま=なつぞら」の代名詞にもなりましたね。

或点不意寄るど!

ほう、前作の表現が「当然」ねえ…

しかし前作には、「反映させようとした理想」も「訴えかけようとした問題」もない。

まめしば

謎の排除…の下りで思い出したのが「怒れる男性ゲーマー」でした。
多分、あれと同じく『男性を弱体化し(彼らにとっての)自然なジェンダ―役割を引っくり返される』と恐れているんでしょうね。
女子部隊にしても『俺たちより劣っていたはずの女に頼らざるを得なかった。その事を認めると、間接的に俺達が女より劣っていると証明してしまう。』から認められなかった。
ある意味彼らも「男は女より優れていなくてはいけない!!」と刷り込まれた、社会の犠牲者ですよね。

乾燥芋

>いいじゃないですか、フィクションなんだから。
>ドラマは理想を反映させる場、問題を訴えかける場でもあって、カッチコチの歴史再現をするところではありません。

まさに仰る通りだと思います!
前作で台湾ルーツを再現しなかったのもフィクションだから当然ですよね。

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